・クラスター弾禁止条約の質疑。クラスター弾と劣化ウラン弾の禁止のために、唯一の被爆国として日本が先頭に立つべきだと外相をただす。
- 井上哲士君
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日本共産党の井上哲士です。
三条約についてはいずれも賛成です。今日は、クラスター弾に関する条約に関してお聞きいたします。
中曽根大臣がノルウェーで行われた署名式で行われたスピーチを読まさせていただきました。カンボジアやタイでの地雷除去のために活躍する日本のNGOに対する支援を行い、そして現場に行ったその実感としてこう言われております。紛争終結後も人々の憎しみをよみがえらせるような兵器の使用を許してはならないと痛切に感じましたと言われていることに、私も大変共感を覚えました。そういう点でいいますと、その典型であるこのクラスター爆弾をなくすという点で今後の日本の対応が問われております。
まず、防衛省にお聞きするんですが、この米、ロ、中国、イスラエルなど署名していない国への働きかけが非常に重要になってまいります。その一つとして、日本の領土、領空、領海におけるクラスター弾の使用や保管を行わないように米軍に求めるべきだと思います。特に、日本の決断でできることとして、クラスター弾を使用する米軍と自衛隊の共同訓練については今後は行わないとすべきだと思いますけれども、防衛大臣、いかがでしょうか。
- 防衛大臣(浜田靖一君)
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我が国への武力攻撃に際して、自衛隊がクラスター弾を使用することも排除されない米軍との共同対処行動を取ることや、かかる状況を想定した米軍との共同訓練を実施することに対して、条約第二十一条によって許容されると考えておりますけれども、現時点でクラスター弾を使用する米軍との共同訓練を実施する計画はございません。
- 井上哲士君
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計画はないけれども条約上は許容されるんだというお話でありました。
ただ、この二十一条の2で、先ほど来議論になっていますけれども、非締約国がクラスター弾の使用を抑制するよう最善の努力を払うことが求められているとされているわけですね。一般的努力じゃなくて最善の努力だと言っているわけです。ですから、このクラスター弾を使用する訓練に日本が一緒に参加するということは、これはやっぱり使用の抑制には結び付かないわけで、これがどうして最善の努力ということになるんだろうかと私は疑問なんですけれども、いかがでしょうか。
- 防衛大臣(浜田靖一君)
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基本的に申し上げたのは、条約に沿って、そしてまた今の現時点での状況をお話をしたわけであります。
基本的に、今先生方の御議論を聞いていれば、我々とすれば当然、今後そういった計画を立てるかどうか今の現時点では分からないので、これからの対処とすれば、今の御議論を踏まえた中で我々としては考えていくということであります。
- 井上哲士君
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議論を踏まえて、共同訓練についてはやらないということを決断をしていただきたいし、やはり在日米軍に対する使用や保管を行わないということも含めて求めるということを強く求めておきたいと思います。
それで、人道上問題な兵器だということで、劣化ウラン弾の問題についてお聞きいたします。
コソボ紛争やボスニア・ヘルツェゴビナの紛争でNATO軍が軍事介入したときに劣化ウラン弾が使用され、地域住民のみならず、PKOとして駐留した欧州諸国の兵士の間に白血病やがんが、増加というものが報告をされ、バルカン症候群として当時問題になりました。その後、同じく使用された湾岸戦争に参加した兵士でも湾岸戦争症候群ということが問題になり、イラクでも住民や兵士に同様の被害が報告をされております。
そこで、この劣化ウラン弾というものも、先ほど大臣が署名式でスピーチをされた、紛争終了後も人々の憎しみをよみがえらせるような兵器に当たるのではないかと思いますけれども、外務大臣、いかがでしょうか。
- 外務大臣(中曽根弘文君)
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劣化ウラン弾につきましては、その健康とか環境に対する影響につきましては国際機関などによる調査が累次にわたって行われているわけでありますが、今までのところは国際的に確定的な結論が出されているとは承知をいたしておりません。
