2009年4月16日(木)
外交防衛委員会
- 沖縄米軍グアム移転協定は、アメリカの負担額が明記されておらず、米議会の承認も求めない一方で、日本の負担だけが義務化されていることについてただした。
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
米国の領土内にある米国の基地のために外国政府が財政を出動すると、これ自体が極めて前代未聞のことであります。しかも、協定を見て私は非常に驚いたんですが、今回の協定には、日本の支出二十八億ドルのみ明記をされて、アメリカ側の拠出の金額は明記をされておりません。これは一体なぜでしょうか。
- 外務大臣(中曽根弘文君)
この協定におきまして、いわゆる真水事業に対します日本側の提供する資金につきましては、支出の上限を定めるために二十八億ドル、上限二十八億ドルと明記されているものでございます。他方、米側の資金の拠出額につきましては、これは日米間の交渉を通じまして、グアム移転事業の実施に必要となる費用の残額をすべて米側が負担すると、そういうことになっておるわけでございまして、そういうところからこの米側の具体的な金額については明記をしなかったものでございます。
以上の点につきましては、この協定の前文におきましても、ロードマップに記載されておりますとおり、米国がグアムへの移転のための施設及び基盤の整備に係る費用の残額を拠出することを日米両政府として再確認をしているところでございます。
いずれにいたしましても、この第二条におきまして、米国政府は移転のために必要な措置をとるということが二条で明記されているわけでありまして、米国側が所要の財政負担を行うということは、これは明らかなところでございます。
- 井上哲士君
確認しますが、このロードマップで日米政府が合意した金額をアメリカが必ず支出をするという担保はどこにあるんでしょうか。
- 外務大臣(中曽根弘文君)
二〇〇六年五月のこのロードマップにおきまして、二〇一四年までにこの沖縄にあります海兵隊のグアム移転を実現するということをロードマップで合意しているわけでありますが、その後、首脳を含めました様々なレベルでこのロードマップの着実な実施を確認をしてきているところでございます。また、クリントン国務長官が訪日いたしました際にも、私との間で、今御審議いただいていますが、グアム協定に署名いたしたわけでございまして、これはもう本件のグアム移転事業、これの実施に対する明確なこれはコミットメント、これの表れであると、そういうふうに思っております。
実際米国側は、米国の2009会計年度におきましても既に本件のグアム移転事業に関連しまして必要な予算を得て、マスタープランの策定を含む所要の調査の検討のほか、環境影響評価それから米財務省勘定の設置などを着実に実施をしてきております。さらに、米側は2010米会計年度予算に本件のグアム移転事業のための資金を計上すべく現在予算の案を作成中であると、そういうふうに承知をしております。
したがいまして、米国といたしましても、二〇一四年までにグアム移転を実現するためにこのグアム移転事業に対して資金の拠出を行うということに対して明確なコミットをしていると、そういうふうに考えております。
- 井上哲士君
協定上どこに担保があるのか、今の答弁で私には分かりませんでした。
ロードマップでは日本の真水支援を二十八億ドルと定めた上で、米国は施設及びインフラの整備費の残りを負担し、それが財政支出三十一・八億ドルと道路のための十億ドルから成ると、こうなっているわけですね。大臣も答弁されましたように、アメリカが負担するのは日本が負担した残りの部分という、こういう位置付けになっているわけで、全体額がどうなるんだろうかという下で、果たしてアメリカが合意した金額を払うことになるんだろうかということは、大変私は疑問なんです。
しかも、今回の協定はアメリカ議会に承認を求めないということになっているわけですね。衆議院の議論を見ておりますと、梅本局長の答弁で、米議会は、できるだけ米国の負担を下げよう、同盟国の負担を求めるという姿勢が非常に強いという一般的な傾向がある中で、米政府が今回の協定について議会の承認を求めない行政協定というふうにしていると私どもは理解しておりますと、
こういう答弁がございました。
これ非常に驚いたんですが、日本の議会はあれですか、負担を下げようという姿勢がアメリカに比べて弱い
ということだからこういう協定にしたんですか。
- 外務省北米局長(梅本和義君)
私は、まず米国議会の一般的傾向について御説明をしたということでございまして、それと本協定が日本で国会承認を求めるということとの関係について御説明をしたわけではございません。
- 井上哲士君
しかし、議会にかけたらば、できるだけ負担を下げようという傾向があるということを、今回のアメリカが行政協定というふうにして議会の承認を求めないという理由として挙げられたわけじゃないですか。そういうことじゃないんですか。
- 外務省北米局長(梅本和義君)
私の御説明は、まずアメリカがこの協定を議会承認の協定とするかどうか、これはまさにアメリカの立法府と行政府の関係であり、これはアメリカが判断すべき事項であるということを御説明をしたわけでございます。さらに、その上でアメリカの議会の一般的な傾向について別途これを御説明したということでございました。
- 井上哲士君
別途じゃないんですよ。米政府が今回の協定について議会の承認を求めない行政協定というふうにしている、その言わば理由としてこのことを挙げられているんですね。
そして、しかも、議会にかけたら削減をされるんじゃないかということだけではありませんで、昨年の九月に出されたアメリカ政府監査院、GAOでもこう述べています。国防総省は、すべての財政需要を特定しておらず、省内での優先順位の競争を前提とする資金獲得において困難に直面するかもしれないと、この事業についてこういう指摘をしているわけですね。ですから、議会の方も削減するという傾向があると。監査院も国防総省の中での競争で困難があるんじゃないかと、こういう指摘をしているわけですね。
ですから、そういう状況があるにもかかわらず、アメリカ側だけは支出の金額も明記されない、議会にはかけられない。つまり、アメリカ側の負担というのは極めて不透明であるにもかかわらず、日本の負担の責任だけは明記をされる、財布はしっかり日本だけが握られると、こういうことになるわけですね。一体どこの国の基地の建設事業なのかと非常に私は疑問に思うんですが、大臣、いかがですか、これは。
- 外務省北米局長(梅本和義君)
先に、委員長。
私が申し上げたことは、米国議会の一般的傾向でございます。これはもうもちろん日本においても同じでございまして、私どもも同じ目的を達成するためにはできるだけ効率的に小さいコストでやりたいということで、二十一年度予算につきましても、これは防衛省の方で要求をされ、精査をして、財政当局と調整をして、予算に計上して御承認をいただいたわけでございますが、できるだけコストは効率的にやりたい。アメリカについてもまさに同じでございます。そのことを御説明したわけでございまして、米国議会にかけるかどうか、これはアメリカがアメリカの立法府と行政府の関係を考えてこれは判断をすべき事項であるということでございます。
- 井上哲士君
大臣。
- 外務大臣(中曽根弘文君)
今参考人からも答弁申し上げましたけれども、この協定の第二条では、米国政府がこの海兵隊のグアム移転に係る事業に対しまして資金の拠出を行うことを義務付けているものでございまして、その予算措置の時期とか資金拠出の対応についてはそこまで決めているものではありませんが、いずれにいたしましても、日米両国政府のハイレベルにおいてこれは合意をしているものでありまして、そのような懸念というものはないと私は考えております。
- 井上哲士君
時間ですので終わりますが、元々ロードマップで日米両国政府が合意していた、それに対して今回協定をしたわけで、その中で日本だけが金額が明記をされ、日本だけが議会承認をし、向こうはしないと。一体それで果たしてアメリカが本当に出すのかどうか全く不明確。こういうのは本当に対等の国同士の協定としては認められないと思います。
以上で終わります。
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