2009年5月26日(火)
外交防衛委員会
- 防衛省設置法改正案で、国民監視で大問題になった情報保全隊について質問。その後討論、採決。
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
冒頭、昨日の北朝鮮の核実験について、国連安保理の決議にも、六か国協議の共同声明にも反するものであり、今核兵器廃絶への新しい機運が生まれつつある中に、それに逆行するものとして厳しく抗議の意を表明をしたいと思います。
その上で、まず法案でありますが、この法案は、「あたご」の衝突事件や前事務次官の収賄事件など、一連の不祥事を受けた防衛省改革として出されてきております。その中心は組織の改編なわけであります。しかし、防衛省はこれまで様々な不祥事のたびに組織改革をしてきましたけれども、不祥事が再発をしているということでありまして、今回の法案のどこにこの不祥事を再発させない担保があるのかということをまずお聞きしたいと思います。
- 防衛大臣(浜田靖一君)
先生から御指摘のように、一昨年より続く不祥事の防止をするため、防衛省改革会議の提言を真摯に実行していく必要があるというふうに我々認識しております。このため、昨年八月に取りまとめた防衛省改革の実現に向けての実施計画において示したとおり、必ずしも立法措置を要しない事項を含め様々な施策を実施をしておるところでございます。
今般の法改正においていえば、例えば防衛会議の設置によって幹部間のチェック機能が働くなど、不祥事を防止する上での必要な措置が講じられるものと考えているところであります。
- 井上哲士君
幹部間のチェック機能ということを今言われたわけですが、かつて調達本部事件が起きたときに調本を解体して装備本部をつくりました。それから、官製談合事件が起きたときは施設庁を解体して装備施設本部に組み込んだ、そして事務次官の下に置いたわけですが、その下で守屋事件が起きたわけで、むしろ癒着が防衛省全体に回ってしまったということの姿だったと私は思うんですね。
ここでも随分議論をしたわけでありますが、こういう事件の大きな背景にあった天下りを通じた癒着体制というものには引き続きメスが入っておりませんし、それから、昨年の「あたご」事件のときはあの「なだしお」の事件の教訓が生かされていないということも随分問題になりました。とりわけ、いわゆる自衛隊と防衛省が一体となった隠ぺい体質ということもここでも随分議論になったわけでありますが、ここにもメスが入っていないと思います。
もう一度聞きますが、やはりこれでは不祥事の再発ということは防げないのじゃないかと私には思えるんですが、いかがでしょうか。
- 防衛大臣(浜田靖一君)
我々とすれば、今回の改革案が最後というふうに考えておりますし、そういう意味では、不祥事に対してしっかりと、もう二度とないということを肝に銘じてやってきているわけでありますので、そういう意味では、先生今御指摘のような、いろんな今までの信用をなくしたということはまさに事実であって、私がここで抗弁するようなことではないかもしれませんけれども、私たちの、私自身の思いとすれば、今回のこういったことによって二度と再発をさせない、要するにそれが我々の仕事であるというふうに考えておりますので、先生にまた胸を張ってお答えができるように今後とも頑張ってまいりたいというふうに思っておるところでございます。
- 井上哲士君
決意や言うことではなくならないと思うんですね。現実にやっぱり、なぜこういうことが起きたかということに対して的確なメスということを私は入れる必要があると思います。組織改編だけではそうはならないんではないかと。
では、なぜ今回こういうことなのかということに入っていきますが、法案では、これまで三自衛隊に設置されていた情報保全隊を統合して、自衛隊情報保全隊として新編強化をするということになっております。この間、米軍再編の下で、日米間の情報の協力と共有というのが進められてきました。日米軍事情報包括保護協定も結ばれたわけでありますが、こういう日米間の情報共有や秘密保護の体制強化と今回のこの自衛隊情報保全隊の新編ということの関係はどういうことなんでしょうか。
- 防衛大臣(浜田靖一君)
基本的に、我々とすれば、先ほど先生の御質問に対して私お答えしましたが、組織を変えただけではこれは意味がないというのは、これは当然の話でありまして、我々とすれば、そのいろんな不祥事を通じて足りない足りないと言われてやってきたものでありますので、今回こそは組織を改編することによってそこに魂を入れるということが極めて重要だと思っておりますので、そういった意味合いにおいて、私とすれば、信頼関係を回復する意味でも、今後しっかりとそれに対して厳正に対処していきたいというふうに思っているところでございます。
