今回の調査でのメインであるセラード地域での日本とブラジルの農業開発協力事業の視察。農地を上空から見た後に現地に入り、関係者とも懇談。充実した視察ができました。
朝、目覚めると肌寒いような気温。同じブラジルでも赤道直下のベレンと違い緯度が高いうえに海抜1160mにあるブラジリアは年間を通じて平均最高気温が25度台から28度台で、実にすごしやすいまちです。
こうした快適な気候や国土の中央部に位置するなどの条件を持つこの地に首都が移転したのは約50年前。何もなかった場所に一から都市設計をして作られた都 市で、中央に大きな人造湖を配し、道路は広く緑もたっぷりあるゆったりとした町並みのなかに斬新なデザインの建物が並ぶ、とてもきれいな町です。
セラードの農業視察には6人乗りの小型プロペラ飛行機で行きました。小型機に乗るのは初めてのこと。一時間近いフライトで、上空からセラード地域の灌漑の様子もじっくり見ることができました。
えらく低空飛行をするなと思っていたら、舗装もされていない畑の中の道路のようなところに着陸。びっくりしました。
ブラジルの内陸にある、セラードと呼ばれる植生の地域は国土の4分の1を占め、日本の国土の5.5倍もの広さです。近年まで農業生産には不適な土地とされ、「セラード(閉ざされた地)」と呼ばれてきました。
しかし79年に開始された日本とブラジルの農業開発協力事業により、土壌改良や灌漑技術の導入により農業に適した土地にできることが証明され、以後、急速 に農業開発が進みました。この事業をきっかけにすでに1000万haもの農地が開発され、ブラジルは世界第二の大豆生産国となり、さらに多角化も進んでい ます。
非常に高く評価されているこの事業の現状や課題をしっかりつかむための視察。上空からみたこの地域は想像をはるかに超える広い場所でした。畑に降り立つと、見渡す限り山もなく、草原と畑による360度の地平線が見えました。生まれて初めて見るすごい風景です。
巨大灌漑施設/農家と畑を訪問・懇談/IBAMA/議会・政府要人と懇談
小型機で到着したのは、農業開発事業の第二次本格事業で入植したパイネイラス地域。畑や農家を訪問しながら、お話をお聞きしました。
視察にはJICAブラジル事務所の芳賀克彦所長、日伯農業開発株式会社(カンポ社)の秋本満敏副社長も同行して詳しい説明をしてくださいました。
驚くのはそのスケールの大きさ。セントラルピボット方式の灌漑施設は、長さ500m前後の散水装置(写真上)で、一方を中心にしてぐるりと回りながら灌漑をすすめます。灌漑される円形の畑はひとつで60haもの広さになります。とにかく、でかい。
大豆やフェィジョン豆、とうもろこし、たまねぎ、ニンニク、かぼちゃ、コーヒーなどが栽培されている畑や機械による選別作業をしている農家を訪問してお話を聞きました。
同地域には29家族が入植され、そのうち8家族が日系の方。24個の円形の灌漑地ができ、全体で1505haにもなります。年間収穫量は18.860㌧。 作物の価格変動により左右されますが、相当の収入も得ることができ、収穫期を中心に直接・間接で2400人の雇用機会を生み出したとのことでした。
日系二世で3兄弟で入植されている菊池さんのお宅で、さまざまなお話を聞きましたが、日本政府がこうした事業を支援したことに大変、感謝されていました。菊池さんの作られたコーヒー豆もいただきました。
菊池さんも今は、「カーギル」に出荷しているとのこと。この事業が成功のめどがついたころからアメリカの穀物メジャーが進出して流通を押さえていました。農業の援助は日本が行うが、もうけの大半は穀物メジャーが押さえ、流通も左右するという構図は問題ありです。
次々と訪問して昼食は14:30ごろになりましたが、大変充実した視察をすることができました。
小型機でブラジリアに戻り、環境再生可能天然資源院(IBAMA)を訪問。アマゾンの森林保全のために衛星画像で監視していますが、雨季で雲が広がっているときでも監視を可能にしたのが日本のシステムです。
ブラジルと協力して衛星による監視強化のプロジェクトが今年6月から始まったとこ。日本から技術者の方もこられ、早速、成果を挙げているようでした。日本の技術が世界の環境保全に役立てられている事業でした。
車の中から国会議事堂など市内を見た後、ホテルに戻り、夜はヒベイロ上院議員・伯日議員連盟副会長、ファラーニ国協長官、ボテルホ・カンポ社社長らを招いての夕食懇談会。ブラジルの名物料理であるシュラスコをいただきながら、活発な意見交換ができました。