・普天間基地問題は、25日の沖縄県民大会の成功で思想信条を超えて県内移設ノーで県民世論が一つになったことに対する受け止めを質し、米軍基地の移設先探しは破綻していると強調した。また、タックスヘイブンを利用した脱税への国際的規制について質す。
- 井上哲士君
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日本共産党の井上哲士です。
最初に、普天間基地の問題で質問いたします。
普天間基地の問題で、徳之島に続いて、日曜日に九万人の大集会が沖縄で行われました。集会には、知事も含めすべての首長が参加をし、県議会のすべての会派が参加をいたしました。
この集会代表団の方が昨日、政府要請のために上京してこられまして、夜、都内で集会が行われ、私も参加をしてまいりました。四人の沖縄の市長があいさつをされ、我が党とともに民主、自民、社民、公明と、与野党を超えて政党のあいさつもあったわけであります。
大変昨日の夜の集会で印象的だったのは、安保条約についてはいろんな意見もある、それから今までは基地への対応にもいろんな違いがあったと、しかしこの集会で沖縄は一つになったんだということを口々に強調されたわけですね。地元の新聞も、沖縄の世論が一つにまとまった節目の大会、一つは書きました。もう一つの新聞は、思想信条を超え、県民が心を一つにしたと、こういうふうに書きました。まさに怒りが限界点を超えた歴史的な大会であったと思います。
ところが、総理が会見で世論の一つというふうに言われたわけですね。あれこれある世論の一つだというふうに受け止められたとすれば、これはもう全く沖縄の心を分からない話だと思います。
この集会で県内移設は認めないと沖縄世論が一つになったということへの受け止めをまず岡田大臣にお聞かせいただきたいと思います。
- 外務大臣(岡田克也君)
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大会における決議といいますか、そのことは私、承知をしております。そして、多くの方が集まったこと、あるいは、代理の方もたしか二名いらっしゃったと思いますけれども、基本的にそこの自治体の長がほぼ全員お集まりになったということ、そういうことは非常に重いことだというふうに受け止めております。
- 井上哲士君
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この集会後、平野官房長官は、現行案へ戻ることについてはあり得ないというふうに否定をされましたし、先ほど来ありましたように、鳩山総理は、辺野古の海が埋め立てられることは自然に対する冒涜とまで言われて否定をされました。
ところが、岡田大臣とルース・アメリカ駐日大使が現行計画の修正をめぐって協議をしたというような報道が行われ、また、今朝、キャンベル国務次官補が、期待が持てる要素を含んだ真剣な提案があったと、こういう発言をされております。アメリカ側は現行案がベストという立場を取ってきたわけでありますから、こういう期待が持てる要素を含んだ提案ということには現行案の部分修正ということが予想されるわけでありますね。今重く受け止められると言われましたけれども、こういう辺野古修正案というのは、この集会に示された、県民の世論が一つになって、県内たらい回しは許さないと、こういう声と私は全く反すると思います。自然への冒涜だけじゃなくて世論への冒涜だと、こう思うんですね。
こういうような、報道されているようなこの一部修正案というものが沖縄の世論に受け入れられると、こういうふうに、可能だということをお感じでしょうか。
- 外務大臣(岡田克也君)
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今委員のお話、私とルース大使の間でやり取りが行われているという、その具体的なお話がございました。あるいはキャンベル国務次官補の話、いずれもこれは報道に基づくものであって、そういう仮定の議論に私からはお答えしない方がいいというふうに思います。
- 井上哲士君
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キャンベル氏はインタビューに答えた発言でありますから、極めて重いわけであります。
今回の沖縄の集会、先週の徳之島の集会、どこを見ましても、結局もう移設先探しというやり方は私は破綻をしていると繰り返し申し上げてまいりました。沖縄の基地が本当に住民不在のところで奪い取られてきたいろんな経過を考えましても、無条件撤去を求めること以外に解決の道はないということを重ねて申し上げておきたいと思います。
その上で、租税四条約についてお聞きをいたします。
昨年の四月に行われたG20のロンドン・サミットの首脳宣言で、リーマン・ショックに端を発した世界経済の危機について、金融セクター及び金融規制・監督における主要な失敗が危機の根本原因であったと、こういうふうに述べました。中でも、この宣言の中で銀行機密の時代は終わったというふうに述べていることは、グローバル化の下での金融緩和政策が深刻な反省が求められているということを私は感じております。
まず、大臣に基本認識を伺いたいんですが、こういうG20で首脳宣言が行われたということに対する基本的な認識はいかがでしょうか。
○外務副大臣(福山哲郎君)今、井上委員御指摘になりましたように、まず、いわゆる税に関する非協力的な国や地域の不透明な資金の流れが国際社会において問題視されたということ、それから基本的に、先ほど言われたように、金融セクター及び金融規制・監督における主要な失敗があったこと、そして各国が金融システム強化のために措置をとる必要があったこと、このような認識が共有されて昨年のG20のロンドン・サミットでのいろんな首脳宣言につながったというふうに思っております。
- 井上哲士君
