国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2011年・179臨時国会 の中の 予算委員会

予算委員会

7gy_bor.jpg・TPP問題、原発災害の補償、除染問題、核燃サイクルと財源問題で野田総理と初論戦

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 総理は、全国の反対の声を聞かず、APEC首脳会議でTPPへの参加方針を表明されました。アメリカ側が、総理が全ての物品、サービスを貿易自由化交渉のテーブルにのせると発言したと発表して、総理が否定をされておりますが、実際にはどう発言をされたんですか。

内閣総理大臣(野田佳彦君)

 私の発言は、TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入っていくということ、そしてまた、昨年十一月に決定した包括的経済連携に関する基本方針に基づき、高いレベルの経済の連携を進めていくというお話をいたしました。

井上哲士君

 基本方針の中身はどういうことでしょうか。

rwd_bor.jpg内閣総理大臣(野田佳彦君)

 センシティブな品目について配慮をしつつ、全ての物品及びサービスを貿易自由化の交渉のテーブルにのせるという趣旨のものでございます。

  〔委員長退席、理事川上義博君着席〕

井上哲士君

 分かりにくいんですが、配慮をしつつというのは具体的にどういうことですか。

内閣総理大臣(野田佳彦君)

 センシティブな品目を配慮するということは、そのことをしっかり踏まえて対応していくということであります。

井上哲士君

 じゃ、配慮した結果、交渉対象にしない品目があるということですか。あるんなら挙げてください。総理。総理の発言ですから、総理。総理発言なんだから。

経済財政政策担当大臣 (古川元久君)

 センシティブな品目については、まさにセンシティブですから、そういったものに十分に配慮するということであります。

井上哲士君

 ですから、その結果、交渉対象にしないものがあるんですか。あるんなら挙げてください、総理。

内閣総理大臣(野田佳彦君)

 センシティブな品目について、基本的にはこれは十年以内に関税を撤廃していくという方針、原則としてというのはありますけれども、それは即時あるいは撤廃なのか、段階的にどれぐらい時間を掛けて撤廃するのか、例外があるのかということも含めて今関係国で協議中というふうに承知をしていますので、そういう議論の中で我々のセンシティブ品目についてどう対応するかということを考えていくということであります。

井上哲士君

 自由化交渉の対象にしない品目があるんですかと聞いているんです。ちゃんと答えてください。

経済財政政策担当大臣 (古川元久君)

 交渉には、当然これ、外交交渉でありますから議論するわけでありますけれども、しかし、センシティブな品目についてはしっかり配慮をして、我が国として、国益としてちゃんと守るべきは守ると、そうしたスタンスで交渉していくということであります。

井上哲士君

 結局、全てが交渉対象になると。アメリカ側の発表と一緒じゃないですか。違うんですか。

内閣総理大臣(野田佳彦君)

 さっき言ったように、即時になくしていくもの、段階的になくしていくものと、例外も含めての今議論をしているということでありますから、全てが対象になるかどうかということはまだ決まっていないということであります。

井上哲士君

 つまり、それは交渉の対象になるということじゃないですか。

 ですから、結局アメリカが言っているのと一緒なんですよ。米議会の承認なしに日本はTPPへの参加はできないわけですから、このまま協議を続ければ、まさにアメリカの要求の丸のみが迫られることになるんです。これは本当に日本の経済、地域に壊滅的な影響をもたらしますし、被災地からはTPPは復興の足かせだという悲鳴が上がっているんですから、この参加方針の撤回を強く私は求めます。

 そして同時に、今やるべきことはTPPじゃないんです。被災地の願いにこたえることなんですね。

 そこで、細野大臣にお聞きしますが、除染の問題であります。

 政府は、年間一ミリシーベルト以上の地域について地方自治体が行った除染に財政負担を行うということを表明されました。しかし、国の予算措置への不安もあって、自治体の方は個人住宅も含めた全面的な除染にちゅうちょしているところも少なくないんですね。

