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2012年3月22日(木)

法務委員会

  1. 法務局の登記簿等公開事務を受託しているATG、AIカンパニーに厚生年金保険法違反等で罰金50万の略式命令が出された問題を取り上げました
  2. 法テラスの特例法の質問。東日本大震災の被災者については民事法律扶助の資力要件をなくし、ADR等にも使えるようにしたもの。特例法でなく恒久法を作ることを法相に求めました

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 法務局の登記等の公開事務に関してお聞きいたします。

 いわゆる登記乙号事務と言われるこの事務を市場化テストによる民間競争入札で受託をしていたATGカンパニー、そしてアイエーカンパニーという両社が様々な法律違反を繰り返しているということを再三指摘をしてまいりました。虚偽の法人登記、労働者の同意のない両社間での雇用関係の変更、従業員の標準報酬月額を最低金額に虚偽申告をして年金保険料等をごまかしている、そして労災保険の人数も過少申告、こういった問題を指摘してきたわけですが、労働者の告発を受けまして、一月に両社に対して刑事罰が下っております。

 極めて重大だと思いますが、まず、この両社と関係者にどういうような刑事罰が下ったのかお答えください。

国務大臣(小川敏夫君=法務大臣)

 両社からの報告によりますと、一月三十一日付けで、健康保険及び厚生年金保険の被保険者の報酬月額に関し、真実の金額より低額の金額を記載した虚偽の届出を行ったということによりまして、両社についてそれぞれ罰金五十万円、関与した従業員につきまして一名五十万円、一名は三十万円の罰金刑に処せられたという報告を受けております。

井上哲士君

 厚労省に来ていただいておりますが、この未届けであるとか、そして標準報酬月額の虚偽の届出によって両法違反で罰金五十万という命令が下されたと、こういう例はこれまでにあるんでしょうか。

政府参考人(今別府敏雄君=厚労大臣官房年金管理審議官)

 お答えいたします。

 今、先生がおっしゃいましたような事案について、私どもで承知をするというような仕組みは現在ございません。

井上哲士君

 そういう例があることは承知されていないということでよろしいですか。

政府参考人(今別府敏雄君)

 今御答弁いたしましたように、そういうものを把握をするという仕組みはございませんが、私の方としては承知をしておりません。

井上哲士君

 本当に例のないものなんですね。極めて悪質な事案だということを示しております。こういう会社が、事もあろうに法務省の仕事を受託をして、国民の人権と財産を守る法務局の中で仕事をしているということは本当に問題だと思います。

 法務省としては、こういう司法の判断をどのように受け止めて、今どういう対処をされているんでしょうか。

国務大臣(小川敏夫君)

 やはり遺憾なことだと思っております。

 今回の事例につきましては、やはり従業員が安定的にその職に従事するという観点からも支障があるのではないかということで思っておりまして、こうした観点から両社に対して、健康保険法及び厚生年金保険法に定める手続の適切な履践をするようにと、そしてまた、社会保険諸法令の遵守を確保するために、社会保険労務士の確認を受けるなどの追加の体制を整備するようにというような指導を行っております。

井上哲士君

 私、最初にこの法務委員会で取り上げたのはもう一年四か月前なんですね。以来、決算委員会も含めまして五回目の質問になります。

 この年金保険料のごまかしについては、労働者の給与明細やねんきん定期便という動かぬ証拠も示しまして、それもお渡しをして対応を求めてまいりました。昨年四月には、この登記乙号事務に関する業務上の違法行為が発覚をいたしまして、法務省はこの二つの会社を業務停止して、そしてコンプライアンス体制の構築等を指示をいたしました。その際にも私は、こういう法令遵守がそもそもできていない会社なんだから、入札の資格がなかったんだから、これはもう契約を解除すべきだということも申し上げました。しかし、法務省は改善指示ということにとどめまして、しかも、それへの期限内の回答が不十分だったにもかかわらず、期限を延ばしてやり直しをさせて、結局、契約を継続したわけですね。

 内閣府に来ていただいておりますが、あの時点、つまり最初の期限に十分な回答がなかったという時点で契約解除は法的に可能だったと思いますけれども、いかがでしょうか。

大臣政務官(大串博志君=内閣府大臣政務官)