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この中でタックスヘイブンの規制ということが言われております。タックスヘイブンを通じた税の流出を見逃すことができなくなったという認識があるわけですが、そこで財務省にお聞きいたします。国税庁か。
日本企業がタックスヘイブンに設立した特定の海外子会社等の所得税についての申告漏れの状況をどう把握されているか。それから、個人の海外資産に関する相続税、所得税の申告漏れの最近の状況をどのように把握をされているでしょうか。
- 国税庁課税部長(岡本榮一君)
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お答え申し上げます。
内国法人等が出資しております特定外国子会社等に係る所得の課税の特例、いわゆるタックスヘイブン対策税制の申告漏れでございます。国税局調査部で所管する法人についてこれを見ますと、平成二十事務年度における申告漏れ件数は八十一件、申告漏れ所得金額は百七億円となっております。
また、個人の相続税、所得税の申告漏れの状況でございますが、平成二十事務年度におきます海外資産の相続が想定される事案の相続税の調査件数は四百七十五件であり、申告漏れ課税価格は三百五十三億円となっております。また、平成二十事務年度におきます海外取引を行っている個人に対する所得税の調査件数は三千八百五十八件であり、申告漏れ所得金額は六百十億円となっております。
- 井上哲士君
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法人の申告漏れでいいますと前年度は四百八十一億円で、かなり差があるんですけれども、こういう年度によっての額の差というのはどうして起きるんでしょうか。
- 国税庁課税部長(岡本榮一君)
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それぞれその調査のとき個別事案に応じまして額の大きい年あるいは小さい年がございますけれども、私どもは、いずれといたしましても、こういったタックスヘイブンを利用した租税回避、あるいは個人の、特に富裕層の海外資産に対する相続税あるいは所得税の課税につきましては、あらゆる機会を通じまして資料情報の収集に努めまして、必要な場合には税務調査を行うなど、適正な課税に努めておるところでございます。
- 井上哲士君
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大口があると多分大きな金額になるということなんだと思うんですが、つまり税務当局が把握できたものの金額なわけで、これ自体は大きいわけでありますが、言わば氷山の一角ということが予想されるわけですね。
この今回の議定書の目的は機関投資家や富裕層の脱税を含む租税回避行為の防止にあるわけですが、そうなりますと、我が国においてもこの富裕層の実態が分かる基礎数値の把握も重要な課題だと思うんですが、そこでお聞きしますけれども、いわゆる富裕層の資産規模や人数に関する政府の基礎的な統計とか推計調査というのは存在をするんでしょうか。
- 国税庁課税部長(岡本榮一君)
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お答え申し上げます。
委員御指摘のいわゆる個人富裕層とは必ずしも一致しないかもしれませんが、平成二十年分の所得税の確定申告を行っている方のうち申告納税額がある方について見ますと、合計所得金額が一億円超の方は一万三千五百八十三人であり、このうち五億円超の方及び十億円超の方はそれぞれ八百七十三人、三百十一人となっております。
なお、それぞれに該当する方の資産規模につきましては把握しておりません。
- 井上哲士君
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いろんな推計した数字があるんですね。例えば、日本のあるメガバンク系の証券会社のレポートによりますと、日本国内において自宅と耐久消費財を除いて百万ドル以上の投資可能資産を保有する富裕層は百三十七万人、資産総額は三・二兆ドル、日本は引き続きアジア太平洋地域で最大の富裕層が存在するとしておりますし、このうち三千万ドル以上の投資可能資産保有者、いわゆる超富裕層は四千五百人ぐらい存在しているというのが、民間でやっている推計でありますけど、これは日本の富裕層の実態を反映しているとお考えでしょうか。
- 国税庁課税部長(岡本榮一君)
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御指摘のように、民間の調査会社などによりまして、様々な推計を用いましてそのような数字を公表しているところもあるかと聞いておりますけれども、私どもといたしましては、従来から、海外資産を保有している者や、あるいは海外取引を行っている者などについて、国外送金等調書や租税条約に基づく情報交換などを効果的に活用し積極的な調査に取り組んでおるところでございます。
- 井上哲士君
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私、もっときちっといろんな意味での統計的推計の充実を図るべきだと思います。
外務省、お聞きしますけど、今回議定書にあるシンガポールやルクセンブルクというのは、日本の富裕層を対象とした富裕層ビジネスの拠点と言われてまいりました。ここに設定されたプライベートバンクを通じた脱税に近い租税回避行動などについて、これまでは日本に営業拠点がないということでなかなか個人情報の提供対象になっていなかったけれども、この議定書締結後はそういう銀行や証券会社も情報提供対象になると、こういうことでよろしいんでしょうか。
- 外務副大臣(福山哲郎君)
