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2011年5月12日(木)

法務委員会

  • 東日本大震災の被災地向けの民事法律扶助の拡充や検察官の倫理規定についてただした。

井上哲士君

 私も、まず震災問題についてお聞きいたします。

 震災から二か月たちまして、先ほどもありましたように、現地の法律相談が非常に増えておりまして、民事法律扶助の拡充というのは非常に重要になっております。この制度を利用するには資力要件がありますけれども、多くの被災者が家屋も財産も仕事も失っているという下で、被災前の収入から見ますと資力基準を満たさないという場合もありますし、必要な書類を準備するのも大変困難だという状況があります。

 阪神大震災のときは、特別な被災者法律扶助事業を行いまして、この被災者の利用に際しては資力要件を緩和したり、それから立替払の償還についてはこれを猶予するというようなことも行われ、実際上ほとんどの申込者が償還を免除されたということも聞いております。今回もこの被災者について、資力要件の大幅な緩和であるとかないしは撤廃、立替え費用について、やはり生活が立て直るまでの猶予や免除ということが必要だと思うんですね。

 大臣は衆議院の答弁では、今の状況に即応した対応は必要だとした上で、法テラスはやるだろうと、今、今後の状況を注視していきたいと、こういう答弁だったと思うんですが、ここに来て非常にやはりこの要求が高まっているという中で、より法務省として後押しをすることを示すことが必要だと思うんですね。先ほどは予算についてもおろそかにしてはならないというお話があったわけでありますが、今後、そういう需要が増え、そしていろんな困難の中で柔軟な対応が法テラスとして必要になったときに、財政的に心配でそれをちゅうちょするようなことがあって必要なことができないということがあってはならないと思うんですね。

 そういう点で、きちっと必要なことはやりなさいと、そういう財政的なことについては法務省としてもしっかりやっていくからということで、法テラスの取組を後押しをするという方向をしっかり大臣として示していただきたいと思うんですが、まずいかがでしょうか。

国務大臣(法務大臣 江田五月君)

 井上委員の御指摘はそのとおりだと思います。法テラスの現場の皆さんがひょっとして金が来ないんじゃないかなどと仕事が鈍るということではいけないんで、これはしっかりしたいんですが、残念ながら、私ども法務省が予算を作るわけじゃないので、これは関係府省と精力的に協議をして適切に対処していきたいので、是非応援をしていただきたいと思います。

井上哲士君

 是非、法務省としてしっかり取り組んでいただきたいと思うんですが、もう一つ、この民事法律扶助で、ADRの問題があるんですね。

 仙台弁護士会が五月二日から震災ADRというのを開設をしております。通常のADRと比べて、申立ての手数料を無料にしているし、それから成立の手数料も大幅に減額して、非常に利用しやすくして好評だというふうにお伺いしているんですね。例えば隣の家のブロックが倒れてきて自分の車が壊れたとか、こういうことを裁判ではなくて簡便に、そして弁護士が仲裁人になって迅速に解決をするという点で私はこの被災地の状況に合った手続だと思うんですね。

 これ、もっともっと利用促進をするということが必要だと思うんですが、やはり民事法律扶助の対象を代理援助にとどめずに、こういうADRなどをもっともっと活用できるように対象にしていくということが必要かと思うんですけれども、その点是非お願いしたいんですが、いかがでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 ADRというのも随分定着をしてきて、ADRと言うと普通には何だか分からないけど、オルタナティブ・ディスピュート・レゾリューションでしたか、裁判外紛争解決手続ということで、これはいろんな団体がやってくれておりますが、弁護士会も積極的にADRに乗り出してきているというのは大変有り難いことだと思っております。

 ところで、法テラスですが、総合法律支援法上は、民事法律扶助の対象というのは民事裁判等手続の準備及び追行ということで、この中に、裁判に先立つ和解の交渉で特に必要と認められるものも含まれるということが条文上定められておりまして、その和解の交渉で必要なものと認められるもの、ここのところにADRというのが入るのではないかという、そういうポイントだと思います。

 これは、和解交渉の中には、当事者同士が相対で行う示談交渉だけではなくて、やはりADRを通じた和解、ADRが紛争を解決するためにいろんな当事者の合意の取付けのための労を取っていただくというのは大変重要なことで、受任弁護士が和解交渉の場としてADRが適当だと考えるような場合には、現行制度の下でもこれはADRにおける代理人費用等は扶助の対象となし得ると言って差し支えないと思っておりまして、是非ともその活用を図っていただくことが重要だと思います。

 ただ、ちょっと後ろ向きの話をしますと、法に基づく仲裁というのが裁判と違うのでとかいうような議論があるようで、是非ともそこのところは弾力的に運用していただければと思います。

井上哲士君

 まさに被災者の立場で、より弾力的に運用をしていくことが必要だと思いますし、必要とあらば更に広げていくということも検討すべきだと思います。

 もう一つ、先ほどありましたように、この連休に入るところで日弁連や法テラスの共催で広範囲な法律相談が行われました。従来の法律相談の場合は、県内で弁護士さんが移動してやることはあるんですが、今回の場合、例えば関西で阪神大震災の経験を持っておられる弁護士さんなんかも含めて相当全国的な移動がありましたから、交通費なども含めた一定の財政的な支援、負担というものを法テラスもやっておられるんですね。

 これは今後長期的に続くことになりますから、そういう体制を、つまり県を越えた協力を求めたような相談体制に対する財政的なものも含めた法テラスの関与であるとか、それからやはり長期になりますから、拠点となる施設ということも必要になってくると思うんですが、こういうことも含めた点での積極的な対応が必要だと思いますが、この点、いかがでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 こういう被災現場の状況ですので、どうぞ相談にいらっしゃいではやっぱり済まない。このゴールデンウイークにも出張相談などをしていただいたようで、その結果も踏まえてこうした同様の被災者支援の取組が進んでいくと思っておりますが、さらに、今御指摘のように、県を越えたとかあるいは被災地にちょっと常設の拠点が要るんではないかとか、そうした御指摘を重く受け止めたいと思います。

