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2009年5月12日(火)

外交防衛委員会(午後の質疑・討論・採決)

  • 沖縄米軍のグアム移転協定の質疑・討論・採決

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 アメリカの国防総省が七日に二〇一〇年度予算案を議会に提出をしました。その概算説明を見ますと、日本側が負担をする在日米軍再編費用の総額が推計で二百億ドルから三百億ドル、二兆円から三兆円に上るということが明記をされました。日本政府は、グアム移転費の六十一億ドルに加えて、普天間基地に代わる新基地の建設費が三千五百億円以上に上るということは最近明らかにしましたが、これ以外はこの再編経費全体については明らかにしておりません。

 今回、アメリカ側がこういう明記をしたわけでありますけれども、こういう数字で間違いないということでよろしいでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 御指摘の、米国防省が二〇一〇米会計年度の予算説明資料において日本が負担する再編経費の総額の見積りが二百億ドルから三百億ドルに上がるかもしれない旨を表記していることは承知をしております。

 他方、これまで累次申し上げておりますとおり、米軍再編措置については、嘉手納飛行場以南の土地の返還などその内容について引き続き日米両政府の間で検討中のものや、具体的な施設の使用や配置といった詳細な内容について日米両政府の間あるいは地元との間で調整中のものがあることから、これに伴う日本側の経費負担の総額については現時点では申し上げる段階にありません。引き続き厳しい財政事情を踏まえて鋭意検討を進めて、所要の経費を精査してまいりたいというふうに思っているところでございます。

井上哲士君

 これに限らず、アメリカ側が明らかにしているものにもかかわらず日本では明らかにしないというものがたくさんあるわけですね。私はこういう態度は改めていただきたいと思います。

 さらに、この二〇一〇年度予算案で、在沖縄海兵隊のグアム移転の事業費として初めて三億七千八百万ドルが要求をされました。先ほど来答弁で、これはオバマ政権の協定へのコミットメントだというふうに言われているんですが、ただ、昨年末の原案では四億三千五百万ドルを予定していたけれども、経済危機のあおりで大幅に削られたものだと報道もされております。

 さらに、この予算案が提出をされるに先立ちまして、五月の六日にアメリカの下院の歳出委員会の軍事建設小委員会の公聴会でコンウェー海兵隊の司令官が証言に立っています。この中で、このグアムの移転計画が、国防省の進める四年ごとの国防計画、いわゆるQDRで再検討されるという見通しを示しておりますが、このQDRに伴うグアムの移転計画の再検討について外務省としてはどのように承知されているでしょうか。大臣、大臣にお願いします。

外務大臣(中曽根弘文君)

 これは、コンウェー米海兵隊の司令官が、今委員がおっしゃいましたように下院の歳出委員会において、在沖縄海兵隊のグアム移転に関して、インフラや訓練機会といったすべてのことを考慮すれば米側の負担は現在の試算額よりも大きなものになると考える、それから、確定しているタイムラインに間に合わせることができないのではないかと既に懸念している、また、我々、我々というのは海兵隊ですが、我々としてこれらの懸念を念頭に四年ごとの国防計画の見直し、QDRでございますが、これに非常に強く関与していくことを私は保障する、そういう旨の発言を行ったと、そういうふうに承知をいたしております。

 しかしながら、これまでの本件事業、この移転事業に係る米国政府と我が国政府との協議におきましては、政府は米国政府からは、在沖縄海兵隊のグアム移転に係る経費が増大するということや、また二〇一四年までの移転の期限が守れないといった、そういう説明を受けたことはございません。

 また、政府は念のために、今回のコンウェー米海兵隊司令官の発言に関しまして外交ルートを通じて米側に対して確認をしているわけでありますが、その確認の一点は、米国防省は米海兵隊を沖縄からグアムへ移転する再編に引き続きコミットをしているということと、それからもう一点は、米海兵隊のグアム移転に関しては、四年ごとの国防計画の見直し、QDR、この見直しはアジア太平洋地域における訓練上の所要を対象としているものであって、海兵隊移転の決定の再考を行うものではないと、そういう点を米側に確認をしているところでございます。

 政府といたしましては、米国政府とともに引き続いてロードマップに従ってこのグアム移転を着実に実施していきたいと考えています。

井上哲士君

 コンウェー証言について今答弁がありましたが、この見積りが、当初の見積りでははるかに不足だということを言った上で、じゃ二〇一〇会計年度予算要求がこういうコスト増を反映しているのかという質問に対して、これは予算要求が出る前の証言でしたから、その後出た予算について、この金額は議論をしてQDRが出るまでのものになると思うと、こういう発言をしております。そして、国防総省は国家の条約や取決めなど優先して資金を充てる必要のあるものと併せて決定しなければならないと言った上で、実際のコストは後続年度、つまり来年度以降になると、正直申し上げて二〇一〇会計年度においては我々をあれこれと固定するようなことは何もなされないと、こういう発言をしております。つまり、今年度予算というのは取りあえずのものであって、このQDRにおけるグアム移転の見直しによって変わり得るという、それまでのものしか計上していないという証言なんですね。

