2010年10月21日(木)
法務委員会
- 大阪地検特捜部の証拠改ざん事件について質問。
郵便不正事件での村木元厚労省局長の裁判で、証拠を改ざんした検事だけでなく、逮捕・起訴を了承した最高検の責任を指摘。また「村木さんは無実としりながら、地検ぐるみで有罪に仕立て上げようとした権力犯罪だ」と厳しく批判。その上で、検察の内部調査ではなく、第三者による検証と取り調べの可視化、捜査メモの全面的保管などを求めた。
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
大阪地検特捜部のフロッピーディスク改ざん問題についてお聞きします。
法治国家の根幹を揺るがす深刻な問題であり、これは改ざんをした前田元検事や大阪特捜部だけの問題ではなくて、検察の体質そのものが問われております。
まず、最高検の責任に対してお聞きします。
法務省は、この村木さんの逮捕、起訴に当たって地検とそして最高検が協議をしたということを認めておられますが、それぞれ、いつ、だれがどのような形で協議をされたんでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
まず、村木さんを逮捕する方針等についてでございますが、大阪地検は大阪高検と協議をし、次いで大阪高検刑事部長が平成二十一年六月十一日、最高検の担当検事に報告し、最高検の担当検事が次長検事、検事総長に報告してその了承を得たと承知しております。
次に、村木さんを起訴する方針等についてでございますが、大阪地検が大阪高検と協議し、大阪高検刑事部長が同年七月二日、最高検の担当検事と協議し、両名が次長検事、検事総長に報告してその了承を得たものと承知しております。
- 井上哲士君
この逮捕の協議ではどのような資料や証拠が示されたんでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
逮捕の協議でございますが、最高検は大阪高検との協議の結果、大阪地検の捜査において収集された関係者の供述等の証拠に基づいて逮捕を了承したと承知をしておりますが、お尋ねの協議の内容の詳細については、捜査の秘密にかかわる事柄であり、現時点ではお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
もっとも、この点につきましては、最高検において御指摘の事件について検証をしているところであり、お尋ねの点についても、必要に応じて最終的な検証結果を公表する際に明らかにされるものと承知をしております。
- 井上哲士君
これ、無実の人を逮捕、起訴した出発点にもなるべき問題でありますから、きちんと検証をされる必要があります。
先ほどの答弁の中で、六月一日が偽の証明書の発行日だったというフロッピーディスクのそのデータを印刷した調査報告書は上に上がっていなかったということが答弁がありましたけれども、つまり、この二つの協議の対象にこの捜査報告書はなかったということは確認できますね。
- 政府参考人(西川克行君)
詳細は控えますが、そのとおりでございます。
- 井上哲士君
この調査報告書は地検の事務官が六月二十九日に作成をしたというふうになっておりますが、七月二日に起訴の協議が行われたわけでありまして、こういう事件の核心を成す報告書が上がらないままに協議をされたというのは余りにも私はずさんだと思うんです。
もう一つ、石井一参議院議員の事情聴取がなされていなかったという問題であります。
検察のシナリオは、この事件は、石井議員からの要請に基づく議員案件だったから村木氏は偽の証明書の発行を指示をしたと。つまり、議員案件だったというのが一番の背骨の部分なんですね。ところが、石井議員に事情聴取があったのは、七月四日に村木さんを起訴してから二か月後の九月十一日のことでありました。最高検はこの起訴を了承した際に、石井議員に事情聴取すらしていないということは問題にされたんでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
現在、最高検は、今回の事態を招いた原因等を明らかにするため検証を行っているところでございます。
お尋ねの協議の内容の詳細については、現段階ではお答えを差し控えますが、最高検は大阪地検、高検と協議の上、その報告に基づいて逮捕、起訴を了承したものと承知をしております。
- 井上哲士君
ですから、その報告の中に石井議員はまだ聴取をしていないという事実は確認をされていたんですね。
- 政府参考人(西川克行君)
今、明確なお答えしかねますが、御指摘の点についても当然検証の中で検討がなされるというふうに思っております。
- 井上哲士君
石井議員が凜の会側から議員会館で依頼を受けたとされる日には石井議員はゴルフに行っていたということが、これはもうゴルフ場の資料で、記録でもう裏付けられている事実なわけですね。ですから、検察のシナリオはここでも崩れているわけであります。石井議員からの依頼だ、つまり議員案件だということ、そして偽の証明書を作成した期日、このシナリオの根幹が、この事実関係について確認をしないままに逮捕も起訴も協議の上了承したということになりますと、私は最高検の責任は重大だと思いますけれども、その点、局長いかがでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
