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2009年6月2日(火)

外交防衛委員会

  • 共同通信が報道した、核兵器持込の日米密約の存在を4人の元外務事務次官が認めた問題を外交防衛委員会で中曽根外相に質問。秘密文書の国会への提出と歴代次官の証人喚問を求めた。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 昨日、共同通信が報じた核兵器の持込みに関する密約の問題は極めて重大であります。まず、これについてお聞きいたします。

 この報道は、核兵器を積んだ艦船や航空機が日本に立ち寄りをする場合は事前協議の対象としないということを合意をした日米政府間の密約の存在を四人の元外務事務次官経験者が認めたということであります。つまり、国是である非核三原則が全く虚構であったということを、半世紀にわたって国会も国民も世界も欺いてきたということになるわけであります。

 特に国会にとって言うならば、歴代の総理そして外務大臣は、こういう密約はないということを繰り返し公式に国会で答弁をしてきました。ところが、その答弁を当事者である事務次官の経験者四人が覆すと、そういう証言をしたわけでありますから、極めて重大であります。つまり、ずっと国会に虚偽答弁をさせてきたということなわけですね。

 まず、中曽根大臣にお聞きいたしますけれども、この核持込みに対する密約については大臣には伝達をされているのかどうか、お聞きしたいと思います。

外務大臣(中曽根弘文君)

 政府は従来から申し上げておりますように、今御指摘のような密約は存在しないということでございます。

 この点につきましては、委員からも御発言ありましたように、歴代の総理大臣そして外務大臣がこのような密約の存在を明確に否定をしておるところでございます。

 私自身に対しましても、ない、存在しないということでありますし、私自身にそのような報告はもちろんございません。

井上哲士君

 大臣には報告がないというお話でありますが、この問題で極めて私重大なことは、核兵器の持込みという日本外交の根本問題でありながら、その秘密の存在を歴代外務次官を中心とした外務官僚が管理をして、時の首相や総理にもこれを選別して知らせていたということであります。

 証言をしております元事務次官の一人は、大きな問題なので役人サイドが密約の内容を話していい首相とそうでない首相を選別をしていたと、こういうふうに言っているわけですね。これはもう日本の民主政治、とりわけ議院内閣制の私は根本を揺るがす問題だと思います。官僚が重大なこの問題を政治家には選別して伝えずにおいて、そしてずっと一貫してうその答弁書を作って歴代総理大臣と外務大臣にうその答弁をさせてきたと、こういうことになるわけですね。

 国際法局長にお聞きいたしますが、この密約の問題は中曽根大臣には伝達をされていないんですか。

外務省国際法局長(鶴岡公二君)

 先ほど大臣からも御答弁申し上げましたとおり、政府は従来から申し上げているとおり、御指摘のような密約は存在しておりません。したがって、密約について中曽根外務大臣に御報告申し上げることもありませんし、できません。

井上哲士君

 ある次官の方は、この共同通信に答えて、国会で事実と違う答弁を続け、何か恥ずかしいなという思いがあったと言われております。今日はどんな思いで答弁をされているのか私分かりませんが、これは本当に重大な問題であります。

 この問題は、日本政府は否定をしておりますけれども、アメリカ側は公文書公開法に基づいて秘密指定を九〇年代後半に解除しております。そして、私どもアメリカの国立公文書館でこの秘密文書を入手をしまして、二〇〇〇年の通常国会の党首討論のときに、当時の不破委員長が当時の小渕総理にこの問題をただしております。当時、小渕総理は否定をされました。そこで、私たちは、アメリカが公開をしたこの文書と同じものが日本の外務省にあるはずだと、だから調査するべきだということを言いましたけれども、それも拒否をされました。

 しかし、今回、この証言をした四人の元事務次官のうち三人の方が、密約文書が外務省に現に存在しているということをはっきり言われております。そのうち一人は、アメリカが公開した、すなわち私たちがかつて国会で示した秘密議事録と全く一言一句変わらないことが書かれていると、それがあるんだということを述べられているわけですね。ここまで言っているわけですから、私はこれをきちっと調査をして国会に明らかにしていただきたいと思います。