 これは関係機関、団体としっかり協議、検討を進めて、法テラスの方で進めているものと聞いておりまして、更に一層法務省としても関係府省と協議の上、法テラスを支援していきたいと思います。

井上哲士君

 まさに今からが活躍どきでありますので、是非必要な対応をお願いをしたいと思います。

 あと、検察の在り方検討会議の提言にかかわって、検察官の倫理規程の問題についてお聞きいたします。

 提言は、いわゆる検察官の倫理についての基本規程を作るということを打ち出しました。私、昨年の質疑で、国連の検察官の役割に関するガイドラインについて、国内での具体化が求められたにもかかわらず日本はやってこなかったじゃないかと、こういう質問をした際に、当時の刑事局長の答弁は、この国連のガイドラインの内容は我が国の法制度と大きな違いはなくて、特段意識することなく日常の指導に盛り込まれていたからと、こういう答弁だったんですが、今回こういう提言にもなり、またあの事件を受けたときに、やはり先進国の中でこういう独自の規程を我が国だけ持っていなかったという状況があるわけで、こういう検察官の倫理規程に対するこれまでの姿勢、対応というのにやはり問題があったと、こう思うんですが、大臣の認識はいかがでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 これは当時の局長答弁でございますが、検察官の日常業務を遂行していく、それぞれの検察官が心得ているこの倫理規範といいますか、書いたものじゃありませんが、そうしたものはしっかりこの国連のガイドラインに基づいたものになっているという、そういう趣旨だったと思うんですが、残念ながらそうとも言えない事態が起きたことは確かでございまして、そしてそうした事件を受けて検察の在り方検討会議が提言を出していただきまして、倫理規程の明文化というものの必要性を述べられました。

 個々の検察官が自らを厳しく律しているという信頼があった、これが今崩れかけているというところで、やはり私としてもそうした提言を受けて、この倫理規程というものを検事総長に対してしっかり作ってくださいと四月の八日に申し上げたところでございます。外部の有識者からの意見を聴取する、さらに、これは単に倫理規程こうですよといって配る、それだけじゃ駄目なので、やっぱりこれからの検察を担う若手検事の皆さんの意見などももうどんどん闊達に議論をいただきながら、そうしたものを踏まえて、みんなの血となり肉となるような、そうした基本規程にするように、六か月間ほど時間をちょっとあげますから、掛けてやってくださいということを今申し上げているわけでございまして、そうした基本規程ができることを期待をしております。

井上哲士君

 どういう中身が必要になってくるかということになってくるんですが、今回の村木さんの無罪事件でフロッピーディスクの改ざんが問題になったわけでありますが、仮に前田元検事が、あのフロッピーディスクが消極証拠になるという認識をしながらそれをもう証拠として扱わないと、そしてああいう報告、証拠も別途報告されないままフロッピーディスクを返してしまったと。こういうことになりますと、一体あの元検事は法に触れるということになったのかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 フロッピーディスクのプロパティーを改ざんしない、それはもちろん違法じゃありません、当然。それをお返しをする、これはその証拠品の扱いのことで恐らく違法という、違法に返すということはないだろうと思います。そこに記載、そのプロパティーに記載されていることが消極証拠だということを認識しながら報告書にしなかったということが違法であるかどうかというのもこれもなかなか困難で、むしろそれはお返しをして弁護人の方から公判廷にこういうものですよといって出していただければいいわけですから、報告書にしなかったことが違法というわけにはなかなかいかない。

 ただ、フェアネスということから見ますと、もし仮にこれは立証について非常に重要な消極証拠になるということが分かりながら口を拭って知らぬ顔で報告書にもしないというのがフェアであるかというと、アンフェアだと思います。

井上哲士君

 まさにアンフェアなんですが、それを縛るものがやっぱり現状ではないわけですね。言わば心構えにとどまっていると。それをやはりいろんな国際的な検察官のガイドラインは明文化しているわけですね。

 国際検察官協会の九九年に公表されたガイドラインでも、検察官は常に被告人の公正な裁判を受ける権利を擁護しなくてはならないと、とりわけ被告人にとって有利な証拠が法ないし公正な裁判の要請に従って開示されることを確実にしなければならないというように言っておりますし、欧州評議会の二〇〇〇年の検察官の役割に関する勧告でも、相手方の証拠開示によって武器平等の原則が守られるように努めるべきであるというふうにいろいろ書いているんですね。

 ですから、やはり私は、こういう国際的な水準を踏まえて、相手に有利な証拠であっても開示もするし指摘もすると、こういうことを、きちっとこういう今の法で引っかからないんであるからこそ倫理規程の中でしっかり縛ることが必要だと思います。

 その点の所見をお聞きして、質問を終わりたいと思います。

委員長(浜田昌良君)

 簡便に答弁、江田法務大臣、お願いします。

国務大臣(江田五月君)

 フェアネスということは非常に重要だと思っております。ただ、そのフェアネスを何かがっちりとした法規範にしてしまうかというと、これがなかなか難しいところで、私は今委員の御指摘は重要だと思いますが、しかし、この基本規程にそれを書く、そしてそれに違反したら何か罰則がというようなことよりも、むしろ全検察官の血となり肉となってそれが体現されることの方が重要で、そのために粘り強く検察官の皆さんともいろんな形の対話を重ねながら、皆さんこれを、フェアネスを守っていただくようにしていきたいと思っております。


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