・横須賀を母港とする米原子力空母ジョージ・ワシントンの定期修理について質問。岡田外相は、空母艦内で放射能管理を必要とする作業が実施されていることを、初めて認めた。
- 井上哲士君
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共産党の井上哲士です。
横須賀を母港とするアメリカの海軍の原子力空母ジョージ・ワシントンに関連して聞きます。
一年前の当委員会でも、横須賀基地において、アメリカのピュージェットサウンド海軍造船所から五百五十人の技術者が派遣をされて停泊中のジョージ・ワシントンの定期修理が一月から五月まで行われたという点について質問いたしました。この修理に対して市民の皆さんからいろんな不安や疑問が出されているわけですが、今年も米国から技術者が来て同じように定期修理が行われております。
これは国民の安全にかかわる問題にもかかわらず、前政権の下では極めて不誠実な答弁が繰り返されてきました。まず、このことをただしておきたいと思うんですが、北米局長にお聞きしますが、昨年の四月の十三日に私は質問主意書を提出いたしました。米海軍の原子力推進機関プログラムの駐日代表として横須賀に駐在するジョー・ギスト博士について就任の時期及び駐在地を尋ねたわけですが、これに対して、政府としてお尋ねの者についてその詳細を承知していないとする答弁書が示されました。これは事実関係、間違いないですね。
- 外務大臣(岡田克也君)
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突然のお尋ねでございますが、まず、委員御指摘のように、一月からジョージ・ワシントンのメンテナンス作業が開始されているということは事実でございます。米国ワシントン州のあるピュージェットサウンド海軍造船所から六百名の作業員が派遣されているという説明を受けております。
政府としてはこのメンテナンス作業の逐一について承知する立場にはございませんが、いずれにしろ、従来、米政府からこれは通常のメンテナンス作業であること、燃料交換及び原子炉の修理は我が国国内において行われていないという説明を受けております。
- 井上哲士君
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昨日、局長にこのことを聞くと通告しているんですから。去年のことだから局長に聞いているんですからね。時間ないんですから。どうですか。そういう答弁、答弁書出したんでしょう、局長、答弁。
- 外務省北米局長(梅本和義君)
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ただいま御質問ありましたけれども、平成二十一年四月二十一日の閣議でこの答弁書を出しております。その答弁書におきまして、今委員より御指摘のありましたような回答をしておると、こういうことでございます。
- 井上哲士君
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承知してないという答弁だったわけですね。
ところが、外務省のホームページのプレスリリースによれば、この人物は、二〇〇六年以降、外務省の本省で開催されていた実務者協議に少なくとも五回出席しているんです。二〇〇七年三月時点のプレスリリースでは、本年八月に米海軍原子力推進機構プログラムの駐日代表となる予定ということまで記載しているんですね。にもかかわらず、答弁書では就任時期についてまで承知してないと。この答弁は虚偽答弁ですよ。これはまあ前政権時の答弁書ではありますけれども、プレスリリースしている情報まで隠して、承知してないと、こういう虚偽答弁を書いて閣議決定までさせたと。
私、局長の責任は重いと思いますが、局長いかがですか。
- 外務省北米局長(梅本和義君)
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もちろん私ども、ギストさんがそのような会合に出ているということも承知をしておりますし、またいずれ横須賀に来られるであろうということも聞いておりましたけれども、アメリカ政府内の発令行為がどういうふうになっているのか、そういうことの詳細までは私ども承知をいたしておりませんのでこのような答弁書になったと、こういう次第でございます。
- 井上哲士君
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どういう発令行為があったなんか聞いていないんですよ。いつ就任したんですかと。外務省のホームページに書いているわけですから、今年八月予定と。その程度のことは答弁したらいいんじゃないですか。全く承知してないと。
ですから、昨年の質問に対する外務省の答弁というのは、こうやって徹底して分かっている情報すらも出さないという態度でありましたし、アメリカから聞いたという答弁を繰り返すのみだったんです。アメリカに対して安全性に関しての更なる情報提供を求める考えはございませんとまで外務大臣も言われました。