 これまでに自治体が行った除染も含めて全面的に国が財政負担をする、具体的にどうするのか、お答えください。

環境大臣(細野豪志君)

 それぞれの市町村で行っている除染については国の責任でしっかりと財政措置をするという方針でございます。既に予算措置をしてまいりましたけれども、この三次補正、さらには来年度の予算も含めると実質的には一兆円を超える予算の規模を確保しておりますので、そこでしっかりと財政的な支援をしてまいりたいと思っております。

 具体的に、これまでは福島県に基金をつくっていただきまして、そこから支出をするという形を取ってまいりました。今後の形をどういった形にするべきなのかというのを今福島県と協議をしておりまして、いずれにしても、市町村がやるものについては国の財政負担の下で着実に実施をするという体制は我々が責任を持ってつくっていかなければならないと考えております。

井上哲士君

 過去に行ったものも対象ですね。

環境大臣(細野豪志君)

 市町村が責任を持ってやったものということに関して言うと、過去も含めてしっかりと対象とするように検討していきたいと思っております。

井上哲士君

 さらに、個人が行った除染の取扱いがあります。もう国や自治体を待っておられないと、一刻も早く子供の安全を守りたいということで地域住民やPTAなどがやった除染、これも当然対象にするべきだと思いますが、いかがでしょうか。

環境大臣(細野豪志君)

 既に付けました予算の中で、例えば、地域で除染をやっていただいた場合に実質的な費用がいろいろ掛かってまいります。そういったものについて五十万円という形でお渡しをして、それをしっかりと後押しをするという枠組みがございますので、そういった中で最大限そういったものについてもカバーをできるようにしてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 これは是非、いろんな線引きではなくて、全面的にきちっと負担がされるようにお願いをしたいと思いますが、もう一点、賠償についてお聞きしますが、やはり不当な線引きなしの全面賠償が必要であります。

 ところが、原発からの距離三十キロで線引きをされて、その圏外で自主避難をされた人には何も賠償がありません。しかし、自主避難というのは、やはり安全、安心を求めたやむにやまれない行動なんですね。同時に、三十キロ圏外で避難をされなかった方もいろんな負担もあり、精神的な苦痛を被っていると。

 いずれも原発災害がなければなかった被害ですから、当然、東電の責任を認めて賠償すべきだと思いますが、東電来ていただいていますが、いかがでしょうか。

東京電力社長(西澤俊夫君)

 お答えいたします。

 本件につきましては、非常に多くの方々が対象になっているということがありまして、一つ一つこの件につきまして精査をしていくというのは非常に難しいところがございます。

 その点、この自主的に避難された方々、避難されなかった方々に対する賠償の在り方につきましては、現在、紛争審査会の方で議論が、御審議が続いております。この結果を踏まえて迅速に我々としては対処していきたいというふうに思っております。

井上哲士君

 人ごとみたいなんですよね。

 原発事故がなければ起きなかった被害だと、よって責任があると、そういう自覚はあるんですか、ないんですか。

東京電力社長(西澤俊夫君)

 当社は、当事者であり、原因者でございます。

 重ねて申し上げますけれども、今、審査会の方で議論が進められておりますが、その結果を踏まえてしっかりやってまいりますけれども、もちろん原賠法のといいますか、中間指針に記載されない場合は、これは我々、その被害者の方々とよく御相談して対応させていただくということはきちっと認識してございます。

井上哲士君

 この点、枝野大臣、どうでしょうか。

経済産業大臣(枝野幸男君)

 東京電力においては、今回の原子力発電所事故によって被害を受けられた、損害を受けられた皆さんについては、審査会での結論いかんにかかわらず、指針いかんにかかわらず、相当因果関係のある損害については賠償する責任があるというふうに思っております。

 審査会は、一つの類型的な皆さんに対する指針をお示しをすることできますが、それこそ自主避難された方とか、あるいは避難されなかった方で原発に近い方などについて、審査会においてもできるだけ類型化した上で一つの指針を示す努力を今進めていただいているとは承知をしておりますが、東京電力においても主体的にどういうやり方でどういう基準で賠償ができるのかということについてはもっと積極的に対応してもらいたいと思っておりますので、そうした指導を今のやり取りを踏まえてしてまいります。