 外務大臣、私はまさにこれは議院内閣制をも揺るがす問題だと思いますから、真相を明らかにしていただきたい。もし実際には伝達されているのであれば政治家の良心として明らかにしていただきたいし、伝達されていないというのであれば、こういうような情報操作がされてきたということでありますから、政治家としての威信を懸けて調査をして、この文書を国会に出していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 もう委員が十分御承知のとおり、この米軍によります我が国への核の持込みというのは事前協議の対象になっているわけでありまして、我が国政府に対しまして米国政府から事前協議の申入れというものがないわけですから、そういう意味からも、核持込みのそういう事前協議がない以上、核持込みについては我々としては全く疑いを有しておりません。

 従来から申し上げておりますとおり、繰り返しになりますけれども、御指摘のような密約は存在しないわけでありまして、この点につきましては、先ほど小渕総理のお名前を挙げられましたけれども、歴代の総理大臣及び外務大臣がこのような密約の存在を明確に否定しているわけでありますし、私といたしましても、これは改めてそのような事実関係を確認するということは考えておりません。

井上哲士君

 核兵器の配備ではなくて、つまり持込み、いわゆる立ち寄りとか寄港とか、こういうものについては事前協議の対象にしないという密約なんですよ。ですから、これまで事前協議がないから持ち込まれていないというのは全く言い訳にならないことなんですね。逆に言いますと、これだけいろんな核艦船が、核兵器搭載可能艦船が日本に寄港しながら、一回一回外していたんだろうかという国民の疑問にむしろこの密約は答える中身になっているわけであります。

 だからこそ、もう一回聞きますけれども、現にこれを、この文書を歴代事務次官が管理していると、ここまで言っているんです。四人の方が言っているんですから、私はその事実を是非確かめて、調査をして出していただきたいと思いますけれども、改めていかがでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 報道を基にお話しされているのかよく分かりませんが、どなたがどういう根拠でお話しされているか分かりませんが、政府はもう従来から申し上げているとおりであります。

 そういうことで、私といたしましてはこの事実関係を確認することは現在考えておりません。

井上哲士君

 まさに非核三原則という日本の国是にかかわる問題でありまして、この問題での真相究明というのは、私は国会に課せられた重大な責務だと思います。半世紀にわたってこういう密約はないと国民にうそを言い続けてきたということでありますから、極めて重大であります。外務大臣から文書を出すというお話がない以上、国会、委員会として真相究明をする必要があると思います。

 二つ提案をしたいんですけれども、一つは、この歴代事務次官が管理をしている、保管をしてきたとされる秘密文書の提出を国政調査権の発動として本委員会に出すように御協議いただきたいというのが一点。

 それからもう一点は、この四人の元次官を始め歴代外務次官を国会に来ていただいて真相究明することが必要だと思います。これまで国会でずっと虚偽答弁を続けてきたわけでありますから、うそをつけない、議院証言法が、虚偽の証言が問題になる証人喚問として行うことが必要だと思います。

 委員長、以上、この機密文書を委員会に提出すること、それから歴代事務次官の証人喚問について理事会で協議いただきたいと思います。

委員長(榛葉賀津也君)

 ただいまの委員からの御提言につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきます。

井上哲士君

 それでは、法案の質問に入ります。

 今回、この海賊対処行動というものが法案にあるわけでありますが、憲法九条を持つ国としてどういう在り方がふさわしいのかと、こういうことが私は真剣に議論をされるべきだと思います。

 で、海賊対策に関する与党のプロジェクトチームの座長である中谷衆議院議員が衆議院の特別委員会の質問でこういうふうに言っております。自国民や自国船を守ることの必要性を強調した上で、政府には限界、足かせがあると、それは憲法でございますと、こういうふうに言われておりますが、まず政府にお聞きしますが、国民を守る上で憲法は足かせだと、こういう認識でしょうか。

 国土交通大臣、お願いします。

国土交通大臣(金子一義君)

 中谷議員がどういう発言をされたのか、ちょっと私記憶ないんでありますけれども。そもそも、今海賊対処法案、我々担当しておりますが、これは国内法上の犯罪行為と規定されました海賊行為を行った者に対しまして、我が国の管轄権に基づいて、所定の法令の範囲内で武器を使用を海上保安庁あるいは自衛隊に認めるということでありますので、憲法九条が定めます武力の行使には全く当たりません。足かせという議論というのは、余り今度のこの海賊対処法案では議論はされてないんではないかと思います。

井上哲士君

 これは一議員が言われたんじゃなくて、与党のまさにプロジェクトチームの座長が、しかも衆議院での質疑の一番冒頭でこのことを言われております。私は、本当に九条を持つ国としてふさわしいこのソマリアの海賊対処の在り方がどのようなものなのかということが、本当に真剣に検討されたんだろうかと疑わざるを得ないんですね。

