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質問第一二七号 米原子力空母ジョージ・ワシントンのメンテナンス作業に関する質問主意書

質問第一二七号 米原子力空母ジョージ・ワシントンのメンテナンス作業に関する質問主意書

 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。  平成二十一年四月十三日

井上 哲士

参議院議長 江田 五月 殿


 米海軍は、本年一月五日から五月までの予定で、米横須賀海軍施設(以下「横須賀基地」という。)において、昨年九月、わが国に配備した原子力空母「ジョージ・ワシントン」のメンテナンス作業を行っている。この作業には、米国内でニミッツ級原子力空母の大規模メンテナンス能力をもつ「ピュージェット・サウンド・シップ・ヤード」(ピュージェットサウンド海軍造船所)から五百五十人もの労働者が軍属として入国し、任務に就いている。「合衆国原子力軍艦の安全性に関するファクトシート」(二〇〇六年四月十七日、以下「ファクトシート」という。)は、「一九六四年のエード・メモワールで表明された燃料交換及び修理に関する合衆国のコミットメントは、引き続き完全に堅持される。燃料交換及び原子力の修理は、外国では行われない。」としているが、この「約束」が履行されているのか、四箇月にもわたる「メンテナンス作業」において、いったい何が行われているのか、「ジョージ・ワシントン」の母港化により、横須賀が米海軍の恒常的な放射能基地となるのではないか、市民の不安は大きい。以下、質問する。

一 米原子力空母「ジョージ・ワシントン」のメンテナンス作業の内容について

 「海軍原子力推進機関プログラム」は、マスコミの質問状に対し、ピュージェットサウンド海軍造船所から来た五百五十人の米作業員の作業内容について、「(原子力推進機関の)一次系、二次系の両方のプラントに関連する部品やシステムに関するもの」などの回答をしたとの報道がある(「朝日新聞」二〇〇九年三月三十日等)。

1 三月二十四日の参議院外交防衛委員会での質問に対し、梅本和義北米局長は「アメリカ側から累次説明を得ておりますのは、放射能管理を必要とする作業というものはやらないんだということ」と答弁している。この「放射能管理を必要とする作業」とは、具体的にはどういう作業を指すのか。定義を明らかにされたい。

2 原子炉に直結する一次冷却系設備も含む作業を行ったのであれば、「放射能管理を必要とする作業」を実施したということではないか。そうでないのであれば、その理由を具体的に説明されたい。

3 「ファクトシート」は、「第三の防護壁は、原子炉格納容器である。これは、設計され建造された高強度の構造物であり、その内部に全体が完全に溶接された一次系及び原子炉が位置する。」としている。一次冷却系設備を含む作業を行ったのであれば、当然、作業は原子炉格納容器に立ち入った作業を含むと理解してよいか。

4 一九六四年の「エード・メモワール」は、「通常の原子力潜水艦の燃料交換及び動力装置の修理を日本国又はその領海内において行うことは考えられていない。」とした上で、それに続いて「放射能にさらされた物質は、通常、外国の港にある間は、通常の原子力潜水艦から搬出されることはない。例外的な事情の下で、放射能にさらされた物質が搬出される場合においても、それは、危険を生ずることのない方法で、かつ、合衆国の港においてとられる手続きに従い行われる。」とされている。「例外的な事情の下で」とは、どのような状況や事態を想定しているのか。また「放射能にさらされた物質」とは一次冷却水も含まれるのか。またその際には、わが国への通知・通告はどのような形で行われるのか。

5 横須賀市長は、二〇〇九年三月二日の市議会において「(ピュージェットサウンド海軍造船所からの米作業員は)米軍属として地位協定に基づき入国し、市内外のホテルに宿泊していると聞いている」と答弁している。「米軍属」として入国したのは事実か。入国時期、人数、入国ルートについて、明らかにされたい。

6 横須賀基地内で作業を行ったこれらの米作業員が、作業期間中、基地外に出て生活することもあったと思われるが、これら作業員への放射能チェックはどのように行われたのか。

7 今回の「ジョージ・ワシントン」のメンテナンス作業の終了日時はいつか。

8 米海軍は、「ジョージ・ワシントン」のメンテナンスを今後も横須賀基地において実施するとしているのか。また、外務省は同様のメンテナンスが必要となる頻度又は周期について、どのように承知しているか。

