ブッシュ政権、ブッシュ前大統領のアジア政策の成功というのは、要するに中国との関係をこじらせなかったということであるというふうに考えます。
ずっと、一方で経済的な台頭、そして軍事的な台頭がある中で、ほかの地域、他地域でブッシュ政権が、ブッシュ大統領が見せたような傾向を見せるならば中国との関係というのはもっと軍事的な緊張が高まっていたであろうけれども、それができなかった、しなかったわけですね。それはもちろん、ほかのところに、中東に関心を向けている、あるいは中国との関係で、経済的な関係で相互依存が強まっていったこともあるでしょう。そして、結果として米中関係というものがはるかに、九〇年代よりもはるかに近くなっている。
もちろん、中国とアメリカが完全に一致しているわけでは全然ございませんから同盟関係になるわけではないにしろ、十年前、十五年前と比べて米中間の関係というのははるかに変わっているのだということ、それがあのブッシュ大統領が中国との関係を軍事的な緊張を高める方向に持っていかなかったということでうかがえるのではないかと思います。そういう環境であるということを念頭に沖縄のことも考えた方がよいのではないかというのが私の考えです。
日米間をどうするのかということなんですが、例えば、イラク戦争のときにドイツとフランスが反対をする、それに対してアメリカ国内で非常に強力な反フランスの世論が高まってというようなことがございました、フレンチフライというポテトフライの名前を変えるみたいなことがありまして。
ただ、結果から考えてみたときに、ドイツとフランスの忠告を聞いていた方がブッシュ大統領あるいはアメリカそのものにとって本当は良かったのではないかと。要するに、何がアメリカにとって良いことなのか。善かれと思って、要するに、ブッシュ政権に一緒に付いていくことが本当はアメリカをがけから落としたことになったのではないかと自分は考えます。
そこで、本当は、同盟国として、一番近い同盟国の一つとして日本が助言をすること、あるいはそういう関係になることの方がアメリカにとって実は生産的だったのではないかと自分は思います。もしもフランスとドイツに合わせて日本がちょっと待った方がいいんじゃないかということを言っていたときに、やはりこれは重みが違ったんじゃないかと思うんです。
ですから、同盟関係を維持するということは、アメリカがやることにとにかく追従していくことではないだろうし、それはけんかすることでもないし決裂することでもないし、何というんですか、名誉ある孤立をするわけでも全然ない、ただ言うべきことを言う、言わなきゃいけないことは言う関係に持っていかなきゃしようがないだろう。
その上で、このグアム移転協定が様々な問題が指摘されている中でこれを結んでしまって、これをやるんですということを示すことでアメリカに保険料を払うという、そういうやり方はもうやめた方がいいだろうと私は考えます。