2008年1月10日(木)
外交防衛委員会
- 午前中は新テロ特措法についての質疑。アメリカが「対テロ戦争」を拡大させパキスタン政府の同意無しに同国内に攻撃をかけようとする問題について質問。午後から総理出席、テレビ入りの締め括り質疑。自衛隊の再派兵が国民世論からも世界の流れからもアフガンの実態からも逆行していることを明らかにしつつ、福田総理に和平プロセスへの支援への転換を求めた。質疑終結後の討論で、政府案と民主党対案の両案に対して反対の立場から討論。起立採決の結果、与党案と民主党案の両案を否決する。
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〈午前の質疑〉
- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。アメリカが始めた対テロ戦争について質問をいたします。
九・一一テロ事件を受けまして、アメリカが開始したこの戦争は既に七年目に入りました。アメリカはアフガニスタンに派遣し、アルカイダとタリバンを掃討するために空爆や特殊作戦などの軍事力による掃討作戦を繰り広げてきましたが、アメリカがこの作戦を終了したり、終了のめどを示したりする様子は一向に見られません。
そこで外務大臣にお聞きするんですが、日本政府は、アメリカからこの対テロ戦争をいつまで続けるかについて何か明確な説明を受けているんでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
アフガニスタンを中心としたテロとの戦いにつきましては、不朽の自由作戦を中心とする取組によりタリバン政権が崩壊するなどの成果が上がっているわけであります。他方で、依然としてアルカイダの影響を受けたと見られるテロ活動も各地で見られ、テロとの戦いは長期にわたる困難な戦いであり、米国もこの点は繰り返し述べてきているところであります。
いずれにしても、今後もテロ発生を助長する貧困等の除去及び国際的なテロリズムの防止のための幅広い取組を行うことが必要であり、その観点からもインド洋における補給活動を早期に再開させることが必要であると、こう思っております。
- 井上哲士君
日本政府にもよく分からない問題ということなのかなと思うんですが、結局そうしますと、アメリカがテロの脅威はなくなったと判断をできるまでこの対テロ戦争は続けると、こういうことになるということでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
だれが続けるということですか。
- 井上哲士君
アメリカ、アメリカ。
- 外務大臣(高村正彦君)
アメリカが続けるのは、アメリカが、今おっしゃったテロの脅威がなくなったということを中心に諸般の事情を勘案して、費用と効果とかいろいろあるわけでありますから、諸般の事情を勘案してアメリカがテロとの戦いを続けるかどうかはアメリカが決定する、日本が続けるかは日本が主体的に決定する、国際社会全体がどうするか、それは国際社会全体の中で国連等を中心に決定していくと、こういうことであります。
- 井上哲士君
アメリカに対して日本が自主的に判断をしているように我々には見えないわけであります。
そこで、アメリカが標的とするビンラディンは一向に捕まらない、タリバンも勢力を盛り返したと言われております。そこで、アメリカがこういうタリバンやアルカイダを撲滅をするために必要と判断をすれば、この対テロ戦争というのはアフガニスタン以外でも拡大をしていくと、こういうふうにお考えでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
米国の政策どうするかということでありますから、私がどうということを考えるわけではありませんけれども、アフガニスタンにおける米国の行動は、当初においては高度の組織性、計画性が見られるなど通常のテロの事例とは次元が異なって、武力攻撃に当たると考えられる九・一一テロ攻撃に対して自衛権を行使した、そしてカルザイ暫定政権成立後は領域国であるアフガニスタンの同意を得て行われていると、何度も繰り返したとおりであります。
対テロ戦争という言葉は、米国がテロ撲滅が理由となる場合にいかなる場合にも武力を行使できると考えているとは認識をしておりません。テロとの戦いという、広い意味のテロとの戦いはこれはやっていくんだと思いますが、アフガニスタンにおけるような武力を行使するということをテロとの戦いのいかなる場合でもやると、こういうことではないと考えております。
