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2012年9月5日(水)

政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会

  • 参院選挙区の「四増四減案」の審議で、一票の価値の平等という憲法上の要請にこたえるものでないとして反対した

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 我が党は、参議院選挙制度の見直しについて、憲法上の要請である一票の価値の平等を実現をするために一票の較差の抜本是正を図ることを前提にして、選挙制度の基本は多様な民意を議席に正確に反映させることにあると、そして定数削減は民意の削減につながるものであり、総定数、比例定数とも削るべきでないと、こういう立場で議論に参加をしてまいりました。

 先ほど来、身を削る改革ということが言われてきたわけでありますが、私は、例えば政党助成金などは我々は廃止するという立場でありますが、議会の定数を削減することと身を削るということは違うと思っております。国会の議席というのは、今議席を手にしている人たちの財産でも持ち物でもありません。本来は国民の言わば分身として働くのが国会議員でありますから、それを削るということは逆に国民の身を削ることになると、そういう立場で議論してきたことも申し上げておきたいと思います。

 その上で、憲法上、この選挙の制度や定数を考えるに当たって、その基本は多様な民意を議席に正確に反映することだと私どもは考えますけれども、提案した両党の発議者からそれぞれ伺いたいと思います。

一川保夫君(法案提出者、民主参院議員)

 先生の御指摘のように、多様な民意を、できるだけそれを平等に国会の選挙制度の中に反映させるという基本的なその考え方は我々も同感ではございますけれども、ただ一方では、選挙制度だけでその問題をしっかりと確保できるかどうかということになると、片や、先ほど来のように、我が国が今抱えている政策課題というものをこういった制度の中でどう受け止めて解決をしていくかということも併せて考えておく必要があるんではないかなというふうに思います。

 それは、人口に単純に比例するような制度だけではそれは十分私は満足できないところがあるんではないかなと。ただ、しかし、憲法上、国民を代表する選挙された者で構成されるというような表現がありますけれども、やはり国民が国民らしい生活をするためにはいろんな資源に依存するわけですから、その資源というのはどこにあるかといった場合に、大都会に皆資源があるわけじゃありませんので、そういう面では地方と都会とのいろんなバランスの中でいろんな政策が動いているということでございます。

 ですから、そういうことも考慮に入れながら、やはり選挙制度というものはそういうことも考えた上での制度でないと、本当に参議院らしい、そういう選挙制度につながらないんではないかなという感じも一方でいたしますので、今先生がおっしゃるような、いろんな国民のニーズをどう反映するかという範疇に入るかもしれませんけれども、それは単純に人口に比例した定数配分だけではないだろうと、較差是正だけではないだろうという感じを私は率直に受けております。

委員以外の議員(溝手顕正君=法案提出者、自民参院議員))

 座長とほぼ同趣旨の考え方ですが、参議院の問題としてとらえて申し上げますと、我々は、やっぱり衆議院と参議院との対比において我々の存在というのをしっかり考える必要があるだろうと思います。与えられた権限、権能、人数ということをしっかり考えないと、なかなかおっしゃったように数だけで議論をするのは難しいだろうと思います。

 それから、立法趣旨というんですか、参議院設立のときの様々な議論、きっかけ、いろいろありました。そういうことも十分反すうしてみないと、どうやって民意を反映したらいいのかというのはなかなか難しい問題だろうと思います。

 原則論で申し上げますと井上先生のおっしゃるとおりで、そういうことを総合的に勘案して、できるだけ多くの民意を反映するような制度改革を目指すべきだと、このように思っているところです。

井上哲士君

 私は、例えば比例と選挙区の組合せとかいろんな、ブロックということもありますけれども、その一番の土台に多様な民意を反映をするということを置くということは、これは基本に据えられなくちゃいけないと思っております。

 そこで、今回の提案でありますが、二〇〇七年選挙での改正のときの参議院の改革協の専門委員会、それからその後につくられたやはり専門委員会、そして今回の選挙制度の協議会、私はこれは三回続けて参加をしてまいりました。

