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2011年3月25日(金)

法務委員会

  • 法務局事務の市場化問題3回目。受託企業の労働者問題など追及

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 市場化テストによる登記の証明書等の発行事務、いわゆる登記乙号事務の一般競争入札に関連してお聞きいたします。

 昨年の臨時国会でも質問をしまして、この登記乙号事務を落札したATGカンパニー株式会社及びそのグループ企業であるアイエーカンパニー合資会社の二つについて、法人登記された本社の住所に存在しないじゃないかということを指摘いたしました。その後、決算委員会の答弁で大臣も事実を認められましたが、虚偽登記をしている会社が登記事務を受託をしているということで、国民のこの制度に対する信頼が得られるのかということが今問われております。そして、この会社の問題はこれだけでないということを決算委員会で指摘をいたしました。

 お手元に資料を配っておるんですけれども、この登記乙号事務の法務局で働いているAさんのATGカンパニーからの給与明細とねんきん定期便のコピーを配付をしております。この方は二十二年の四月から入社をされておりますけれども、この月は年金が未加入という扱いになっております。さらに、二枚目の給与明細を見ていただきますと、七月分の給与は二十四万二千百七十円でありますけれども、ねんきん定期便を見ますと七月分の標準報酬月額は九万八千円ということで最低の等級になっているわけですね。これはもう大問題になった消えた年金と同じような手口でごまかしている可能性があるということを指摘をいたしました。この問題、指摘以後、法務省としてはどういう対応をされたんでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 まず、御指摘をいただいた本店の所在地ですね、これが虚偽の登記であったかどうかというのはちょっと分からないんですが、いずれにしても実態と合っていないことは確認をできまして、これについてはやはり正しいものに改めなきゃならぬということを指導いたしまして、これは、いつだったか、改まりました。指導の結果、アイエーカンパニーについては本店の移転が二月二十二日に完了して、ATGカンパニーについてはやはり同じく二月二十二日に完了、さらに代表者の住所変更を二月一日に完了ということになっております。

 今、年金のことを聞かれたんですが、この年金関係については、これはちょっと法務省として調べるというわけにもいかなくて、これはもしいろいろ疑問があれば関係の機関の方で調べていただければと思っております。

井上哲士君

 法務省としてはそういうことを関係機関に依頼をされたんでしょうか。

政府参考人(原優君)

 お答えいたします。

 この問題につきましては二月十四日の参議院の決算委員会におきまして委員から御指摘を受けまして、厚生労働省の方におきましても問題があれば適切に対応するということでございますので、私どもの方も厚労省との間で情報交換をして対応すると、こういう体制になっております。

井上哲士君

 この委託を受けた民間業者の責務について、公共サービス改革基本方針では、業務の公共性を認識の上、国民の信頼にこたえられるよう、法令を遵守するとともに、責任を持って業務に取り組まなければならないとしておりまして、そして、国には的確な監督等を行う必要があるというふうに言っているわけですね。ですから、現に年金をごまかした場合は、これはもう罰則も付いたことが、証拠も示して文書も示しているわけですから、私はそのような対応では極めて不十分だと思うんです。

 そして、同社の問題はこれだけではありません。厚労省来ていただいていますが、アイエーカンパニーの二〇〇九年度分の労災及び雇用保険の加入者数は何名になっているでしょうか。

政府参考人(渡延忠君)

 お答え申し上げます。

 労働保険の仕組みといたしましては、年度当初に事業主から一年間の労働保険料の額について概算で申告をいただき、その後これを確定精算するという仕組みを取っております。確定精算に当たりまして、申告書には前年度を通じての常時使用労働者数、それから雇用保険の被保険者数の平均を記載いただくということになっております。

 この申告書の内容に即してお尋ねのアイエーカンパニー合資会社についてお答え申し上げれば、平成二十一年度を通じての同社の雇用保険被保険者数の平均は一人でございます。また、労災保険の加入対象者になると考えられます常時使用労働者の数の平均も一名でございます。

井上哲士君

 つまり、〇九年度は一人しか社員がいない会社が、この二〇一〇年度当初から九局四十庁、四百三十人分の仕事を落札しているんですね。

 この会社が、じゃ一〇年度の労災、雇用保険の仮増員概数の申請はどうなっているでしょうか。

政府参考人(渡延忠君)

 お答えいたします。

 平成二十二年度、二〇一〇年度における数でございますが、ただいまお答え申し上げました労働保険の申告納付の仕組みからしまして、現在のところ把握に至っておりません。

井上哲士君

 仮増員の概数が年度当初は出ていると思うんですけれども、その数は言えませんか。

委員長(浜田昌良君)

 もう一度質問をお願いします。

井上哲士君

 仮の増員の概数の数が年度当初出ていると思いますが、それは答弁できませんか。

政府参考人(渡延忠君)