- 井上哲士君
なぜ私が聞くかといいますと、今アメリカではこの戦争を新たな方向に拡大しようという議論があります。いわゆるパキスタン領内への攻撃の発言が相次いでいるわけですね。
この六日付けのニューヨーク・タイムズでもパキスタン国内の部族地域で作戦強化を検討しているということが報じられまして、これに対して直ちにパキスタンの外務報道官は、外国軍がパキスタンで作戦を行うことは認められないということで領内の米軍活動を拒否しておりますし、ムシャラフ大統領自身が昨年の十二月九日のCNNテレビのインタビューで、ビンラディンがパキスタンに潜伏していた場合であっても我々の軍が見付け出すと述べまして、米軍の介入は必要ないと強調しておりまして、大変明確なんです。
そこで、防衛大臣にお聞きいたしますが、大臣は年末の記者会見でこのパキスタン情勢に触れて、テロ行為はいかなる手段を使ってでも抑えていかなくてはならないと述べられておりますが、このパキスタン領内での今議論されている米軍による攻撃についてはどうお考えでしょうか。
- 防衛大臣(石破茂君)
外務大臣が答弁なさいましたが、現時点でアメリカ合衆国がパキスタン領内において軍事作戦を行う計画はない、そういうような旨を表明しているというふうに私どもとしては承知をしております。したがいまして、なかなか委員の御質問、仮定のことに日本政府としてお答えするのは困難かと存じます。
- 井上哲士君
この間、アメリカは繰り返しいろんなことを表明をしております。例えば、去年の七月にアメリカのタウンゼント大統領補佐官は、アルカイダがパキスタンに拠点を設けている問題でアメリカは軍事行動に出るのかと聞かれた際に、どのような手段も排除していないというふうに言って領内攻撃の否定をしておりません。それから、ダグラス・ルート・アメリカ統合参謀本部作戦部長、これも昨年の三月の上院軍事委員会での証言で、米軍によるパキスタン領内の敵対勢力に対する攻撃について条件に合っていればパキスタン当局の承認を得ずに攻撃できるということを明らかにしております。
これまで政府、先ほどの答弁ありました、当初は自衛権の行使だったけれども、カルザイ政権誕生後は政府の同意による治安維持活動の一環としてやっていると、これはアメリカも同じ考えだと言われました。じゃ、なぜパキスタンの場合は政府の承認なしに領域内の攻撃が可能になるのか、外務大臣、いかがでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
アメリカの人がどう言ったか、なぜかと私に聞かれても困るわけでありますが、一般論を申し上げますと、一般国際法上、軍隊が他国の領域内で活動することは、当該国の同意があれば可能であると。当該国の同意なく軍隊が活動することは、当該国の領域主権との関係で当然に行い得る行為ではありませんと。ですから、いろいろな条件が整えば別ですが、一般論とすれば領域国の同意がないと当然に行い得る行為ではないと、こういうことでございます。
- 井上哲士君
一般論と言われました。現実にはいろんな発言がアメリカの国会の中でも行われているわけですね。
先ほど紹介したこの上院の委員会で、国境を越えて追撃を行う場合に我々はパキスタン政府の承認を得なければならないのかという議員の質問に対しまして、ルート中将は答えはノーだと明確に答弁をしております。その判断は現場の司令官を代表して行われると。要するに、継続的な行為の場合は国境を越えた追撃に必要なあらゆる権限、つまり発砲も地上追跡の権限も持つことになるんだと、こういうふうに言っているんですよ。
一般論ではなく、それじゃこういうふうに国境を越えた追撃の場合に当該国の同意もなしにやるということは可能だと、こういうお考えでしょうか。──登録していない、登録していない。
- 外交防衛委員会委員長(北澤俊美君)
登録がないんだそうです、外務大臣。
高村外務大臣。
- 外務大臣(高村正彦君)
一般論として先ほど申し上げたことを繰り返す以外にないわけでありますが、具体的なこととなるとそれぞれの状況によっていろいろあり得ますので、何とも具体的な状況、追撃する場合はいいとか悪いとか、そのくらいの条件でイエスとかノーとか私が申し上げるだけの勇気はございません。
