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2011年4月14日(木)

法務委員会

  • 多忙化で充実審理が犠牲となり裁判官のいっそうの増員を求めた

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、震災対策について一点お聞きしておきます。

 先ほどありましたように、今後法律相談が非常に増加をしていくという中で、法務省としてもしっかり対応をお願いをしたいんですが、裁判所としてどうするかという問題です。

 特に民事調停事件の増加等が予想されるわけですが、阪神大震災のときも同じようなことがありました。当時はどういう対応をしたのかというのが一点。それから、今後、東日本大震災ではどのような、特に人的体制が必要だと思うんですが、お考えか、まずお願いします。

最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君)

 阪神・淡路大震災の際には、これは調停事件が非常に増加するという予測がございまして、実際に事件は非常に増えております。それに対応するために、平成七年四月に、神戸地方裁判所と簡易裁判所にまたがって裁判官四名、書記官八名等で構成されます震災事件処理対策センターを設置いたしまして、震災関連の調停事件等を集中的に取り扱う体制を取ったところでございます。

 これに対しまして、今回の震災に関しましては、これはもちろん阪神・淡路のときの例を参考にしまして事件の予測等もしておるわけでございますが、今回はやはり震災の被害が非常に広範囲に及んでおる、被災の状況にも、必ずしも同じようではないという点がございます。

 あと、そういった点も踏まえまして、今いろんな観点からどのような事件が増えていくかということは、例えば弁護士会に来ている法律相談であるとか法テラスとも情報交換をいたしまして、どういう相談が来ておるかというのを情報収集いたしまして、今後起き得る法的紛争を予測しております。

 これに応じまして、我々、当然これをそういう紛争が提起された際には裁判所としても適時適切に対応できるように、あるいは裁判官あるいは書記官等の職員の配置人数の増加であるとか、あるいは応援体制を構築するといった体制整備についても早急に検討してまいりたいというふうに考えております。

井上哲士君

 広範囲かつ長期にわたりますので、是非きちっと対応していただきたいと思います。

 それで、裁判官の増員の問題ですが、十年間で五百人増やすという最終の年になるわけですね。果たして司法改革審議会の意見書が求めた二十一世紀の日本を支える司法制度にふさわしい裁判所の人的体制ができているのかという問題です。

 当時、五百人増やすという際に、裁判官の負担の軽減、それから合議率を五パーから一〇パーに引き上げる、そして審理期間の短縮という三つのことができるということが言われておりました。審理期間については先ほど答弁がありましたので、負担軽減、手持ち事件数が実際具体的にどうなっているかという数を出していただきたいのと、合議率はむしろ下がっているという答弁もありました。もう一つ、特例判事補の解消というのも目標に上がっていたと思うんですが、これが一体どうなっているのか。

 ですから、手持ち事件数の具体数と特例判事補、この二点、お答えください。

最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君)

 裁判官の手持ち事件数につきましては、例えば一番繁忙と言われている東京地裁の例で申し上げますと、平成十三年が、これ民事通常部でございます、平成十三年が約百八十件でありましたものが、平成二十二年には約二百八十件ということでございます。ただ、この二百八十件のうち三十件程度は昨年十月に会社更生手続の開始決定を受けた貸金業者に対する過払い金返還請求事件でございますので、これらの事件は訴訟手続が中断しておりますので訴訟手続が行うことができませんが、これは更生手続内での更生債権の確定が成りますとこれは実質的に終局するというものでございますので、実質的には約二百五十件ということでございます。

 次に、特例判事補制度の見直しにつきましては、これは最高裁といたしましても、一方で事件処理要員を確保しつつ解消していくという現実的な視点に立って計画的、段階的に今解消するということをやっておりまして、当面は特例判事補が単独訴訟事件を担当する時期を任官七年目ないし八年目にシフトすることを目標として見直しを進めているところでございます。

 この結果、東京、大阪、名古屋を始めといたします大都市本庁におきましてはほぼこの目標を達成することができる状況になっております。しかしながら、弁護士任官者の確保が進まないといった判事の体制の確保という問題もございまして、大都市部以外の裁判所では見直しはまだ道半ばと言わざるを得ない状況でございまして、これについては引き続き取組を継続していく必要があるものと考えております。