劣化ウランに関しましては、クラスター弾とはまたちょっと違うような問題点といいますか、人体に有害な影響を与えるのではないかと、そういうところからこの使用についてはいろいろ議論があるところでありますが、今まで確定的な結論が出ているとは私は承知をいたしておりませんが、国際機関などがこういう調査を進めるということは非常に重要だと、そういうふうにも考えておりまして、そういう観点から我が国としては、二〇〇七年それから二〇〇八年、この両方の国連総会におきまして劣化ウラン決議にも賛成をし、そして同決議に基づいて、国連事務局へ提出いたしました我が国の見解において、関連国際機関に対し現地調査の継続及び更なる情報収集を要請する旨の意見を述べたところでもございます。
我が国といたしましては、このようなまず調査の継続、そしてさらに、動向とか結果をまず把握するということが先決ではないかと、そういうふうに思っているところでございます。
- 井上哲士君
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国際機関の確定した結論が出ていないということを言われるわけでありますが、現に住民や参加した兵士に様々な声が出ているわけですね。
一九九六年以降、国連の人権小委員会においてはこの劣化ウラン弾について、兵士、市民のいずれに対しても大量無差別被害をもたらす、現存の国際人道法や国際人権法とは両立し難いと、こういう決議が三度にわたり採択されているわけですけれども、このことはどう受け止めていらっしゃるでしょうか。
- 外務大臣官房審議官(廣木重之君)
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今御指摘がございました国際連合人権委員会、この下に設けられていた差別防止・少数者保護小委員会というのがございまして、ここで一九九六年八月に、劣化ウランを含む核兵器等、大量破壊兵器又は無差別に影響を与える兵器の製造及び拡散を制限するよう各国に求めることなどを内容とした決議が採択されております。この小委員会は個人資格の専門家で構成されたものでございまして、この小委員会によって採択された決議は各国に法的な義務を課するものではないと、かように考えております。
- 井上哲士君
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そういうものだと言われますが、私は紛争終了後も人々の憎しみをよみがえらせるような兵器を許してはならないという立場であれば、やっぱりこういう決議というものは深く受け止めるべきだと思うんです。
劣化ウランの環境や健康被害について国際機関の調査で確定していないということを繰り返し政府は答弁をされるんですね。この健康被害に関して言いますと、この内部被曝の影響をどう評価するかということが大変ポイントになります。爆発の際にウランの微粒子が噴出をし、それを吸い込むとこれが肺に吸着をし、体内に吸収された劣化ウランが引き起こすこの内部被曝のメカニズムが従来の被曝についての理論的枠組みでは適切にとらえられないという指摘がされておりますし、金属としてのウラニウムの化学的毒性と放射能との相乗効果というこれは未知の部分もあるということも指摘をされているわけですね。
ですから、WHOがまとめた報告に対して内部被曝の危険性を正しく評価していないんじゃないかという指摘が研究者からもされていると思いますけれども、このことはどういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。
- 外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長(佐野利男君)
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お答えいたします。
今先生御指摘された点も含めまして、劣化ウラン弾による健康に対する影響というものについては、国際機関、WHOであるとかIAEAであるとかあるいはUNEP、国連環境計画などによる調査が累次にわたって行われてきておりますが、繰り返しになりますけれども、これまでのところ、国際的に確定的な結論が出されているとは承知しておりません。
ただ、調査を継続するということは重要でございまして、二〇〇七年、二〇〇八年の国連総会におきまして決議が通っておりまして、これは賛成多数で通っておりますけれども、これによって引き続き各国及び国際機関に対して調査を継続する、見解を求めるということがなされております。
我が国としましては、こういった関連する国際機関が調査を進めることがまず重要であると考えておりまして、このような調査の動向などを引き続き注視していきたいというふうに考えております。
- 井上哲士君
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調査研究を注視するだけでいいのかということを私は日本には問われていると思うんですね。唯一の被爆国であると同時に、放射能兵器での被害を、現に今大きな問題になっているのが我が国なわけです。
