先ほど紹介した門野氏はこうも述べられているんですね。再審事件についても、もしその事件において、公判審理の段階で、今回の新法による公判前整理手続等が行われていたとすれば開示されたであろう証拠については証拠開示がなされてしかるべきであろうと、こういうふうに言われました。その後、この考えはこの東電女子社員殺害事件の再審請求審を担当した二人の判事にも引き継がれて、今回の決定になっているわけですね。
ところが、実際にはどうかと。あの福井の女子中学生の殺人事件では、弁護団が未開示証拠の開示を求めましたけれども、検察が当初拒否をして、名古屋高裁が異例の二度勧告をしてやっと重要な証拠が開示されたわけですね。この東電女子社員殺害事件については、二〇〇五年の再審請求の後、弁護団がこの鑑定可能な物証全ての開示を求めましたけれども、検察がこれを拒否をいたしました。その後、体液が保管されているのを検察側が明らかにしたのは、再審請求の弁護士が証拠開示を求めたもう三年八か月後だったんですね。しかし、さらにその後に遅れて、元被告の血液型と異なる付着物が検出されたという捜査段階の血液型鑑定結果の存在が明らかになったと。
いずれも、これがもっともっと早い段階で出てくれば、こんなに長い間元被告を拘束する必要もなかったわけでありまして、東電OL事件では、高裁が新たな資料を対象にしてDNA型鑑定を行わなかったら命令を出すぞと、こういうことまで言ったのでやっと検察が応じたということが複数の報道でされているわけです。
私が言いたいのは、こういう姿勢をもう変えるべきだと。やはり再審請求において、少なくとも今の新しい刑訴法の下では開示されるべきものについては、こういう高裁の強い、裁判所の強いあれがなくても進んで明らかにするということが、本来の再審制度の在り方からいっても検察の在り方からいっても必要ではないかと、こう思うわけでありますが、改めてどうでしょうか。