- 井上哲士君
先ほど言いましたように、アフガン国内での武力を使う場合はアフガニスタン政府の同意が必要だと。しかし、それを追撃しているうちにパキスタンに入ったらこれは同意は必要なくなるということであれば、正に御都合主義ということになるわけでありまして、正に主権の侵害ということになるわけです。
これは、単に架空の問題ではないんですね。これまでも越境攻撃というのは度々問題化をしております。
例えば、これは去年の一月ですけれども、アメリカがアルカイダの幹部をねらってパキスタン領内を無人飛行機で攻撃をして、女性や子供など十八人が犠牲になったという事件がありました。これはパキスタン政府が公式に抗議をしております。昨年十一月に、パキスタンのアジズ外務大臣は、テロとの戦いは共同で進めるべきであって、いかなる国によるものであれ、主権の侵害は認めないというふうにはっきりと言っているわけですね。
先日、私、レバノンについて聞いたときに、レバノンでのイスラエルの攻撃というのはレバノン政府の全く同意のない行為であって、これは我々国際社会の一員として当然口を出してしかるべき問題だというふうに大臣は答弁をされました。であれば、こういうパキスタンの政府も明確に抗議をしている、同意をしていないということが行われている場合に、これは当然日本としてこれはおかしいということを口を出すべき問題ではないでしょうか。
- 国務大臣(高村正彦君)
先ほどから一般論については申し上げたとおりであります。
具体的な、いつどういうことがあって、どう抗議したというのは、通告がありませんでしたので、私、調べておりませんので、今何とも申し上げられませんが、主権国家がそれを問題にし、国際場裏に持ち出すのであれば、日本もそれなりの答えを用意してしかるべきかと思います。
- 井上哲士君
正に、一般論でなく具体的な事件が起きているわけでありまして、私はやはりこういうような対テロ戦争と言えばどんな無法もあっても許されるようなやり方がアフガンの国内でも様々な怒りを呼び、その結果、やはり選挙で選ばれたカルザイ政権の基盤さえ危うくしていると思います。こういう手法が広がれば大変なことになるわけで、こういうことは許してはならないと思います。
対テロ戦争の中身というものをよく検証することを強く求めまして、質問を終わります。
〈午後の総理質疑〉
- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
私たちは、この新テロ特措法案は、アメリカの対テロ戦争に加担をし、インド洋に海上自衛隊を派遣してアフガンでの掃討作戦を行っているアメリカ等への給油を行う憲法違反の法案として廃案を求めてまいりました。戦争でテロをなくせません。テロの根絶にも逆行する法案はやめるべきだと主張してまいりました。
ところが、総理は、安倍総理が辞める直前に行ったアメリカ・ブッシュ政権への誓約を踏襲をして、そしてこの法案を至上命題として国会の会期を二度にわたって延長をされました。
しかし、世論はどうかと。十二月の日経の調査では、給油活動再開反対は四四%、賛成は三九%です。同じく毎日は、自衛隊の給油はこのまま中止が五〇%、再開すべきは四一%です。例えば毎日の調査を見ますと、このまま中止というのは、九月は四二%、十月四三%、そして十二月は五〇%と増えていっているんです。審議をする中でむしろ反対の声が増えていったというのが、どの世論調査にもほぼ共通をする特徴になっています。
総理は一貫して国民の理解と協力が必要だと答弁をしてこられましたけれども、この世論調査の結果を見て、国民の理解と協力が得られていると、こういうふうな認識でしょうか。
- 内閣総理大臣(福田康夫君)
まあ世論調査もいろいろございますよね。しかし、まあ全体見まして一つ言えることは、この法案を提出したころに比べて今随分理解が進んでいるというように思っております。ですから、そういう観点からすれば、私は国民の理解が進んだ、そしてまた同時に、この活動自身が、何も、アメリカ、アメリカとおっしゃるけど、アメリカのためにだけやっているわけじゃないんですね。国際社会全体を考えてこの活動をしていると、こういうふうな理解が進んでいるんだというふうに思っております。
- 井上哲士君