 お答えいたします。

 年度中途で変動がある場合の増加概算等の申告の制度はございますが、こちらに関しては出ておりません。

井上哲士君

 落札したのは二〇〇九年度の十二月ですよね。その時点ではこの会社は一人しか事実上いないわけですよ。そういう、社員もいない、そしてそれまで一切この業務に対して実績もないという会社がどうしてこの四百三十二人分もの仕事が落札できるのか、極めて疑問でありますけれども、なぜこういうことになるんでしょうか。

政府参考人(原優君)

 今御指摘のありましたように、アイエーカンパニーは二〇〇九年、平成二十一年十二月の入札におきまして初めてこの包括的民間委託の事業に参加いたしまして、九局において落札したわけでございます。この落札を受けまして、アイエーカンパニーにおきましては、必要な従業員を確保して受託した事業が遂行できるようにしたという、こういう経緯ではないかというふうに承知しております。

井上哲士君

 全くそれまで実績もない一人の社員が、かき集めて本当にできているのかと私は極めて疑問なんですが。

 さらに、資料の④を見ていただきたいんですが、先ほど紹介したこのAさんの例なんですが、この方はアイエーカンパニーの会社に応募したんですね。③を見ていただきますと、アイエーカンパニーの入社説明会に参加していただきましたけれども、入社はATGにさせていただきますと、了解してくださいというのがいきなり送り付けられてくるんですね。本人はおかしいと思いながらも、これは職を失いたくないから入っていくわけですが。ATGに入社をしながら、その表を見ていただきますと、七月には今度はアイエーカンパニーから赴任辞令というのが出てまいりまして、墨田出張所に変わってくださいと、こういうことになるんです。その後、九月二日は再び今度はATGから転勤辞令が出て、七日に雇用通知書というのがATGから送られてまいります。雇用期間は九月七日から翌年の三月三十一日までなんですが、その期間の間の十二月の一日に今度はアイエーから雇用通知書というのが送られてくるわけですね。このときには基本給は二十二万から十六万に一方的に下げられていると。この間、本人の同意は全くないわけですよ、一方的に送り付けられてくると、一体自分はどの会社に働いているのかと、こういうことが起きているわけです。二つの会社の間を行ったり来たりさせていると。そして、この二つの会社の東京エリア長は同一人物で、一遍に両方の肩書を使った様々な社内文書も出されているんですね。

 厚労省に一般論で聞きますけれども、こういう本人同意なしに雇用関係を勝手に変えるというようなことは許されるんでしょうか。

政府参考人(渡延忠君)

 お答えを申し上げます。

 民法六百二十五条第一項の規定等に照らしまして、一般論として申し上げれば、合併等の場合を除き、雇用契約の一方当事者である使用者が別法人となるような場合には労働者本人の同意が必要と解しております。

井上哲士君

 これは全く一方的に送り付けられているんです。

 さらに、表を見てもらいたいんですが、この方、例えば四月一日にATGから雇用通知書を出されていますけれども、勤務地は西多摩支局なんですね。この西多摩支局の仕事を受託しているのはアイエーカンパニーなんです。それから、九月七日にもATGから雇用通知書をもらって墨田出張所で仕事をしていますけれども、ここを受託しているのもアイエーカンパニーなんです。

 ですから、本来受託した会社と違う会社の労働者がここで働いているということになっているんですね。これは法務省は把握されているんでしょうか。

政府参考人(原優君)

 個々の具体的事案におけます受託事業者と受託事業者に従事している者との間の法律関係については把握しておりません。

井上哲士君

 じゃ、こういうやり方は委託契約上許されているんですか。

政府参考人(原優君)

 個々の受託事業者と受託事業に従事する労働者の法律関係、これはいろんな形態があろうと思います。雇用関係がある場合のほかに、例えば派遣というようないろんな関係があると思いますので、その具体的な法律関係の適否につきましては、労働法制を所管する関係機関において判断していただくのが適当ではないかと考えております。

井上哲士君

 ATGもアイエーも派遣労働者の届出はしておりません。派遣はあり得ないんです。

 それから、じゃ再委託をしているのかということも考えられますが、一部再委託は法務省に届出が必要だと思いますが、届出、出ていますか。

政府参考人(原優君)

 届出を受けておりません。

井上哲士君

 そうすると、出向ということも考えられるんですが、就業規則には出向という規定はないんです。

 ですから、結局労働者が、自分の知らない間に二つの会社の間を、知らない間というか同意もないままにどんどんどんどん異動させられて、受託したところと全く違う雇用関係にあるような人が現場で働いているという事態が起きているんですよ。