内部被曝の影響をどう見るかというのは今の原爆症の認定訴訟でも大きな問題になっているわけで、被爆から六十年以上たって被爆者の方にがんとか白血病のいろんな病気が現れていると。その多くの皆さんが遠距離被爆とか入市被爆で、残留放射線によって外部被曝と内部被曝をされているわけですね。
政府は、内部被曝への健康への影響を軽視をして、原爆症認定を却下してきたと。それに対して訴訟が行われましたけれども、政府はこれ十八連敗をしました。五月二十八日に政府も重視してきた東京高裁の判決が下って、政府の認定基準について、内部被曝などの被曝線量の評価の不十分さなど問題があって、原爆症認定の判断基準としては適格性を欠くと、こういう判決が下り、そして今朝の報道によりますと、政府は上告を断念したということであります。
なぜ被爆から六十年たってこういうことが問題になっているかといいますと、アメリカがこういう内部被曝の影響というのを隠ぺいする政策を続けてきて、そのことがいろんな行政や研究にも影響を及ぼしてきたわけですね。その結果、高齢の被爆者たちが病と闘いながら裁判を起こさざるを得なくなって、裁判の間に三百六人の原告のうち六十八人の方が亡くなっているんです。
この裁判が起きるまでは、日本の国内でもこういう内部被曝等についての全体像の研究は不十分だったと。ましてや、国際的に言いますと、こういう長崎や広島でのいろんなことの知見というのはほとんど知られていないという実態があるわけですね。
そうであるならば、私は、劣化ウラン弾の健康被害についても注意深く見守るという態度ではなくて、こういうやっぱり内部被曝というのは問題を起こしているんだと、日本でこういう大きな問題になっているということを、民間の方とも協力もしながら、もっと国際機関に積極的に日本が持ち込んでいくというのが被爆国政府としての役割だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
- 外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長(佐野利男君)
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お答えいたします。
唯一の被爆国といたしまして、我が国は核兵器廃絶に向けた外交努力を強化して、この分野におきまして引き続きリーダーシップを発揮していくという考えでございますが、先般、中曽根外務大臣から十一の指標に関する提案を行ったわけですけれども、この被爆の破壊力あるいはその人体等への影響に関する我が国の体験、これを世界で広く共有していかねばならないという考えもそのスピーチの中で述べられております。
他方、これまで申し上げましたように、劣化ウラン弾が健康に及ぼすあるいは環境に及ぼす影響ということにつきましては、繰り返しで恐縮でございますけれども、国際機関等による調査においてもいまだに確定的な結論は出ていないということでございまして、ただ、先ほど申し上げましたように、我が国としましては、劣化ウラン弾に関する国連総会決議、これに賛成しまして、また、同決議に基づきまして国連事務局へ提出した我が国の見解におきまして、関連国際機関に対して現地調査の継続及び更なる情報収集を要請するという旨の意見を述べたところでございます。
我が国としましては、このような調査の動向あるいはその結果をまずは把握する必要があるというふうに考えております。
- 井上哲士君
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六十年たって、こういうことに苦しんでいる被爆者に直面している政府は日本しかないんです。外務大臣から、そういう被爆国の外務大臣としての決意、端的にいただきたいと思います。
- 外務大臣(中曽根弘文君)
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健康、また人体に大きな影響があるような、そういうような兵器というものは、これは、兵器そのものもそうなんですが、なくさなければならないと、そういうふうに思っておりますが、今再三御答弁申し上げておりますように、今国際機関において調査が行われておるところでございますので、やはりそのような調査結果を踏まえた上でこの厳正な判断をしていくということが大切であろうと、そういうふうに思っております。
ただ、調査がいつまでも掛かっていればいいということでもありませんし、そういう意味では調査の促進なども働きかける必要があるのではないかと思っております。
- 井上哲士君
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終わります。