・原発敷地内の活断層がある場合でも運転を認める「新基準」問題・防衛省調達における三菱など大企業の水増し請求問題
- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
まず、原子力発電所敷地内の活断層の問題について聞きます。
この間、原発の敷地内で活断層の存在の疑いが次々と明らかになってきたという問題についてただしてまいりました。改めて基本的問題を確認いたしますが、この活断層の上に原発の施設が建設できない理由、そして建設できない旨が明示されたのは、いつ、どういう文書になっているでしょうか。
- 政府参考人(深野弘行君=資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)
お答えをいたします。
地表に活断層が現れている、そういった真上に構築物を設置いたしますと、その活断層の将来の活動によりまして地盤の支持性能に重大な影響を与える断層変位が生じて構築物が損壊する可能性が否定できません。
こういった考え方に立ちまして、原子力安全委員会の、了承という形ではございますけれども、平成二十二年十二月に策定されました発電用原子力施設の耐震安全性に関する安全審査の手引きというものの中で、耐震設計上考慮する活断層の露頭が確認された場合、その直上に耐震設計上の重要な建物を設置することは想定していないということが明示されたものでございます。
- 井上哲士君
一方、八月二十四日の保安院の専門家の意見聴取会で、原子力発電所敷地内の破砕帯の評価に当たっての検討の考え方という文書が提示をされました。この中で、敷地内の破砕帯の評価について、主断層、副断層、弱面という三つが示されております。これについて、新たな安全評価基準の導入であり、活断層に弱面という新たな分類を作ることになるのではないかと。それによって、これまでは活断層と評価される可能性があった一部の断層について、原発の直下にあっても、ずれの量が小さく、原子炉建屋などに影響が生じないと評価をされれば、原発の運転継続も可能にするものではないかという懸念の声が広範囲に上がっております。
専門家からも、解体直前の保安院が駆け込みで廃炉逃れの理由を考えているように見えるという指摘もされておりますが、こういう懸念、指摘にどのように答えるでしょうか。
- 政府参考人(深野弘行君)
お答えいたします。
今御指摘のございましたこの考え方、私どもが示した考え方でございますけれども、これにつきましては、敷地内の破砕帯について評価を行うに当たって意見聴取会を開いて検討を行っておりますけれども、そこでの検討の進め方の考え方について取りまとめ、八月二十四日の意見聴取会で提示をしたものでございまして、その内容は、原子力安全委員会の先ほど申し上げた手引きの考え方に従ったものでございます。
保安院としてこの破砕帯の評価の在り方について新たな見解を示すものではなく、また、原子力発電所の運転の可否の判断基準といったものでもございません。具体的には、この原子力安全委員会の手引きにおきまして示されている考え方に基づきまして、活断層か副断層か、あるいはこれらには該当しないとしても地盤に変位を及ぼし得るものかを確認するための検討項目などを示したものでございます。
- 井上哲士君
この考え方の文書に図表が示されているんですが、これを見ますと、主断層、副断層、弱面という三つに分けて示しておりまして、活断層をこの三つに分類をしているようにも受け取れるわけでありますが、今の答弁でいいますと、活断層と認められたものがあれこれ理由を付けて弱面に分類をされると、こういうことはあり得ないということでよろしいんでしょうか。
- 政府参考人(深野弘行君)
御指摘のございました図面でございますけれども、三つのケースを書いてございまして、主断層、副断層、弱面と書いてございます。主断層というのは、これは自ら活動するいわゆる活断層でございます。副断層というのは、活断層が活動したときにそれに引きずられた形で動くものでございまして、これが先ほどの手引きにも活断層と同様に扱うというふうに書かれているものでございます。それ以外のものについて弱面ということで、これについても、ずれが生じないかどうかということについてはきちんと評価をする、そういう考え方で整理をしたものでございます。
- 井上哲士君
つまり、活断層と分類されたものが弱面に分類されることはあり得ないということでよろしいんですね。
- 政府参考人(深野弘行君)
先ほどの手引きの考え方に沿いますと、主断層、活断層と弱面というのは別のものとして取り扱われているということでございます。
- 井上哲士君
