・検察問題の2回目。村木元局長の裁判で問題になった「取調べメモ」について最高検が必要ないと認めたものは速やかに廃棄するよう指示した通知や説明文を撤回し、全面的に取調べメモの保管を指示するよう改めて求めた。
検察の横暴を許してきた裁判所の責任についても、検察など捜査機関のチェック機能を果たさず「人質司法」「自白偏重」と批判されてきた刑事司法全体が問われていると強調し見直しを求めた。
質問の冒頭、司法修習生の給費制の存続について、努力を尽くすよう各党に呼びかけた。
- 井上哲士君
-
日本共産党の井上哲士です。
給費制について各党から様々な質問がありました。小川副大臣からは、各党の賛同で決まったことだと言われましたが、私どもの党は当時も反対をしたということであります。ただ、あれこれの経過について私は今言う気はないんです。現実に起きている問題、そしてビギナーズ・ネットを始め多くの市民の皆さんがこの存続を求めているということに対して、やはりどう対応するかが問われていると思うんですね。もうぎりぎりのところまで来ていますけれども、やはりいろんな集会に各党が来て前向きのことも言ってきたというのも事実なわけでありまして、私は、最後までの努力も必要であるし、そして経済的理由などで法曹の道を断念するような人が絶対出ないような方策を取る必要があるということをまず申し上げておきたいと思います。
その上で、取調べメモの廃棄の問題についてお聞きいたします。
先日もこの問題で質問をいたしました。なぜ村木さんの裁判でこれが廃棄をされていたのかをただしましたら、当局からは、検証中であり、必要であれば更に方策を講じると、こういう答弁でありました。ところが、おとといの夜の報道で、この通知と同時に補足説明という文書が発出をされているということが分かりまして、私も昨日これをいただきました。通知は一枚ぺらでありますけれども、補足説明は具体的な中身について、最初は二枚、二回目のものが三枚、ぎっしり書いてある、実質的にはこっちが中身になっているんですね。
まず当局にお聞きしますけれども、なぜ私が前回の質問の前にこの通知の提出を求めた際に補足資料については提出をされなかったんでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
-
実はこの最高検の通知、これは刑事部長名で出ていますが、これは正式の文書ということでございます。それから、連絡文書でございますが、これは検察庁内でこの通知文書を発出した際にテレビ会議を実施しました。テレビ会議で注意した事項を取りまとめたものということでございまして、実はこれは保存期間一年未満のその他文書ということでございまして、原本自体は廃棄になっていたということでございます。
今回、報道がありまして、御指摘を受けましたので、担当者等に確認してようやく再現したと、こういう次第でございますので、是非御理解いただきたいと思います。
- 井上哲士君
-
しかし、現場ではこれが徹底をされているわけですね、今言われたように。これの補足文書説明によりますと、必要性の乏しいメモを安易に保管しておくと、メモを開示するかどうかで無用な問題が生じかねないと、こうなっておりますが、この無用な問題というのは一体何でしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
-
この取調べメモの通知、この中身を若干説明させていただきますと、その概要は、まず裁判所が取調べ状況についての争いを公正に判断する上で必要と認められるもの等を組織的に保管することが相当である、これが第一点と。それから第二点は、組織的に保管する必要がなくなったものについては、捜査の秘密の保持や関係者の名誉及びプライバシー保護の観点から、安易に保管を継続することなく、廃棄すべきものであると、こういうことが第二点ということでございます。
したがって、最高検の補足説明の趣旨は、取調べメモについては、取調べ状況について判断をする上で必要と認められる取調べメモと、そのような記載がない取調べメモ、これはきちんと峻別して、前者については組織的に保管しておくと、後者については廃棄するということでございます。
このようにきちんと峻別しておかないと、例えば弁護人から供述の任意性に関する争点関連証拠として当該取調べメモの開示請求があった場合、取調べ状況について判断をする上で必要と認められる記載がない取調べメモについても、その記載の有無だけではなく、証拠開示の要件であるとか、例えば開示の必要性、開示によって生ずるおそれのある弊害の程度及び内容について、検察官と弁護人とが意見を相違し対立するなどの無用な問題が生ずることがあり得ると、こういうことを考慮すべきであるということを説明したものであると承知をしております。
- 井上哲士君
-
あれこれ言われましたけれども、結局、自分たちの不都合なものはなるべく出さないというのが私はこの中に貫かれていると読みました。
先ほど、大臣は悪意はないというふうに言われたんですが、例えば、一回目の通知に付いている補足説明でありますが、このときはまだ個人メモは証拠開示の対象となっていませんでした。こういうふうに書いているんですね。証人出廷した場合に、個人的メモの存在にはあえて言及しないと。ただし、問われて存在を明らかにした場合は、その作成目的、作成方法、保管方法を示して、それが個人的メモであることを明らかにするよう努めると。なるべくこれは個人的メモなので開示しなくてもいいようにしなさいと、こういうことを指示していたということじゃないんですか。
ここに私は、なるべく自分たちの意に沿わないものは国民にも法廷にも出さないようにすると、こういう姿勢があると思いますけれども、いかがでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
-
確かに、最高検刑事部長の通知は二回出ております。これは最高裁における判決、この流れに従って二通出したということでございまして、初めの段階は個人的なメモとそれと捜査機関が保管するメモと。この部分について、捜査機関が保管するメモについては証拠開示の対象になると、こういう理解をしたのでその旨を出したと。
その後、管理の仕方が個人的であろうがそれとも捜査機関として組織的に管理しようが、それについては峻別しないという趣旨の最高裁の判決が出ましたので、それに合わせて出したということだけでございます。
