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2009年6月11日(木)

外交防衛委員会

  • 周辺諸国の海上警備を中心した国際協力こそ必要であり、日本はソマリア支援とともに周辺国の警備能力向上のための財政的・技術的支援こそ取り組むべきだと主張。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 アデン湾には既に自衛艦が派遣をされ、各国も軍隊を派遣をしておりますけれども、逆に今年に入ってソマリア沖の海賊事件が増加をしております。そして、発生地域もソマリアの東海域に広がっております。

 現地派遣されている自衛隊の司令のコメントとして、海賊が軍隊に慣れ、ひるまなくなった、軍艦が通過した後に襲撃したり夜間に獲物をねらうようになっていると、こういうのも出ておりました。

 各国が派遣後、逆に増えているという状況の評価及び原因についてどのようにお考えでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 ソマリア沖・アデン湾のこの海賊の事案は、先ほども申し上げましたけれども、昨年の夏以降急増しておりまして、昨年は百十一件で世界の約四割、一昨年の、これは二〇〇七年の約二・五倍の事案が発生しているわけであります。今年に入りましても、この海賊案件は六月九日現在で既に百三十三件ですから、これは昨年の一二〇%にもう既にこの六月でなっているわけでありますが、また、さらにハイジャックされた船舶が二十九隻、そして十四隻が抑留をされておりまして、二百四名の乗員が人質となっていると、そういうふうになっております。最近では、この海賊事案がソマリア東部沿岸から離れた海域でも発生していると、そういう指摘もございます。

 この海賊事案が最近、特に昨年の夏以降急増してきた原因や背景としては次のようなことが考えられますが、一つは、ソマリアにおきまして国土全体を実効的に統治する政府が存在していないということ、そして、そのために法執行、司法機関が全く機能していないということ、それから、犯罪集団の組織化、分業化が進み、身の代金目当てに船舶を襲撃、乗っ取る、そういう行為がビジネス化しているということがあると、そういうふうに認識をしております。

 また、海賊発生地点の分散傾向とそれから各国の対策との関係につきましては、今の段階では必ずしも明確でありませんけれども、海賊が各国の対策を受けてこの海賊行為を行う海域を変化させていると、そういう可能性もあると思います。

井上哲士君

 アメリカの国防総省の報道官が、世界中の艦船をすべてソマリアに集めても問題は解決しないという発言をしておりますが、やはり軍隊で問題は解決しない、周辺諸国の海上警備能力の向上やソマリアの貧困、陸の問題の解決なしにこの問題の解決はないということがますます示されていると思います。

 同時に、先日の審議の際も、自衛隊が護衛したのはアデン湾を通過した日本船舶のうち四分の一程度だということも明らかにされました。スピードの出る船舶などは護衛の申出自体もされていないケースもかなりあるということであるわけですね。そういう現状を見ますと、それぞれの状況に合った対策の中で安全な航路の選択ということも大変重要だと思います。

 これは国土交通省にお聞きしますが、二十年度の下半期及び今年の四、五月、それぞれについて、アデン湾を通航した日本関係船舶及び喜望峰を通過した船舶の数について答弁いただきたいと思います。

国土交通省海事局長(伊藤茂君)

 お答えを申し上げます。

 まず、調査の主体でございますけれども、我が国の日本船主協会に調査を依頼をいたしました。傘下の団体に限っての数字という前提でお話を申し上げたいと思います。

 まず、アデン湾を通過した船舶でございますが、平成二十年度下半期で日本関係船舶の隻数九百三十隻でございます。それから、本年度に入りまして、四月、五月でございますけれども、この期間でのアデン湾通過隻数は二百八十二隻でございます。それから、同様に、喜望峰を通過した船舶でございますが、平成二十年度下半期では百九十一隻、本年度に入りまして、四月、五月の二か月で八十七隻となっております。

井上哲士君

 様々な経済条件も加わっていると思いますが、アデン湾通航に対する喜望峰通過の割合は二割程度から三割ぐらいに増えております。契約の段階でやはり危険なところはやめておこうというようなことで回避をしているという例もかなりあるとお聞きしているわけですね。

