2012年2月27日(月)
災害対策特別委員会
- 新潟・長野の豪雪調査に基づき質問--積雪を放置すれば家屋倒壊や生命の危険が及ぶ場合、資力や親せきの有無に関わらず国の支援制度が使えることを確認
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
私も先日、新潟県の上越市や十日町市、長野県の栄村にも行きまして、五メートル近い積雪の中で、現地の御苦労やそして要望などを住民や行政の方から聞いてまいりました。それを踏まえまして、まず中川大臣に豪雪災害に対する基本姿勢についてお伺いしたいと思います。
雪はもちろん観光資源にもなります。水源確保のためにも必要です。一方で、豪雪は、それを放置しますと家屋の倒壊や、生命、身体の危険を及ぼします。そして、そういう建物や人的被害にまだ至らない場合であっても、除排雪に対する莫大な時間と費用、そして交通の途絶などが起きるわけですね。だから、こういう社会的、経済的損失それ自体が災害だという立場で支援することが必要だと思います。つまり、災害対策に当たっては、豪雪はそれ自体が災害だという基本姿勢が必要だと考えますけれども、いかがお考えかと。
もう一点、その立場から、地方自治体がやはりちゅうちょなく対策に取り組めるように必要な財政的支援は全て行うということが必要かと思いますが、併せてお伺いしたいと思います。
- 国務大臣(中川正春君=防災担当大臣)
豪雪は災害であるということ、そのとおりだというふうに思います。
具体的には、災害対策基本法第二条第一号において、災害というのは、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象により生ずる被害と、こういうふうに定義をされておりまして、豪雪というのがこの中でもしっかりと定義をなされているということ、これを認識をして私たちもしっかりとした対応をしていかなければいけないというふうに思っております。
具体的な被害といいますか、犠牲になっている部分というのは、これまでにも一番顕著に現れている屋根の雪下ろしの中の落下であるとか、それから雪崩による人的被害とか、人的被害というのがこうした形で発生をして、かつ増えてきているということは、恐らく背景に先ほど議論の出ました社会構造の変化、特に過疎化ということと老齢化ということが非常に大きく響いてきているんだろうというふうに思います。それだけに、もう財政的な支援というのはもちろんのことです。これは精いっぱいな形でやっていかなきゃいけないし、また財政基盤というのが弱まってきていると、この地域は、ということを認識して我々もやっていかなきゃいけないということでありますが、それと同時に、こうした社会背景といいますか、その組合せをどのように克服していくかということ、これをその自治体の皆さんと一緒に考えていくということだと思っております。
- 井上哲士君
今回の大雪地域には災害救助法が適用されました。新潟県では、適用された市町村や集落に県が借り上げたショベルカーやダンプなどの重機を貸し出すという支援策が二〇〇六年の豪雪から始まっております。重機の貸出期間は救助法の適用日を含めて十日間で、費用は国と県が持つということで、集落での除排雪に大変喜ばれる制度となっております。
まず、お聞きしますのは、今回、新潟県がこの大雪の地域に災害救助法の適用を決定した理由はどういうことでしょうか。
- 政府参考人(西藤公司君=厚生労働省審議官)
この冬の大雪に関しましては、新潟県では連日の降雪により、これを放置すれば住宅が倒壊するおそれが生じ、多数の方の生命又は身体に危害を受けるおそれがあることから、災害救助法の適用となります災害の範囲を定めました災害救助法施行令第一条第一項第四号に該当するということで、上越市ほか十一市町に対しまして、一月十四日以降、順次、災害救助法の適用をいたしております。
- 井上哲士君
多数の者の生命又は身体に危害を受けるおそれが生じていると、こういう災害救助法適用の理由にふさわしい救助が行われなければなりません。ところが、一部の地方自治体に行きますと、この災害救助法に基づく救助対象を狭く限定しているということが問題になっております。
私、上越市の板倉区というところの集落へ行きましたけれども、独り暮らしの七十八歳の女性が除雪ができないということで、一階がすっぽり屋根まで埋まっておりまして、二階の窓からロープを伝って出入りをするという状況がございました。ところが、息子が市内に住んでいるという理由で救助法による除雪支援の対象になっていなかったんです。