私は、この空母の原子炉というのは美浜原発一号機に匹敵する出力を持っておりますから、言わば原発が首都圏三千人が住むところに設置されたような、同じような意味を持っているわけです。当然、市民から不安や情報公開を求める声が出るのはあるわけですから。
私は岡田大臣にお願いしたいのは、新政権はやっぱりこういう態度を改めて、市民の疑問や不安にしっかり答えると。必要なアメリカへの照会も行うし、日本としても検証して情報を公開をすると、こういうことを求めたいと思いますが、大臣いかがでしょうか。
- 外務大臣(岡田克也君)
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先ほども答弁いたしましたが、これは通常のメンテナンス作業である、そして、燃料交換及び原子炉の修理は我が国国内で行われないという説明を受けているところであります。
- 井上哲士君
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そういうことに対して様々今、市民からも疑問が出ております。横須賀市からもいろんな照会があると思いますけれども、そういうことに対してきちっと、必要な場合はアメリカにも照会する、日本としても検証する、情報をしっかり公開すると、そういう態度を新しい政権は取っていただきたいと申し上げているんですが、改めてどうでしょうか。
- 外務大臣(岡田克也君)
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原子力空母そのものを認めないという立場でいろいろ議論しますと、それは、我々がそれは受け入れるところではございません。
ですから、先ほど来答弁しておりますように、通常のメンテナンス作業であること、燃料交換及び原子炉の修理は我が国国内においては行われていないという説明を受けているところでございます。
- 井上哲士君
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いや、がっかりしますね、そういう答弁は。空母に賛成する人も反対する人も横浜、横須賀市民の人はいろんな不安を持っているんですよ、情報が出てこないから。情報をもっともっとオープンにするのが新しい政権の姿勢だったんじゃないんですか。じゃ、更に聞きましょう。
この定期修理は横須賀基地内に設置されたピュージェット・サウンド海軍造船所の分遣隊によって行われております。昨年の質問の際にこの分遣隊の設置についても外務大臣は承知してないと当時答弁をされました。
しかし、手元に資料を配付しておりますけれども、これはアメリカ海軍の海洋システムコマンドの指示であります。二〇〇六年五月十九日付け。
一枚めくっていただきますと、そこにこの分遣隊の機能及び任務というのが下の方にあります。一番下にありますように、この分遣隊は、海軍原子力推進プログラムの適切な放射能管理の確保に責任を有すると、こう明記をされております。
これは、二〇〇六年の五月に既に横須賀基地に設置をされていたということなんですね。二〇〇六年五月といいますと、ちょうど2プラス2の合意が行われまして、五月の一日に発表されておりますけれども、アメリカ空母につき、そのプレゼンスが日本及びアジア太平洋地域の平和と安定にとって重要であることを確認をしたと。その直後の五月十九日にこの分遣隊というのが設置をされているわけですね。
ところが、昨年、答弁では承知をしていないと答えられました。この問題では累次にわたりアメリカから説明を受けていると言っていたにもかかわらず、この組織を把握をしていないというのは私はあり得ないと思いますけれども、実際には承知していたんじゃないですか。
- 外務省北米局長(梅本和義君)
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もちろん私ども、米空母の横須賀に来た後にこれを、その安全性等に万全を期すということで、アメリカにおいていろいろな措置がとられるということは聞いておりましたけれども、それを、どこのどういう組織で、その組織をいつつくるかというところまでは私ども承知しておりませんでした。
- 井上哲士君
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二〇〇六年五月十九日に既にこういう指示が出されて設置されているんです。そして、去年、二〇〇九年に私が聞いたら、そういうものは詳細は承知していないと。それはそんなことないでしょうと。三年前につくられて、既にジョージ・ワシントンが入っているのに、その存在すらもまともに答えないという態度でいいのかということを聞いているんです。
- 外務省北米局長(梅本和義君)
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私ども、ですから、アメリカがそれなりにいろいろな組織をつくったり、あるいはそういう体制を取りながらメンテナンスあるいは安全策を講ずるということは承知しておりましたけれども、それが具体的にどういう組織をどこにつくってというところまでは承知をしていなかったということでそのようにお答えをしたということでございます。