 この間何度も指摘してきましたけれども、日本の方は従来計画を前提に負担額が決められると、そしてアメリカ側はその金額はなく、しかも議会の承認は得ないと。先ほど、これは双務協定というのはいろいろあって、アメリカ側が議会承認を得ないものもあるんだというようなお話もありましたけれども、これはアメリカの国土にあるアメリカの基地を造るというアメリカの事業なんですね。にもかかわらず日本だけがこういうふうになっているというのは、やっぱり私はこの経過を見ても余りにも異常だと思いますけれども、いかがでしょうか。

外務省北米局長(梅本和義君)

 米議会の証言において、今、いろいろやり取りがあったという御紹介がございましたけれども、アメリカの予算のプロセスというのはかなり長いプロセスでございますので、これから行政府と議会の関係でいろいろな協議が行われ、そのうち最終的に予算というものが決定されていくだろうというふうに思っておりますが、私ども、いずれにしても、現政権が日本側と約束をしてグアム移転を進めるということについてきちんと約束を守っていく、着実に進めていくんだという意思を持っているというふうに考えております。

 それから、確かにコストについても、ロードマップのときのコストの試算というものはあるわけでございますが、それ以来、マスタープランを策定をしたり、いろいろな検討というのは進んでいくわけでございます。そういう中でコストについても、いろいろな当初考えていなかったような要素ということから、試算額からずれてくるということはもちろん可能性としては排除されないわけでありますけれども、これも累次御答弁申し上げているとおり、日本側の本協定の下での負担というのは二〇〇八会計年度ドルで二十八億ドルを限度とするということでございまして、その残余についてはアメリカ側が負担をする、アメリカ側はグアムにおける施設基盤を整備する同政府の事業への資金の拠出を含む移転のために必要な措置をとるんだということを決めているということでございます。

井上哲士君

 そのアメリカ側の負担が極めて不透明であるということを先ほど来申し上げているんですが。

 じゃ、日本がこういう、今再検討が言われる中で負担をさせられる中身はどうなのかということなんですが、まず、これまで沖縄の米軍向けに日本が建設している家族住宅というのは何戸なのか、そのうち海兵隊向けは何戸なのか、いかがでしょうか。

防衛省地方協力局長(井上源三君)

 提供施設整備によります現在の沖縄の米軍の家族住宅の総戸数は約三千五百戸でございます。このうち、在沖米海兵隊施設・区域におきます家族住宅の戸数は約二千二百戸でございます。

井上哲士君

 日本の負担でグアムに造られる家族住宅というのは三千五百戸ということが言われているわけですね。沖縄からグアムに移転する海兵隊の定員は、一万八千のうち半分以下の八千人だということなんですね。

 にもかかわらず、今答弁がありましたように、これまで造っているのは二千二百戸なのに、現在沖縄にあるこの二千二百戸をはるかに上回る三千五百戸という戸数をグアムに建てる。なぜこんなことになるんでしょうか。

防衛副大臣(北村誠吾君)

 在沖米海兵隊のグアム移転に関し日本の分担で整備することとなる家族住宅の所要数につきましては、現時点で結論が出ておるわけではございません。引き続き日米間で協議を行っているというところでございます。

 なお、御指摘の三千五百戸程度につきましては、あくまでもロードマップ合意時におきましてアメリカ側の見積りであると。今後、所要の数字につきましては、日本の分担する事業は在沖米海兵隊の沖縄からグアムへ移転に伴う所要の増大に対応するものとの考えに基づいて、日米間の協議等を通じて更に具体化してまいります。

 他方、委員御指摘の二千二百戸につきましては、あくまで我が国による提供施設整備によって在沖米海兵隊施設及び区域に整備された家族住宅のみの数字でございます。在日米軍自らが整備した家族住宅や在沖米海兵隊の施設・区域外に米軍人が居住する家族住宅といったものは含まれておりません。在沖米海兵隊用とされる家族住宅の全戸数を示すものではないと我々は認識しております。

 いずれにせよ、家族住宅の所要数や必要な経費につきましては、引き続き日米間で協議を行い、日本の分担に係る出資、融資等が償還されるようしかるべく精査した上で予算を計上し、国会での御審議を賜りたいと、かように考えております。

井上哲士君

 三年前からこの数を言い続けて、何も変わっていないんですよ。そして、そもそもアメリカの見積りが余りにも過大な数、それがずっと三年間一緒なんです。

 そして今、例えば基地外居住のことも言われましたけれども、全国的に日本が提供した住宅の約二割は空き家です。そして、基地外居住は沖縄でいいますと三割弱ですから、それ加味したって大きな数にならないんですよ。だから、余りにもやっぱり三千五百という数は過大な見積りだと言わざるを得ないんですね。そして、アメリカはこの間、海兵隊の増強を絶えず言っておりますし、オバマ大統領も二万七千人の増員ということを言っておりますが、これは当然グアムの海兵隊の定員にも影響します。先ほどコンウェー司令官の議会証言でも、海兵隊員約八千人から一万人がグアムに移動するというふうに言っているわけですから、沖縄の定員八千名以外に二千人の海兵隊が移動することもあり得るということなわけですね。