村木さんを逮捕、起訴するに当たって地検と上級庁との間で行った協議の具体的内容、これは現段階では詳細は差し控えますけれども、これは最高検の検証の中の一つのテーマということにならざるを得ないということと考えております。
お尋ねの協議の内容についても、検討の上、必要に応じて、最終的な検証結果を公表する際に明らかにされ、その問題点も、もし問題点があれば明らかにされるということになろうというふうに思っています。
- 井上哲士君
何か前田元検事と特捜だけが悪かったような形で幕引きがされるんではないかと、こんなことがあってはならないと思っております。
この偽の証明書が発行されたのは六月一日の未明でありまして、六月の初旬に村木元局長が指示をしたと、こういうシナリオはもう破綻をしておるわけですね。前田元検事は、押収したフロッピーディスクで、そのことを知りながら逮捕そして起訴をしたわけですね。そして、自分たちが描いたシナリオに合うようにフロッピーディスクを改ざんをしたと。ですから、私は、これは無実と知りながら冤罪をつくり出してきたということに私は当たると思うんです。恐るべきことですよね。でっち上げてそれを作ったと。
ところが、この前田元検事の起訴事実は証拠の改ざんのみになっています、証拠隠滅罪だけになっています。むしろ、特別公務員の職権濫用罪を適用して処分をすべき事案ではないんでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
現在までの調査結果によりますと、前田元検事は、本件フロッピーディスクのデータという消極的な証拠があったとしても、その当時の証拠関係から有罪立証が可能と考えて逮捕や起訴をしたものというふうに承知をしております。
お尋ねの特別公務員職権濫用罪等の成否につきましては、検察当局において収集された具体的な証拠関係に基づき判断されるべき事柄でありますので、法務当局としてお答えをすることは差し控えなければならないということになります。
- 井上哲士君
つまり、シナリオに反する証拠が出てきても供述があれば有罪にできると考えていたとすれば、重大なことですよね。しかし、もうこれは前田元検事だけの問題ではありません。でっち上げのこの逮捕、起訴のために村木さんは一年三か月にわたって自由を奪われたわけですが、このこと自体に対する深刻な反省が検察からは聞こえてきません。
前田元検事の同僚検事は、この改ざんの事実を早い時期から知っておりますけれども、半年間これを放置をしておりました。地検の幹部も、一月末の公判の時点で弁護側からこのフロッピーディスクの日付の矛盾が指摘されて、そしてその直後に、二月初めには改ざんの事実を前田元検事から把握をしているわけですね。
ですから、この時点で検察のシナリオの背骨の部分が崩れているわけですから、村木氏が無実であり、逮捕としたこと自体が間違いだったというふうに私は認識できたと思うんですね。にもかかわらず、このときに公訴の取消しもせずに行ったと。地検幹部のコメントを見ますと、この証拠の改ざんも過失だったから問題ないんだと言わんばかりのコメントなわけですね。故意じゃなかった、過失だったと、だから上にも報告していないと。その結果、この一年三か月も村木さんが自由を奪われていたということに対するまともな反省がないんです。改ざんを告発したと言われる同僚検事も含めて、公判では村木氏を有罪にするための立証活動をずっと続けたんですから。そして、有罪の論告求刑までしたんですから。なぜ改ざんの事実を把握した時点で公訴取りやめをしなかったんですか。
地検ぐるみで私は無実の人を有罪にでっち上げようとしたと、仕立て上げようとしたと、こう言われても仕方がないと思いますけれども、いかがでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
厳しい御指摘をいただきましたが、公判関係につきましても当然のことながら現在、最高検の検証の対象になっております。
今回の事態を招いた原因、それからどこかの時点で間違えていれば、より早い時期にその間違いを何とか正すような方策が取れなかったのか、この点も含めまして、今後最高検において検証を行っているということでございますので、御指摘の観点からも当然十分な検討がなされるというふうに考えております。
- 井上哲士君
どこかの時点じゃなくて、出発点から間違っていたんです。
そして、結局、このシナリオを描いてそれと矛盾する物証があってもシナリオに沿った供述さえあれば有罪にできるということは、前田元検事だけじゃなくて、今申し上げたように地検全体の問題だったわけですね。じゃ、そのシナリオに沿った供述はどういうものだったのかということになりますと、今回のこの郵政不正事件について村木氏の関与を認める供述をした元部下の捜査段階の供述調書は、四十三通のうち三十四通は証拠として採用されておりません。大変異常な事態だと思いますけれども、なぜ証拠に採用されなかったんでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