 さらに、中谷氏はこういうふうに言われております。軍を出す、最高のレベルにあるものを出すということは非常に大きなことであり、抑止力やプレゼンスという言葉もあるけれども、国家としてこれだけの対応をするということは各国にも伝わり、海賊も重く受け止めると。やはり、軍隊を出すということは非常に意味があると述べた上で、自衛隊の派遣は私が申し上げた大変大きな大きな意味があると、こういうふうに言われております。

 ここには、その海賊対策というのは警察活動であって、第一義的には海上保安庁だけれども、それが困難だから自衛隊を出すという政府の説明とは全く違う発想があるわけですね。つまり、軍を出すこと自身が大きなことであって、自衛隊を出すこと自体が意味があるんだと、こういうお話であります。私は与党のプロジェクトチームの責任者の発言として大変重いと思いますけれども、まさに、実際は最初に自衛隊の派遣ありきということではないんでしょうか、いかがでしょうか。

国土交通大臣(金子一義君)

 第一義的に海上保安庁が海上の安全航行、船の、船舶の安全に携わるのは第一義的にはもう海上保安庁であると、そのことは中谷議員もよく承知のことだと思っております。現実に、今回の海賊対処行動に当たりましても、第一義的には海上保安庁であるけれども、このソマリアという遠方であること、それから海賊がロケットランチャーという重火器を使っているということ、海上保安庁が今の現有船舶では対応できる能力がないということ、これを考えて海警行動を取っていただくということを今回進めさせていただいているところでありまして、決して自衛隊派遣ありきということを我々としては考えておりません。

井上哲士君

 繰り返し言いますが、今回のやっぱり法案作りの中で、与党のプロジェクトチームの議論というのは大変大きな意味があったと思うんですね。その座長の発言として私は大変重いと思うんですが、浜田防衛大臣にも同じことをお聞きをしたいと思います。

 この中谷氏は、国家のメッセージとして、やっぱり自衛隊を出すことをこういう言い方もしているわけですね。やはり、ここにはまず自衛隊先にありきという考えが私はあると思いますけれども、大臣はいかがでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 質問の中で中谷先生がそういうふうに御質問になったという発言ということでありますので、我々とすると、そのことよりも我々がどういった形で法案を出したかというのが問題でありますので、我々とすると、あくまでも海保が対応できないものを我々がそれを担保して出ていくということでありますので、おのずと、最初から我々が出ていくということではなくて、必ずその議論で、与党のPTの中の議論でも同じようにいろいろな意見があって、その中で集約されてきた法案がこの法案だということでありますので、座長の発言が、座長自身の思い入れもあろうかと思いますので、我々とすれば、できた法案を見ればきちっとした形ででき上がっているものと思っておるところでございます。

井上哲士君

 じゃ、法案がどうなのかということをお聞きしたいと思うんですが、この中谷氏の発言の中で、抑止力、プレゼンスという言い方で軍の派遣、自衛隊の派遣ということを述べられていることも私は非常に重大だと思うんですね。こういう考え方とこの海賊対処活動が結び付いたら、例えばソマリア沖での海賊活動が鎮静化をしても自衛隊を引き揚げたらまた発生するかもしれないと、こういうことを言って、今後の抑止力だということで引き続き言わば居座るということにもつながっていくわけですね。

 どういう事態になればソマリア沖での海賊対処活動は終了するということになるんでしょうか。

国土交通大臣(金子一義君)

 具体的に起こっている海賊の活動、これが鎮静化すれば終了すると。それが少し長期間にわたるとしても、防衛大臣のところで要項、細目を作ります。その期間を定めた範囲内においてまた国会で報告し御議論をいただくということでありますので、今おっしゃったような御懸念は当たらないと思っております。

 結論は、どの段階で終了するのか、我が国、国民経済にとって大変大事な重要な危機が収まったと、これが終了の時期であります。

井上哲士君

 現在、安保理決議が出ているわけでありますが、例えば終息宣言のようなものが発出されるのかどうか、こういう新たな安保理決議というものはこの終息にはどういう関係をしてくるんでしょうか。

国土交通大臣(金子一義君)

 今度の海賊対処法案というのは国連海洋法条約に我々基づいて作り上げております。国連安保理決議というのは参考にさせていただいておりますけれども、安保理決議でそういうものが出てくれば、それはそれなりに参考にさせていただくことになると思います。

