午前中の参院本会議で、軍拡財源法の討論・採決が行われ、与党などの賛成多数で残念ながら可決・成立しました。 日本共産党を代表して私が反対討論に立ち、なぜ、成立させてはならない法案なのか、怒りをこめて訴えました。
本会議では、当事者の願いに逆行するLGBT四党案や刑法等改正案の採決も行われました。
参院本会議終了後、立憲民主党が内閣不信任決議案を提出。14時からの本会議で、趣旨弁明と討論・採決が行われています。日本共産党から宮本徹議院か賛成討論に立ちます。
日本共産党の井上哲士です。会派を代表して軍拡財源法案に断固反対の討論を行います。
日本共産党は昨日の委員会での質疑終局・採決そのものに反対しました。
政府は今日決定する「骨太の方針」に、2024年度からとなっている軍拡財源確保のための増税の開始時期を2025年度以降への先延ばしを可能とすることを盛り込んでいます。自民党の「防衛関係費の財源検討に関する特命委員会」の提言を受けたものです。
しかし、法案質疑の中で鈴木財務相は、防衛財源に繰り入れる税外収入について、「24年度以降、具体的に見込めるものはない」と答弁してきました。昨日の委員会で、増税開始時期の先延ばしに財源の見通しがあるのかと質しましたが、大臣は「希望」を述べるだけでした。見通しもないのに先送りだけを示すのは、選挙をにらんで国民を欺くものにほかなりません。
だいたい、今、増税開始時期の先送りを言うことなど、これまでの審議が何だったのとかということになります。さらに質すことは国会の責務です。にもかかわらず審議を終局し採決したことは到底認められません。
本法案は専守防衛を投げ捨て、憲法違反の敵基地攻撃能力の保有を含む、5年間で43兆円の大軍拡を推し進めるものです。
審議を通じて、敵基地攻撃能力は日本独自ではなく、米国の先制攻撃戦略「統合ミサイル防衛」(IAMD)の下、米軍の指揮下で運用される危険な実態が浮き彫りになりました。
わが党が明らかにした、防衛省が内閣法制局に示していた内部文書では、日米の敵基地攻撃の共同作戦の具体的内容として、攻撃計画の立案から攻撃目標の分担、指揮統制に基づく実際の攻撃や再攻撃などを繰り返すサイクル図が示されています。
「日米一体ではないか」との我が党議員の質問に浜田防衛相は「この図で見れば、そういう風に見えるかもしれない」と答弁せざるを得ませんでした。
内部文書は、敵基地の情報や攻撃の成果の情報を日米で共有するとしています。しかし日本には独自にそうした情報を把握する能力がなく、米国の情報は正しいという前提で対応をせざるを得ません。
政府は敵基地攻撃は「必要最小限度の実力行使にとどまる」としてきましたが、米国が良しというまで、文字通り際限のない戦争に巻き込まれてしまいかねません。
相手国からの反撃をうけ、日本が深刻な被害を受けることは避けられません。専守防衛に徹する、日本を守るためという大軍拡の論拠はもはや崩れており、その財源確保のための本法律案を成立させることは許されません。
しかも、敵基地攻撃能力の保有は天井知らずの軍拡に道を開き、浪費や談合をも生じさせるものになっています。
価格も納期も契約解除も米国政府が一方的に決め、米国製兵器を爆買いする「有償軍事援助」FMSについて、参議院は2020年の本会議で改善を求める警告決議を上げましたが、改善は遅々として進んでいません。ところが米国の要求をうけて、今年度予算でFMSは一気に昨年度の4倍の1兆4768億円に急増しています。
日米首脳会談でのトランプ政権の要求で急遽導入を決めた「イージス・アショア」はずさんな計画で破綻しましたが、防衛省はFMSで契約したSPY7レーダーに固執して艦船への搭載に変更し、費用は大幅に増大した上、今後どこまで膨れ上がるか示すこともできません。
