国会質問議事録

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決算委員会

shitsumon201111.jpg・原発敷地内の活断層の過去の審査の総点検や、再調査の第三者の専門家の立会を求めた


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 原発と活断層に関する国の審査の問題について質問いたします。

 七月十日の予算委員会で、大飯原発直下のF―6破砕帯が活断層である可能性を専門家が指摘をしている、そのことを示してこの破砕帯の再調査を求めました。やっと調査が始まったわけでありますが、これはボーリング主体ではなくて、ちゃんとトレンチ調査をするということを求めたい。

 そして、問題になっているのは、当時、事業者が行った、活断層ではないと、こういう調査結果を妥当と評価した原子力安全・保安院の審査が間違っていたのではないかという問題であります。今回幾ら再調査をしても、同じ体制で審査をするならば同じ疑念を生じるわけでありまして、保安院の専門家だけではなくて、例えば活断層学会等が推薦をする第三者の研究専門家を立ち会わせると、このことを求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

国務大臣(枝野幸男君=経済産業大臣)

 あの三・一一の教訓を踏まえて、安全、安心の審査の経過については公開性を高めているところでございます。

 御指摘の大飯原発の破砕帯の活動性を確認する現地調査についても、一方では、地面に深い溝を直接掘って断層の性状等を確認するものでありますので、地盤の崩落等の危険もありますから現場での安全確保に万全を期する必要がありますが、だから一般の方々の立入りを無制限に認めることは困難でありますけれども、専門家の方が実際に立会い等の御要望があれば、安全対策をきちっと講じることが前提となりますが、立会いが可能となるように具体的に検討してまいりたいと思っております。

 ちなみに、本年四月に敦賀発電所の敷地内で浦底断層の調査を行いました。この場合は、報道機関からお求めがありましたので、安全対策を取った上で公開をいたしました。

 今後とも、調査の状況を国としても適切に監視をすると同時に、情報の公開に努めて、また調査の結果に係る評価は公開の意見聴取会で行うなど、透明性を確保してまいりたいと思います。

井上哲士君

 専門家の方が現に求めていらっしゃいますので、これは是非きちっとやるように求めたいと思います。

 そして、これが活断層だということになりますと原子炉の廃炉という必要性も出てくるわけでありますから、私は改めてこの調査中について稼働中止をするということを求めておきたいと思います。

 この活断層の評価が間違いだということが指摘されているのは大飯だけではありません。志賀原発の一号機の原子炉建屋の真下を通るS―1破砕帯が活断層であるという可能性が高くなって、今再調査が行われております。

 この破砕帯は、一九八七年の一号機の原子炉許可申請書の中にも登場しておりますけれども、活動性が問題となるわけではないとされておりました。続いて二号機の設置の際の申請書にもありますけれども、同じ結論でありました。この二つの申請書は当時の通産省と安全委員会のダブルチェックを受けているわけですが、いずれも妥当とされました。そして、二〇〇九年のバックチェックの際も問題にされなかったわけであります。

 ところが、今年の七月の十七日に保安院が開いた専門家の意見聴取会では、この過去の調査資料に基づいて議論をされた際に、出席した専門家からは、典型的な活断層が炉心の下を通っている代表的な例だと、よく審査を通ったなとあきれていると、活断層の専門家に見せたら唖然とするだろうと、全く理解ができないと、厳しい意見が相次いだわけでありますし、地元からは、一体国はどんな審査をしていたんだと、ずさんではないかという声も上がっております。

 保安院と安全委員会、それぞれ来ていただいておりますが、当時どのような審査を行ったのか、そしてなぜこの典型的な活断層が許可申請のときもバックチェックのときにも擦り抜けてしまったのか、この点についてそれぞれお答えください。

政府参考人(深野弘行君=資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)

 お答えをいたします。

 まず、この安全審査の際でございますけれども、この昭和六十二年の安全審査、一号機でございますが、この際に七本の破砕帯、これが確認をされております。これにつきまして、比較的長く原子炉建屋の基礎底面に認められる破砕帯がS―1というものでございまして、この性状について直接確認をするためにトレンチ調査を行っております。そのトレンチ調査を行った結果、破砕帯は確認し、またその破砕帯の上部が若干段差が付いたような形になっていることは確認しておりますけれども、その上に更に地層が堆積をしておりまして、当時の評価としては、この上位に堆積した地層が十二、三万年程度古いものであり、かつ変位、変形が認められないということを当時評価をしております。この評価は、平成九年の二号機の安全審査に際しても覆されていないということでございます。