 個別の事例と申しますよりも、制度上の立て付けでありますけれども、本件に関しては、法務省において二十三年四月及び七月に公共サービス改革法第三十三条の二第六項の規定に基づく業務の一部停止及び同法第二十七条第一項に基づく業務の改善の指示を発出したもの、そういう事案だったというふうに承知しています。

 制度の立て付けとしましては、同法二十七条第一項に基づく指示、今申し上げました指示でございますけれども、これに民間事業者が違反した場合には、同法第二十二条第一項第一号の規定により当該事業者との契約を解除することができると、立て付け上はそういうふうになっております。

井上哲士君

 つまり、最初、期限内に十分な回答がなかったわけでありますから、これは違反ということで対応できたはずなんですね。今年二月の官民競争入札の監理委員会の場でも法務省は契約解除ができたんじゃないかと、こういう発言があったというふうに聞いております。私はこの時点でやはり本来は契約解除すべきだったと思います。

 厚労省に来ていただいておりますが、厚労省には昨年の三月の時点で労働者の給与明細であるとか、そしてねんきん定期便などの証拠をお渡しをして対応を求めてまいりましたけれども、この間、どういう対応がなされてきたんでしょうか。

政府参考人(今別府敏雄君)

 お答え申し上げます。

 昨年の五月に事業所があります岡山、東京で一斉に立入検査を実施をいたしました。その後も立入調査、事業所指導等を重ねてまいっておりまして、先般の、先ほどの御指摘のありました略式命令も受けて、今、両事業所の届出をきちんと作成をして提出をするように指導しておりまして、昨日時点で一部届出がなされたという状況でございます。

井上哲士君

 私が資料提供したのは三月九日でありまして、もう一年以上過ぎているわけですね。私、余りにも時間が掛かり過ぎていると思うんです。

 法務省は、厚労省が調査中だと、処分も出されていないということを理由に、踏み込んだ対応をずっと先延ばしにしてきたわけですね。事務的ミスか故意なのかなかなか分からないというお話もありましたけれども、今回、略式命令に応じたということですから、虚偽だということを認めているわけですね、業者は。もう去年の九月に告発を受けて、検察は一月末にこういう略式起訴もし、罰金がされました。

 なぜこんなに時間が掛かるのかということなんですが、会社の方はきちっとその厚労省の調査に対して適切な協力をちゃんとしてきたんでしょうか。

政府参考人(今別府敏雄君)

 先ほどもお答えをいたしましたように、去年の五月ですね、最初に立入調査をいたしましてから都合十五回ほどやり取りを、立入調査、事業所指導という形でしております。何分複雑な事案でございますので、これ、御承知のように、社会保険の適用につきましては従業員一人一人について確定をしていくという作業でございますので、そこは若干時間が掛かっておるとは思いますけれども、引き続き、今申しましたように、一部届け書が昨日までに出てきておりますので、適正な適用に努めてまいりたいというふうに考えております。

井上哲士君

 その従業員が一体どの会社に勤めているのかということを従業員も分からないし、会社も分からないと。だから、社会保険の関係が本当に分からない、ひどい状態だったわけですね。ですから、これはもう一年以上こういうことで掛かった。厚労省も御苦労だったと思いますが、私は、ちゃんと会社の方がきちっと適切な資料をそろえて出せば、うんと早い時期に解決をしたと思うんですね。

 ですから、法務省はあの昨年七月の時点で契約解除をせずに回答期限を延長してやり直したわけですが、そしてその結果、コンプライアンスは改善をされたとして契約を続けました。しかし、元々の昨年四月の法務省のこの改善指示というのは、新たなコンプライアンス体制を構築すること、そして、コンプライアンスに係る取組計画を策定した上で実践、報告を行うことと、こういうふうになっていたんですよ。しかし、今お話がありましたように、五月から十五回も立入検査をしないと状況が分からないと。およそこの会社がこういう年金や健康保険にかかわる法律違反の実態を進んで明らかにして是正をするという姿勢でなかった。だから、ずっと一年間掛かってきたわけですよ。ですから、法務省に対しては、コンプライアンス体制はこうやりましたと、こうやりますという報告を受けていたのに、その間もずっと法律違反を続けていたんです。

 ですから、これでなぜ改善されたと言えるのか。改善されていないんですよ。報告書だけ出して、ずっと続けていたんですよ。そうであるならば、元々昨年の段階での改善指示に違反しているんですから、これは私は直ちに解除命令ができる状況だと思いますけれども、なぜそれをやらないんでしょうか。