 大臣、こういうことが、そして先ほど年金のこともありました、昨日も法の支配というお話がありましたけれども、およそ私は、労働法規とか、それからいろんな保険の問題での法律遵守とは思えないような事態が起きている。それが法務省の登記の事務の現場で起きているということが、法の支配を言われるような大臣の足下で起きているということが許されるのか。いかがでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 これは、余り弁解するようなことをあれこれ言いたくはないんですが、この民間競争入札の実施要項で、総合評価方式というんですか、必須の項目としての四項目、それにさらに加点項目があって、そういうものをずっと見て、ここにやらせようということで今の二社を含む民間に委託をして進めているわけで、今度、そうしますと、一旦そういうことが始まりますと、公共サービス改革法で今度はその契約を解除する場合の要件が法定されていまして、なかなかその業者が実際の利用者との関係で能率よく待ち時間も少なくきっちりやっているというような報告を受けておりまして、それを超えて実際の民間に委託をした会社にメスを入れるというのはなかなか困難だと思います。

 しかし、今委員御指摘のような点が確かに、これはもう少し、Aさんというだけではちょっと調べようもありませんが、いろいろ委員の御指摘のような点があるようですので、しっかりと調べてみたいと思います。

井上哲士君

 年金の問題も同じケースが和歌山から私どもに届けられておりますし、同じようなことは幾つかの事例が寄せられております。ですから、これは会社が全体としてやっている可能性があるんですね。

 この入札の実施要項では必須項目審査というのがあると思いますけれども、これはどういうものでしょうか。

政府参考人(原優君)

 細目にわたるものですので、私の方から御説明させていただきたいと思います。

 この民間競争入札の実施要項、落札者の決定は、先ほど大臣から御答弁がありましたように総合評価方式によるとされております。提出されました提案書の内容につきまして、必須項目と加点項目という、この二つの観点から評価をするということになっております。

 必須項目につきましては、委託業務の目的に沿った実行可能なものかという観点から評価しておりまして、内容的には四つの最低限の要求項目を満たす必要があるということで、具体的には、登記に関する知識が十分か、あるいはコンプライアンス等の体制が整っているか、それから公共サービスの質を確保するために業務処理体制や人的構成等が整っているのか、あるいは研修体制を整えておる、こういったことを審査しております。

井上哲士君

 今の四項目、一つでも満たしていなかったら失格ということでよろしいですか、入札資格として。

政府参考人(原優君)

 これは、入札の段階におきましてこういう項目が評価されるということでございまして、その後に、例えばコンプライアンスの観点で何か違法な点があったからといってこの加点項目についての審査が無効になると、そういう仕組みではございません。

井上哲士君

 つまり、入札段階では、このコンプライアンス・セキュリティー管理についての社内体制を整えるということは必須項目になっておりまして、これがないところは失格になるわけですよね。そのときに文書だけは整えて、落札をしたら、先ほど私るる言ったような、どう考えてもコンプライアンスなんというのはないような疑いのある事態が次々とあると。そもそも入札に参加できなかった企業の可能性があるんですよ。それを、もう通ってしまったから仕方がないということでは私はおかしいと思うんです。

 そして、業務は滞っていないというようなこともこの間も言われましたけど、どういう調査されているのか知りません。例えば、週刊東洋経済がこの問題を特集していますが、実際に司法書士の事務所に聞いてみたら、一般の人じゃなくてね、もう事務に精通していない職員が多くて、安易にありませんとの答えが返ってくるとか、誤って証明書を交付するなど間違いが目立つとか、そういう声もいっぱい寄せられているんです。

 私はやっぱり、改めて大臣に聞きますけれども、この法務省の登記の職場でこういうようなことがまかり通るということが、まさに法の支配を言う大臣の下で起きているということが許されるのかどうかという、そこのことを私は聞きたいんですね。それで本当に登記に対する国民の信頼が得られるとお考えなのかと、そこを聞きたいんですが、どうでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 入札のときにどういう経過でこの会社が落札したかということは私自身は知りませんが、これはもちろん事務方でしっかりと審査をしてそして落札させたものだと思います。

 しかし、そこで後から見るとどうもいろいろこういう点、ああいう点、御指摘のようなことがあるという場合にどうするかというので、これは、公共サービス改革法では解除をするというのは法定の要件がなければ解除できないので、じゃほっておくかというと、ほっておくわけにももちろんいきません、それはやっぱり国民の皆さんに良質な公共サービスを提供しなきゃいけないわけですから。

 したがって、これは、もしそういう点があればちゃんと指導して改めさせなきゃならないし、改めることができないならばそれなりの措置をとらなきゃいけないことになると思います。

委員長(浜田昌良君)

 まとめてください。

井上哲士君

 時間なんで終わりますが、結局、二〇〇八年に入札要項を変えて、価格が低い方が有利な入札になってこういう業者が入ってきたんですね。その結果、四十年間ずっとこの業務担ってきた民事法務協会の皆さん、これまでも七百人が職を失い、この三月末で七百六十二人が職を失おうとしておるわけでありまして、本当に私は、国民の権利の土台を支える登記がこういうことでいいのかというのが問われます。

 きちっとしっかり調査をして厳正な対応をしていただきたい、強く求めまして、質問を終わります。


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