井上哲士君

 人数はどうなっていますか。特例判事補の人数。

最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君)

 特例判事補の人数は、これは平成十四年が四百十八名でありましたものが、平成二十二年は四百五十四名でございます。

 特例判事補自体は、判事補のうち五年を経過した者について特例の指名をするということでございまして、先ほど申し上げたのは、そういう特例判事補にどういう仕事をさせるかという点で、従来は特例が、付きたての五年目、六年目の者が単独事件を処理しておったものを、もう少しこれは後ろに倒していくという、そういった観点で今施策を行っておるものでございます。

井上哲士君

 しかし、結果としては解消というのが増えているというのが現事態なわけですね。

 それで、先ほど都市部の裁判官の手持ち事件が増えているという数も出ました。一方で、審理期間は短縮が進んだというのが先ほど来の答弁なんですが、やっぱり求められたのは、充実、迅速化なんですね。

 果たして審理の充実が進んでいるのかと。合議が減ったというのは、むしろ減ったというのは先ほどもありましたが、更に聞きますが、地裁での処理事件数のうち証人尋問、それから当事者尋問、それから鑑定実施率、それを当時と現状について明らかにしてください。

最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君)

 地方裁判所の民事第一審について今の数値を申し上げますと、まず証人尋問実施率は、平成十三年が一四・五%、これが平成二十二年は六・一%でございます。本人尋問実施率は、平成十三年が二一・七%、平成二十二年が九・四%、鑑定実施率は、平成十三年が一・二%、平成二十二年は〇・四%となっております。

井上哲士君

 とても審理の充実が進んだと言える実態ではないと思うんですね。最高裁は当時も、大体一人の手持ち事件数は百三十程度が適当だとしていたと思うんですが、手持ち事件数が逆に増え、裁判官は忙し過ぎるという下で、にもかかわらず審理期間の短縮は一定進んだという中で、結局、この審理の充実というのが犠牲になっているというのが現状じゃないんでしょうか。

最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君)

 審理期間は短縮しております。事件も急増しておって、これ自体は確かに負担が重くなっておりまして、そういった点は裁判官の審理の在り方にもいろいろな負担となって表れるわけでございますが、ただその内容は、先ほど来申し上げておりますように、過払い金事件が中心に急増したということもございまして、過払い金事件については他の訴訟運営と比べて若干審理の仕方がもうかなり定着し定型化しておるという点もございまして、そういった点も負担の点では考慮しております。

 ただ、やはり、いずれにしましても、証人尋問実施率あるいは鑑定実施率等につきましては、これは個々の裁判体の判断ということになるわけでございますが、大きな流れといたしましては、新民訴法施行以来の争点整理の充実あるいは集中的証拠調べの実施といった訴訟運営の合理化といったものが、これは弁護士の方々の御協力もあってこれが浸透していった成果ではなかろうかというふうには考えております。

 ただ、我々といたしましては、やっぱり裁判官の不足によって必要な証拠調べが行われないというようなことがあってはならないというふうに考えておりまして、こういった点については、審理期間の点だけではなく、やはり手続に対する当事者の納得ということもこれは重要な問題だというふうに理解しておりますので、この点については今後ともよくバランスを取って行うということを心掛けてまいりたいというふうに考えております。

井上哲士君

 弁護士の方や当事者からはもうちょっときちっと鑑定とかやってほしかったとかいう声も随分聞くわけで、やはりなかなか裁判官が忙しいという中でそういうところがおろそかになっているケースが多々あるんじゃないかということを非常に危惧するわけで、ですから、全体としてやっぱり件数も増えている、先ほど来ありましたように、事件数が増えればもっと増員が必要だということが当時から言われていたわけですし、しかも全体、また複雑で専門的な事件も増えているということからいえば、より充実した審理などもする上でも更なる増員が必要だと思いますが、どういうふうな計画を持っておられるんでしょうか。

最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君)

 委員御指摘のとおり、これはやっぱり事件数は今後とも、過払い金事件についてはやや傾向がちょっと変わったように見受けられますが、いずれにいたしましても、弁護士人口の増加というようなことを考えますと、中長期的には事件が増加していくというふうに我々も、裁判所としては認識しておるところでございます。