井上哲士君

 じゃ、確認しますけれども、いわゆる抑止力というような考え方でこの地域での活動が鎮静化をしても居残ることはないと、こういうことだと思うんですが、御答弁は。そのことがどう法案の中に担保されているんでしょうか。

国土交通副大臣(加納時男君)

 この海賊対処行動はいつ終わるかということに関連する御質問だと思っておりますけれども、国会関与との関係で申し上げますと、この法案におきましては、海賊対処行動について内閣総理大臣が承認したときは、必要性だとか期間などを含めた対処要項ということを国会に決めたときは報告するわけでありますけれども、同じようにして海賊対処行動が終了したときはその結果を報告することにしております。このことによって国会関与ということを法制上、法律上、条文上担保したということでございます。

井上哲士君

 それは終了をしたということになれば報告になるんでしょうが、まだ必要だと、抑止力のためにプレゼンスを確保することが必要だという判断をすれば報告もされないわけでありますから、それは担保にならないんじゃないでしょうか。

内閣官房総合海洋政策本部事務局長(大庭靖雄君)

 本件に関しましては法案第七条の規定しているところでございますが、まず海賊対処行動を命ずる際には、防衛大臣は、あらかじめ関係行政機関の長と協議をして、海賊対処行動の期間などを含む対処要項を定めて、これを内閣総理大臣に通知をし、その承認を得なければならないということにされております。また、内閣総理大臣は海賊対処行動の承認を行ったときは遅滞なく国会に報告すべきこととされております。

 このように海賊対処行動は期間を定めて命じるということになりますので、その期間が経過するとき又はそのときまでに終結をするというのが第一点。また、期間が経過してもなお引き続き海賊対処行動を継続する必要がある場合には、防衛大臣は、必要な期間などを定めた対処要項を改めて作成した上で、総理の承認を得て海賊対処行動を命じることになるわけでございまして、その場合に、総理は、また改めて国会に対して承認をした旨、また、その期間などの内容を国会に遅滞なく報告することになるわけでございます。

 このように、海賊対処行動の終期に関しましては国会に対して適切に報告されるものでございますし、また、副大臣の御答弁ございましたように、海賊対処行動が終了したときには総理は遅滞なくその結果を国会に報告するということにされているものでございます。

井上哲士君

 どうも私の問いには答えていただいていないと思うんですが。つまり、抑止力とか自衛隊が行くこと自身のプレゼンスが必要なんだと。こういうことがいろんな議論と結び付くと、大変私は危険だと思うんですね。

 先ほどの中谷氏の質問を更に使いますと、自国の船舶の安全を期するのは国の当然の責務だと、こういうふうに言われます。これが限りなくつながりますと、つまり、世界中どこだって海賊活動の抑止のためだと、あそこで起こるかもしれないということで出してプレゼンスを確保するということすら可能になるんではないかと。

 ですから、法案に、例えば現実に海賊被害が出ていなければ出すことができないとか、こういう状況になったらもう引き揚げなくちゃいけないとか、こういうことが具体的担保としてあるのですかということを聞いているんです。

国土交通副大臣(加納時男君)

 これは非常に明確に書いてありまして、法案の第七条でございますけれども、「防衛大臣は、」、勝手に出せるんじゃありません、「海賊行為に対処するため特別の必要がある場合には、」、という、特別の必要がなければ出せません。これが一つ。それから、「内閣総理大臣の承認を得て、」、総理大臣が勝手に承認、勝手といいますか、内閣総理大臣のところへ行って出しましょうねというわけにはいかない。これ、必ず関係行政機関の長と協議して対処要項を出さなきゃいけませんので。

 ともかく、内閣総理大臣に提出しなければ、承認を得なければいけないということ、特別な必要があるということ、それが客観的な担保、こういったもので担保しておりますので、勝手に防衛大臣がどこでも出せるというものではないということで、歯止めをしっかり掛けたつもりでございます。

井上哲士君

 国会の多数である与党のプロジェクトチームの座長が、抑止力、プレゼンスと、こういう言い方、そして自衛隊部門を出すこと自身が必要なんだということを私は言われておりますからこのことを言っておるわけでありますけれども、今のお話では、結局政府の判断ということになるわけでありまして、法律上の担保については私は納得ができませんが、時間ですので終わります。


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