- 井上哲士君
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この指示は私たちだってホームページでぱっと取れるんですよ。そしてあなた方は、アメリカと累次にわたって説明を受けていると。そしてこれ説明はこうだこうだと言って、これ答弁してきたわけですよ。その一番肝心なこの分遣隊のそのものについて承知をしていないなんという答弁をするのは、私は本当に国会軽視だと思いますよ。
しかも、この定期修理の内容について去年委員会で聞きましたところ、北米局長は、放射能の管理を必要としないメンテナンスなんだと、内容はと答えられました。しかし、先ほど読み上げましたように、このシステムコマンドの指示によりますと、この分遣隊の仕事というのは、放射能の管理の確保に責任を有すると、こうなっているんですよ。つまり、放射能の管理を必要としない仕事をしたということと説明と食い違うんじゃないですか。
- 外務大臣(岡田克也君)
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そこのところはこういうふうに御理解いただきたいと思います。
先ほど申し上げましたように、燃料交換及び原子炉の修理は日本国内で行われないということは我々は確認をしております。そして、それら以外の放射能の管理を必要とする作業が日本国内にあるジョージ・ワシントンの艦内において行われていることまでは排除されていないというふうに考えております。
- 井上哲士君
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また去年の答弁と違うじゃないですか。去年は、放射能の管理を必要としないメンテナンスをやっていたと、今の答弁と違うんじゃないですか。局長、どうですか。
- 外務大臣(岡田克也君)
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従来と答えぶりが違いますので私がここで答弁をしたわけでございます。私の申し上げたことが正確な答弁でございます。
- 井上哲士君
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ですから、事ほどさように、この問題でまともな答弁してこなかったんですよ。
今年の作業のための造船所の募集要項を見ますと、職種は放射線管理のディレクターで、勤務先は横浜分遣隊の放射線管理室と、こうなっているんですね。つまり、市民が知らない間に、その専門の部隊が横須賀に置かれて横須賀港が放射能管理を恒常的に行うと、そういう港に変わってしまっていると。だから、市民の皆さんから不安上がっているんですよ。ところが、まともな情報が出されないと。
だからこそきちっと、私は、空母に賛成する人もいます、反対する人も、安全問題で不安を持っているんですから、きちっと必要な照会もして情報を出してほしいと申し上げたんで、もう一度、大臣、お願いします。
- 外務大臣(岡田克也君)
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先ほど来申し上げておりますように、燃料交換及び原子炉の修理は日本国内で行われないと、しかし、それら以外の放射能の管理を必要とする作業が日本国内にあるジョージ・ワシントンの艦内において行われることは、完全には排除されていないということでございます。
- 井上哲士君
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まさに放射能管理の必要な作業を艦内で行っているということなわけですね。その結果どういうことになっているかと。
米海軍は三月の八日に、四月中にも低レベル放射性廃棄物を納めたコンテナをジョージ・ワシントンから運搬船に移し替えるという発表をいたしました。去年も放射性廃棄物一トンが船積みをされて、アメリカ本土へ向け搬出をされたわけですね。これに対して市民の皆さんからは、一九六四年のエードメモワールに反しているじゃないか、搬出の中止と約束違反の究明を求める声が上がっております。
エードメモワールは、放射能にさらされた物質は、通常、外国の港にある場合は、通常の原子力潜水艦から搬出させることはないとしているわけですが、ジョージ・ワシントンから運搬船に搬出をされた。この事実と反しているんじゃないでしょうか。
- 外務大臣(岡田克也君)
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ここは正確に申し上げた方がいいと思いますが、委員御指摘のように、一九六四年のエードメモワール、そこには、放射能にさらされた物質は、通常、外国の港にある間は、通常の原子力潜水艦から搬出されることはないと、こう述べております。
今回、通常、放射能にさらされた物質が外国に陸揚げされることはないという意味であります、この意味は。したがって、空母ジョージ・ワシントンからコンテナに納めて別の米軍艦船に移し替えることは、陸揚げを伴わないことから、このコミットメントの範囲内の行為であるというふうに考えております。