井上哲士君

 審査会でも両方ともきちっと賠償するという方向で議論がされていると、それでよろしいですね。

文部科学大臣(中川正春君)

 先ほどの答弁にもありましたように、審査会で類型化をしていくということでありますが、その類型化でき得ない個別の事象というのもやっぱり出てくるというふうに思います。それは、東電とじかに交渉をしていただく、その上で、紛争処理センターというのができておりますので、そこがADRという形で中に入って処理をしていくと、そういうスキームになっております。

井上哲士君

 いずれも、これは原発事故がなければなかった災害でありますから、きちっと不当な線引きをせずに東電が責任を持って賠償する、改めて強く求めておきます。

 こうした原発災害対策の財源をどうするのかということでありますが、原子力委員会の専門部会が廃炉に向けた課題について最終報告案をまとめておりますが、その中で原子力業界の負担についてどのように述べているでしょうか。

環境大臣(細野豪志君)

 原子力委員会では、ステップツー完了以降の使用済燃料の取り出し、さらには放射性廃棄物の管理、廃止措置といった一連の取組について専門部会を設置をしておりまして、その中で検討結果を既にまとめまして、現在パブリックコメントの募集をしているところでございます。

 その検討結果案におきましては、過去のスリーマイルアイランド原子力発電所二号機の事故対応時の取組を参考として中長期措置へ反映すべき項目を整理をしておりまして、その中に、燃料デブリ取り出しに係る費用については事業者だけでなく、産業界や国、自治体も含めた原子力業界全体が負担していることとの記載がございます。スリーマイルアイランドのことについて、過去の事例についての記述がそういった形になっております。

井上哲士君

 原子力委員会も、この原子力業界全体が負担すべきことを中長期的措置に反映すべきと、こうしているわけですね。

 そこで、原子力産業協会の主要企業を表にしてみました。(資料提示)原子炉メーカー、大手ゼネコン、鉄鋼、セメントメーカー、大銀行など、原発で大きな利益を上げてきた原発利益共同体ともいうべき企業でありますが、その内部留保の合計は八十兆円になるんですね。社会的な責任もあります。体力もあります。こういう企業に原発災害対策の負担を求めるべきだと思いますが、いかがでしょうか、総理。

経済産業大臣(枝野幸男君)

 先ほどの原子力委員会もスリーマイルでの対応について参考にしろということでございますので、スリーマイルで関係業界に本当に具体的にどういう協力を求めたのかということはしっかりと調べてみたいとは思いますが、まず、少なくとも今回の事故によって生じた損害等についての責任は東京電力にあり、あるいはそれは原子力行政を担ってきた政府にあるということが大原則でございます。

 そこに挙がってきている企業も原子力産業と関連のあったことは間違いないわけでありますが、では今回の事故とどういった因果関係があるのか、それに対する責任があるのかということを考えると、例えば法的に資金拠出ということを求めることができるというのは一般的にはなかなか難しいというふうに思います。もちろん、社会的、道義的に御協力いただけることについては、それぞれの企業の社会的責任として御協力いただければ大変有り難いとは思います。

 その上で、原子力委員会の指摘もありますので、スリーマイル、日本と同じような資本主義社会でございますので、そうしたことの中で、もし、どういったことができたのかということについては勉強はしてみたいと思います。

井上哲士君

 日本の原子力業界は、もう安全神話、さんざん電力会社と一緒になって振りまいてきたんですから、特別な責任があるんですね。そして、大きなもうけを上げてきたんです。これは私は当然負担を求めるべきだと思います。

 私たちの提案は、電力業界が積み立ててきた原発埋蔵金を国が一括して管理する基金にして、賠償・除染・廃炉基金を創設をして活用する、そこに更にこうした企業からの拠出も求めていくと、こういうことであります。