何でこんなことになるのかといいますと、市町村が通常の制度として行っている除雪支援の枠に災害救助法が適用されてもとらわれているという問題があるんです。
例えば、上越市の場合は、要援護世帯除雪費助成制度というのが通常の制度でございます。一世帯当たり一つの冬で六万五千六百円が助成されますが、その要綱を見ますと、助成対象は要援護世帯となっていて、高齢者や障害者などで、かつ市民税所得割が非課税という資力要件があります。それに加えて、親族の協力により除雪作業を行うことができると認められる世帯は除くとされているわけですね。大体、他の市町村の助成事業の対象も同じような傾向にございます。
上越市の文書を見ますと、災害救助法の適用に伴う除雪事業の対象も、この通常の市の除雪事業の決定者及び通常の事業の対象になり得るけれどもまだ申請していなかった人、これになっているんですね。ですから、せっかく災害救助法が適用されましても、通常の助成世帯が四千百二十四人で、適用後も三百六十一人追加されたのみという状況になっております。やはり多くの自治体でもこういう傾向があるんですね。
ただ、その豪雪の中で、まさに生命、身体に危険を、危害を受けるおそれが生じているということで、現に救助を必要としているのに、あなたは市内に息子がいるからとか、あなたは市民税の課税世帯だからといって救助はできませんというのは、これは災害救助法の趣旨と私は違うと思うんですね。そうではなくて、危険が生じているのに除排雪できない状況でいる世帯は災害救助法による救助の対象だと考えますけれども、そういうことでよろしいでしょうか。
- 政府参考人(西藤公司君)
災害救助法による住宅の除雪は、降雪による住宅の倒壊などによりまして住民の方が危害を受けるおそれがある場合であって、自らの資力によっては除雪を行うことができない場合に御本人に代わって行政が行うものでございます。
しかしながら、今回の記録的な大雪におきましては、除雪を行う人員の確保が難しい状況でもございますので、資力の有無にかかわらず、真に救助の必要がある方に対しましては災害救助法による住宅の除雪を行うことができる取扱いといたしております。こうした取扱いにつきましては、全国都道府県担当課長会議などを通じまして、自治体に対して周知徹底してまいりたいと考えております。
- 井上哲士君
資力の有無にかかわらずということでありますが、その同一自治体に親族がいるいない、これもなしで、関係ないということでよろしいですね。
- 政府参考人(西藤公司君)
それぞれの状況に応じまして、真に救助が必要かどうか、あるいはその緊急性などを総合的に判断していただければよろしいかと思っております。
- 井上哲士君
つまり、そういう場合であっても、必要な方については救助法の対象にできるということで、もう一回確認しますが、いいですか。
- 政府参考人(西藤公司君)
先ほどお答えいたしましたが、時間的な問題でありますとかそういうことも含めまして、緊急性を勘案した上で、真に必要があれば、救助の必要があれば適用ということで考えております。
- 井上哲士君
やはり、上越市の菖蒲地区というところへ行きました。二メートルもの屋根雪が積もって潰れる危険のある家で、もう雪庇が屋根から大きくはみ出しているという家だったんですね。ところが、住人の方はほかの自治体に住民票を置いていて、市に除雪をお願いをしたら、住民票がないということで受け入れられなかったというお話を聞きました。これも救助法の趣旨から外れていると思うんですね。
住民票がない場合であっても、必要な場合には当然この救助法に基づく救助の対象になるということでよろしいでしょうか。
- 政府参考人(西藤公司君)
災害救助法は災害に遭われた方に対しまして応急的な救助を実施することを目的としておりまして、災害救助法が適用された自治体におきましては、住民票の有無にかかわらず、災害に遭われた方に対し必要な救助を実施することといたしております。このため、災害救助法が適用された市町村に住民票がない方、例えば住民票を移していないが借家に住んでおられる方という方がいらっしゃるかと思いますが、そういう方に対しましても、積雪による住宅の倒壊などにより危害を受けるおそれがある場合には救助の対象となるものでございます。
これは災害救助法の原則でございまして、これまでも周知しているところでございますが、この点につきましては、改めて全国会議などを通じまして自治体に周知してまいりたいと考えております。