そして、お尋ねの、情報保全隊の新編に関してのお尋ねがありましたが、我々とすれば、このGSOMIAについては、秘密軍事情報の保護等の具体的な手続を明確にすることを目的としたものであり、他方、自衛隊情報保全隊の新編は、外国による諜報活動から防衛省・自衛隊が保有する重要な情報を保護する機能を強化するために行ったものでございます。
GSOMIAの締結と自衛隊情報保全隊の新編については、情報保全の強化という点で同じ目的を持つものでありますけれども、GSOMIAという日米間の情報保全の取組が自衛隊情報保全隊の新編の契機になったものではないということは言えると思います。
- 井上哲士君
情報保全体制の強化という同じ目的を持つものだということは答弁がございました。この間の防衛首脳会談でも、日米で共有する情報の保全が極めて重要であるという認識が出ておりますし、そういう点では日米軍事一体化の中に位置付けられたものだと言える。
それだけでなくて、この情報保全隊は、私どもかつて明らかにしましたように、イラク戦争反対とか在日米軍の再編強化反対など、憲法に認められた市民の団体や政党の運動を敵視、日常的に監視するということをやっていたわけでありまして、こうした組織の強化というのは認められないということを申し上げたいと思います。
さらに、防衛会議でありますけれども、これまでは訓令に基づいて設置され、自衛隊の行動に対する助言を行うのが役割だとされておりましたが、これまではどれぐらいの頻度で開かれていたんでしょうか。
- 防衛副大臣(北村誠吾君)
この度、法律で規定する防衛会議となるわけでございますけれども、防衛省の所掌事務に関する基本的方針について、先ほど来もお話をさせていただきましたが、大臣の政策決定及び緊急事態対応を補佐する機関でございます。また、改革会議報告書でも提言されておりますとおり、防衛会議を形骸化させないように、様々な案件についてできる限り頻繁に開催することを予定いたしております。
- 井上哲士君
これまでの訓令に基づいて設置されたものはどれぐらいの頻度で開かれていたのかというのが質問です。
- 防衛副大臣(北村誠吾君)
失礼しました。
現行訓令上置かれております防衛会議は、自衛隊の行動等に関する事項のみを扱っておりますけれども、平成十六年八月に設置されて以降、これまでに合計九回開催されております。大変失礼しました。
- 井上哲士君
これまで九回だということでありますが、これからはできるだけ頻繁にという答弁でありました。
その審議対象でありますけれども、今一般的に言われたわけでありますが、例えば防衛省が提出する法案、それから自衛隊の海外派遣の決定、それから装備品調達の決定、こういうものについては審議の対象になるんでしょうか。
- 防衛副大臣(北村誠吾君)
この度の防衛会議は防衛省改革会議報告書の提言も踏まえて防衛省の所掌事務に関する基本方針について審議することを任務としている。繰り返し申し上げて恐縮であります。その審議事項には、法案、自衛隊の海外派遣、重要な装備品の調達に係る決定事項も含まれるというところでございます。
- 井上哲士君
ですから、審議対象が大きく広がりますし、開催頻度もこれまでとは全く違うわけですね。こういう重大な防衛省の基本方針の決定に日常的に自衛隊のトップが直接関与することにこの防衛会議でなるわけであります。
この間、自衛隊はイラク特措法やテロ特措法に基づいて海外に出動してきましたし、日米共同訓練も頻繁に行われるようになっております。市街地戦闘訓練などは米軍のマニュアルに基づいて米軍から直接教えてもらうというような形での訓練も行われているわけですね。こういう海外での実戦任務や米軍との共同行動などを積み重ねてきた自衛隊の幹部が参加する防衛会議を設置するということは、現在進められています在日米軍再編の推進などにどういう効果をもたらすとお考えでしょうか。
- 防衛副大臣(北村誠吾君)
各幕僚長を含む防衛会議の委員が、例えば海外勤務の経験など、これまで勤務の経験上得ました知見等に基づきまして防衛会議において意見を述べるなどにより、日米同盟の強化や米軍再編の促進など、その時々の重要な防衛省の課題に対応して適切に大臣を補佐することができる、こう考えております。
- 井上哲士君
