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2009年7月2日(木)

外交防衛委員会

  • 核兵器持込み密約、IMF協定の問題で質問。外務省の村田元事務次官が実名で密約の存在を証言したにもかわらず、外相は「密約は無い」「調査は必要ない」と答弁。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 条約四本のうち、日中領事協定及び日本・香港刑事共助協定は、いずれも相手国との関係上必要な措置を定めるものと認められますから賛成です。

 IMF協定及びIBRD協定の改正は、これまで課題となっていた新興市場国及び途上国の発言権がわずかに高まることになります。しかしながら、引き続き先進国が半数以上の票を占めて、先進国主導の意思決定や人事運営が変わりません。特に協定改定などの重要事項については、いずれの機関においても米国一国が事実上の拒否権とも言うべき一五%以上の投票権を引き続き確保することになります。その結果、新自由主義的な構造調整を途上国に押し付けてきたり、それからまた、金融危機を起こしたアメリカの金融通貨政策を容認をしてきたという性格に変わりがないということでありますから、この点を踏まえて、この二つの協定には賛成をできません。

 その上で、IMF及びIBRDについて具体的に伺いたいと思います。

 まず、外務大臣にお伺いしますが、IMFや世銀の改革の議論の中で、新興国や途上国からは民主的な運営にするための発言力の拡大を強く要求をしております。今回の基本票数の増加は、IMFは現状の三倍の七百五十票、世銀の場合は二倍の五百票にするものですが、それでも総投票数の約五・五%にとどまっているわけですね。

 日本政府としては、この発言力の拡大を求める途上国の主張をどのように評価をして、そして今後、改革の必要性ということをどのように認識をされているでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 IMFやそれから世銀を始めといたします国際金融機関におきましては、経済力が大きい加盟国により多い出資を求めておりまして、またそれに応じた地位と責任を与えると、そういう観点から加盟国の出資額に応じた投票権を基本とするとともに、各国また一律の基本票、これを設けることで経済力が小さい国にも一定の発言権を確保しているものでございます。

 今回の協定の改正によりまして、各国の基本票は、票数ではなく総投票権数に占める基本票の割合で規定されることになるわけでございますが、これによりまして、これまで増資が行われるたびに低下をしていた総投票権数に占める基本票の割合が、今後は増資が行われましてもこの基本票の割合は一定の五・五%に保たれることになりますので、国際金融機関において途上国に一定の発言権を確保すると、そういう観点からは意義があると、そういうふうに思っております。

 ロンドン・サミットでは、最貧国を含む途上国、新興国がより大きな発言権と代表権を持たねばならないとされまして、特にIMFに関しましては、今次協定改正による改革パッケージの早期の実施とともに、更なる出資比率の見直しを二〇一一年の一月までに完了させることについて合意がなされているところであります。

 我が国としても、このロンドン・サミットにおける合意を踏まえまして、国際金融機関における各国の発言権は加盟国の世界経済における相対的地位をより正確に反映したものとなるべきであると考えておりまして、今後の国際金融機関の発言権をめぐる議論にこうした我が国の考え方を反映させるべく努めていきたいと、そういうふうに考えています。

井上哲士君

 今回の改革案が出た後も、インドの財務大臣は、承認された提案は約束にこたえるものにならないと、途上国及び新興国の発言力の大幅かつ効果的な強化を要求をしておりますし、中国の財政省の次官は、発展途上国などが先進国と平等な投票権を持つという目標の実現を期待していると、こういうふうに表明をしているなど、これでは不十分だという指摘があるということを述べておきます。

 その上で、今回の協定の改定の背景の一つに、近年のIMFの財政悪化の問題があるとされておりますが、この財政悪化の要因について政府はどのように分析をされているでしょうか。

外務副大臣(橋本聖子君)

 今御指摘のIMFの財政悪化の要因ということですけれども、IMFは創設以来、加盟国に対する融資から得られる利子収入を主な歳入源として運営をされてきております。しかし、近年、大口借入国からの返済が進みまして新規の借入れも大幅に減少した結果、利子収入が激減し、IMFの財政は極めて厳しい状況になってきております。