御指摘の三十四通のうち十二通は必要性なしと判断された、残りの二十二通は特信性なしと判断されたというふうに承知をしております。
- 井上哲士君
特信性がないと。検事の、検察の調書であっても信じるに足りないと。いずれも大阪地裁は、特捜部による脅迫的な取調べがあった疑いがあり任意性がないということで証拠採用をしていないわけですね。ところが、このときも六人の検事が出廷をして、この供述は任意だということでそういう証言をしているんですよ。ですから、もう何が何でも地検ぐるみでこれは有罪にするんだと、こういうことが最後まで行われたわけであります。
これは、地検だけの問題ではありません。伊藤次長検事の記者会見で、遅くとも一月二十七日の村木さんの初公判の報道でフロッピーディスクの存在を知ったというふうに認めておられます。さらに、三月四日に公判に石井一参議院議員が証人に立って、凜の会から依頼を受けたとされる日にはゴルフをしていて依頼そのものがなかったと、こういう証言もされているわけですね。ですから、この時点でつまり最高検が地検から聞いてこういうシナリオでいくということと全く違う証言や物証が公判に出されているわけですから、逮捕、起訴を了承した最高検として、この時点でもう公訴取消しするとか、こういうことを地検と協議するべきだったんじゃないでしょうか。
最高検としては、供述調書が証拠採用されなかったという時点で、五月の二十八日にメールで地検に質問を出したということはこの間認められておりましたけれども、それまでの間に何らかのこの問題での協議を地検とやったんでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
結論から申しますと、公訴取消しをすべきかどうかについての協議についてはなされておりません。
それから、御指摘を受けております公判遂行上それが相当であったかどうかという点についても同じように検証を実施しておりまして、検証終了後、御指摘の点も含めてその結果を公表することになるというふうに考えております。
- 井上哲士君
そこで、大臣にもお聞きするんですが、最高検の伊藤次長検事は十一日の記者会見でこういうふうに言われているんですね、物証を中心とした捜査を進めればこんなことにはならなかった。主任検事だった前田元検事が物証を軽視する供述中心の捜査をしてしまったと、まるで前田氏だけが悪いかのように言われておりますが、了承したシナリオを覆す物証が出ても公判の維持について協議すらしてこなかったと。最高検自身が物証を軽視して、供述を中心としたそういうやり方を認めていたんじゃないですか。
逮捕、起訴にゴーサインをして、了承したシナリオの土台が崩れる事態になってもそういう協議すらしなかった。私は最高検の責任は重大だと思いますけれども、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
- 国務大臣(柳田稔君)
今回の事件は、先ほど来申し上げておりますとおり、もう言語道断だと、もう信頼はないというふうな思いを私も持っております。そういう中で井上委員の方からそういう疑問を投げかけられるのも致し方ないのかなと思うぐらい今回の事件はひどかったと、そう思っております。
先ほど木庭委員にも申し上げましたけれども、今日の委員会の内容は最高検の検証チームの皆様も聞かれているはずですから、しっかりとした検証をされるものだと思っております。今日、この場でいろいろ細かいことを聞かれても答えられない面もありますけれども、しっかりとした検証をされて公表もされるものだと私は思っております。
- 井上哲士君
今、最高検の責任について申し上げました。ですから、最高検自身が当事者なわけですね。ですから、最高検の検事だけで検証チームをつくって検証し、最終報告の前に有識者の意見を聞くというふうに言われておりますが、それでは私はやっぱり最高検のシナリオの枠内での検証にしかならないんじゃないかと。
不都合な事実を隠すということが現に公判の場で行われてきたわけですから、それを検証するという点でいいますと、私は検証そのものに第三者が入るということが必要だと思います。その点もいかがでしょうか。
- 国務大臣(柳田稔君)
先ほども申しましたように、私は最高検の検証チームの第一回目に出まして、いろいろ申し上げました。最後に、正義を信じますと言って帰りましたけれども、しっかりとした検証を行ってくれるものだと、そういうふうに信じております。
- 井上哲士君
真剣な検証をいただきたいし、私はあくまでも第三者が検証そのものに加わるということを求めたい。
その上で、シナリオに合わせて自白を強要するということはこれまでにも様々指摘をされてきました。今日も議論になっているように、これは捜査過程の全面可視化が必要であります。佐賀元検事も自身の取調べについて、密室の取調べは真相解明にならないということで可視化を要請をされました。
捜査を十分知り尽くした方が可視化をしなければ真相解明にもならないと言っているということは大変重い意味があると思いますけれども、この点、大臣、いかがお考えでしょうか。
- 国務大臣(柳田稔君)
個別、どうのこうの言っていることについて私はつぶさに承知しているわけではありません。