海外での実戦任務や、イラク、インド洋での米軍支援活動などを積み重ねてきた自衛隊のトップの意向が制約なく直接政策決定に反映する仕組みができたということでありますから、私は、こういう仕組みをつくることによって防衛政策、それから作戦の運用、さらに防衛力の整備、あらゆる面から海外派兵型になっている自衛隊づくりを推進をするということだということを指摘をしたいと思います。
その上で、こういう在日米軍の再編強化の一方で米兵による凶悪事件が後を絶っていないということと地位協定の問題で外務省を中心にお聞きしたいと思うんですが。
二〇〇六年に横須賀で山崎さんの妻が空母キティーホークの乗組員の米兵に殺害をされた事件がありました。その民事裁判が二十日、六千五百七十三万円の損害賠償命令を出しました。
まず聞きますのは、こういう米軍人の公務外での事件、事故にかかわる賠償金の支払は地位協定ではどのように定められているでしょうか。
- 外務省北米局長(梅本和義君)
米軍人の公務外の行為から生じた損害につきましては加害者が補償を行うべきものとして、当事者間の示談あるいは当該軍人等を相手とした訴訟で処理するということが一義的なところでございます。
他方、当該軍人等が居所不明あるいは補償能力の欠如等を理由に示談が成立しない場合や、あるいは示談が不成立で裁判に持ち込まれたけれども判決文の履行ができない場合等もあり得るということでございまして、地位協定の第十八条六項は米国政府が加害者に代わりまして慰謝料を支払うことによる処理方法というのを規定しているわけでございます。
また、米軍人の公務外の行為から生じた損害については、被害者を一層救済するとの観点から、日米地位協定第十八条六の運用改善として、平成八年十二月二日のSACO最終報告によりまして、日米両政府により前払制度、無利子融資制度及び見舞金の措置がとられているということでございます。
地位協定十八条に係る実務は防衛省の方が担当しておられるわけでございますが、こういう制度に基づいて被害者が適切に救済されるように取り組んできているというふうに認識をしております。
- 井上哲士君
今のSACO最終報告で見舞金制度ということが言われましたが、裁判所で確定判決で賠償命令が出ても、アメリカの国内法に基づく支払がこの判決の額に満たないという場合があると、その差額を埋めるために日本が支払を行うよう努力するというのがこの最終報告でありますが、これによる見舞金の支給件数と額、これは本土と沖縄とに分けて、どうなっているでしょうか。
- 防衛省地方協力局長(井上源三君)
今御指摘のSACO最終報告におきます見舞金の制度でございますけれども、これまでの支給の件数でございますけれども、沖縄におきましては五件、約一億八千二百万円、本土におきましては二件、約六千八百万円の見舞金を支払っているところでございます。
- 井上哲士君
横須賀では、更に二〇〇二年にも米兵による女性暴行事件がありました。これで米兵に対して民事訴訟で賠償金の支払の命令が出ているわけでありますが、この事件の場合、米兵が判決前に帰国をしているということになっております。この加害米兵が支払わない場合はさきにありましたようにアメリカ側が支払うことになっておりますが、国内法で事件発生から二年以内でないと支払われないということになっていて、その結果、日本政府が救済措置として見舞金という形で三百万円をこの女性に払っております。
この見舞金は、先ほどのSACOの最終報告ではなくて、一九六四年の閣議決定に基づくものだと思いますが、その趣旨、それからこの間支払われた件数と金額を、やはり本土と沖縄に分けてお願いしたいと思います。
- 防衛省地方協力局長(井上源三君)
お尋ねの昭和三十九年の閣議決定に基づきます見舞金でございますけれども、一般的に米軍等によります事故の補償でございますけれども、公務上の事件、事故につきましては日米地位協定の第十八条の五項によりまして、また公務外の事件、事故につきましては本来的には当事者間の示談によって解決されるのが原則でございますけれども、そういう方法で解決されない場合につきましては地位協定十八条六項の規定により補償されることとなっているわけでございますけれども、しかしながら、米側当事者に事故等の帰責原因があるか否か等につきまして日米間の意見が一致しない場合等によりましては、この地位協定によります救済がなされないで補償されない場合が生ずることとなるわけでございますので、そういう状態を放置することは社会通念上適切でないということからこの見舞金制度があるというものでございます。