 そこで聞きますが、電力業界が、使用済核燃料の再処理積立金、それから高レベル放射性廃棄物の最終処分積立金、その残高、それから電力各社の原子力発電施設の解体引当金、その合計、この三つについて明らかにしてください。

経済産業大臣(枝野幸男君)

 平成二十二年度末の数字でございますが、電力事業十社が積み立てております再処理等積立金の残高は二兆四千四百十六億円であります。高レベル放射性廃棄物等の最終処分積立金の残高は八千三百七十五億円であります。それから、原子力発電施設解体引当金の残高を十社積み上げますと一兆七千五百四億円であります。

井上哲士君

 もうこれは既に五兆を超えるお金があるわけですね。今後、合計十九兆まで積み立てるという状況でありますが、原資は国民の電力料金であります。

 これら積立金は原発とそしていわゆる核燃料サイクルを推進するためのものでありますが、この核燃料サイクルについて、経産大臣、分かりやすく説明してください。

経済産業大臣(枝野幸男君)

 原子力発電所で使用した核燃料、使用済みの核燃料、そこに含まれるウランとプルトニウムを分離して回収をします。そして、回収したウランとプルトニウムを燃料に加工してもう一度原子力発電所で利用する。これが核燃料サイクルでございます。

井上哲士君

 今のを概略パネルにしてみました。この使用済核燃料を再処理してプルトニウムを取り出して高速増殖炉で燃やしたら、燃やした以上に燃料が出ると、もう夢のエネルギーだということを言われましたけれども、あらゆる工程が今行き詰まっているんですね。

 まず、再処理工場ですけれども、使用済核燃料を切断をして溶かしてプルトニウムを取り出すわけでありますが、非常に危険な工程です。青森県の六ケ所村の再処理工場は一九九七年に完成の予定でありましたけれども、いまだ完成をしておりません。何回期日が延期になって、そしてその理由は何か、その結果、建設費用は当初からどれだけ膨れ上がったか、お答えください。

経済産業大臣(枝野幸男君)

 六ケ所再処理工場の竣工時期は十八回変更されております。建設費は、平成元年の事業指定申請時に七千六百億円と見込まれておりましたが、現時点では二兆一千九百三十億円と見込まれているところでございます。

 この建設費の増加や竣工時期の変更は、当初想定していなかった耐震性や飛来物に対する防護性の強化あるいは核不拡散の強化に必要な設備の増加等によるもの、またさらには、高レベル廃液のガラス固化に係る技術的課題等への対応するためと、こういった理由で竣工が遅れているものであります。

井上哲士君

 再処理というのは原発以上に危険で未熟な技術で、世界各国の施設でも臨界事故や爆発とか火災事故が度々起こっておりますし、この六ケ所村、一番肝心のこのガラス固化の技術のところで今行き詰まっているわけですね。

 しかも、この再処理工場が、じゃ本格稼働したらどうなるかといいますと、高レベルの放射性廃棄物が生じるわけですね。これをガラスで固めて処分をするわけでありますが、人間が触れるほど近づきますと二十秒で死亡するというぐらいの高い放射線量を持っておりますが、この高レベル放射性廃棄物の最終処理はどのようにするんでしょうか。

経済産業大臣(枝野幸男君)

 この高濃度の放射性廃棄物の最終処分として、地層処分、地中の奥深くに埋めるということですね、の取組を確実に進めていくということに従来なってきておりますが、最終処分地はまだ決まっておりません。

井上哲士君

 地下三百メートル以下に埋めるという話でありますが、全国の市町村にこの処分地の公募を求めてもう九年になりますけれども、そもそも調査を受け入れた地方自治体はあるんでしょうか。

経済産業大臣(枝野幸男君)

 これまで募集に応じ文献調査を開始した市町村はありません。

井上哲士君

 唯一文献調査に応じたのが高知県の東洋町ですけれども、住民の反対の中で町長選挙になって、町長落選をして受入れを撤回をして、そしてこういうものを受け入れないという条例まで作ったんですね。