 今回の較差の是正は、この流れの中でも違う対応が求められたわけですね。つまり、六年前の較差是正の議論は現行制度の枠の中で議論をしました。そして、四増四減案が成立をいたしました。この改正の下に行われた最初の選挙である二〇〇七年の選挙に関する判決で、最高裁が、四・八六倍を合憲としつつ、大きな不平等が存する状態であり、国会において速やかな検討を求めました。そして、この一票の価値の平等という憲法上の要請にこたえるためには今の都道府県単位での選挙制度は困難だと、是正のためには選挙制度の仕組み自体を変える必要があるという、これはもう裁判史上初めての判断を最高裁がしたというのが、このまさに専門委員会の検討のさなかにあったわけですね。

 そういうことでいいますと、先ほど来、最高裁の判例は五倍を違憲の目安としているようなことも言われましたけれども、私は、最高裁ははるかにそれよりも今踏み込んでいると思うんです。それに対応した法案というものが必要だったと思うんですが、今回の改正案は、そういう憲法上の要請である一票の価値の平等は現行制度の枠内ではできないという司法の判断を踏まえていないんではないかと思いますが、いかがでしょうか。

一川保夫君

 そこは、もう先ほど来いろいろ議論の中でもお話ししたと思いますけれども、今回も、各会派のいろんな意見を議論する中で、一つの成案、意見を、考え方を取りまとめていくという中では、そういう先生が期待するようなものにはなっておりませんけれども、しかし、議論の中ではそういう考え方も、先生を始め、いろいろと述べられた方もおられます。

 私たちはいろんな問題意識を持ちながら当然これからもやるべきだと思いますが、当面は、今、来年の選挙を目指して一つの是正策を作り上げるといったときに、なかなか一気にそういった考え方まで導入するというのは非常に難しかったということでございますし、なかなか全体の合意形成が得られないという、そういう状況であったというふうに思います。

 ですから、今回のこういう、取りあえず、これまでの最高裁の判決の経過からして、一票の較差を五倍を切るような姿に当面はまず持っていくと。それと併せて、先ほど来言っていますように、抜本的な見直し。本来であれば、本来であればというのはおかしいですけれども、従来は、参議院の選挙制度というのは、三年ごとの選挙があるものですから、裏表、裏表という議論があって、六年間、一旦その制度を踏襲すべきだという考え方が何となくございましたけれども、これだけ時代の変化がいろいろ激しい、国民のニーズがいろんな面で多様化してきているという状況の中で、三年ごとの選挙制度にやはり国民の声なり我々の考え方を反映させることもいいんではないかということで、先生も御案内のとおり、二十八年の通常選挙に向けて次の抜本的な見直しを行おうということを附則に書かさせていただいたということでございますので、そこのところは御理解をしていただきたいと思っております。

井上哲士君

 私が期待するというよりも、最高裁が期待するものがないということを私は申し上げているんですね。

 附則に書いたと、抜本改正を、と言うんですが、そこで聞くんですが、先ほど申し上げました〇七年選挙で四増四減による較差是正を行った後の〇八年六月から改革協の下に専門委員会を設置をし、発議者である藤原議員がその委員長であられました。

 そのときの報告書では、現行選挙制度の仕組みの見直しの必要性については共通の理解ができたとして、二〇一三年の選挙の改定に向けて工程表まで確認をしたわけですね。この報告は、各派の代表による改革協でも了承され議長にも報告をされたわけであります。ところが、各会派でその仕組みの見直しの必要性の共通の理解ができたとし、工程表まで決めながら、その後つくられたこの協議会において、民主党からも自民党からも制度の抜本改正には踏み込まない提案しか出てこなかったわけですね。

 先ほど、今回が抜本改正のスタートだという与党の方からの発言がありましたが、本来我々は、これをゴールにするという工程表を決めていたんですよ。そのゴールがいつの間にかスタートに変わってしまうという発言を聞いて、一体どういう議論がされていたかと思うんですが、民主党、自民党それぞれ、この報告書がどういうふうに取り扱われてきたんでしょうか。

委員以外の議員(藤原正司君=法案提出者、民主参院議員))

 前回と今回の違いは、一つは参議院改革協というのがあって、その下で専門委員長を私がやらせていただいたと。今おられますけど、元議長が。それから、その後、いろいろ元議長だとか前議長だとか変化はありましたが、今回は最も新しい検討委員会、協議会の下に最終的な私案が出されて答えが出たということだと思います。