これまでの支給の実績でございますけれども、昭和四十七年度から平成二十年度までに支給をいたしました見舞金の件数と金額でございますけれども、本土が二十七件で約一億四千九百万円、沖縄が二十四件で約二億三千三百万円でございます。
以上でございます。
- 井上哲士君
公務中の事故、事件の場合は、賠償の支払に関する裁判所の確定判決は、地位協定によりますと、両当事国に対して拘束力の有する最終的なものとされているわけですが、公務外ではこういう規定がないということです。
ですから、先ほどの女性暴行事件でも、日本国内で罪を犯して判決を受けながらもアメリカの国内法で二年という定めがあるということで払われないとか、それから金額自身が満たないという場合があるわけですね。
ただ、公務外とはいいましても、まさにこの在日米軍があるからこその事件のわけでありまして、政府や米軍の責任は重いわけです。
先日のあの山崎さんの奥さんの裁判でいいますと、通常よりも重い賠償額になっています。理由は、米軍によってちゅうちょなく人を殺りくすることができるように訓練をされた米兵による犯罪であると。その結果、非常に執拗かつ残忍なものになっていることを判決、指摘しているわけですね。
ですから、やっぱりこういうことがあるからこそ起きているということでいいますと、やっぱり公務外であっても、こういう米軍人に関連したものについては、やっぱりアメリカがきちっと確定判決に従うということを求めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
- 外務省北米局長(梅本和義君)
先ほども申し上げましたように、私人間の損害の問題でございますので、一義的には被害者と加害者との間で示談あるいは裁判によって処理をするということでございますが、まさに日米安保条約、地位協定によりまして、この米軍人等は日本におるわけでございますから、そこで、第十八条六項によりまして日米両政府が関与する形でこの被害者の救済ということで関与をするということになっているわけでございます。
私ども、これまでのいろいろな例を見ましても、基本的には米軍の方もできるだけ日本の裁判所の損害額に近いものを払っているという認識でございますが、そこにおいて、いろいろケースによってはそこで意見が一致しない場合もある。そこで差が生じることはあるわけでございまして、その場合には、しかし被害者にとって、やはり裁判所の判決相当額が支払われるようにということで、日本政府が入ってその差額を支払うというのがSACOの合意であるということでございます。
- 井上哲士君
被害者の方に結果としてこの賠償金に近いお金が渡ると、まず。これは私大事だと思うんですね。しかし、本来、米兵が払うべきものであり、それができなければアメリカ側が払うべきものなわけです。それを日本が見舞金という形で肩代わりをしているわけですから、私は、その分についてはむしろアメリカ側に、例えば返還請求なりをするべきではないかと、こう思いますけれども、いかがでしょうか。
- 外務省北米局長(梅本和義君)
この十八条六に基づいて米側が、その加害者に代わりまして被害の慰謝料を支払うという際には、これは防衛当局の方が、この査定等、これを審査をしてアメリカ側にこれを通知をするというようなことで手続がなされているわけでございます。
そういう中で、日本政府といたしましてもできるだけ、裁判所の判決というものが、それに見合うものがきちっと米側に支払われるということを求めていきたいというふうには思っております。
- 井上哲士君
大臣にお聞きするんですが、なぜ私こういうことを言うかといいますと、被害者への救済措置として実質的に賠償金に当たるものが手渡るということは大事だと思います。しかし、それで被害が償われるわけではないわけですね。
さきに紹介した横須賀の女性の、この暴行事件の被害者は、判決前に米兵が帰ってしまったと、こう述べているわけですね。米兵は審理中にアメリカに逃げ帰ったまま、今も私に対する責任も持たず謝罪もしていないと。アメリカ政府も私の出した手紙に一度も返事を出していないと。これは正義ではない、本当の正義はすべての被害者に責任を持ち謝罪をすることだと。こういう思いを吐露されているわけです。
やっぱり、こういうことにこたえられるようにする上でもやっぱりきちっとアメリカ側に求めていくべきだと思うんですが、この被害女性の思いをどう受け止められますか、大臣お願いします。
- 外務大臣(中曽根弘文君)