 IMFの財政を健全化するためには、IMFの投資権限を拡大することにより歳入構造をより多様化をいたしまして、歳入基盤を強化することを目的とする今回の協定改正というのは、大変重要であるというふうに認識をしております。なお、金融危機の深刻化によりまして危機的状況に陥った加盟国から融資要請が相次いでいるため、今後しばらくの間は、利子収入が再び増加をいたしましてIMFの財政に余裕が生じることが見込まれますが、中長期的に見ますと、本協定の改正による歳入構造の多様化はIMFの歳入基盤強化にとって不可欠と考えております。

井上哲士君

 財務省から提出していただいたこのIMFから加盟国への貸出残高の資料によりますと、〇三年末には六百五十億SDRだったのが、〇七年末には六十億SDRまで激減をしております。金融危機の発生で残高が今若干増えているようでありますが、この間に利子収入の減少で二十二年ぶりの赤字を記録をしたわけですね。ここにはやはりIMF離れという問題があります。

 特に注目されるのは繰上げ返済でありまして、これを行った主な国を見ますと、九七年にアジア通貨危機に見舞われたタイ、インドネシア、韓国、それから九九年に通貨危機に見舞われたブラジル、それから同様に〇二年に危機に見舞われたアルゼンチンなどが繰上げ返済を行っております。その理由として、IMFが融資の条件として途上国に押し付けてきたいわゆる構造調整政策、公共サービスへの支出削減、国有企業、公共サービスの民営化、金融の自由化などへの反発があるとされているわけですが、こういう構造調整政策を押し付けてきたことと途上国のIMF離れと言われていることの関係について、どのような認識でしょうか。

財務省国際局次長(中尾武彦君)

 お答えを申し上げます。

 確かに九七年、九八年のアジア通貨危機の際にIMFが支援国に貸付けの条件といたしましたいわゆるコンディショナリティーが、非常に過度に広範にわたり、特に構造政策面でいろいろなことを言ってきた、それが支援対象国の国ごとの実情を必ずしも十分反映してこなかったんじゃないかという反省がございまして、アジア諸国などには反発が生まれた。そういうこともありまして、二〇〇二年には、IMFはコンディショナリティーに関するガイドラインというのを策定いたしまして、支援対象国の主体性を重視していこうということを示しました。我が国はこの際、非常にその点については声を大にしてまいったわけです。

 最近のIMFの支援の中身を見ますと、そういうのを反映して、特に構造政策については必要不可欠なものに絞っていくとか、財政再建目標についても支援対象国の主体性を尊重するといった弾力的なものになってきているということで、もちろんアジアの中にはまだそういう声もございますけれども、実際、今も必要性に応じてパキスタンとかモンゴルは支援を受けておりますし、いわゆるASEANプラス5でチェンマイ・イニシアチブというお互いに外貨準備を融通するスワップの取決め、これは日本なども主導してASEANプラス3、日中韓のアジアの国だけでやっておるわけですけれども、この融通をする際にも、原則としてIMFの融資とリンクしていくというふうなことを言っておりまして、IMFができるだけアジア諸国にとっても重要な機能を果たし続けることができるように取り計らってきておるところでございます。

井上哲士君

 繰上げ返済をした例えばブラジルの大統領は、この完済によって植民地化の時代は終わったというふうに述べました。それからアルゼンチンも、このIMFの政策が経済危機の重大な要因になったということを振り返って、嫌悪すべき過去を葬り去ると、こういう強調をしたわけですね。やっぱりこういうようなやり方が抜本的に改められるということが必要だということを申し上げておきます。