 それから、バックチェックでございますが、この際は、これはバックチェック中間評価でございまして、この際審議のポイントというのを定めて評価を行っているんでございますが、その審議のポイントの中にこの破砕帯の活動性というのは含まれておりませんで、破砕帯については、むしろこの破砕帯があることによる地盤の安定性についての評価だけが行われております。したがって、この中間評価では、この活動性についての審議は結局行われなかったということでございます。

政府参考人(班目春樹君=原子力安全委員会委員長)

 まず、一号機の安全審査でございますけれども、今、深野保安院長から答弁がありましたように、トレンチ調査を実際に行って確認してございます。安全委員会の方では、原子炉安全専門審査委員会の下に部会を設けまして、地質の専門家複数を含めた上で、現地調査も行った上で、当時の通商産業省の判断は妥当だというふうにしてございます。

 それから、二号機のときも一号機と全く同じでございます。

 それから、バックチェックにつきましても、今、深野院長の方から話がございましたが、このバックチェックについては、直接的にはこのS―1の活動性については記載がございません。しかしながら、地盤の支持力、支持性能という意味においては特段問題ないということで、我々としては承認したということでございます。

井上哲士君

 とても納得できる答弁じゃないんですね。判断がいろいろあるということではないんですね。

 先ほど七月十七日の専門家の意見聴取会での発言を引用いたしましたけれども、典型的だと、これを活断層でないと思っている人がいたらその人に委員を務める能力はないと、こういうことを言っておられる専門家もおるわけですね。それを当時調査をしてもそれが分からなかったと、そして一旦そのときにもう活動性がないという判断をしたら、バックチェックのときにはもう対象にもなっていないわけですよ。この下で全くこれが擦り抜けになっていた、なぜこれがチェックできなかったのか、今の話で私さっぱり分からないんですね。

 経産大臣、そこでお聞きしますけれども、私は、今回の問題は事業者の報告や国の審査がいかにずさんだったかということを示している、そういう点では非常に保安院や専門家の責任も大きいと思っております。なぜ当時の審査で典型的と言えるものがチェックをできなかったのかと、当時の審査の内容や体制を洗い直すべきだと思いますし、これからの調査については、先ほどと同じように第三者の研究者の立会いを行うべきだと思いますが、その点、いかがでしょうか。

国務大臣(枝野幸男君)

 三・一一以前の原発の安全性のチェックについては、結果的に福島の原子力発電所が津波によってこうした大きな事故になったわけでありますので、適切でなかった部分があるということはこれは間違いないことだというふうに思っております。

 なぜ今、御指摘いただいた志賀の件などについて今改めて専門家の皆さんに御意見を伺うとそうした指摘を受けることになっていたのかということは、今後も不断の検証をしていかなければならないと思っておりますが、間違いなく言えることは、一つは、やはり安全神話というものが三月十一日までこの国の原子力行政あるいは原子力にかかわる人たちの間を覆っていたということが背景にあったことは間違いないだろうというふうに思っております。

 それからもう一つは、やはりこの安全性のチェックなどについての様々な審査、議論のプロセスの透明性が欠けていたのではないだろうかと。当時の例えばどういう材料でどういう審査をしたのかということが十分に資料が残っていなかったり、あるいは専門家の皆さんが、どなたがどういう御意見を述べられたのかといったことについての資料が残っていないということでありますので、専門家の皆さんも、自分の発言したこと、評価が事後になって間違っていたということになるおそれがあれば責任を持った御発言があるだろうと思いますが、もちろん、そうでなくても専門家の皆さんは専門家の矜持として自分の信念に基づいて御発言されていたと思いたいですが、しかし、それを検証する手段がないといったことがやはり背景にあるというふうに思っておりまして、こうした点についてはできるところから改善をしているところでございます。

井上哲士君

 第三者研究者の立会い。

国務大臣(枝野幸男君)