総理は就任以来、国民の目線でということを言われていましたけれども、今の答弁から私は国民の目線というのを感じることができないんですね。どの世論調査もやはり共通してこういうことが出ているというのは大変重要だと思うんです。
この間、むしろテロが各国で増えております。やっぱり対テロ戦争というやり方ではなくならないんじゃないかということを国民も思っていると思うんですね。それから、先日も石破大臣自身が率直に審議で言われておりましたけれども、防衛利権にかかわって油を出すよりうみを出せ、国民が原油高騰で苦しんでいるときになぜただで出すのと、こういうのがやはり国民の中にあるんだということを率直に認めておられました。
私は、総理は就任後、訪米をして給油活動の再開をブッシュ大統領に約束をしてきたわけですけれども、こういう国民の反対の声が現に多く、そしてこういういろんな様々な生の声が出ているにもかかわらずこの法案に固執をするというのは、これはもう国民の目線というよりもアメリカの目線優先だと言わざるを得ないと思うんですけれども、総理、いかがですか。
- 内閣総理大臣(福田康夫君)
だから、先ほども申し上げたでしょう。アメリカ、アメリカと言って、アメリカしかないんですか、外国に。そうじゃないでしょう、ほかにもたくさんあるんですね。全体を考えてやっているわけでありまして、何もアメリカにお約束したとか、その話だけじゃないんですよ。国際社会に対するお約束だというふうに言う方が適当だと思います。
- 井上哲士君
私は、現にこういう国民の反対の声がむしろ広がっている、こういう状況がある中で、実際に総理自身が就任して直ちにアメリカに行ってブッシュ大統領に約束をしてこられた、そのことを優先させているんじゃないかということを、その政治姿勢を申し上げているんです。
そして、じゃ政府が今ごり押しをしようとしているこの法案が本当にテロ根絶に役立つのかと。アフガンの現状が今本当に何を求めているかということを真剣に検討をされなくてはならないということを私たちは繰り返し追及をしてまいりました。
カルザイの政権はテロのネットワークに加わらないタリバンとの交渉による和平の道を踏み出しておりますし、アフガンの上院が和平を進めるためにも空爆の中止を求める決議を上げてきたということは委員会でも繰り返し紹介をしてまいりました。衆議院の委員会で総理は、この平和と和解のプロセスが始まっていることは重要だ、我が国としても支援をしていきたいという答弁をされているわけでありますが、では、こういう新しいアフガンで状況が生まれているという下で日本としてどういう和解プロセスへの具体的な支援をされようとしているんでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
最近もカルザイ大統領はテロリストと関連のない勢力との間で平和、和解プロセスを推進していく決意を表明しているのは委員がおっしゃったとおりでございます。我が国もアフガン社会における和解が進展することを期待しているわけであります。こうしたプロセスが確たるものとなるようにDIAGなど進めて側面支援を行っているところであります。
現地は極めて複雑な情勢でありますから、和解プロセスそのものの仲介などの支援は現時点では容易でないことだと、こう思っております。アフガニスタン政府の努力の傾向も見極めつつ検討する必要があると、こういうふうに思います。
- 井上哲士君
私は、今アフガンの中での和解の一番の桎梏は、現実にやはりアメリカなどがタリバン全体を掃討の対象にした様々な空爆などを現に進めている、和解すると言いながら一方でそういうことを行っていると、これが一番の問題だと思うんですね。むしろ、今一番肝心なことは、こういう和平のプロセスに逆行するような掃討作戦が並行して進められている、これむしろ中止を求めることが必要だと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。──総理、総理、総理。
- 内閣総理大臣(福田康夫君)
和平プロセスが進行することを願っておりますけれども、現実にそうでないという事実もあるわけでございまして、しかしそれでは、だからといって、じゃ例えばISAFは引き揚げてしまうとか洋上の活動は止まってしまうというようなことになって、それ、だれが利益するんですか。今間違いなくアフガニスタンは改善の方向に向かっているんじゃないですか、アフガニスタン社会は。そう思いませんか。経済も良くなった、そして国民が自由を得られているんですよ。国民が自由を得られているんですよ。自由な社会になっているんですよ。そういう事実に目をつぶって、ただ、あれが悪い、これが悪いというような言い方でもって、それで前向きな対応というふうに言えるかどうか、私は大変疑問に思っております。