- 井上哲士君
-
つまり、取調べメモはなるべくこれは個人メモだというふうにして、出さないように出さないように一回目の方はしているんですよ。
じゃ、その後どうなっているかといいますと、そもそも二〇〇七年十一月の最高裁の決定は、取調べメモについて、弁護人の主張との関連性の程度及び証明力が高く、被告人の防御の準備のために開示の必要性が認められる、こういうものについて証拠に準ずるとして開示を命じたわけですね。
この通知はどうなっているかといいますと、通知そのものでいいますと、この取調べ時の言動を明らかにするために必要なものを保管しろというふうになっていますよ。しかし、補足説明を見ますとどういうふうに書いているかといいますと、補足説明は踏み込んで書いているんですね。取調べメモのうち、例えば号泣しながら自白に至ったことなどを記載したものなど取調べ時の言行を明らかにするために必要があると認めるものについては保管しろと。
つまり、これは号泣して自白したと、検察の都合のいいメモについてのみ保管しなさいと、こういう中身になっているじゃありませんか。これは全く私は最高裁の決定の趣旨とも違うと思いますが、せっかく最高裁来ていただいていますので、いかがでしょうか。どうお考えでしょうか。
- 最高裁判所長官代理者(植村稔君)
-
突然のお尋ねでございますが、決定の中身と、それを前提にした検察当局の取扱いでございますので、発言は差し控えたいと思います。
- 井上哲士君
-
今挙げたように、結局これは不都合なメモについては廃棄をしなさいと、自分たちにとって、こういうことになっているわけですね。元々取調べ時の言動から自分たちに必要なものを盛り込んで供述調書を作っているわけですから、この保管をするか廃棄をするかという判断は、先日の答弁にありましたように、捜査を担当した主任検察官になるんですね。今回の村木事件では前田検事だったわけですよ。そういう人にこの判断をゆだねることになりますと、結局必要なものであっても不都合なものは廃棄をする、そのことを合理化する通知になっているんですよ。私は、これもう直ちに全面的に改定をするべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
- 政府参考人(西川克行君)
-
繰り返しになりますが、最高検の通知と補足説明の内容は、取調べの状況についての争いを判断するのに資すると認められる事項を記載した取調べメモ、これは適正に保管をしろと、こういうことでございます。したがって、このような場合には、検察官は、被告人に有利、不利を問わず、必要と認められる場合には適正に保管しろと、こういう趣旨ということでございます。
したがって、補足説明は最高裁の決定の趣旨に反するものとは考えておりませんが、ただ、この通知自体が十分かどうかにつきましては、村木さんの無罪事件の検証において、最高検において検証する予定ということを表明しているというところでございますので、この通知自体については更に検討したいと思っております。
- 井上哲士君
-
現実に広島等でも必要なものが廃棄をされているということが起きているし、私はそれを基にこの通知と補足説明があるということを強く指摘しておきたいと思います。
では、こういう様々な検察や捜査当局の問題について裁判所がチェック機能を果たしているんだろうかと、こういうことが今様々問われております。
最高裁にお聞きしますが、昨年の逮捕状の請求数と発行数及び認容率を地裁について述べてください。
- 最高裁判所長官代理者(植村稔君)
-
お答えをいたします。
平成二十一年度の通常逮捕状それから緊急逮捕状合わせた数についてまずお話をいたしますが、請求数が合計で二万三千五百六十六、これは地裁でございますが、二万三千五百六十六、発付数が二万三千三百八十八、認容率は九九・二%でございます。
それから、勾留請求と勾留状の問題でございますが、請求の合計が五万一千七十五、発付が四万九千八百九十九、認容率は九七・七%となっております。
接見禁止もお尋ねでございましたか。
接見禁止請求につきましては、請求が二万一千百三十二、決定が一万九千二百五十八、認容率は九一・一%となっております。
- 井上哲士君
-
勾留と接見までお答えいただきましたが、いずれも九九パーとか九七パー、こういう数が並びました。逮捕状でいいますと、取下げというのがありますから、二万三千五百六十六のうち却下は二十五にすぎないわけでありますね。いずれもほとんどが認容されていると。そして、刑事事件の有罪率が九九・九%と、こう言われているわけですね。
結局、逮捕、勾留、接見禁止、どの段階でも検察をチェックすべき裁判所がその機能を十分果たしていないんじゃないか、こういう指摘に対して最高裁はどうお答えでしょうか。
- 最高裁判所長官代理者(植村稔君)
-
今御説明いたしました逮捕、勾留、それから接見禁止の判断はそれぞれ裁判事項でございます。個々の裁判の当否が積み重なったものが今の数字になりますので、事務当局から意見を述べることは差し控えさせていただきたく存じますが、ただ一般論として申し上げるとすれば、裁判官は、これら令状に関する事務、令状請求がございました場合には、これは、委員も御指摘のとおり、この令状によって国民の基本的人権に直接かかわる非常に重要な職務ということになります。その辺を裁判官も十分心して適正な処理を行うように努めているところと認識しております。
今後とも、令状処理につきましては適正な処理に努めたいと思います。
- 井上哲士君
-
この間、志布志事件など、様々な長期勾留の中での自白強要というのが問題にされてまいりましたし、国際的にもいわゆる人質司法、そして自白偏重ということも批判をされているわけですね。私は、今回の事件は、検察だけではなくて、日本の刑事司法全体が問われていると思います。
最後に、大臣に、こうした長期勾留と自白強要、しばしば問題になってきた、この問題も含めて根底から見直しが必要だと思いますけれども、御見解をいただきたいと思います。
- 国務大臣(柳田稔君)
-
長期勾留が自白強要の温床になってきた実態とかいう御指摘がございました。
いろいろな御指摘、当委員会でも今日まで受けたわけでありまして、私の下につくる検討会議でいろいろと幅広い観点から抜本的な検討を行っていこうと、そういうふうに考えております。
- 井上哲士君
-
終わります。