 そういった意味では、まさに公開性、透明性ということで、先ほど申しましたとおり、大飯についても、あるいは志賀についても、当然、こうした検証をするに当たって専門家の方から御要望があれば、安全確認の上でしっかりと透明性を確保する手段については取ってまいりたいと思っております。

井上哲士君

 当時適切でない部分があったというふうに言われました。そういう下に今の原発があるということは本当に私は重大だと思うんですね。

 この間、原発周辺の活断層について過小評価だったということが次々に明らかになっております。例えば、島根の原発は南側を東西に走る宍道断層が問題となってきましたが、中国電力は当初、周辺には問題となる活断層はないと言っておりましたけれども、九八年に八キロの活断層、この宍道断層を設計上考慮する活断層と認めました。その後、〇六年に研究者が現地調査に基づいて指摘をしたのを受けて中電は二十二キロというふうに評価をするようになりました。どんどんどんどん伸びていったわけですね。なぜこういう過小評価がやられてきたのかと。

 気象庁に来ていただいておりますが、ホームページのQアンドAの中で、「ある場所で過去に大きな地震が発生していたとしても、地表に痕跡(活断層など)が残らないことがあります。このため「この場所は大きな地震が絶対ありません」と言えるところはありません。」というふうにしておりますが、地表に痕跡が残らないというのは、これはどういうことなんでしょうか。

政府参考人(羽鳥光彦君=気象庁長官)

 お答えします。

 気象庁のホームページの記述につきましては一般的なお話として書いてございまして、具体的には、マグニチュード六程度の地震が発生した場合におきまして、多くの場合、その断層のずれが地表面に現れません。このため、通常はマグニチュード六程度の地震では地震の痕跡を地上で確認することはできないと考えてございます。一方、マグニチュード七程度の地震の場合にはその断層のずれが地表に現れることが多いということですが、場合によっては痕跡を明瞭に確認できない場合もございます。

 以上でございます。

井上哲士君

 つまり、過去に大きな地震があっても、地表には活断層として残らない場合があると、これは活断層評価については常識なわけですね。ですから、地表では切れているように見えても、地形などから判断すればつながった長い活断層があると。ところが、こういう常識とも言えることが実際には原発の安全審査では無視をされてきたのではないか。つまり、意図的に活断層の値切りが行われてきたという問題であります。

 例えば、能登半島地震を引き起こした海底活断層は全体では約三十キロの長さがあるとされておりますが、当時は三つに分断して個々の長さを十キロ程度としておりました。柏崎刈羽でも海底の活断層について東電は認定をしておりませんでしたけれども、変動地形学の専門家は、地層の褶曲や変動地形の連続性から海底に二十キロ超える断層があるということを指摘をしていたわけですね。こういうものが全部認定をされない下で、中越でも能登半島でも基準地震動をはるかに揺れる大きな被害がありました。

 問題はなぜこういうことになってきたのかと。やはり保安院の審査に中立性や専門性に疑義のある専門家が、特定の専門家が長く関与をしてきて、こういう値切りをしてきたんじゃないかという指摘が各方面からされております。

 旧通産省の研究機関の出身で、電力業界が集まる日本電気協会の土木構造物検討会の主査を務めた学者でありますが、国に原発申請をする際に書類作成を指導する業界団体の主査が保安院でそれの審査をすると、これで本当に中立的な審査ができるのかということなわけですね。この専門家は、活断層の過小評価が問題になっている敦賀、大飯、美浜、高浜、「もんじゅ」、柏崎刈羽、志賀、島根の審査にいずれもかかわっております。

 こういう特定の専門家に担当させ続けて、今活断層の過小評価が次々と問題になっていると。このことについて大臣はどうお考えでしょうか。

国務大臣(枝野幸男君)

 まさに先ほど申しましたとおり、御指摘もあったので、当時のその活断層評価の資料等どうなっているのかを確認いたしましたが、顧問会というところでやっていたようでございますが、専門家の皆さんの意見聞くのは非公開で行われ、審議資料も公開していなかった、また議事録は残されていないということで、どなたがどういう知見をお示しになられたのかということが後から検証できないという構造になっているわけでございます。したがって、今のような疑義を持たれるということが生じ得る仕組みであるというふうに思います。したがって、今回、三・一一を受けて、議事や資料の公開をしていくということで今進めさせていただいているところでございます。