 また、事件の内容も更に複雑困難ということでありますので、例えば合議事件の処理体制を拡充するといったことも考えていかなければならないわけでございまして、そういった点で我々としても、今後とも裁判所に与えられた機能を十分に果たし、国民の期待にこたえることができるような中長期的に必要な人的体制の充実を図っていかなければならないというふうに考えております。

井上哲士君

 その増員の上で、私は支部の充実というのをどう位置付けるかというのがあると思うんですね。

 今地方では裁判官が常駐していない支部が二百三のうち四十六もありますし、月に数回しか裁判が開けない支部もあると。ですから、その日に各種事件が集中して、裁判官が多忙を極めて十分な審理時間確保できないとか期日が相当先にしか決まらないなどの弊害もありますし、七割の支部はもう合議事件を取り扱っていないと。ですから、医療過誤とか民事再生など複雑な事件を取り扱わないという支部も増えているということもお聞きをしております。

 住んでいる地域によって裁判を受ける権利に大きな格差が生じているというやっぱり実態があると思うんで、裁判官を中長期的に増やすという中でこの支部機能の充実強化ということを柱に据えることが必要だと思いますが、その点、いかがお考えでしょうか。

最高裁判所長官代理者(戸倉三郎君)

 裁判所といたしましても、これは本庁だけでなく、全国津々浦々まで均質な司法サービスを提供するということが我々の使命だというふうに考えておりまして、支部の事件処理体制の充実ということも、その審理の状況あるいは審理期間その他内容を見ながら、これはきめ細かく考えていかなければならないというふうに認識しております。

 ただ、今委員御指摘のように、裁判官全体の配置を考えますときには、やはりこれは裁判所も予算で運営される公的な機関ということで人員の有効活用ということを考えていく必要がございまして、その結果、事件数がやはり一人分に満たないというような庁については近隣の庁から出張するという体制を取らざるを得ないということもあるわけでございますが、こういった庁につきましても、事件数の動向に応じまして出張する回数を、これを柔軟に見直していくということもやっておりますし、また、いわゆるDV事件あるいは令状事件その他の緊急事件などがあった場合には、これは臨時にでも出張して事件を処理するという体制を取るなどして、これはほかの庁とサービスにおいてそんな遜色のないようにやってきておるところでございまして、今後ともそのような考えで進めてまいりたいというふうに考えております。

井上哲士君

 この間、逆に地家裁の支部や簡裁など身近な裁判所は減っておるわけで、やっぱり遜色がないという実態ではないと思うんですね。弁護士会はいろいろな努力してゼロワン支部などかなり解消されているわけですから、やはり裁判所の取組は私は立ち遅れていると思います。住んでいる場所でやはり裁判を受ける権利に格差が生じるということはあってはならないと思うんです。

 最後に、大臣にお聞きするんですが、やっぱり司法制度改革の当時は、推進本部も総理を本部長につくられてやられました。今後、それにふさわしい予算と体制がずっと確保されていくんだろうと思っていたんですが、その後、推本もなくなり、なかなか全体としての推進のセンターも発揮しないという中で、やはり必要な予算と人員を確保するということがどうもできてないと思うんです。

 十年たった今、改めてこの点をきちっとすることが必要だと思うんですが、そういう点で、特に司法予算全体の拡充をしていく、それを推進をしていくという点で大臣の現状認識と御決意をいただいて、質問を終わりたいと思います。

国務大臣(江田五月君)

 司法というのは社会の一番基本的なインフラでございまして、その人的基盤の充実強化の実現、そのための予算の確保、これはもう不可欠でございまして、しかし今、井上委員始め今日の議論の中でも出てまいりましたが、委員各位の御指摘のとおり、まだまだ課題はたくさんあるということで、とりわけ裁判所の予算や体制の拡充については司法の機能が十分に果たせるため最高裁において適切に対応されるものと思っておりますが、委員御指摘のとおり、私も内閣の一員として、また法務を担当する大臣として十分協力をしていきたいと思っております。


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