 こういう、沖縄以外からグアムに移転をした海兵隊員の入居があり得ないということははっきり明言できますか。それができないという何か担保する仕組みがありますか。

防衛副大臣(北村誠吾君)

 日本の分担する事業につきましては、あくまでも在沖米海兵隊の沖縄からグアムへの移転に伴う所要の増大に対応するという考え方に基づいております。数次答弁しておるとおりでありまして、移転の所要に基づいて整備された施設の実際の活用のされ方につきましては、日本の分担に係る考え方を踏まえつつ、事業の効率的かつ効果的な実施の観点から、その必要性、合理性について今後さらに日米間の協議を通じて検討してまいります。

 いずれにせよ、日本の分担で整備することになる家族住宅の所要の数につきましては、引き続き、先ほど来申しますように日米間で協議を行い、日本政府としてしかるべく精査した上で予算を計上し国会へと、先ほどの答弁のとおりでございます。

井上哲士君

 つまり、日本の側から、ほかから来る関係部隊は入ってはいけないと、こういう条件をアメリカに提示しているんですか、していないんですか、はっきり答えてください。

防衛副大臣(北村誠吾君)

 先ほど答弁いたしましたように、日本の分担で整備することになる家族住宅の所要数等につきましては、引き続き日米間で協議を行わなければなりません。日本政府としてしかるべく精査した上で予算をこれから計上するということであります。

井上哲士君

 このアメリカ軍の配置というのはアメリカ自身が独自に決めることなんですね。ですから、いったん施設を建設すれば、日本がその使い方に口を挟むということは困難なんですよ。しかも、出融資を五十年で回収すると言いますけれども、五十年たったら国際情勢や米軍の編成はどうなっているかというのはだれにも分からないわけです。ですから、やっぱりアメリカの領土内のアメリカの基地建設に金を出すというこの前代未聞のやり方がこういう矛盾を生むわけですから、私はこういうやり方は中止をすべきだと強く申し上げまして、終わります。

反対討論

井上哲士君

 私は、日本共産党を代表して、在沖縄米海兵隊移転に係る日米協定に反対の討論を行います。

 反対理由の第一は、日本政府が本協定に基づいて実施しようとする米軍のグアム新基地建設に対する二十八億ドルもの財政支出に何の道理もないことです。

 日本の資金は在沖海兵隊のグアム移転に伴う施設等の整備に充てるとされますが、それらはすべて米国領内で行われる米軍の基地建設です。安保条約、地位協定に照らしても日本が経費負担を行う義務は全くないばかりか、世界中に広く展開する米軍の部隊が本国へ撤退するためにこれほど巨額の財政負担を条約まで結んで行おうとする国は、世界のどこを探しても日本の政府のほかにはありません。

 そもそも在沖縄米海兵隊のグアム移転は、米国が自らの軍事戦略に基づいて、陸軍、海軍、空軍、海兵隊の四軍の部隊をグアムに集め、戦力投射の拠点にする計画の中心を成すものであり、日本国憲法に照らせば財政的に関与すべきでないことは明らかです。日本政府がこのような前代未聞の経費負担に踏み出せば、今後における際限のない米軍への支援拡大の要求をも招きかねないことを強く指摘しなければなりません。

 反対理由の第二は、政府がグアム移転への財政支援を行う理由に挙げる沖縄の負担軽減論が全くのまやかしであることです。

 沖縄からグアムへ移転する八千人が実数ではなく定員数である上に、その定員数には縛りが掛けられないことが審議を通じて明白になりました。沖縄の基地は、米軍が世界で戦争をするために出入り自由の出撃基地として使用されてきました。本協定による措置は、その実態を何ら変えるものではなく、その下で起きてきた基地被害の根絶につながるものではありません。

 さらに、本協定は、多くの沖縄県民が反対する辺野古沖での海兵隊最新鋭基地の建設をパッケージとして明記しています。この計画が実施されれば、辺野古沿岸の海洋環境を始め、沖縄の貴重な自然環境を破壊するにとどまらず、周辺地域に新たな騒音被害や基地被害をもたらすことは必至であります。

 沖縄県民は長年、米軍基地が存在するがゆえの耐え難い苦しみを受け続け、日米両政府はそれを放置してきました。これ以上、米軍基地の強化、固定化を押し付けることは、基地の苦しみからの解放と平和を求める県民の願いを真っ向から踏みにじるものであり、断じて容認できるものではありません。

 そもそも沖縄の基地は、米占領下で、住民を排除し、銃剣とブルドーザーで奪った土地の上に築いたものであり、直ちに無条件ですべて返還するのが当然です。日本政府は、辺野古沖の新基地建設計画を直ちに中止し、その責任において普天間基地の即時無条件、全面返還を図るべきであります。

 以上申し上げて、討論を終わります。


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