 アメリカの上院の軍事委員会の公聴会の議論を見ておりますと、これはミシェル・フルールノア国防次官の発言でありますが、最も効果的な短期的対策とは、民間船舶会社と協力してこの地域の船舶が適切な安全対策を取らせることになると。その中で、保安当局との適切な通信の維持、ルートの変更、リスクの高い海域の回避、こういうことも挙げているわけですが、こういう指摘についてどのようにお考えでしょうか。

国土交通大臣政務官(岡田直樹君)

 安全な航路の選択という御指摘でありますけれども、最初に申し上げておきたいことは、海賊というのは言わば人類共通の脅威であって、いずれの国も許すことができない犯罪行為であると。それゆえ、国連海洋法条約においてすべての国が最大限に可能な範囲で海賊行為の抑止に協力する、また、一連の安保理決議で海賊対処のための軍艦の派遣などを要請しているということであります。

 とりわけ、外国貿易の重要度が高い我が国の経済社会及び国民生活にとってこの海上輸送の安全確保は極めて重要でありまして、航行の自由、公海の自由というのは我が国にとって死活的な問題であります。

 もし、御指摘が例えば喜望峰を回ってはどうかという、そういうことであったとした場合に、アデン湾、スエズ運河経由と比べて約六千五百キロ遠く、また航海日数も六日から十日増加をするということが船主協会の試算であります。犯罪行為であるという海賊行為に対して、罪のない民間船舶に、大きな負担をして航路を変えよ、負担を背負って大回りせよという、こういう考え方は取るべきではないと。

 我が国としては、まず、いろんな手を打つとしても、海上輸送の安全確保を図ることが第一であると、このように考えている次第であります。

井上哲士君

 安全な航路をやはり選択するということも船主としての考え方であるし、そういう選択をしているものもかなりあるということなわけですね。

 今も日本が輸入に依存をしているという話がありました。日本は資源の大部分を依存しているということも繰り返されるわけでありますが、今年度の四、五月の間にこのアデン湾を通航した船舶の中で、日本発着、アジア発着、中東発着、それぞれの内訳はどのようになっているでしょうか。

国土交通省海事局長(伊藤茂君)

 お答え申し上げます。

 これも日本船主協会の調査を依頼いたしました結果でございますが、二十一年度四月及び五月の二か月間でございますが、アデン湾を通過した日本関係船舶、合計で二百八十二隻ございます。そのうち、日本を発地点あるいは着地点にした船舶がそのうち七十九隻ございます。それから、アジア発着の船舶が合計で百四十二隻ございます。また、中東の発着が六十一隻という数字になってございます。

井上哲士君

 日本発着は三割弱なんですね。もちろんハブ港経由というのもあるでしょうが、日本への資源等の出入りに直接かかわっていることでは必ずしもないということが今ありました。中東発着便でいいますと、中東?欧州間三十九、中東?中東間十五、中東?アフリカ間三、中東?北米間四と、こういうふうになっておりまして、だから日本関係船舶といっても非常に国際化をしているわけですね。

 それぞれの安全をそれこそ自衛艦を出して守るということになりますと、際限のない海外派遣になっていくと。やはり周辺国の海上警備行動を基本に、国際的な協力でこの海洋交通の安全を確保するということが私は必要だと思います。

 そういうまさに国際協力ということになりますと、私は、やっぱり憲法九条を持つ国として、そしてアジアの海賊対策で大きな貴重な経験を持つ国としての役割の発揮というものが求められていると思います。

 そこでお聞きしますけれども、マラッカ海峡における海賊対策の取組というのは非常に強調されてまいりました。あの対策の枠組みに参加した欧米諸国というのはあったんでしょうか。

外務大臣官房審議官(中島明彦君)

 お答え申し上げます。

 今委員が御指摘になられました海賊対策の枠組みは、アジア海賊対策地域協力協定、通常ReCAAPと呼んでおりますが、このことだと存じております。現在、我が国を含みますアジア諸国十四か国を締約国としておりまして、また、この協定におきましては、アジア諸国以外の加入のために開放されているところでございます。