国務大臣(小川敏夫君)

 ちょっと端的に質問に答えていないかもしれませんが、今回の罰金になった件は、罰金に処せられたのは今年の一月でございますけれども、その違法行為そのものはそれよりも前でございまして、昨年の四月、七月に発しました法務大臣指示、コンプライアンスを確立するようにという指示の前の出来事でございます。

 そうした観点から、この四月及び七月に発したコンプライアンス体制を構築することということに直接に違反した行為があって処罰されたというのではないので、そこのところをちょっとどういうふうに考えるかというところを考えておるところでございます。

井上哲士君

 それは、ずっとこの会社は労働組合にしても労働者に対しても不誠実な態度を取り続けて、そして厚労省の指導にもまともな協力してこなかったんですよ。これ自身が法令遵守に反しているわけですね。それを、その最初の改善指示に対して報告をした後もずっと続けていたんですから、これで何で改善されたなんて言えるのかと。

 私は、結局、法務省が委託した業務でこういうことが繰り返されているにもかかわらず、これを認め、業務が表面上できていれば続けさせるということは、こういう法律違反行為に法務省がお墨付きを与えていることになると、こういうことになると思いますが、そういう自覚はございますか。

国務大臣(小川敏夫君)

 今回、こうした会社が様々な問題を起こしているということは、法務省としても大変に遺憾に思っておるわけでございます。そして、今回こうした件が起きたということを踏まえまして、新たな入札に関する様々な取扱方法を定めまして、過去に処分を受けた者は入札参加資格がないというような方向で今取りまとめを行っておるところでございます。

 途中での解約といいますと、途中解約した後、どういうふうに業務を引き継ぐかというような問題がありますので、確かに委員がおっしゃられるようにすぱっとやるのもそれは一つの考え方かもしれませんが、しかし、私どもとしましては、国民が利用するその乙号事務に支障が生じてはならないという観点も考えなくてはならないわけでございますので、委員がおっしゃるように気持ちよくすぱっとはなかなかいきにくい面もあるわけでございます。

井上哲士君

 国民が利用する、国民の人権と権利を守る乙号事務のその業務の場でこういう違法行為がずっと横行しているということが一番の問題なんですよ。そこをすぱっといかなかったら法務省に対する信頼なんかないですよ。登記事務に対する国民の信頼は地に落ちますよ。だから私は申し上げているんですね。

 今、今後入札の改善をすると言われましたけれども、例えば、このATGというのは二〇〇八年度入札から参入をして落札しておりますけれども、様々な不当労働行為で労働組合から告発されました。そうしますと、二〇一〇年度の入札にはもう参加していないんですね。二〇一〇年度の入札からは同じグループのアイエーカンパニーが参加して、多くを落札をしております。この間、この二つの会社に対して批判の声が上がりますと、二〇一〇年度からはやはり同じグループ企業のネットワークという会社が参加しておりますが、この会社は、かつて文科省関連の仕事で落札したけれども、履行体制ができないということで届出を辞退したと。そのことによって東工大とか文科省関係のところからは取引停止処分になっているんですよ。ところが、それは文科省の話だということで、法務省の入札には堂々と参加をしていると。こういうように、グループ内の企業が看板だけを書き換えて入札に参加していく。

 様々な問題を起こした業者が排除できない、これはいけないと思いますが、これは改善されるんでしょうか。

政府参考人(原優君)

 今回の平成二十四年度の入札実施要項案におきましては、委託業務の適正、確実な実施に当たっての基本的要件といたしまして、当該事業者が過去に委託を受けた事業を適正に実施していたということを必須項目としております。この過去に委託を受けた事業を適正に実施していたという要件は、法務省が委託している登記簿等の公開に関する事務に限定しているわけではございませんので、当該事業者が過去に行った全ての委託契約の履行状況を評価して入札手続をするということを考えております。

 したがいまして、過去に登記簿等の公開に関する事務以外の委託事業に関して問題があったという場合には、その内容いかんによっては、法務省が行いますこの入札の評価委員会におきまして受託事業者となるための必須項目が具備されていないと、こういう判断をされることがあり得るというふうに考えております。