9 三月二十四日の参議院外交防衛委員会において、「ジョージ・ワシントン」のメンテナンス作業について米側に情報提供を求めるべきとただした質問に対し、中曽根弘文外務大臣は、「更なる情報提供を求めると、そういう考えはございません」と答弁した。その後、前述のとおり、メンテナンスの作業内容に関し、新たな事実も報道されているが、外務省は今後いっさい、情報の照会をしないのか。首都圏三千万人の安全を鑑みれば、更なる照会を行い公表すべきと考えるが、改めて政府の見解を示されたい。

二 「固形廃棄物」の搬出について

 日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」が、在日米軍司令部から得た回答で「ジョージ・ワシントン」のメンテナンス作業中に出た「低レベル放射能廃棄物」約一トンが横須賀基地から三月二十八日に米国向けに搬出された事実が確認された。参議院外交防衛委員会の委員派遣視察の際にも、在日米海軍のケリー司令官は、「固形廃棄物」の中身は「(放射能を帯びた)布きれやプラスチックなど」であると答えている。

1 外務省はこの搬出について、米側から事前通知を受けていたか。受けていたとすれば、その通知は、いつ、どのように受けたのか。また、日米間に事前通知のとりきめはあるか。

2 外務省は搬出された内容物が放射性廃棄物であるということを承知していたのか。 3 この「固形廃棄物」約一トンは、一月に入港した「ジョージ・ワシントン」から出されたものに間違いないか。

4 外務省発行の国民向けパンフレット「米海軍の原子力艦の安全性」では「固定廃棄物も適切に密封された上で米国内で処理されます」としているが、布きれやプラスチックシートで約一トンというと、総体積も大きい。横須賀基地内のどの施設で作業が行われ、どのような形で管理・保管され、どのように搬出されたのか。

5 一九六四年の「エード・メモワール」の外交合意「覚書」では、「固形廃棄物は、承認された手続きに従い、通常の原子力潜水艦によって合衆国の沿岸の施設又は専用の施設船に運ばれたのち、梱包され、かつ、合衆国内に埋められる。」とされている。一九六四年以降、米原子力艦船から出された「固形廃棄物」をわが国提供区域内で「適切に密封」して搬出した事実はあるか。あるとするならば、その日時、基地名、搬出の原因となった原子力艦船名を明らかにされたい。

6 今回の「固形廃棄物」の搬出は、一の4における、一九六四年の「エード・メモワール」の引用部分に該当する措置であるか。であるなら、今回の搬出は「例外的な事情の下」での搬出作業ということか。

7 三月二十八日の「固形廃棄物」の搬出に続く、搬出の予定及び実績はあるか。

8 「ファクトシート」は、「固形廃棄物」について、原子力空母に限らず、他の米原子力艦船からの「固形廃棄物」の処理についても、わが国の提供施設・区域内において「適切に密封され」米国内で処理するために搬出されるとしたものであるか、見解を示されたい。

三 「CIF」と呼ばれる施設について

 米太平洋軍のキーティング司令官は、二〇〇九年三月十九日、米下院歳出委員会・軍事建設小委員会公聴会において、米海軍の「原子力空母の恒常的な駐留」に不可欠とされる「CIF」(Controlled Industrial Facility)と呼ばれる施設が日本国内にあるとの証言を行っている。「CIF」については、米海軍施設本部(NAVFAC)の一九九八年十一月三日付文書、「暫定技術指針-ニミッツ級空母に関する母港施設基準」が、「母港から合理的な距離の範囲内において利用可能であるべき施設」の一つに挙げ、「Controlled Industrial Facility(CIF)、もしくは放射能作業施設は、海軍の原子力推進装置に関連した放射能管理された装置及び部品の検査、改修ならびに修理のために使われる。また施設は、放射能管理された液体及び固形物の廃棄に関する処理、再利用及び梱包のための施設ならびに設備を提供する。施設には、管理及びその他の支援機能のための放射能管理されないスペースが含まれる。」と説明している。

1 外務省は、「CIF」と呼ばれるこの施設は日本国内のどこにあり、どのような施設であると承知しているか。

2 この「CIF」は、「放射能管理を必要とする」作業を行う施設ではないのか。この施設の有無、その場所、設備概要、人員について明らかにされたい。

3 「USS GEORGE WASHINGTON(CVN73)Information」は、「米海軍原子力推進機関プログラム」の駐日代表として、ジョー・ギスト博士が横須賀に駐在していると発表している。同・駐日代表の横須賀就任はいつであるか。どこに駐在するのか。

4 「USS GEORGE WASHINGTON(CVN73)Information」は、「米海軍原子力推進機関プログラム」の代表は、原子力艦船の母港となっているすべての造船所と管理施設に配置するとしている。横須賀基地を放射能作業を行う基地とするということか、見解を示されたい。

 右質問する。

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