三十日も意見聴取会が行われまして、そこで保安院として破砕帯等の調査について指示をしております。これは今後新しい規制委員会に引き継がれるということになるんでしょうが、私、先日の質問でも国会事故調の報告書を引用して指摘をいたしましたが、新たな安全基準とか新たな知見が出ても、既存の原子炉の運転に支障にならないようにということで事業者と保安院が落としどころを探るというとりこの関係にあったという指摘も紹介をいたしました。だからこそ、今回の問題も新たな規制逃れをしているんじゃないかという疑問の声が上がるわけですね。
先ほど規制委員会の人事についても質問がありましたけれども、原子力推進の側にいた、そういう中心人物では駄目だ、白紙撤回すべきだと、こういう声も上がっております。政府は再考することなく任命という形で考えているという報道もあるわけでありますが、とんでもないことでありまして、改めてこの点では白紙撤回を求めておきます。
そこで、経産大臣にお聞きいたしますけれども、前回、この原発敷地内の活断層、破砕帯等の調査については第三者の研究者の立ち会う再調査を行うということも求めました。原発の下の断層破砕帯が活断層と認められた場合は原発の運転、設置は認められないという、こういう基準は堅持をされていくと、こういうことで確認してよろしいですね。
- 国務大臣(枝野幸男君=経済産業大臣)
御承知のとおり、今般、国会で原子炉等規制法を改正いただきました。これによって、最新の知見を技術基準に取り入れ、既に許可を得た施設に対しても新たな基準への適合を義務付ける、いわゆるバックフィット制度が導入をされております。新たな基準へ適合しないと認めるときは、原発の使用停止や設備の改造など必要な措置を命ずることができるようになりました。
現在の原子力安全委員会が、先ほど保安院長からお話をした手引きに基づけば、主断層、それから構造的に関連する副断層という断層にとどまらず、弱面であっても影響を及ぼす場合についてはこれに対応するということでありますので、現行の審査の手引きに基づき、このバックフィット制度が導入されれば、当然のことながらこれに該当するものは廃炉ということになるというふうに思っております。
ただ、これは、間もなく規制委員会発足をして、規制委員会が具体的な審査の在り方や運用についてやるということになりますので、特に経済産業大臣の立場からそれを拘束するようなことは申し上げるべきではないかというふうに思いますが、常識的に考えても、これを緩めるということを規制委員会がなされるということは考えられないだろうと思っております。
- 井上哲士君
次に、防衛調達の水増し請求問題についてお聞きをいたします。
まず、三菱電機とその子会社など五社の水増し請求が発覚をいたしました。本年一月に防衛省はこれらの企業を指名停止とする処分を発表しておりますが、事件の概要と現在までの対応について述べてください。
- 政府参考人(鈴木英夫君=防衛大臣官房審議官)
お答え申し上げます。
昨年秋、防衛省などに対して、部外より三菱電機においてコストの水増しを行っているとの情報提供がございまして、当省が同社に対する抜き打ち検査を一月十七日より開始いたしました。
この調査を受け、一月二十七日、同社より工数等の付け替えが存在することが判明した旨の報告があったことから、当省では同日から指名停止の措置をとっております。また、その子会社四社、三菱プレシジョン、三菱スペース・ソフトウエア、三菱電機特機システム、太洋無線からは、二月二十四日に同様に工数等の付け替えがあった旨の報告があり、同日、指名停止の措置をとったところです。
指名停止措置以降、三菱電機等に対し特別調査を実施していることから、現時点において具体的な調査状況についてお答えできる段階にはなっておりませんけれども、事実関係の全容が解明され、過大請求に係る過払い金が国庫に納入されるとともに、再発防止策が報告されるまでの間、この五社に対し指名停止の措置をとることとし、真にやむを得ない場合を除き契約を行わないこととしております。
- 井上哲士君
水増しの総額というのは現時点では確定できていないんでしょうか。
- 政府参考人(鈴木英夫君)
現在調査中でございまして、まだ確定しておりません。
- 井上哲士君
続いて五月には、住友重機械工業とその子会社である住重特機サービスも過大請求が発覚をし、指名停止となっておりますが、この概要と対応について述べてください。
- 政府参考人(鈴木英夫君)
お答え申し上げます。
住友重機械工業において水増し請求を行っているとの部外からの情報を踏まえまして、五月八日より装備施設本部が抜き打ちで調査を開始し、併せて同社による社内調査の実施を要請いたしました。
調査の結果、同社が見積資料として防衛省に提出した資料において、直近の同種契約に係る工数を実際に発生した工数よりも水増しして記載していたということが判明いたしました。また、同社による社内調査の結果、子会社である住重特機サービスにおいても、修理契約における代金を確定させる際に、実際に発生した工数よりも水増しして申告していたことが判明いたしました。