ただ、個人的見解になって言ってもいいんですかね、後で、衆議院で怒られましたけれども、言うなといって怒られましたけれども、よく言ったもんだと私は思いました、個人的には。
- 井上哲士君
この佐賀元検事側からの要求に対して、最高検の伊藤次長検事は記者会見で、検事が自分で取調べを受ける側になるとそのようなことを言うのは不自然だと、容疑者の権利を守る方法は知っているはずで、録音、録画の必要性はないと十月五日の記者会見で言われました。
その容疑者の権利を守る方法は知っているなら必要はないということでいいますと、そんな権利を知らない一般の人にとっては絶対に不可欠だということを逆に次長検事は私は認められたことになると思いますけれども、この点、刑事局長、いかがでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
取調べの方法について、詳細については差し控えさせていただきますが、次長検事がそういう発言をしたということであれば、それは録音、録画をしなくてもその対象、取調べの対象となっている者は自分の権利を守ることができるのではないかという意味で言われたんだというふうに思っています。
- 井上哲士君
いやだから、それをよく知っている人だから必要ないと、検事だからね、言ったわけで、そうであれば、そういう容疑者の権利を守る方法を知らない一般の人々にとっては、真相解明のためにはやはり可視化が必要だということを逆に認めたことになりませんかと、こういう質問です。
- 政府参考人(西川克行君)
恐らくそういう意味ではなかろうというふうに思いますが、ちょっと詳細なその発言の中身を私承知しておりませんので、明確な答弁はいたしかねます。
- 井上哲士君
これはもう、どの角度から見ても必要だということがもう国民の声でありますから直ちに踏み出していただきたいし、その自白の任意性を争う上ですぐにでもできるのは、今日も話題になりました捜査メモの保管の問題であります。
今回の郵便不正事件でこの取調べメモが廃棄をされていたということでありまして、これが最高検の通知にも違反をしているんじゃないかという先ほどの質問に、取調べ状況についての争いを公正に判断するのに資すると認められるというものについて保管が必要であって、必ずしも通知に違反をしていないという答弁で、私は驚いたんですね。そんなことを通知を出した最高検が言うから、必要なものまでほうっているんですよ。今回のこの大阪地検の特捜の調べというのは、まさに任意性が問われたわけですね。なぜそれが必ずしも違反じゃないことをすぐに言うのかと。
確認しますけれども、この通知にあるこの必要なメモだという判断というのは、これは地検として行うんでしょうか、個々の検事が行うんでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
基本的には、その判断は最終的には主任検察官が判断するということになっております。
ただ、取調べにおいて何をメモに記載するかは、取り調べる個々の検察官が事案に応じて判断すると、現段階ではこのようになっております。
- 井上哲士君
実はこれ多発しておりまして、つい先日、広島少年院の元首席専門官が特別公務員暴行陵虐罪に問われている裁判でもメモが全部廃棄をされていたわけですね。このとき地検側はどう言ったかといいますと、必要でないと判断したメモは廃棄をしていると、こういうふうに言っているんですよ。ですから、先ほど刑事局長が言われたと同じ理屈で廃棄をしているんです。これも組織的に実際上、私は行われていると思うんですね。
ですから、こういう言い訳を許さないためにも、原則捜査メモは保管をすると、こういうふうに通知を出し直すというのは、これはもう検察の判断ですぐにできることだと思いますけれども、これをやるべきではないでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
検察当局におきましては、本年六月、一定の取調べメモについて、最高検刑事部長による通知に従って適切に保管するよう改めて注意喚起をするなど、一定の対応をしているものと承知をしております。
ただ、今、村木さんの事件について検証等が進んでおりますので、更に措置が必要であれば、今後必要な方策を講じていくものと考えております。
- 井上哲士君
二度通知を出してもまともに守られていない、その理屈が、必要でないと判断をしたというふうになっているわけですから、そういうことができないようにきちっと対応するべきだということであります。
今回の事件で検察の信頼は地に落ちたと思います。徹底した真相の解明と関係者の処分、そして同じような事件を起こさないというこの制度的措置をとらない限り、私は現場の皆さんの捜査にも困難を来すし、信頼回復はないと思います。そこまで踏み込むという点で大臣の最後御決意をお聞きして、質問を終わりたいと思います。
- 国務大臣(柳田稔君)
今日も午前中からいろいろと御意見を賜りました。第三者がメンバーになりますので、皆さんの御意見を尊重して検討会議行われるものだと、そういうふうに私は考えております。しっかりやらせてもらいます。
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