この状況というのはしばらく続くかもしれない。しかし、そこは粘り強く活動を続けていく、国際社会の協調した活動を続けていくということが正しいと私は思っております。
- 井上哲士君
軍事掃討作戦中心の今の在り方をあくまでも擁護される答弁だったと思うんですね。
しかし、アフガンでそういう上院の決議が上がったにもかかわらず、ブッシュ政権もこの掃討作戦中心のアフガン戦略を変えようとしておりません。そして、NATOにはもっと軍事力を増強しなさいということを求めています。しかし、各国はこの部隊増強要求にはこたえていないんですね。そして、むしろ戦略の見直しというのは派兵している国からも起こっております。
イギリスのブラウン首相は、十二月の十二日の下院の質疑で、反政府勢力の壊滅を目指した軍事中心の手法から、アフガン政府と反政府組織との対話を通じて和解を促進させる戦略に重点を移していくと、こういう考え方を表明しました。それから、オーストラリアで新しい政権ができましたけれども、そのフィッツギボン国防大臣、これも十二月に開かれたNATO等の会議でアフガンの軍事作戦について大幅な方向転換をしない限り敗北するおそれがあると、こういう発言をしています。そして、我々には軍事的な対応以上のものが求められている、それは主にタリバンの穏健派やアフガン社会の他の勢力の心を取り込むことだと、こういうことも言われているわけですね。
総理、派兵している国々からもアフガン戦略の見直し、この声が広がっているということについて総理はどういう認識をお持ちでしょうか。総理、総理お願いします。
- 外交防衛委員会委員長(北澤俊美君)
高村外務大臣。
- 井上哲士君
総理、総理お願いします、総理。外務大臣は一遍委員会で聞きましたから、総理。外務大臣は……。
- 外務大臣(高村正彦君)
今委員長から指名がありましたので、お答えをさせていただきます。
今委員がおっしゃったブラウン首相の演説要旨の中に、同じ演説の中で、現在のアフガニスタンにおける英軍兵力の水準を今後も維持していくという言葉がはっきり入っているわけであります。それから、豪州でありますが、ラッド豪首相の発言要旨の中にも、豪州は、長期的な目的のためアフガニスタンにとどまることを約束しNATO諸国に同様の立場を取ることを求めると、こういうことも言っているわけであります。
それぞれ各国は、アフガニスタン内外の情報を踏まえながら、自らが行う貢献については、日本もそうでありますけど絶えず検討をしているわけであります。ただ、アフガニスタンの治安を回復させ、国づくりや復興を引き続いて支援していくとの基本姿勢に変化はないと、こう認識をしております。
我が国としても、テロ発生を助長する貧困等の除去や国際テロリズムの防止、根絶のために粘り強くアフガニスタンへの取組を続けていく考えでございます。
- 井上哲士君
私は、既に派兵をしている国の中でも様々な見直しの議論が出てきているということを申し上げました。そういう中で、日本が国民の世論でいったん引き揚げたものをもう一回出すということを今やるということはやるべきでないと思うんです。
しかも、これはアメリカの国内でも様々な変化が生まれております。今大統領選挙が行われていますけれども、ブッシュ政権の対中東政策への批判は非常に大きく広がっております。見直しの世論が高まっておりまして、だから世界でもアメリカの国内でも、そしてこの軍事中心のやり方、見直しが広がっているというときに、日本がいったん引いたものをまた出すという方向というのは、これは正に逆行じゃないかと。こういうブッシュ政権のやり方にアメリカ国内でも批判が出ているときに、ひたすら追随するようなやり方はやはりやめて、軍事掃討作戦ではなくて平和の外交、平和プロセスの推進の外交に力を注ぐべきでないかと。
もう一度総理から答弁をいただきたいと思います。──総理、総理。
- 内閣総理大臣(福田康夫君)
何か誤解されていますよね。追随じゃないんですよ、別に。自発的に自主的に判断をして行う行動であるということなんですね。