- 井上哲士君
様々な努力されていると思うんですが、現場に行くとこういう事態が現に起きているわけですから、しっかり地方自治体に、文書だけではなくて、個々の問題でしっかり周知徹底をしていただきたいと思います。
なぜ、この救助法による範囲を限定する自治体があるのかと。一つの理由に、本当に必要な人全てに救助法に基づく除雪をやって、果たしてちゃんと財政的手当てがされるんだろうかという不安を持っていらっしゃるんですね。特に、長野や新潟の今回の豪雪地域というのは、昨年の長野北部地震の地域と重なっております。家が大変傷んでいますから、小まめに除雪をしないと、雪下ろしをしないと家が壊れるということで、この点でも費用がかさむわけですね。
そこで、やはり自治体のこの災害救助法による除雪費用が仮に基準を超える場合であっても、これはきちっと実情に合わせて増額して手当てをするということを確認をしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
- 政府参考人(西藤公司君)
災害救助法での住宅の除雪に係る基準額でございますが、これ現在、十三万四千二百円と定めておりますが、これは個々の世帯に係る上限額ではなくて、市町村内の対象世帯の平均額に係る上限額でありますため、仮に個々の世帯が基準額を超えた場合であっても、対象世帯の平均額が基準額以下であれば国庫負担の対象となるものでございます。
また、市町村内の対象世帯の平均額が仮に基準額を超えた場合でありましても、豪雪が長引くとか、除雪の頻度がかなり多いというようなことがございましたら、厚生労働省、私どもと個別の協議の上で特別の基準を設けることにより国庫負担の対象とすることができるものでございます。
厚生労働省といたしましては、この点も含め、去る二月十七日に自治体に対しまして通知を出しているところでございますが、今後とも適切な運用が図られるよう、各自治体に対しまして丁寧に御相談に応じてまいりたいと考えております。
- 井上哲士君
各自治体がちゅうちょなく必要なことができるように徹底をお願いしたいと思います。
最後に、これ中川大臣にお聞きしますが、先日の朝日新聞に、旧松之山町の職員だった方が、豪雪の年に一家そろって村を離れる挙家離村ということについて書かれておりました。五六豪雪では春先に四十二戸がいなくなったと、五九豪雪では三十五戸が町を後にした、豪雪対策こそが過疎対策の要だということをこの方は言われております。
一方、今日も議論になっていますように、過疎化と高齢化が進行する中で、自力の除雪も困難な人が増えていますし、人材の確保が非常に困難になっております。
そこで、例えば、長野県の栄村では独自に冬の間に村の非常勤の特別職員として雪害対策救助員というのを今十五人配置されております。そして、高齢者世帯などの除雪に当たっていらっしゃいます。新潟県にも同様の冬期集落保安要員制度というのがあって、孤立的状況にある集落の除雪とか圧雪、それから救急患者の移送、それから要援護世帯の除雪などを行っております。十日町市の場合は、県と市の制度で合わせて十五人がこういう保安員になっていらっしゃいます。二十年続けておられるという方からお話聞きましたけれども、毎朝五時から雪上車で圧雪を行って、終了後はNPO法人の一員として要援護世帯の除雪に当たっていらっしゃると。非常にこの集落になくてはならない存在だなということを感じました。
私は、やっぱりこういう制度、こういう人材確保というのはこれからますます過疎化と高齢化の中で必要になってきていると思うんですけれども、栄村などから、是非国の制度としてほしいという要望も出ておりました。こういう取組に対する国の支援の強化について、最後、お聞きしたいと思います。
- 委員長(松下新平君)
時間が参っておりますので、簡潔にお願いします。
- 国務大臣(中川正春君)
私も先般行ったときに、団地がコミュニティー全体で雪下ろしをやって、それを行政とタイアップしている、その雪下ろしをやっていくときに独り暮らしの老人世帯も一緒に隣近所でやっていくというような、そういう対応をしている状況を視察をさせていただきました。
いろんな取組が考えられるんだろうというふうに思います。そういうものを国としてどういった支援ができるのか、あるいはまた制度としてどう組み込んでいったらいいのか、真剣に考えていきたいというふうに思います。
- 井上哲士君
終わります。
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