 ですから、私は、私が専門委員長のときにまとめたのは、一つは抜本改正しようじゃないのということと、それを法制化して、当時の本年中に法律として通しましょうということをそれぞれ合意いただいた。具体的な方法は引き続き協議する予定だったのが、いろんなアクシデントが発生したということは御案内のとおりでございます。

 以上です。

委員以外の議員(溝手顕正君)

 選挙制度というのは、私は国会で協議する、審議する中で最も政治性の強い法案だろうと思います。ですから、ドラスチックに変えていくことも極めて政治的なことであろうと思いますが、現状をしっかり守る、とどまるというのも極めて政治的なことだろうと思います。そういった各党、各人の思惑がぶつかり合って出たのがこの当院における結論であると。

 ですから、極めて政治的にお互いに議論をし、真摯に改革のために頑張ったということは否定はできないと私は思います。

井上哲士君

 私がなぜこのことを聞くかといいますと、最高裁判決が違憲とまではしなかった理由を、二〇一三年選挙に向けて改正案の検討に入り、二〇一一年には改正案の取りまとめを行った上でという目標を定めた議論を行っている。つまり、あの専門委員会の報告を受けて議論をやっているから違憲とはしないというのが最高裁判決だったんです。そして、先ほどありましたように、二〇一〇年選挙に関する各地の高裁での違憲や違憲状態判決も違憲状態にとどめたのは、目標を定めて議論を行っていると、だから違憲とは言いませんというのが全部判決なんですよ。

 ところが、その報告は実際上は生かされずに、結局、今回も抜本改正は先送りということになりますと、あれは裁判所向けのアリバイだったのかということにもなりかねないわけですね。私は、そんなことをやれば今度は違憲判決が出る可能性が高まると、こう思いますけれども、発議者はどうでしょうか。

一川保夫君

 今先生が御指摘のように、藤原先生が説明したあの時期の一つの工程表といったようなものがそのとおりしっかりと守られていなかったという面では申し訳ない面もあると思います。ただ、我々はそれなりに各会派いろいろ努力したことは事実でございますし、いろんな案を出し合いながらそこで議論をしてきたことも事実でございます。

 前回の場合には法律の附則の中にはそういうことは明記していなかったと思いますけれども、今回は、そういった附則の中にしっかりと二十八年の通常選挙までにそういう結論を得ましょうという趣旨のことをうたわせてもらうということでございますので、そこは我々立法府側のいろんな努力というものもある程度評価していただけるのではないかなと。ただ、しかしそれは、それまで何もしないでサボっていたんでは何にもなりませんけれども、当然、しっかりと協議会を重ねながらそういった議論を深めていくということは非常に大事な課題ではないかというふうに思っております。

井上哲士君

 時間ですので終わりますが、附則にあるこの結論を得るものとするのが、協議はしたけれどもまとまらずに引き続き先延ばしということには絶対になってはならないということを強く主張いたしまして、質問を終わります。


<反対討論>

井上哲士君

 私は、日本共産党を代表して、公職選挙法の一部を改正する法律案、参議院選挙制度四増四減案に反対の討論を行います。

 我が党は、参議院選挙制度の見直しについて、憲法上の要請である一票の価値の平等を実現するためには制度そのものの抜本改革が不可欠であることを前提に、選挙制度の基本は多様な民意を議席に正確に反映する制度にすること、総定数、比例定数共に削減するべきではないとの立場で各党協議などでも主張してまいりました。

 最高裁は、二〇〇七年参議院選挙に関する定数訴訟判決で四・八六倍の較差を生み出していることを違憲状態であると指摘した上で、最大較差の大幅な縮小を図るためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できないとして、投票価値の平等の観点から都道府県単位の選挙制度自体の見直しを提起しました。

 この下で、二〇一〇年十二月以来、議長と各派代表者による選挙制度改革検討会の下で協議が行われ、当時の西岡議長から、総定数を削減せず、全国十一ブロック比例代表制の案が提案され、多数の会派がこれをたたき台とすべきだと主張しました。

 ところが、本年七月の協議会で一川座長から四増四減案が示され、各党合意に至らないまま、八月二十八日、座長私案を元にした本法案が民主、自民両党から提出されたのであります。

 四増四減案は、これまでの各党協議の議論を踏まえないものであり、抜本改革を先送りし、しかも四・七四六倍もの較差を容認するものです。一票の価値の平等という憲法上の要請に到底こたえるものではなく、反対であります。

 以上です。


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