先ほどから参考人がお答えしておりますように、この日米地位協定の十八条六の運用改善措置としては、満たない場合には政府として適切に救済するという、そういうことになっているわけで、これを適用しているわけでありますけれども、そのような事件、事故の場合には、やはり加害者は誠意を持って被害者に対応するということは、これはもう当然必要なことだとは思っております。
ただ、このSACOの取決めによりまして現在はこれを運用しているということでございますので、政府としては、この運用の改善にのっとって対応を今後もしていくということでございます。
- 井上哲士君
SACOの取決めで見舞金を日本側が払うということをしているわけであります。
しかし、例えば裁判権の問題も様々な指摘がこの間されてきました。公務外の罪についても日本にとって著しく重要と考える事件以外については第一次裁判権を行使しないと、こういう密約があったということがアメリカの政府の解禁文書から発見をされました。入口で罪が罪として扱われない、そして刑務所に入っても食事などの待遇で米兵に特別扱いが続けられているということも私指摘したことがございます。そして賠償金も日本が肩代わりをする。これでは日本国内での犯罪を犯罪とも思わないような事態を助長しているんではないかと。
私はやっぱり日本の法律や裁判、その制度に従うように毅然と求めてこそ一連のこうした凶悪事件の再発を防ぐ一番の力だと思うんですね。やっぱりその辺での毅然とした姿勢が必要だと思いますけれども、もう一度外務大臣お願いします。
- 外務大臣(中曽根弘文君)
米国との間には密約のようなものはないわけでありますけれども、補償の実務の詳細などにつきましては防衛省にお尋ねいただきたいと思いますけれども、我が国としては、可能な限り被害者に対してその被害に対する補償措置という形で現在この運用の改善によって行っているわけでございまして、米側に対しましてはそのような事故がなくなるように、また日ごろからの教育等、そういうものも徹底するようには申入れをしているところでございます。
- 井上哲士君
時間ですので、終わります。
法案に対する反対討論
- 井上哲士君
私は、日本共産党を代表して、防衛省設置法等一部改正案に反対の討論を行います。
法案は、防衛省・自衛隊が引き起こした給油量隠ぺい事件、イージス艦による漁船衝突事件、前事務次官の逮捕に至った防衛利権問題など、不祥事が相次いだ事態を受けて政府に設置された防衛省改革会議及び防衛省に設置された改革本部がまとめた報告書の提言や基本方針を踏まえたものとされております。しかし、その内容を見る限り、数々の事件の根絶と再発防止につながると具体的に判断できる施策は何一つありません。
そればかりか、法案は、言わば組織いじりの機会を逆手に取って、憲法にかかわる重大な改編を進めるものとなっております。
法案は、防衛省改革会議の提言に従い、法律で明確に位置付けられる最高審議機関として防衛会議を設置し、同省の所掌事務に関する基本方針について審議し、防衛大臣による政策決定を補佐するとしています。この改編は、自衛隊のトップを防衛政策の中枢に直接関与させる仕組みをつくるものであります。海外での実戦任務、米軍支援活動を経験してきた自衛隊の意向を制約なく直接政策決定に反映させることにより、防衛政策、作戦運用、防衛力整備のあらゆる面から本格的な海外派兵型軍隊づくりを推進しようとするものであり、容認できません。
自衛隊情報保全隊の新設は、これまで陸海空各自衛隊に置かれていた情報保全隊を統合し、自衛隊の共同の部隊とするものです。自衛隊の秘密保護に関する情報を一元化し、体制を強化することによって、日米間の情報協力と共有、軍事一体化を推進するものにほかなりません。
元々、情報保全隊は、保全の名の下に、自衛隊の活動に批判的などと判断した個人、市民団体及び政党等を対象にし、その活動を日常的に監視、記録するという憲法違反の不当極まりない国民監視活動を行ってきた組織です。そうした活動は直ちに中止すべきものであり、部隊の強化は断じて認められるものではありません。
また、自衛官の勤務延長や再任用の任期延長、防衛大学校や防衛医科大学校における研究活動強化は、有効な人材を確保、育成することによって自衛隊の組織を維持強化し、防衛大綱、中期防に沿った自衛隊の本格的な海外派兵隊への転換を人的側面から支えようとするものであり、認められません。
以上申し上げ、反対討論を終わります。
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