 ですから、もう東日本大震災で、埋めたら安全という場所があるのかということが問われている中で、およそ私はこういうものを受け入れる市町村はないと思いますが、何らかの展望を持っていらっしゃるんでしょうか。

経済産業大臣(枝野幸男君)

 東日本大震災、原子力発電所事故を受けて、最終処分地の受入れについて一層困難な状況が高まっているというふうに認識をしております。そうしたことも含めて、エネルギー政策、原子力政策全般についてゼロベースで見直しを進めているところでございます。

井上哲士君

 再処理工場自身が困難、そして動いても高レベルの廃棄物の捨場がないと。じゃ、さらに、動いたときにプルトニウムをどうするかという問題ですが、高速増殖炉がなかなかめどが付かないという中で、政府は、ウランと一緒にして軽水炉で燃やすプルサーマル計画を推進をしてまいりました。これは普通の原発よりも危険性が高いということで大きな反対運動も起こってきたわけですが、この間、原発の説明会やシンポジウムでやらせが大問題になってきました。

 このプルサーマルをめぐる各地のシンポジウムではこのやらせがどうだったのか、報告されていると思いますが、どうなっているでしょうか。

経済産業大臣(枝野幸男君)

 原子力発電所に係るシンポジウム等においていわゆるやらせのことがあったことは大変遺憾でございまして、第三者調査委員会をつくりまして第三者において調査をいただきました。

 その最終報告書においては、泊原子力発電所に係るプルサーマルシンポジウムにおいて、資源エネルギー庁の職員が北海道電力担当者に対し、シンポジウムにおいて推進側の立場から質問させることを要請をしたこと、二つ目に、浜岡原子力発電所に係るプルサーマルシンポジウムにおいて、原子力安全・保安院の職員が中部電力担当者に対し、シンポジウム会場の空席が目立たないよう参加者を集めること、中部電力において質問文案を作成、配付して参加者に質問するよう依頼することを要請したこと、三つ目に、伊方原子力発電所に係るプルサーマルシンポジウムにおいて、原子力安全・保安院の原子力安全広報課長が四国電力担当者に対し、電力関係者を動員すること、電力関係者がシンポジウムへ参加して積極的に賛成意見を述べるよう要請したことが認定をされており、これらはシンポジウムの公平性、透明性を損なうおそれのある不適切なものであるというふうに思っております。

 二度とこうした事態を起こさないよう、シンポジウム等の運営に係る行動規範を策定し、さらには外部有識者によるアドバイザリーボードの設置等により再発防止に全力を挙げているところでございます。

井上哲士君

 ですから、泊、浜岡、伊方、いずれもこのプルサーマルをめぐるシンポジウムでやらせが行われてきた。やらせをやらなければ住民に安全性の説明ができない、そういう代物だということですよ。地元住民も自治体も一層今不信を強めておりますけれども、これらの再稼働とか計画を進めると、そういう展望をお持ちですか。

経済産業大臣(枝野幸男君)

 いずれの原子力発電所についても、定期検査によって停止した後、検査を厳格に行う、その検査において今回の地震、津波の知見も含めたバックチェックをしっかり行うということに加えて、いわゆるストレステストによって公開性、透明性をより高めた形で、どのくらい様々なストレスに対する裕度があるのかということを住民の皆さんにも見ていただくというプロセスを踏みつつありますが、それを踏まえて、それぞれ周辺地域の住民の皆さんを始めとして国民の皆さんの理解を得られるかどうか。得られなければ再稼働しない、得られたものから稼働するということです。

井上哲士君

 そのストレステストをやるのがやらせをやった張本人の保安院なわけですから、こんなもの誰が信用するかということですよ。これを動かすなんというのはもうあり得ない話なんですね。

 じゃ、もう一つ、この核燃サイクルの中核である高速増殖炉の「もんじゅ」はどうなっているかと。これは運転開始直後の九五年にナトリウム漏れの火災事故を起こしまして、以来、十四年五か月間停止をしておりました。去年の五月に運転再開をしましたけれども、またトラブルが続いて今も止まっておりますが、文科大臣、「もんじゅ」のこれまでの総事業費、それから運転開始以来の運転時間、停止中の一日の維持費は幾らか、会計検査院の指摘も踏まえて御答弁いただきたいと思います。