これらを受け、五月二十五日、住友重機械工業及び住重特機サービスにより工数を過大に申告をしていた旨の報告があったことから、当省では同日から指名停止の措置を行っているところでございます。
指名停止措置以降、同二社に対し特別調査を実施しておりますが、現時点において具体的な調査状況についてお答えできる段階ではございませんけれども、事実関係の全容が解明され、過大請求に係る過払い金等が国庫に納付されるとともに、再発防止策が報告されるまでの間、同二社に対し指名停止の措置をとることといたしまして、真にやむを得ない場合を除き契約を行わないこととしております。
- 井上哲士君
この水増し請求など、防衛調達にかかわる不正というのは自民党政権時代からも繰り返しありましたけれども、今年も相次いで発覚をしている。やはり私は、これは構造的な問題があると思います。
防衛省から今年の四月に提出を受けた資料によりますと、三菱電機など五社とは指名停止期間中であるにもかかわらず、その時点までに一千百億円を超える契約が行われておりました。指名停止中に公然と契約を重ねるという、自民党政権以来のあしき慣行が防衛省では全く収まっていないということが示されております。
以来、四か月以上経過いたしましたけれども、改めて、この指名停止期間中に現在まで行われた五社との契約について、金額と件数を会社別及び五社合計それぞれ明らかにしてください。
- 政府参考人(鈴木英夫君)
お答え申し上げます。
指名停止措置以降、指名停止企業との契約を行う場合には、先ほど御答弁申し上げましたとおり、代替の調達手段がなく、かつ自衛隊の任務遂行に重大な支障が生じるおそれがある場合に限定し契約をしておりますが、七月末までに三菱電機と百五十九件、約一千百十九億円の契約を締結しております。また、子会社である三菱プレシジョンとの間では三十件、約二十六億円、三菱スペース・ソフトウエアとの間では一件、約百六万円、三菱電機特機システムとの間では二十七件、約三億二千万円、太洋無線との間では一件、約二千四百万円の契約を締結しております。したがいまして、この合計額で申し上げますと、二百十八件、約千百四十九億円でございます。
- 井上哲士君
委員からもへえという声が上がっておりますが、指名停止といえば、普通は指名されないんですよ。真にやむを得ないなどとしてこういう巨額の契約をすることは到底受け入れられるものではありませんし、さらに、いただいた契約状況を見ますと、年度末の三月末に相当集中しております。予算の使い切りの駆け込み契約とも取れるような状況にあるわけで、しかもほとんどが随意契約なんですね。もう開いた口がふさがらないと思いますが。
そこで、防衛大臣にお聞きいたしますが、防衛調達のこのような契約の在り方に国民が納得すると思われるでしょうか。防衛省だけは特別でも国民は共感すると、このようにお思いでしょうか。
- 国務大臣(森本敏君=防衛大臣)
確かに先生御指摘のように、今回、三菱電機ほか四社とそれから住友重機及び住重特機サービスによるこの過大請求事案というのは誠に深刻な事態で、この事態はもう極めて遺憾であります。
お尋ねの指名停止を行っている会社と随意契約を行う場合というのは、先ほど説明申し上げたように、代替品あるいは代替会社の有無を精査した結果、代替の調達手段がなく、かつ指名停止会社との契約を行わなければ自衛隊の任務遂行に重大な支障が生じるおそれあるという場合に厳密に限定しております。
しかしながら、このような事態が起こるということは実に深刻でありますので、今後とも慎重に代替会社の有無について精査を行い、真にやむを得ない場合を除き指名停止会社と随意契約を行わないということをすることによって、我が国の防衛に重大な支障が生じないように今後とも対応してまいりたいと、このように思います。
いずれにしても、今回のこの事態というものが深刻な内容を含んでおるので、この種の事態が起きないように今後とも厳重に事態を鑑みて処理をしていきたいと、このように考えます。
- 井上哲士君
真にやむを得ないものというふうに繰り返されるんですが、本当にそうなのかということなんですね。
例えば、停止期間中の契約には技術支援契約というのがあります。いわゆる労務借り上げというふうに言われてきたものでありますが、これは防衛省の技術研究本部が装備品の研究開発の試験や設計を行うときに、高額な日当を支払ってその軍需企業側から技術者や職員を受け入れるというシステムなんですね。企業からしてみますと、多額の支払を受けながら試作品の試験などに行って技術力を付けることができると。ですから、事実上研究費の一部の補助を受けているようなものに等しいわけです。そして、その後、量産段階で受注ができる、こういう仕組みになっております。