井上哲士君

 問題ある業者が排除できることは必要でありますが、それだけでいいというわけではありません。

 国民の財産、権利にかかわる業務で間違いがあってはなりませんし、迅速で良質のサービスが提供される必要があります。元々は実務経験者などを登記所ごとに置くことにしていたのを、〇八年から法務局単位に緩和をしておりますけれども、私どもが司法書士さんから聞きますといろんな問題が起きております。これはやっぱり登記所単位で実務者等を配置をすることが必要と考えますが、この点はどうでしょうか。

政府参考人(原優君=法務省民事局長)

 今委員から御指摘いただきましたように、現在の登記簿等の公開に関する事務の委託におきましては、実務経験者又はこれと同等と認められる者を入札単位ごと、法務局単位ごとに配置することとしておりますけれども、平成二十四年度の入札の実施要項案におきましては、公共サービスの質の確保をより一層図るという観点から、各登記所ごとに配置するというふうに見直すことにしております。

井上哲士君

 これは登記乙号事務だけの問題ではないと思うんですね。

 安ければいいという姿勢でこの公的な業務を官民競争入札で民間委託を進めてきた。私は、市場化テストそのものが見直されるべきだと思いますが、同時に、民間委託をする場合でも、国が委託した職場でいわゆる官製ワーキングプアが横行するであるとか、労働法規などの法律違反が放置をされるということになりますと、国の仕事でもこういうことなんだからということで、日本の労働条件全体を下げるような役割を果たしてしまうわけですね。

 今、様々労働条件の悪化が労働者の暮らしをむしばんでいるときですから、むしろこういう公共サービス改革法に基づいて国が委託をした業務でこそ、いろんな意味で、賃金でも、労働法規を始めとした法令遵守の面でも、全体を底上げするような役割を果たすことが私はむしろ必要だと思いますけれども、内閣府、来ていただいておりますが、この点いかがお考えでしょうか。

大臣政務官(大串博志君)

 今般の公共サービス改革法を通じて対象事業として入札をやっていただいているわけでございます。そういった事業でありまして、民間事業者なんでありますけれども、民間事業者として遵守すべき労働関係法令を含む法令を遵守することは、国の事業を受託している以上、これを徹底して守ってもらうということは当然の責務であると私たちも考えております。

井上哲士君

 これは当然の責務なんですね。

 これは実際には、今法務省で起きているように、そういう事業を受託した業者が、年金の標準報酬月額をごまかし、虚偽の報告を出して罰金五十万を受けるというような、あってはならない事態が起きておりますが、これが、この改革法によっては、要するに禁錮以上じゃないと契約解除の条件にならないということを法務省は言って、結局ずっとこれが続いているという事態になっているわけですね。

 ですから、問題は、どうこれを担保していくのかと。今、例えば、地方自治体などが発注する工事で、一定の賃金などの労働条件を確保して、それによって地域全体の労働を底上げするというような取組も行われているわけで、私は、賃金だけではなくて、法令遵守の面でもしっかりこういう公的な業務を委託したところに守らせていくということを担保する必要があると思います。

 法務省は、一定の要項の改定をするわけでありますが、これ他省庁の業務でも起きている可能性は十分あるわけでありますから、低価格の入札をあおったり、過去に問題を起こした企業とか何の実績もない企業が、とにかく提案書さえ書けば受託できるようなことで、同じような事態を繰り返してはならないと思いますが、全体として、要項の見直しも含めた入札の仕組み全体を見直すことが必要かと思いますが、内閣府、いかがお考えでしょうか。

大臣政務官(大串博志君)

 確かに、入札をすると、で、事業を落札するという関係にあります。その中で、もちろんその業務自体を適正に執行してもらうということは確かでありますけれども、今お話し申し上げましたように、労働関係法令を含む法令全体を遵守してもらう、徹底してもらうということはもう当然のことだというふうに思っています。

 そのためには、例えば、今お話もありましたが、同法における対象事業については、当該事業に係る実施要項にその旨を明記することとか、あるいは入札参加事業者から法令を遵守する旨の誓約書を徴取するとか、そういったことが、本件に限らず全体のこととしても考えられるのではないかというふうに思っております。

 いずれにしても、同法に基づく対象事業について、引き続き、民間事業者による適正な業務が実施されるよう、私たちとしてもしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。

井上哲士君

 この問題は、まさに法務局のこの登記乙号事務への信頼、それから国民の権利にもかかわる問題でありますし、そこで働いてきた、そして現に働いている労働者の皆さんの権利にもかかわる問題であり、さらに全体の労働条件にもかかわっていく問題だと思っております。