- 井上哲士君
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あのエードメモワールには、そんな陸揚げのことなんか一言も書いてないんですね。
そして、固形廃棄物は、通常の原子力潜水艦によって合衆国の沿岸の施設又は専用の施設船に運ばれて処理されると、こういうふうに述べているんです。ですから、原子力艦船内で発生した放射性廃棄物は、その艦内に留め置いて決して艦外に持ち出さないと。固形廃棄物が発生したら、その船がアメリカまで持っていくと解するのが当然じゃないでしょうか。いかがですか。
- 外務大臣(岡田克也君)
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繰り返しになりますが、外国の港にある間は、通常の原子力潜水艦から搬出されることはないというふうにエードメモワールは述べております。したがって、空母ジョージ・ワシントンからコンテナに納めて別の米軍艦船に移し替えることは、陸揚げを伴わないことから、このコミットメントの範囲内の行為であるというふうに考えております。
- 井上哲士君
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横須賀港内で行われているんですね。陸揚げなんていうことはエードメモワールには全く書いてありません。
エードメモワールが交わされた一九六四年というのは、原潜の寄港をめぐって厳しい反対の世論と運動が広がっていた時期なんですね。当時、見ますと、百十五回の反対集会、延べ参加者七十万人と、こういう状況ですよ。そういうときに、およそ陸揚げしなければ固形の放射性廃棄物をほかの船に移し替えることは可能なんだという、そんな議論が日米間で行われたとはおよそ思えないんです。
こういう陸揚げはしないという意味だというエードメモワールの解釈というのは今までも出されませんでした。いつからそういう解釈なんですか。
- 外務大臣(岡田克也君)
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委員の御質問を聞いておりますと、よほど危険なものが搬出されているという印象を受けますが、昨年三月、通常のメンテナンスの一環として、ふき掃除用の布やプラスチックシートのような非常に低レベルの放射能にさらされたものが収められたコンテナを空母ジョージ・ワシントンから別の米軍艦船に移送するという作業が行われたと理解をしております。
通常のコンテナに収められたものでありますので、その中身は極めて低レベルのものであるというふうに考えていただければいいと思います。
- 井上哲士君
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いや、出されたものの中身を今議論しているんじゃないんです。陸揚げという意味だと、つまり陸揚げしなければ搬出は可能なんだという解釈が本当にこのエードメモワールが結ばれたときにやられていたのかと。
そうであれば、当時の日米間でこういう議論があった、こういう解釈なんだという、その記録を提出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
- 外務大臣(岡田克也君)
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繰り返しになりますが、エードメモワールに書かれた、放射能にさらされた物質は、通常、外国の港にある間は、通常の原子力潜水艦から搬出されることはないと、ここの解釈の問題であります。私が申し上げたことは、このことに全く矛盾しないというふうに考えております。
- 井上哲士君
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いや、船から移し替えるということは、搬出されるんですよ、いったん。普通に読んだら、先ほど全体言いましたけれども、これは明らかにエードメモワールに反しますし、陸揚げという意味だなんということは、これが結ばれてからもう四十年以上たちますけれども、そんな解釈は私は聞いたことないんです。あるとすれば、そういう日米間の交渉の記録も出していただきたい。
〔委員長退席、理事山根隆治君着席〕
多くのやはり市民は、そういうやり方についていろんな今不安を持っているんです。これ美浜原発と同じ出力と申し上げましたけれども、日本にある原子炉というのは、いわゆる平和利用三原則、民主、自主、公開と基づく規制が掛かっているんですね。しかし、この米艦の中の原子炉というのはそういう規制が掛かっていない。だから、多くの皆さんが本当に大丈夫なのかといろんな不安を持っておるときなんですから、私は、きちっと必要な検証をし、情報を明らかにすること、そして、そういうことができるまではこの修理及び放射性廃棄物の搬出については中止を求めるべきだと申し上げまして、質問を終わります。