 現在、このような加入によりまして締約国となった国はありませんけれども、この協定の発効後、二〇〇八年、昨年の五月にオランダ、また本年三月にノルウェーがそれぞれ本協定に加入するという意思を正式に寄託者でありますシンガポールに通報したものというふうに承知をしているところでございます。ただし、両国とも協定で定められております加入書の受託者への寄託というものをまだ行っておりませんので、まだ加入は実現していないものというように承知しております。

井上哲士君

 世界的に評価されているマラッカでの対策には、やっぱり海軍主体の欧米というのは関与をしていません。だからこそノウハウに欠ける面もありますし、日本へのソマリア周辺国からの期待も高いんだと思うんですね。やはりそういう点で、日本が何よりも強めるべきは、こういう経験を生かした周辺国の海上警備能力の向上への財政的、技術的支援やソマリアの貧困克服等への支援だと思います。

 一月にジブチ会合で情報センターや訓練センターの設置は勧告されていますが、この進行はどうなっているのか。それから、日本はどういう貢献を具体的にするんでしょうか。

外務大臣官房参事官(山田彰君)

 議員御指摘のとおり、ジブチ会合においては、イエメン、ケニア、タンザニアの三か国に海賊情報の共有センター、またジブチに訓練センターを設置することが決定されました。

 この海賊情報共有センター及び訓練センターについては、現在IMOと沿岸諸国との間で立ち上げのための検討が行われているものと承知しています。イエメンにおける海賊情報共有センターについては、九月の開設に向けて作業を進めているとの情報を得ております。また、そのほかの海賊情報共有センター及び訓練センターの立ち上げの時期については、現時点において未定であるというふうに承知しております。

 我が国としては、これまで東南アジアにおいて海賊対策に関する支援を行ってきた経験を生かし、ソマリア沖海賊の根絶に向け、IMOと協力して、周辺沿岸国の海上取締り能力の向上、地域協力等の取組を一層進めていきたいというふうに考えております。そのため、政府としては、平成二十一年度、本年度の補正予算で海賊情報共有センターや訓練センターの設立等を支援するために、IMOに対する約十億円の拠出を計上しております。

井上哲士君

 外務省はこの間、周辺国のイエメンとジブチへの支援の検討のために現地調査にも入っていらっしゃると思いますが、その結果と検討状況、特に、昨年来日されているイエメンの沿岸警備隊の局長が高速巡視艇の供与と港湾の整備を求めていると思いますが、この点についての検討状況も併せて御答弁いただきたいと思います。

外務大臣官房参事官(山田彰君)

 ソマリア沖・アデン湾海賊問題に関連して、特に周辺国であるイエメン、ジブチに対するODAによる経済協力の可能性について検討するため、政府関係者及びJICA等で構成する調査団をそれぞれ派遣いたしました。

 イエメンについては、四月十八日から五月八日の日程で調査を行いまして、イエメンがアデン湾に面した地理的に重要な位置にあることを踏まえて、イエメンの海上保安能力の向上及び関連する経済社会開発のために日本として今後いかなる協力が適切かつ可能であるか、幅広く調査を行いました。

 また、ジブチについては、四月十九日から二十三日の日程で調査を行い、ジブチがソマリア周辺地域の安定に果たす役割や我が国海上自衛隊が同国を拠点として海賊対処のための活動を開始していることを踏まえ、同国の経済社会開発及び海上保安能力の向上のために、我が国として今後いかなる協力が適切、可能であるか、幅広く調査をいたしました。現在、こうした調査結果を踏まえ、どのような協力が適切かつ可能であるか、検討しております。

 また、イエメンの海上巡視艇についての御質問でございますが、イエメン政府から巡視艇供与を含むイエメン沿岸警備隊の能力向上に関する要請がございました。イエメンについては、先ほど申し上げたような、アデン湾に面した地理的にも重要な位置にあることを踏まえて、この巡視艇供与に関する可能性も含めて調査団は調査を行いました。現在、この調査団の調査結果も踏まえて、どのような協力が適切かどうか、幅広く検討しているところでございます。

井上哲士君

 ここの分野での支援を一層強めるべきだと思います。

 時間ですので、終わります。


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