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2009年 4 月 15 日

質問第一二九号
学校芸術鑑賞教室に関する質問主意書

 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
  平成二十一年四月十五日

井上 哲士

参議院議長 江田 五月 殿


 小学校、中学校、高校が行っている芸術鑑賞教室は、すべての子どもに芸術を鑑賞する機会を保障する重要な役割をはたしている。ところが、芸術鑑賞教室は減少しており、その活動は困難に陥っている。

 二〇〇七年五月十四日、私は鑑賞教室の一層の充実が必要であるとして質問主意書(第一六六回国会質問第三四号)を提出し、政府の対応をただした。これに対する答弁書(内閣参質一六六第三四号)では、文化庁として「子どもたちが学校を始めとする様々な場で舞台芸術を鑑賞する機会を得られるよう努めてまいりたい」と述べ、鑑賞教室への支援を約束した。また、鑑賞教室の「実施率が減少していると報告されているものと承知している」と減少を認め、「文化庁としては、更なる調査について、今後、その内容及び方法を検討してまいりたい」と努力することを表明した。

 その後、文化庁は学校における鑑賞教室等に関する実態調査を行い、「学校における鑑賞教室等に関する実態調査 調査報告書二〇〇八年版」(以下、「調査報告書」という。)が公表された。残念ながら「調査報告書」の結果を
見る限り、学校芸術鑑賞教室の減少には歯止めがかかっていない。また、「調査報告書」により、鑑賞教室の最大の阻害要因が「予算がない」ことであることが明らかになっている。この背景には、学校鑑賞教室の費用が、児童生徒負担になっており、公的助成がほとんど存在しないことにある。先の答弁書では、国として「本物の舞台芸術体験事業」等によって「助成等の拡充に努めているところ」としていたが、「調査報告書」の結果は、それだけでは足りないことを示している。

 景気悪化のもとで、児童生徒負担のまま鑑賞教室を維持することはきわめて困難になっている。すべての子どもに芸術鑑賞の機会を保障するために、国としてすべての芸術鑑賞教室に公的助成を行い、支援すべきである。そこで以下質問する。

 芸術鑑賞教室は、すべての子どもに芸術鑑賞の機会を保障する大事な役割をはたしている。しかし、「調査報告書」でも明らかなように、五年前に比べても、芸術鑑賞教室の実施率は減少しており、子どもたちの鑑賞機会が少なくなっている。政府として、こうした事態をどう考えるか。

 先の答弁書では、国が行う「本物の舞台芸術体験事業」と、「芸術文化振興基金を活用」した「助成等の拡充に努めている」としている。

  1.  芸術文化振興基金による学校鑑賞教室にかかわる助成は、どの程度の規模になっているのか、助成団体数、助成金額を明らかにされたい。また、「本物の舞台芸術体験事業」が創設された二〇〇二年度に比べて増加しているかどうか明らかにされたい。
      芸術文化振興基金による学校鑑賞教室にかかわる助成のうち、とりわけ、多数の芸術団体が参加する芸術統括団体の事業は、鑑賞教室全体を支えるものとして重要である。芸術統括団体の巡回公演事業にたいする助成は、どの程度の規模になっているのか、助成団体数、助成金額を明らかにされたい。また、二〇〇二年度と比べて増加しているかどうか明らかにされたい。大きく減額していれば、先の答弁書の答弁と矛盾するのではないかと考えるがどうか。
      さらに、政府として、芸術文化振興基金への支援を強化することで、鑑賞教室への公的助成を大幅に拡充すべきと考えるがどうか。
  2.  現在、「本物の舞台芸術体験事業」が鑑賞教室全体に占める割合はどの程度か明らかにされたい。
      「本物の舞台芸術体験事業」が実施され、すでに七年が経過したが、鑑賞教室が増加したとはいえない。このことは「本物の舞台芸術体験事業」だけでは公的助成が行き届かないことを示していると考えるがどうか。
      また、「本物の舞台芸術体験事業」は、応募数が多く、必ずしも採択されるわけではない。採択されない場合、鑑賞教室が実施されないとすれば問題である。その場合の改善措置について検討したことがあるか明らかにされたい。
      さらに、「本物の舞台芸術体験事業」は、芸術団体が自主的にすすめている鑑賞教室と応募時期や内容などが重なるものである。国の事業が自主的な芸術活動の障害になることがあってはならず、採択のみならず、事業の実施にあたって、芸術団体の意見を反映するよう改善すべきと考えるがどうか。

 「調査報告書」では、鑑賞教室を実施しなかった理由としてもっとも多かったのは、「実施したいが予算がない」で五八%を占め、とりわけ、児童生徒数が少なくなるほど、その割合は増えている。鑑賞教室が減少しているもっとも大きな理由は予算上の制約だと考えるがどうか。

 また、鑑賞教室を増やしていくために必要と思われる支援策に関する問いにたいしては、「文化庁や教育委員会などからの助成支援」が八一・二%で圧倒的に多い。これらは、鑑賞教室への公的助成が足りないことを反映していると考えるがどうか。

 さらに、鑑賞教室における予算は芸術団体の公演料が中心である。「調査報告書」によれば、公演料の負担は「児童・生徒の負担があった」が七八・四%となっている。鑑賞教室の実施にあたって、経費の大半を児童生徒負担が占める現状は望ましいことではないと考えるがどうか。

 鑑賞教室を活発にしていくためには、児童生徒の負担を軽減することが重要である。

 「本物の舞台芸術体験事業」はあくまで国の事業であり、他の自主的な鑑賞教室における児童生徒負担軽減につながるものとはなっていない。鑑賞教室の児童生徒負担を軽減するため、芸術団体による鑑賞教室にかかる公演料その他の経費にたいして、国として三分の一助成を創設するなど、すべての鑑賞教室を対象とした公的助成の実施をめざすべきであると考えるがどうか。

 先の答弁書では、地方公共団体による学校における舞台芸術鑑賞機会の確保について、文化芸術の振興に関する基本的な方針の「各地方公共団体への周知を図っているところ」と述べている。しかし、「周知を図っている」というがどのような手だてをとっているのか。

 また、「調査報告書」によれば、鑑賞教室の都道府県別の実施率は、全体で九二・八〜四三・二%と大きな格差がある。すべての子どもに芸術を鑑賞する機会を保障する観点から、格差は解消すべきで、国として積極的な手だてをとるべきであると考えるがどうか。
 右質問する。


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