三菱電機は、今回の指名停止期間中に十二件、約一億七千二百万円余りの技術支援の契約を行っております。計算してみますと、この四月以降の平均の技術支援の日当は一人当たり十三万五千円余りという契約になっております。こういう契約が真にやむを得ない契約と言えるのかと。つまり、まだ全く試験や設計の段階なんです。その段階で企業側から人を受け入れて、それを手伝いをさせると。
こんなことが指名停止期間中の半年とか一年とか行われなくたって、私は何ら任務遂行に重大な支障が起きるようなものではないと思います。何でこんなものまで契約しているんですか。
- 政府参考人(鈴木英夫君)
技術支援契約につきましては、三菱電機株式会社が実際に研究開発本部で受注をしている研究開発プロジェクトに関して、実は防衛省はその製造能力がありませんものですから、具体的な試作や研究開発する場合に民間企業の力を借りざるを得ないという面がございまして、そういった観点から三菱電機にこの契約を依頼しているものでございます。
したがいまして、三菱電機との契約に基づいて遂行している継続プロジェクトについて行っているものでございまして、先ほど御指摘がありましたけど、基本的に現在行われている契約は全て、既に現在、新しいプロジェクトじゃなくて継続プロジェクト、これについて実際に契約をしないと自衛隊への支障や将来の装備品の開発計画に大変重大な支障が生じるということでございまして、真にやむを得ない契約として契約をしているものでございます。
- 井上哲士君
つまり、続いているものはそのままやっているということなんですね。将来のことがと言いますけれども、現に今使うものがどうしても調達できないということが百歩譲ってあったとしても、そういうものには全く当てはまらないんですよ。ですから、指名停止を受けても実際には契約が取れていると。防衛企業の側はこれをよく承知しているんですよ。ですから、指名停止処分に実質的な意味や効果がないという事態になっているんですね。
ところが、防衛省はこの過払い請求事案に関して刑事告発をしたことがありません。今回の事案についても、どれだけの被害があるかまだ分からないと。そういうことがやっぱり調査できないわけですから、これは私は刑事告発するべきだと思いますが、防衛大臣、いかがですか。
- 国務大臣(森本敏君)
仮に行政機関として告発するかどうかということについて判断していくためには、まず、できるだけ事実関係を解明してその全体像を明らかにすべきであると、もう当然のことだと思います。このため、現在この事案については特別調査というものを厳密に行って徹底的な調査を実施し、事実関係の全容の解明に努めている途中であります。
なお、事実関係の全容が明らかになった場合には、当然のことながら、全容解明の結果を踏まえて、関係省庁と相談しながら更なる再発防止策について検討してまいりたいと、このように考えております。
- 井上哲士君
全容解明はやってください。しかし、そうやって刑事告発もしないという姿勢が事件の根絶を妨げているんですよ。
三菱電機は二〇〇六年にも別の理由から指名停止を受けたことがありますが、このときも、半年間の指名停止中に五十六件、約十七億八千百万円の契約が行われました。一方、同社への防衛省からの天下りは指名停止期間中は行われませんでした。その年、〇六年度は六人で、前年よりも天下りは減りました。ところが、その翌年度は十六人に増えているんですね。結局、その年は十年間で最高の天下りになりました。
指名停止期間中は天下りをやめても、翌年増やして確保していると。今回も同じことになるんじゃないかと私は思っているんですが、こういう癒着体質が違法を温存していると、こうお思いになりませんか。
- 国務大臣(森本敏君)
指名停止会社というのは、他の事業者と異なっておって、競争入札には参加させず、また、やむを得ない事情があると認められる場合を除き随意契約の相手方としないということや業務の一部を指名停止会社に請け負わせないということとしております。
このことによって指名停止期間中に契約の相手方及び下請先から原則として排除されているということもありまして、しかし、いずれにしても、このような事態というものを防ぐために、我々として、この調査をした結果を踏まえて厳密に対応していきたいと、このように考えております。
- 委員長(山本順三君)
井上哲士君、時間が来ておりますからおまとめください。
- 井上哲士君
時間ですから終わりますが、全く厳密な対応がされておりません。
私、過去にもこの問題を追及したことがありますが、当時、自民党政権時代の石破大臣は、ほとんど取引停止の効果が出ていないと答弁をされました。福田総理は、私も理解できません、国民も理解できないと思いますとまで言われました。ところが、全く改まっていないわけでありまして、天下り問題も含めて徹底的な是正をすることを強く求めまして、質問を終わります。