 また、同時に、その申請のお手伝いをした方が審査に回るということについては、済みません、事前の通告でそこまで御指摘ありませんでしたので詳細承知をしておりませんが、やはり一般論として、申請をする側の助言、指導、協力をした方がその申請されたものの審査をするというのは、これは一人二役で許されることではないというふうに思っておりますので、現在の仕組みの中でそういったことが行われていないかどうかは確認したいと思いますし、そうしたことは許されるべきではないと思います。

井上哲士君

 私は専門家の責任は重大だと思いますが、同時に重大なのは、国会の事故調が報告書で、規制当局が電気事業者のとりことなっていると、こういうことを指摘している中で起きている問題だということであります。

 手元に事故調の報告書の一部を抜粋したものを配っておりますが、電気事業連合会の資料から、電事連の原対三役と当時の保安院長との意見交換の生々しいやり取りが紹介をされております。実はこの前のところで、耐震設計審査指針の改定の際に電気事業者の要望をそのまま受け入れて、既存の原発には影響がないようにするということと、バックフィットじゃなくてバックチェックにして、かつ猶予期間を与えるということが行われたということがずっと展開をされた上でこの話です。

 これはシビアアクシデント対策についての話なんですが、保安院長からの具体的なコメントというのが電事連の資料に残っています。事業者の立場や事実関係は承知している、現実に既存炉が到達できないことを要求するつもりはないと。お互い訴訟リスクを考慮に入れて慎重に考えていきたい。基本は耐震指針改定のときと同じように対応できればいいと思っている、つまり既存原発には影響ないようにしたいと。そして、最後、結びの以下のコメント、悩みどころは一致していると感じた、年明けから公式な検討会を設置するかもしれない、その前にお互いに着地点を見出したいと。電気事業者と保安院長がこういう会話をしていたということ、生々しい電事連の資料としてこの報告書出ているわけであります。

 こういう下でこういう事態が起きたんではないか。その点、大臣、どのようにお受け止めでしょうか。

国務大臣(枝野幸男君)

 国会事故調のこうした指摘というのは真摯に受け止めなければいけないだろうというふうに思っております。

 なかなかその現場の実態や情報をしっかりと把握をしなければ行政できないという側面はあります。したがって、電気事業に携わっている者と経済産業省などが一切接触しないということは難しい側面もありますが、事安全規制などに関したところについて、しかも規制を行う側と規制を受ける側が非公式にこうしたやり取りをしていたとすれば、やはりそのこと自体適切な行政の対応ではないと私は思います。規制をする側とされる側の関係については、もちろん情報交換や意見交換が必要であれば、それはオープンの場で議事録も残るようなところでやるべきであるというふうに思いますし、特にここで出てきている公式な検討会を設置するかもしれないなら、その公式の検討会で意見交換をすればいい話であります。

 こうした関係というものを断ち切ることが今回の事故の教訓として大変重要だと思っておりまして、そうした方針に基づいて原子力規制委員会設置法の整備をいただいたところでございますが、設置法の施行までの間も保安院においてはこうしたことの起こらないようにということで、規制を受ける側との関係については私の下では厳しくやらせているところでございます。

井上哲士君

 先ほど、当時必ずしも適切でなかった部分があるということも言われました。そして、こういうとりこというような関係もあったわけですね。そういう点でいえば、当時行われた一連の審査について改めて総点検をすることが必要だと思います。その点、最後お聞きをして、質問を終わりたいと思います。

委員長(山本順三君)

 時間が参っております。簡単にお答えください。

国務大臣(枝野幸男君)

 三・一一の知見、教訓も踏まえて、現在、保安院では原発周辺、敷地周辺の断層の活動性、連動、海溝型地震や津波の評価の見直しを進めてきておりまして、全国の原発の敷地内の破砕帯についてこれまでの評価を見直しているところであり、この見直しに当たっては、先ほど来申し上げている公開性を持って専門家の意見聴取をしながら進めているところでございます。

井上哲士君

 終わります。

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