 それを踏みにじるような事態が現に起きているわけでありますから、ここは法務大臣、厳正な対応をお願いしたいと思いますが、改めて答弁を求めます。

国務大臣(小川敏夫君)

 かかる行為が繰り返されないよう、きちんとしたコンプライアンス体制を確立するということを指示してありますが、これが確実に実行されるよう、しっかりと見守っていきたいと思っております。

井上哲士君

 繰り返しになりますが、まさに法務省の登記乙号事務の信頼、労働者の権利が懸かっている問題でありまして、私は、繰り返しますが、もうこれは契約解除をすべきだと。そして、そのための体制というのは至急にやれば十分取れるわけでありますから、そういう決断を改めて求めたいと思います。

 そのことを申し上げて、質問を終わります。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今年の一月に法務委員会の委員派遣で被災地を訪れた際も大変強い要望があったものでありまして、昨年の臨時国会において、参議院の委員会から提案できないかという各党間の協議もあったわけでありますが、残念ながら間に合いませんでした。今回法案を提案をされた衆議院の法務委員会の皆様にまず敬意を表します。成立すれば速やかに施行されるように、法務省始め関係機関にも要望をいたします。

 昨年協議されていたものと若干変わっている点がありますので、まずその点について提案者にお聞きしますが、今後も大きな災害は予想されます。今回と同様の法的な支援が求められることになる。その際にも適用できるように、被害者を東日本大震災その他の災害発生による特定非常災害の被害者とするという法改正も検討されておりました。今回の法案は、東日本大震災の被災者に限定をされ、そのため援助事業も災害被害者援助事業から東日本大震災法律援助事業というふうに議論の途中からは変わったと思うんですが、こういうふうに限定をした理由はどういうことなんでしょうか。

衆議院議員(黒岩宇洋君=衆院法務委員長代理)

 井上委員の御質問にお答えいたしますが、確かに委員御指摘のとおり、本法案の検討段階においては、これも御指摘の特定非常災害特別措置法を改正いたしまして、東日本大震災の被災者に限らずに、今後、特定非常災害として指定された災害の被害者も対象に含むとする案も検討されていたところでございます。

 しかしながら、その後の検討過程におきまして、喫緊に必要とされているのはこの度の東日本大震災の被災者に対する援助であると。その上、今回のような法的支援事業の要否については、私ども立法府としては、今後個々の、別々の災害の被害状況に応じて個別に判断していく必要があるとの判断に至ったことから、今回は対象を東日本大震災の被災者に限定したものでございます。

井上哲士君

 急がれたということもあると思うんですが、やはり逆に言えば、今度新しい災害が起きたときにまた時間が掛かってしまうということもあるわけです。

 先ほど、魚住委員に対する答弁も法務大臣ありましたけれども、やはりそういうことを考えますと、今後起き得る災害にも対応できるような立法を検討すべきだと思うんですが、検討はしたいと言われていましたが、前向きにこれやるということでいかがでしょうか。

国務大臣(小川敏夫君)

 確かに、今回のような大震災のような災害が起きないことを願っているわけですけれども、現実としまして、起きた場合にまた急いでやるよりも、恒久法があれば速やかに対応できるわけでございますので、そうした観点から検討してみたいと思います。

井上哲士君

 是非前向きにお願いをしたいと思います。

 一点だけ確認ですが、東日本大震災関連の一連の法律では、名前は東日本大震災の被災者になっていますが、長野県北部震災の被災者も対象としていると思うんですが、この法案も同様だということで確認してよろしいですか。

衆議院議員(黒岩宇洋君)

 簡潔にお答えします。

 委員の御指摘のとおり、この法案の第二条第二項には「東日本大震災に際し災害救助法が適用された同法第二条に規定する市町村の区域」とありますけれども、これには長野県北部地震の被災者であって災害救助法が適用された地域も含まれる。ですから、結論からすれば、長野県北部地震も対象になるということでございます。

井上哲士君

 この支援の対象者について、これも昨年のまだ協議過程の段階では、資本金若しくは出資の総額が五千万以下の法人、若しくは常時使用する従業員の数が五十人以下の法人に拡大するということも盛り込まれておりました。一月の早い段階での新聞の報道にも、こういうふうに拡大するということが出たということがあって期待をされた方も多いかと思うんですが、今回はこの点は結局盛り込まれておりませんけれども、この理由はどういうことなんでしょうか。