文部科学大臣(中川正春君)

 昭和四十六年度から平成二十二年度にかけて、会計検査院の指摘も受けた金額ということになりますと、一兆八百十億円を支出しております。

  〔理事川上義博君退席、委員長着席〕

 平成七年十二月及び平成二十二年五月から七月にかけて試運転を行いましたが、総運転時間は二百五十日、時間にして五千三百時間四十五分ということになります。そして、維持費は、先ほど申し上げた、あっ現在の維持費ということですか。現在の維持費については、平成八年度から二十一年度の停止期間中の一日当たりに直していきますと、四千万円ということになります。

 以上です。

井上哲士君

 ですから、一兆円以上掛けて十六年余りで運転したのは僅かの二百五十日と。この間の財務省の、仕分のときの財務省は、何ら研究成果を上げていないと、こういうふうに言っておりますが、とてつもない無駄遣いですね。

 で、水に触れると爆発的に反応するナトリウムを冷却剤に使うという根本的な危険性があります。だから、技術的にもコスト的にもめどが立たず、世界各国も撤退しているわけです。

 「もんじゅ」を運営をする日本原子力研究開発機構の鈴木理事長も、従来路線はなかなか国民には理解してもらえないとの認識を示し、発電の実用化とは別の研究開発に軸足を移す方向性を明言したと報道されました。つまり、十六年間やってきたけれども、もう実用化は無理だと、こういうことなんじゃないですか。これ、総理、どうするんですか。総理、どうです。総理。

内閣総理大臣(野田佳彦君)

 ただいま井上さんの御指摘のとおり、「もんじゅ」についてはいろいろ事故等がございました。その上で、「もんじゅ」を含む核燃料サイクルについては、エネルギー・環境会議において原子力政策の徹底検証を行い新たな姿を追求すると整理をされておりますので、今後の原子力政策の見直しを議論をしていく中で、原子力委員会の新大綱策定会議とも連携をし、しっかりと議論を行ってまいりたいというふうに思います。

井上哲士君

 そうやって議論しているうちに、一日四千万の維持費が何の研究成果も上げられないで続けられるんですよ。

 先ほどから安住大臣うなずいておられますけれども、これは無駄遣いじゃないですか。

財務大臣(安住淳君)

 いや、無駄とはなかなか言い切れない部分もありますけれども、しかし、十九年間やってきたということで、今総理がお話ありましたように、これはいずれ行政刷新等も含めて議論をしっかりして結論を出していかなければならない問題だと思っております。

井上哲士君

 核燃サイクルのどの工程を見ても、本当に危険であって行き詰まっているわけですね。私はこれ、中止を決断をして、このための積立金は原発事故対策につぎ込むべきだと思います。

 総理は党首会談のときに、原発関係のお金については今後エネルギー政策全般を見直す中で洗い出し、洗い出したお金は可能な限り除染や賠償に使っていくと、こう述べられました。これはもう毎日毎日のことです。今目の前にやるべきことがあるんですから、まず決断をして具体化をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(野田佳彦君)

 間もなく始まる行政刷新会議における提言型政策仕分の中でも、この原子力回りのお金というものは、あるいは制度というのは仕分の対象でございますので、その際、そうした議論を踏まえた対応をしていきたいというふうに思います。

井上哲士君

 そう言っているうちに一日四千万の維持費が付くんですからね。私は、今必要なことは、原発災害の賠償や除染のために政治が力を尽くすことだし、そのために財源を加害者である東電とかそして原発で利益を上げてきた原子力業界にしっかり求めると、そのために政治が知恵を尽くすことが大事だと思います。破綻した核燃サイクルにしがみつくのはもうやめて、既に五兆円あるこの原発埋蔵金を被災者のために使うべきだと強く申し上げまして、質問を終わります。

ページ最上部へ戻る