 その上で、核兵器の持込みの日米密約の問題について大臣にお聞きいたしますが、先日、四人の元次官が密約の存在を認めたという報道を受けて質問いたしました。大臣は存在を否定をされたわけでありますが、この答弁をするに当たってどういう調査を大臣自身がされたんでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 まず、御指摘の核の密約問題につきましては、政府は従来から申し上げておりますとおり、そのような御指摘のような密約は存在しないわけで、この点については、繰り返し申し上げておりますが、歴代の総理大臣及び外務大臣がこのような密約の存在を明確に否定をしております。

 先ほども御質問にお答えさせていただきましたけれども、大平外務大臣は昭和三十八年、参議院の外務委員会におきまして、「核兵器につきましては、政府が数年前から国会で御答弁申し上げているように理解しておりまして、持ち込みは認めないという不動の方針でおりますので、それから御理解いただきたいと思います。」と御答弁されておられますし、また、一九八一年当時、いわゆるライシャワー発言が国会で取り上げられました際にも、これはライシャワー発言というものは、ライシャワー大使が大平外相に対して、大平外相は本件の申入れ、つまり持込みですね、大平外相はそれに対してオーケーと言ったというようなことを指すことでございますが、これについて鈴木当時の総理から、大平さんはそういうことを言っておられないと、後の外務大臣にもこのことを引き継いでおられないと、外務事務当局も一切承知しない、記録もないと答弁されておりまして、政府として結論を出しているわけであります。

 そういうことから、私どもとしては、今回の村田氏の発言を受けまして改めて調査を行う必要はないと思っております。

井上哲士君

 要するに、過去、政府が否定する答弁をしてきたということだけでありまして、何ら調査もしてないわけですね。しかし、その答弁を作ってきた事務方のトップが当時の答弁はうそだったという証言をしているわけですから、過去の答弁を持ち出して否定しても私は何の論拠にもならないと思います。

 そして、この村田氏が実名を出して証言をされているわけでありますが、引継ぎの紙が一枚で封筒に入っていたとか歴代次官がどういうふうに引き継いだとか、それから宇野外務大臣にどのように伝えたか、実に具体的であります。

 大臣はこの証言はうそだと、こういうふうに言われるわけでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 そのような報道があることはもちろん承知をしているわけでありますが、その中でのやり取りについて私どもがコメントする立場にはないと思います。

井上哲士君

 コメントする立場にない、否定はできないということでありますが、これ複数の報道機関がインタビューをしておりますし、村田氏自身が昨年の秋に出版された回想録でも同様のことを言われているわけでありますね。

 先日の質疑では、証言した四人の次官が匿名だったということを挙げて、どなたがどういう根拠でお話しされているか分かりませんということで、事実関係を確認することは考えておられませんというふうに述べておられますが、しかし、元次官がこれだけの証言をしている以上、事実関係の、名前を公表しているわけですから、拒否する根拠はなくなったと思います。

 次官を辞める際には後任の栗山氏に引き継いだと、そして前任の柳谷氏から申し送りを受けたと、ここまで言っているわけでありますから、私、三人の次官にまず大臣が確認をするべきだと思いますけれども、改めていかがでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 再三申し上げておりますけれども、まず密約がないと、そういう政府のこれは見解であります。そういうところから、私どもとしては、この報道の内容あるいはこの本の出版の記述、これについて逐一云々することは適当ではないと、そういうふうに思っています。

井上哲士君

 この密約については、一方の当事者であるアメリカは既に機密を解除して明らかにしておりますし、そしてもう一方の当事者である次官が存在を認めたと。もうだれの目にも明らかなのに、現在の外務省幹部だけが否定をし続けている。国民から見れば、平気でうそをつくのかということで、私は、まさに信頼が失墜をするという事態だと思います。これは是非明らかにしていただきたい。

 大臣が調査をする意思がないと引き続き言われる以上、先日も関係者の証人喚問を求めましたけれども、今回、実名を明らかにされた村田氏、その前後の次官である柳谷氏、栗山氏、三人の証人喚問を当委員会で求めたいと思います。

 委員長に取り計らいをお願いをして、質問を終わります。

委員長(榛葉賀津也君)

 この件につきましては、後刻理事会で協議をいたします。


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