・1960年の日米間の討議記録を密約として認めないから、これを破棄する立場にも立てず、また非核三原則も守れないと批判し、密約の破棄を強く求めた。
- 井上哲士君
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日本共産党の井上哲士です。
最初に鳩山総理にお聞きいたします。
非核三原則というのは、単なる一政策ではなくて国是とされてきました。そのことについての総理の認識、そしてこの非核三原則に対してどういう立場を取られるのか、聞かせていただきたいと思います。
- 内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)
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井上委員にお答えをいたします。
私ども、非核三原則は国是だと、そのように申し上げております。これは、日本が唯一の被爆国であるという思いの下で、非核化において世界のリード役を果たしていかなきゃならぬ、核の廃絶というものを求めていかなければならないという立場の下で非核三原則というものを国是とうたっているわけであります。
国是というのは並の政策じゃないよと、極めて国民の世論の下で形成された重要な政策だという位置付けだと御理解をいただきたいと思いますし、したがいまして非核三原則はこれからも堅持してまいります。
- 井上哲士君
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この非核三原則と相入れないのが核密約であります。
先日の有識者委員会の報告書は、核搭載艦船の日本への寄港は事前協議の対象としないということをした一九六〇年の安保改定時の日米間の討論記録の存在は認めました。にもかかわらず、これは日米間の合意ではないと、密約ではないとしたわけで、これは成り立たない議論であります。
ただ、一方でこの報告書は、米国側は討議の記録に基づき核搭載艦船の日本寄港は事前協議の対象外との立場を取り続けたと認めております。
このアメリカの立場は今日も続いているのか、それとも変わったのか、外務大臣、いかがでしょうか。
- 外務大臣(岡田克也君)
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まず、委員御指摘の一九六〇年の討議の記録の解釈、委員のおっしゃった解釈はこの有識者委員会の考える解釈とは異なります。そこはまずはっきり申し上げておきたいと思います。
その上で御質問にお答えするとすれば、アメリカ側は、確かに一時的寄港というのは持ち込ませずということには、つまり持ち込ませずというときに、一時的寄港というのはそこには含まれないんだということを主張しておりまして、その解釈は日本とは異なるということを今回明らかにいたしました。
アメリカは核の存在について明らかにしないという政策を取っておりますので、先ほど申し上げたアメリカの解釈というのは今も変わっていないというふうに考えております。
- 井上哲士君
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我々は、討論記録の中身を見てもその後の経過を見ても明確な密約だと考えております。
今大臣は、日米両国間で考え方が違う、そのことは今もそうなんだと、こういうことを認められました。そうであれば、これはまさに現実の問題でありまして、この違いをこのまま放置をしておくわけにはいかない話なんですね。
アメリカに対して、この問題で前政権が国民にうそを答弁してきたこと、これも問題だし、同時に、あなた方の立場は認められない、核搭載艦船の寄港は事前協議の対象であって寄港は許されないと、このことをしっかり通告をして解決すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
- 外務大臣(岡田克也君)
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日米間で確かに解釈は異なります。しかし、そのことについて現実には問題は発生しないというふうに考えております。九一年のアメリカの核政策の変更によって戦術核が艦船や航空機に搭載することはない、したがって委員の御指摘のような具体的な問題は発生しない、そういうふうに考えております。
- 井上哲士君
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しかし、この報告書の解釈によってもアメリカは条約上の権利として核搭載艦船の寄港を事前協議なしに自由に行えると、こういう立場に立っておるわけですね。これは明らかに非核三原則と違う、矛盾する状況がある。これがあるということを対外的に明らかにした以上、これは違うんだと、解決をするということをなぜできないんですか。
- 外務大臣(岡田克也君)
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繰り返しになりますが、現実にそういうことは起こり得ない、したがってする必要はないというふうに考えております。
- 井上哲士君
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現実に起こるかどうかはこれから議論しましょう。しかし、違いがあるということを認めながらもその解決をしないということであれば、これまでの政権とどう違うということになるんですか。なぜできないんですか、通告することが。
- 外務大臣(岡田克也君)
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まず、これまでの政権との違いは、日米で考え方、解釈が異なるということを明らかにすることによって密約というものがなくなったということであります。そこが決定的な違いであります。
なお、アメリカの考え方をどうして変えさせないのかという御質問ですが、率直に申し上げて、日本はアメリカの核の傘によって日本の国民の安全というものを確保しております。そういう中で、アメリカの基本的な核政策についてこれを変えるということは、結局それは核の傘というものを危うくすると、こういうことにつながるというふうに考えております。
- 井上哲士君
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結局そういうことに依存をすると、それは非核三原則を国是として世界のリード役になるということと相入れない考えなんですよ。