衆議院議員(柴山昌彦君=衆院法務委員長代理)

 井上委員御指摘のように、一定の規模以下の法人について、この恩典を受けられるということも確かに検討いたしました。

 ただ、資本金の額ですとか、あるいは従業員の人数といった形式的な基準を設けるということは必ずしも実態にそぐわない。経済的弱者に当たるような法人でしたら、例えば資本金は必ずしも大きくないけれども利益はたくさん上げているというような法人はどうするんだとか、様々な議論が出てきかねないわけです。そういうことを考えるとともに、そもそも法テラスが行う民事扶助制度というのは資力の乏しい自然人の方に支援の手を差し伸べるというような制度でもあったことから、今回はそういった、いわゆる法人、あるいは代理援助の制度ということを対象とはしなかったものであります。

 ただ、そうはいっても、会社の、例えば代表取締役が個人的に法律相談を持ちかける、あるいは会社の債務について自らが連帯保証人になっていることから、その連帯保証債務についての相談を通じて必要な範囲で法人の相談というものが付随的に行われるというようなことは十分想定し得るわけでして、こういった形を取ることによって劇的に不都合が生じるというようには私どもは考えておりません。

井上哲士君

 今回、未曽有の災害の中で被災地のいろんな中小零細企業のいろんな被害があったわけですから、今回はこれは盛り込まれなかったわけですが、是非今後の検討としていくことが必要だろうと、こう考えております。

 先ほど長期借入金の規定を盛り込んだ理由については答弁がありまして、本来的には補正予算等で対応されるべき問題だということがお話がありました。

 阪神・淡路大震災のときにも特別の援助事業が実施をされまして、法律扶助相談でいいますと、三年間で一万三千八百四十三件、代理援助で二千三百二件というふうに聞いておるんですが、今回は被害の規模や範囲も更に大きいわけですけれども、法務省としては、本法案が施行されれば、どの程度の利用になると推定しているのか。そして、そのための予算的な手当ては長期借入金などが必要ないようにきちっと手当てするということでよろしいでしょうか。

国務大臣(小川敏夫君)

 どの程度の利用件数を見込むかと言われても、今現在ちょっと確たるものがないんでありますが、この法テラスは年度で余りました予算をすぐ戻すということになっておりませんで、たしか四年間で使用できるということになっております。平成二十三年度の既定経費の中で残額がございますので、そのやりくりで当面賄いたいと思っております。

井上哲士君

 当面そういうことなんですが、むしろ今からずっと増えていくことでありますから、そういう際にもきちっと当然手当てをするということでよろしいですね。

国務大臣(小川敏夫君)

 はい、そのつもりでございます。

井上哲士君

 阪神大震災と比較しても非常に復興は遅れております。原発事故の被害に遭っている福島の県民意識調査では、九割以上の方がまだ復興のめどが立っていないと言われているわけですね。提案者からも、三年後の失効の時期における状況では延長も当然検討されるべきものというふうに言われました。

 阪神大震災のときと比較しますと、はるかにこの規模やそして長期化が予想されるということになれば、あらかじめもう少し長い期間を設定した方が良いのではないかと私は思うんですが、その点はいかがでしょうか。

衆議院議員(大口善徳君=衆院法務委員長代理)

 井上議員の御質問にお答えをしたいと思います。

 この点は与野党協議で非常に議論になったところでございます。

 それで、御指摘のように、今回の法テラスの業務の特例については三年間の時限立法と、ただ、復興が遅れている、また福島の状況もあるということからいいますと、この三年ということについてはいろいろ議論もございました。

 そういう中で、やはり本法案の主眼が資力要件の撤廃に対するニーズ等について、一つのめどとして三年が経過すればある程度落ち着くのではないかと、こういうことが考えられる。そういう点で、この東日本大震災の被害は甚大でありますので、その失効が予定されている時期における被災者の方々の状況によってはやっぱり延長も当然検討すべきであると。こういうことで、時限立法ではあっても状況によって延長というのはほかの法案でも多く見られることであります。

 ですから、そういう点で、あえてこの趣旨説明で、私どもが、三年の時限立法と しておりますが、失効が予定されている時期における被災者の状況によっては延長も当然検討されるべきものと考えているところですと、あえてこの趣旨説明に言及をさせていただいたところをよく御理解を賜ればと思っております。

井上哲士君

 終わります。ありがとうございました。


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