自由討議で国民は改憲を求めておらず今やるべきは憲法審査会の始動ではなく、憲法を生かした復興に全力をつくすことだと強調
井上哲士君
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日本共産党の井上哲士です。
我が党は、国民は憲法改正を求めておらず、憲法審査会を動かす必要は全くないことを幹事懇談会の場でも表明をしてきました。この審査会は憲法改正手続法に基づくものですが、この法律は憲法に改正規定がありながら手続法がないのは立法不作為だなどとして作られたものであります。しかし、手続法がないことで国民の権利が侵害された事実もなく、立法不作為論は全く成り立たないものでありました。そして、この手続法が強行されてからこの四年余りも憲法審査会を始動してこなかったことで国民が不利益を被った事実もありません。今この審査会を動かす理由はありません。
振り返りますと、今日の憲法をめぐる動きは、九条の改憲を目指す勢力が二〇〇〇年に国会に憲法調査会を設置したことに始まりました。改憲を目指す勢力は調査会を足掛かりとして国民の中に改憲の機運を盛り上げようとしました。しかし、国民世論は九条改悪反対が多数であり、九条を変えるべきであるとする意見は一貫して少数でありました。
続いて、二〇〇五年に憲法調査特別委員会が設置され、自民、公明、民主の各党で憲法改正手続法作りが進められました。元々、立法不作為などは成り立たないものだった上、慎重審議を求める国民多数の声を無視して衆議院では自公両党による強行採決が行われ、参議院では最低投票率の問題を始め十八項目もの附帯決議が付けられました。このことは、いかにこの手続法が多くの問題点を残したまま強行されたかを示しております。そして、手続法を強行し改憲を選挙の公約に掲げた安倍政権は、その夏の参議院選挙で国民からノーの審判を突き付けられて、退陣を余儀なくされました。
選挙後に憲法審査会の設置を規定した改正国会法が施行されましたが、審査会規程を制定できず、審査会は始動することができませんでした。すると、麻生政権末期の二〇〇九年六月に、自公両党が再び強行採決によって衆議院で憲法審査会規程を制定をいたしました。このように、審査会は強行に強行を重ねてつくり上げられたものであります。
民主党は公正中立な改憲手続法の制定を掲げていましたが、自公両党のこうしたやり方に強く抗議して手続法に反対し、衆議院での憲法審査会の規程にも反対し、安倍元首相らに自己批判と謝罪まで求めてきました。その後、二〇〇九年九月の総選挙で国民の生活が第一を公約に掲げて政権交代を果たした民主党政権の下で、憲法審査会は始動させてきませんでした。ところが、民主党政権が普天間問題や消費税など公約違反への批判の中で昨年の参議院選挙で過半数を割り、いわゆるねじれ国会となりました。その下で、国会対策上の理由から、衆議院では反対した憲法審査会規程と同じ内容の規程を参議院では与党だからといって民主党が提案をし、さらに野田政権になって憲法審査会委員の選任を強行した、これが経過であります。
民主党が改憲手続や衆議院での憲法審査会規程の制定に際しての主張を顧みることなく、憲法の問題を国会対策の手段として軽々しく扱うことは、国民の厳しい批判を免れないでしょう。また、自民党からは、非常事態条項が憲法に必要だとして、その必要性を国民に理解してもらうにはまず国会の中で十分な議論をしていく必要があるという主張があります。
国民が具体的に改憲を必要とした場合の手続の場として設けられた審査会を改憲機運を盛り上げる場に利用するということは、制定当時の提案者の発言にも反するものであり、認めることはできません。
震災からの復興の課題と本審査会の審議についての言及もありました。
今、被災地から聞こえてくるのは、憲法に定められた生存権を始めとして、憲法が震災復興に生かされていないという悲鳴の声であります。逆に、憲法に規定がないにもかかわらず、日本では個人の財産形成に税金をつぎ込むことができないと、こういう主張が復興の妨げになっております。
今、国会がなすべきことは、総力を挙げて憲法を生かした被災地の復興に全力を挙げることでありまして、本審査会を今後も動かすべきではないと、そのことを強く主張して意見表明を終わります。