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これらの改正議定書は、租税条約の規定の実施又はすべての種類の租税に関する両締約国の法令の規定の運用若しくは執行に関連する情報を交換することとされておりますので、日本に営業拠点のない場合についても情報交換の対象となっているというふうに承知しております。
- 井上哲士君
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是非、効果的な結果が出るようにお願いしたいんですが、こういうG20以降のタックスヘイブン規制の国際的な流れを見ますと、日本が金融取引が多いケイマン諸島との租税条約を結ぶことが重要だと思います。日本の多国籍企業がケイマン勘定を設定するなど非常に関係が深く、日本の多国籍銀行のケイマン向けの与信供与は二千二百九十五億ドルということで、国ごとで突出をしているわけですね。
今年の四月からようやくこのケイマン諸島への日本の国税庁からの情報提供要請というのが可能になったわけでありますけれども、ほかにも様々なケースがあることを考えますと、今後、このケイマン諸島との租税協定等締結が大事だと思いますが、具体的にはどのようにお考えでしょうか。
- 外務副大臣(福山哲郎君)
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今、井上委員御指摘のように、我々としては、ケイマン諸島との間においても租税に関する情報交換を主体とした協定を締結するため、近く政府間交渉を開始したいというふうに思っております。
- 井上哲士君
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ケイマン諸島との協定が必要であると、近く交渉に入るということであります。是非、早期の実現を求めておきたいと思います。
金融庁にも来ていただいておりますけれども、このG20が示す金融監督と規制のスタンスは、いわゆる事後規制からむしろ事前規制へと軸足が移ったとみなしていいと思うんですね。ヘッジファンドの規制についても、金融システム上重要なヘッジファンドが初めて含まれるというふうにされました。この手の国際宣言として大変注目される表現だと思うんですが。
金融庁の平成十八年事務年度版の「金融庁の一年」において、日本におけるヘッジファンドの調査を行われておりますけれども、これ以降、継続した同様の調査は行われているんでしょうか。
- 内閣府大臣政務官(田村謙治君)
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平成十九年度以降は、今委員が御指摘のそのヘッジファンドに対象を限定をした調査というのは実施はしておりません。
- 井上哲士君
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一方で重要性が指摘されながら、なぜ調査をされてないんでしょうか。
- 内閣府大臣政務官(田村謙治君)
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今申し上げましたように、そのヘッジファンドに対象を限定をしたその平成十八年事務年度に行いました調査というものは行っておりませんけれども、その一方で、そもそもヘッジファンドと同様の運用形態を採用する事業者に対しましては登録や届出義務というものが課されているわけでございまして、金融庁は、所管業者に対する監督の中でその運用するファンドの状況を含めた活動状況の実態把握に日々努めているところでございます。
- 井上哲士君
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最後の調査であるこの平成十八年事務年度版の記述を見ますと、保険会社、信託銀行、都市銀行等、地方銀行、信用金庫等の幅広い金融機関がヘッジファンドに投資しているということ、そして、国内で販売される五割強のヘッジファンドはケイマン諸島を中心とする外国籍のファンドであるというふうに指摘がされているわけで、やっぱりこういう実態をしっかりつかむということは私は大変規制していく上でも大事だと思うわけで、国際的にもこういう議論が高まる中で、やはりきちっとこれに絞った、焦点を当てた調査とその公表を求めておきたいと思います。
もう一点、金融庁にお聞きしますけれども、今アメリカ議会ではいわゆるボルカー・ルールが議論をされております。銀行のヘッジファンドやプライベート・エクイティー・ファンドへの投資、保有の禁止、それから自己勘定での株式、債券、デリバティブの取引禁止などが議論をされておりますけれども、こういう議論について金融庁としてはどういうふうに着眼点を置いておられるでしょうか。
- 内閣府大臣政務官(田村謙治君)
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今委員がお話しをいただいたボルカー・ルールについては、金融庁としても注視をしながらその議論の動向を見ているところでありますけれども、やはり先般の金融危機、やはりアメリカが発信源の中で、実はアメリカは、アメリカのその反省に基づいて今回のようなルールを議論しているということでございまして、日本が同じような状況にあるということは現在考えておりませんし、やはり日本において同様の措置を導入するということは現時点では考えておりません。
- 井上哲士君
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先ほど申し上げましたけれども、過去、日本国内の多国籍銀行や保険会社などの幅広い金融機関がヘッジファンドに投資をしている実態があるということを金融庁自身が指摘をしていたわけでありまして、金融機関に対するG20以降の国際的な規制の流れに沿ってしっかり実態を把握をする、そういう調査、そしてこれを公表し、国際的な要請に匹敵をするような規制をしっかりやるように努力をすべきだと思います。
その点申し上げまして、質問を終わります。