陸上でも我が国の文民で活躍している方はたくさんいらっしゃるんですよ。ですから、そういう方々は大変危険なことを承知の上で、しかし経験豊富な方々だからできるわけであって、だれもが行ってできるという話じゃないんですけど、そういうふうな活動もしておりますし、日本はそういう方々を守るという立場の活動は洋上からもできるんじゃないかというように思っています。洋上でもってテロリストがうようよできるような状況になったら、また逆に海からテロリストが入ってくるという機会も与えるわけですから、むしろ陸上における活動が危険にさらされると。分かるでしょう、そういうことは。お分かりでしょう。
そういうことを総合的に考えて、我々はこの活動は続けたいというふうに申し上げているんです。
- 井上哲士君
その国民世論が、先ほど示しましたように反対が多数でありますし、派遣国でも様々な見直し、戦略見直しの声が広がっている、アメリカの国内でもブッシュ政権のやり方はこれでいいのかという声が広がっている。にもかかわらず、これをやろうとするのを、これを私は追随と言っておりますし、国民の多くの皆さんもそういう思いで見ていらっしゃると思うんですね。
今問われていますのは、自衛隊をどう出すのかじゃなくて和平プロセスの支援をどうするかということだと思うんですね。民主党案も出ておりますが、和平への支援を強調はしますけれども、しかし政府が海上自衛隊を出すのに対して陸上自衛隊をアフガン本土に出すという点では、やはり和平の流れとは相入れないのではないかと私たちは思っております。
いずれにしましても、今これだけ国民が灯油問題でも本当に苦しんでいるときに、このテロ根絶に役立たないような給油活動を再開をしてアメリカへただで給油する、本当に多くの国民の怒りは上がっています。だからこそ、給油再開には反対だという世論の声が多数なんです。
参議院はこの法案を否決をするでしょう。総理、本当に国民の目線に立つということであるならば、この国民の声にこそこたえて再議決のような暴挙は絶対行うべきでないと、そのことを強く申し上げまして、質問を終わります。
〈反対討論〉
- 井上哲士君
私は、日本共産党を代表して、政府提出の新テロ特措法案に反対、民主党対案にも反対の討論を行います。
新テロ特措法は、海上自衛隊をインド洋に派遣し、アメリカの報復戦争支援を再開するものであり、断じて許されません。政府は自衛隊による補給は海上阻止活動に限定すると言ってきましたが、これまでの審議で、アフガニスタンやイラクへの空爆を含むあらゆる米軍の軍事活動をこれまでどおり支援することになるのは明らかであります。憲法違反の本法案はきっぱり否決し、廃案にすべきであります。
戦争でテロをなくせないことは今や明らかであります。今、日本がなすべきは和平のための外交努力であります。アフガニスタンでは、カルザイ大統領自身が空爆に反対し、タリバンを含む武装勢力との交渉による平和と和解のプロセスに踏み出しています。いまだにアメリカが軍事力による打開に固執している中で、軍隊を派遣してきたアメリカの同盟国でも重要な変化が起こっています。イギリスのブラウン首相は、力でねじ伏せる手法は限界だとして、軍事中心の手法から和解を促進させる戦略に重点を移そうとしています。オーストラリアの国防相も大幅な方向転換の必要性を強調しています。
こうした下で、多くの世論調査で自衛隊派遣に反対が賛成を上回っています。総理は国民の理解を得てと言ってきましたが、審議をすればするほど反対の声が高まっているのが実態であります。本法案は、アフガニスタンの現実、国際社会の変化、国民多数の声に真っ向から反するものであり、どこから見ても道理はありません。アメリカ言いなりで軍事支援に固執することはやめ、廃案にすることを強く主張するものであります。
また、民主党案は、和平支援を言いながら、武器使用を拡大してアフガニスタン本土に陸上自衛隊を派遣するものであり、その上、海外派兵恒久法の早期整備を明記をしております。憲法違反は明白であり、反対であります。
最後に、今、国会がなすべきことは日米軍事利権の徹底解明であります。兵器調達、米軍再編、ミサイル防衛など守屋防衛事務次官の下で進められてきた防衛政策の根幹が腐敗まみれなのであります。この解明抜きに海外派兵を進めるなどはもってのほかであります。
以上、討論を終わります。
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