総理、お聞きしますけど、今アメリカの核政策に依存しておるということを言われました。アメリカは、九一年に艦船からの戦術核の撤去を表明しましたけれども、九四年の核態勢の見直しで、攻撃型艦船へのトマホークを配備する能力を維持すると、こういう政策に転換しているんですね。その下で、核搭載能力を持つロサンゼルス級攻撃型原潜は今も入っております。つまり、これ、核持込み自由の体制というのは今も続いているんですよ。
この問題でアメリカに物を申さないような今のような外務大臣の答弁で、今後核持込みをさせない保証はどこにあるのか、非核三原則を守っていくという担保はどこにあるんですか。総理、総理、お願いします。総理。
- 外務大臣(岡田克也君)
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委員は今、正確な物の言われ方をしませんでした。九四年の政策は、攻撃型原潜にトマホーク型のミサイルを将来積み得るということを言っているだけであって、現に積んでいるということではありません。そして、アメリカ政府は積むということを決定したということを言っておりませんので、現在、攻撃型の原子力潜水艦にトマホークは積まれておりません。
- 内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)
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岡田外務大臣の申したとおりでありますが、この九四年、更に申し上げれば、核態勢見直しの結果、水上艦船及び空母艦載機から戦術核兵器の搭載能力を撤去することとしたと、そのように承知をしております。
したがいまして、現実問題として、日米間の間で非核三原則というものは守られると、そのように承知をしております。
- 井上哲士君
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九四年にこの能力を維持をするという政策に転換をしております。そういうことを私正確に申し上げました。そして、先ほど言いましたように、大臣自身が認めましたように、搭載どうかというのは明らかにしていないんです。この下で、一体どこに持込みがないという担保があるのか。
総理は、選挙中のテレビの党首討論で、核密約について、あるという蓋然性が強い、アメリカに行って事実を調査し、しかるべきタイミングで国民に説明すると言った上に、オバマ大統領に核を持ち込ませないと、オーケーさせるまで頑張ると言っていたじゃないですか。
そうであるならば、こういう食い違いがある以上、ただすということで、オーケーさせるまで頑張るべきじゃないですか。言ったとおりやっていただきたいと思います。
- 内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)
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私は、事あるごとにオバマ大統領にも非核三原則、これを日本としてこういった非核三原則という国是があるからそれを堅持をすると、そのことを主張しているところでありまして、オバマ大統領もそのことは十分に熟知していると、そのように理解をしております。
私は、アメリカのみならず、他の国々にも日本としての非核三原則という政策を、まさに国是なんですから、すべての国が守るように努力することを求めてまいりたいと思っています。
- 井上哲士君
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アメリカは、寄港は条約上の権利だと考えていても、それを行使しないだろうと、そして核政策も変更しないだろうと。結局アメリカ任せの議論なんですよ、今までのは。
国是でありながら、それを守れるかどうかというのがアメリカ任せだと、こんな状態でも、それで国是と言えるんですか。総理。
- 外務大臣(岡田克也君)
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ですから、アメリカは、今委員おっしゃいましたが、個々の核については明らかにいたしませんが、政策としてはっきり決めたことはきちっとそれをやっております。ですから、確かにトマホーク型のミサイルについて、将来それを積む可能性は否定をしておりませんが、現在は積んでいないということをはっきり言っているわけです。ですから、積まれていることはありません。
委員にお聞きをしたいと思いますが、それでは、今、北朝鮮の核による脅威、あるいは周辺国が核能力も増強している、そういう中で、アメリカの核の傘に依存せずしてどうやって日本国民を守ることができるのかと、そういったことの前提が私は委員とは違うというふうに思っております。
- 内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)
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これは、御案内のとおり、アメリカはNCND政策、ノンコンファーム、ノンディナイアル、これはすなわち、核を持っているとか持っていないということをこれは言ってしまえば、そのことによって手のうちを明かす話になります。アメリカとすればとてもそれはできないという思いは、当然日米安全保障の下で日本としても理解をするべきだ。ただ、それを、その下で我々とすれば非核三原則というものを堅持するぞということを主張しているわけでありまして、決してそれを矛盾しないように、現実的にはアメリカが戦術核を持っているわけではないわけですから、現実的にそれは満たされるということで、私たちは、むしろ日米安全保障、日米同盟というものは更に、今申し上げたように密約の問題を解決しただけに、堅固なものになると、そのように確信しています。
- 井上哲士君
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結局、この核の傘論というのは、核の使用というものを前提にしてそれで脅すという理論なんですね。それがまさに日本の国是である非核三原則としては全く相入れない議論なんですね。
結局、この核搭載艦船の日本への寄港は事前協議の対象としないという明確な合意であるこの一九六〇年の討議記録を、存在自体を認めながら密約として認めないと。こういう立場を取っていますと、結局この合意を破棄をするという立場で非核三原則を守れないということになっているんです。
討議記録を密約だときちんと認めた上で、これをしっかり破棄をして非核三原則を現実のものにして被爆国としての声を世界に発信する、それこそが今求められているということを申し上げまして、質問を終わります。
- 予算委員会委員長(簗瀬進君)
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以上で井上哲士君の質疑は終了いたしました。(拍手)