現在のイージス艦八隻体制となる中、新しい艦船の導入ごとにFMSによる装備の割合が増え、元防衛大臣が自著の中で、FMSにより「日本製武器が駆逐されている」と苦言を述べる有様です。
九年前にFMSで3機を契約した無人偵察機グローバルホークは、やっと昨年3月に2機納品されたものの、残る一機の納品はいまだ決まっていません。納品されないうちに、米国は日本が購入するのと同型機を「時代遅れ」として退役させることを決めてしまいました。
にもかかわらず、本体価格は当初の519億円が613億円に、維持整備費は2722億円から3519億円へと米国の都合で大幅に膨れ上がっています。
いずれもおよそ、通常の取引では考えられないものですが、大軍拡の下で今後もFMSが青天井で膨れ上がることは必至です。
かつて防衛施設庁を解体にまで追い込んだ談合の動きが、大軍拡の中で復活していることは重大です。防衛省は核攻撃までも想定し、5年で4兆円もかけて全国283地区、約2万3千棟の自衛隊施設の強靭化事業を始めています。
ところが予算成立前の昨年12月から一部のゼネコン等を集めて意見交換会を行い、受注可能な事業の数や額、希望する発注方法などについてアンケートをとるという前代未聞のことが行われています。
驚くべきことに、そのアンケートの実施を防衛省から受託している防衛基盤整備協会には施設庁談合で有罪となった3人の施設庁OBが揃って役員についています。しかも、施設庁談合では天下り先確保のためにゼネコンに事前に意向を聞いて発注の割振表、すなわち談合表をつくった本人が、 このアンケートの中心を担っています。
官製談合への反省もなく、発注前にゼネコンの意向を聞くことが繰り返されているのです。談合につながるという指摘に、鈴木大臣も「予算執行段階でも、適切な対応を防衛省に求める」と答弁されましたが、事業そのものを抜本的に見直すことを強く求めます。
さらに、大軍拡の財源確保のために、将来にわたり国民に負担が押し付けられることは重大です。
新たに創設される「防衛力強化資金」は複数年度にわたり自由に使えるものです。予算の単年度主義、財政民主主義を壊すものです。
軍事費を確保するために暮らしや復興支援、社会保障、中小企業に充てるべき資金をかき集め、流用しようとしていることは断じて許されません。
政府は中小企業の資金繰りのセーフティネットの役割を果たしている商工中金の政府保有株式について「当分の間保有」するとしていました。ところが今国会で唐突に、「2年以内に売却」するとした法案を成立させました。
鈴木大臣は、その売却益について、「防衛力強化資金への繰り入れは可能」と答弁しました。先に述べた自民党特命委員会の提言の中にも商工中金やNTTの政府保有株の売却益も財源候補として挙げられました。中小企業向け金融や公共性の高い通信事業が軍事費のためにゆがめられることはあってはなりません。
東日本大震災の復興所得税の軍拡財源への転用には福島市で開かれた地方公聴会でも「被災者の願いに真っ向から反するものであり受け入れがたい」との声が公述人から示されました。
医療体制の強化や職員の待遇改善に使うべき国立病院機構と地域医療機能推進機構の積立金を軍拡財源に回すことも認められません。
さらに43兆円の軍事費が優先されることにより岸田政権が子育て対策を目玉に打ち出しながら財源を示すことができない事態となっています。
決算剰余金も軍事費に充てられますが、その元となる巨額の予備費は赤字国債が原資です。未来の世代に莫大な増税を強いることになりかねません。
地方公聴会では、ウクライナで原発が攻撃対象になった姿と福島の原発を重ねてみれば、いったん戦争になれば原爆に等しいとてつもない被害になるという声が公述人からありました。
やるべきことは、軍事の悪循環で一層の危険を作り出す大軍拡ではなく憲法九条を生かし、地域のすべての国を包摂する平和の枠組みを発展させる外交努力であることを申し上げ、反対討論とします。