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2009年3月17日(火)

予算委員会公聴会

  • 2人の公述人に対して質問。公述人:北海道大学大学院法学研究科 山口二郎教授(行政改革関連)、会社顧問 落合たおさ氏(外交・安全保障関連)

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は二人の公述人の方、ありがとうございます。まず、落合公述人にお聞きします。

 実際に現場に行かれた方ならではの公述だったと思うんですが、今もお話ありました隊員の使命感ということなんですね。大変困難な現場での中でこれが大事だということを言われたんですが、実は私はふだん外交防衛委員会に所属しておりまして、昨年、前航空幕僚長の問題で、この場で参考人質疑もありました。

 あの前航空幕僚長はいろんなことを書かれているんですが、使命感にかかわってこういうことを言われています。今や時代は変わって、自衛隊はインド洋やイラクまで出かけて行動する、これからは自衛隊を張り子のトラにしておくことでは済まない、行動する自衛隊は士気が高くなければ任務を遂行することはできないと、こう言われた上で、じゃ、どうやって士気を高くするのかと。我が国の歴史に対する贖罪意識を持っているようでは部隊を元気にすることはできないと。分かりやすく言うと、昔、日本は悪いことをやったと思っていたら士気が上がらないということで、あの方はいろんな歴史教育なんかもやられたようなんですが、そういうやはり過去の問題で、そういう立場でなければやはり士気が上がらないと、こういうお考えについてはどうお思いでしょうか。

公述人(落合たおさ君)

 先生御指摘の、そういう歴史認識を持たなければ駄目だという意見もありましょう。しかし、現実、陸海空の部隊、我々がいたころの隊員たちというのはそういうものじゃなくて、やはり自分、先ほど申しましたように、国家国民のための奉仕、それに、国の命令に基づいて身の危険を顧みず自分でベストを尽くす、国家に奉仕し国民に奉仕する、そのこと自体を自分の名誉とする、そこに使命感ができてくると私は思っています。私もそういうふうにずっと指導してきたつもりであります。

井上哲士君

 次に、山口公述人にお聞きいたします。

 先ほど公述の中で少しだけ郵政民営化に触れられて、この間話題になっているかんぽの宿の問題等にも少し触れられました。

 お書きになったものを読んでおりますと、例えば、これは民営化というよりも私物化といった方がよかったんじゃないかというふうなことも言われているわけですが、この郵政民営化自体の評価、それからさらに、結局、官から民へというスローガンで何でも民営化ということが言われてきたわけでありますが、このこと自体へのお考えについていただきたいと思います。

公述人(山口二郎君)

 私はなぜ郵政を民営化する必要があったのかということについて納得いたしておりません。今になって、あのかんぽの宿の売却がけしからぬとか東京中央郵便局の局舎を壊すなとか言っていますけれども、民営化した以上はああいうことが起こるのは当然であります、金もうけをするために民営化したわけですから。ですから、やっぱり根本の目的がおかしかったということであります。郵便局というのはやっぱり社会のインフラでありまして、これを公共の財産として国営というか公営で維持していくということ、なぜ悪いのか、全く私には理解できておりません。

井上哲士君

 いわゆる官から民へというスローガンで何でも民営化よしという風潮がやられたこと自体についてはどうお考えでしょうか。

公述人(山口二郎君)

 もちろん、日本は市場経済の国ですから、民間が頑張ってお金もうけすること自体は、言わば経済、社会の活力でありまして、そのことは全然問題ないと思いますが、本来、公共セクターが行うべき仕事、例えば保育所とか各種の行政サービスをどんどんアウトソーシングしていくということについては、これはいろいろな問題が起こる、安全性が低下するとか、あるいは公共セクターで非正規労働をどんどん増やすことによって言わば官製ワーキングプアが増えるとか、そういったものが起こるわけでありまして、やはり一律に官から民へというんじゃなくて、公共セクターと市場とのやはり役割分担というのを不断に見直していくということが必要なんだと思います。

井上哲士君

 構造改革を進める上で自己責任論というのが非常に喧伝をされました。収入も低かったり、いい仕事に就けないのは自己責任だという声が随分振りまかれたわけでありますが、今これ自体にいろんな見直しの声が上がっておりますけれども、こういういわゆる自己責任論が果たした役割やこのこと自体についての公述人の御意見をいただきたいと思います。

公述人(山口二郎君)

 自己責任論というのは結局強者の論理ですよね。要するに、自分たちが成功した、金もうけができたのは自分たちが努力したおかげだ、逆に貧しい人、失敗した人に対しては努力が足りないからだということで、結局いわゆる社会ダーウィン主義というか、勝った者が偉いと、負けた者は駄目だから淘汰されたんだ、そういう議論になっていくわけであります。

 しかし、やはり人間というのは、自分で選べない、あるいは自分の責任ではとても制御できない事柄にいっぱい直面するわけですよね。どういう家庭に生まれるかとか、どういう場所に生まれるかとか、そういうことから始まって、自分の責任じゃないことでやっぱり一生がかなり左右されることは事実なんでありまして、自分の責任によらないことで不幸になるということを避けることこそが政治の役割だということを私は常に主張してきたつもりであります。

井上哲士君

 一言だけ。いわゆる第二のニューディール政策が必要だと言われていましたが、余り時間がないので中心だけ一言お願いします。

公述人(山口二郎君)

 やはり建設公共事業というのは限界がある。やっぱり少しはやった方がいいんですけれども、必要な部分もあるとは思うんですけれども、やはり今後の環境を中心として新しい産業分野を切り開いていくという意味で、その技術開発、それから森林を中心とした環境保全、それから日本の場合は特に食料生産、食料自給率を上げていくという観点からの農業への投資、こういったことが今後の言わば日本版ニューディールの課題になってくるだろうと思います。

井上哲士君

 ありがとうございました。

 終わります。


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