国会質問議事録

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決算委員会

shitsumon201111.jpg・復興予算「流用」問題。大企業応援や無関係の自衛隊予算を追及。流用の背景に民自公合意による復興基本法にあると指摘。


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 東日本大震災の被災地では、まだ生活や営業の再建のめどが立っていない地域が数多く残されております。一方で、復興予算が被災地復興とは無関係なところに使われていると。このことに被災地を中心に本当に大きな今批判の声が上がっております。この流用の口実にされたのが政府の基本方針であります。日本経済の再生なくして被災地の真の復興はないとして、被災地に一体不可分として緊急に実施すべき施策の実行を認めました。各省庁はこれに飛び付いて、復興予算に何でも潜り込ませたと。このことを認めた政府の責任は重大だと思います。

 同時に、私は、このことは今災害対策の基本を改めて問われていると思うんですね。基本方針は復興基本法を具体化したものでありますが、私たちは、この民自公三党修正による復興基本法案には反対をいたしました。当時、反対討論ではこう言っています。生活の基盤、すなわち住まいとなりわいの再建が復興の土台だが、法案はそうした肝心な点が曖昧にされていると強調して、さらに、法案が掲げた二十一世紀半ばにおける日本のあるべき姿、先導的な施策、これは結局大企業の要求にこたえる新成長戦略であって、被災者が置き去りにされていく、そういうおそれがあるということを指摘をいたしました。まさにその危惧のとおりのことが今起きていると思うんですね。

 私は、個々の流用をしっかりただすと同時に、復興の基本理念の中心に、被災地の生活となりわいの再建が復興の土台だと、このことを改めて据え直すことが大事だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(平野達男君=復興担当)

 まず、予算の流用ということの定義でありますが、全国防災事業につきましては、今日も御答弁申し上げましたように、法律上もその施行が担保されているということ、それから震災に絡めて次の災害に備えた体制をつくらなければならないということ、それからそのための財源も用意させていただいたということでございます。それから、立地補助金等々の問題についてもるる御答弁を申し上げたとおりであります。

 ただし、個々の事業というものに関して見た場合には、様々な御指摘をいただいておりますから、その御指摘を踏まえたきっちりとした精査、それから来年度予算への反映ということはやらなければならないというふうに思います。

 その一方で、今委員から御指摘された住宅の再建、これはもう本当に復旧復興、あるいはなりわいの復興、これはもう復旧復興の核であります。この点の予算については最優先、必要な予算についてはぎっちり確保させていただくということは、これは我々の責務だというふうに、国会の責務でもあるかと、差し出がましいですが、でも責務でもあるというふうに思っております。個々の予算については、最優先で確保するということが基本であることは申すまでもございません。

井上哲士君

 生活となりわいの再建は核だというふうに言われました。最優先だとも言われました。しかし、実際そうなっていないということが今起きている事態の多くの批判の声なわけですね。

 具体的に聞きますが、この基本法に日本再生戦略が盛り込まれたことによりまして、今がチャンスとばかりに大企業へのばらまきがある事例があります。今日、朝から議論になっています国内立地推進事業費の補助金について聞きますが、震災を契機に産業の空洞化が加速するおそれがあるということで国内産業に補助金を出すというものでありますが、これ一次、二次の公募を合わせて五百十件が採択をされております。

 経済産業大臣にお聞きしますが、この補助金の合計は中小企業向け、大企業向け、それぞれどうなっているでしょうか。

国務大臣(枝野幸男君=経産大臣)

 中小企業が採択先となっているもの六百四十五億円、それ以外のものが二千三百五十六億円でございます。

井上哲士君

 ですから、中小企業は全体の二一%程度にすぎないわけですね。実際補助金を交付された企業を見ますと、愛知のトヨタ、神奈川や大分のキヤノン、堺市のシャープ、鹿児島の京セラなど、そうそうたる大企業が受け取っております。

 被災地から材料や部品を調達しているということが補助金交付の条件にはなっておりますが、果たしてどれぐらい直接被災地に効果が上がっているのか、それから本当に雇用の拡充になっているのか、私はしっかり精査をすることが必要だと思いますが、そもそも十分に体力がある大企業までこういう限られた予算の中でこういう補助金を出す必要が果たしてあるのかと思うわけですが、いかがでしょうか。

国務大臣(枝野幸男君)

 その後、被災地域を除けば日本経済全体としては昨年の三月十一日以前の様々な数値、水準に戻ってきている現状にありますので、なかなか当時の状況というのを、何というんでしょう、思い出していただくこと難しいかとは思うんですが、やはり元々、円高その他大変厳しい状況の中での大震災ございまして、震災から半年、一年ぐらいの間はまさに日本経済全体が空洞化をしてしまうという相当な危機の中にありました。そうした状況の中では、もちろん中小企業、大変厳しい状況でございますが、大企業においても空洞化あるいは経営の困難さという状況が迫っていたことも間違いございません。

 そうしたことの中でありますが、特に、これは大企業、中小企業にかかわらず、被災地に直接的な裨益があるかどうかということをしっかりと精査をして個別案件認定をさせていただいているつもりであります。

 もちろん、本当にそうなったのかときちっとフォローしていかなければならない。今回、様々、流用ではないかという御指摘を踏まえて、更に厳しくチェックをしてまいりたいというふうに思っておりますが、そういった意味では、あの当時の状況を踏まえれば、被災地を支えていくためにもやむを得ないものであったというふうに思っております。

井上哲士君

 私は、まさに日本経済の中で大きな中心を占め、そして雇用を占めている中小企業に対する補助金は全体の二割にすぎないと、このことを問題にしているんですね。

 リストラやってしっかり利益を上げて、ビジネスリスクへの備えなどといって内部留保をしっかりためておるわけですから、こういうときにしっかりそういうものを自らの体力で対処することを私は求めるべきだと思うんですね。そして、本当に、やっぱり中小企業、とりわけ被災地の中小企業に対してやっぱり一番効果がある施策にもっともっと予算を入れていくということが求められると思うんです。

 被災した中小企業等の施設や設備の復旧整備を支援する中小企業グループ補助金、これも朝から議論になっておりますけれども、非常に好評で第五次募集まで行われました。

 これ、被災地経済の中心である中小企業を直接支援をして、雇用の維持の拡大、地域経済の再生に直接的な大きな効果があるものでありますが、申請したグループの六割程度が不採択になっているという状況があります。いろいろお話聞きますと、それこそもうみんな工場も住まいも失って、そういう中小零細企業の皆さんが集まっていろいろ計画を立てて出すけれども、結局これが却下をされてしまうというようなことを幾つも聞いております。まあ書類を書く技術で補助金の是非が決まっているんではないかなんていう声も報道をされておりました。私は、やっぱりこういう本当に補助を求めて、そして地域の経済の再建にとって必要なグループがきちっとこういう補助金がもらえるようにしていくという点でいろんな援助も必要だと思うんですね。

 こういう、この間、申請をしながら実際もらえていないということに対してはどのようなことを対応していくんでしょうか。

国務大臣(枝野幸男君)

 先ほど御指摘のあった国内立地補助金についても、被災地域との関係でしっかりとそこでの投資が被災地域にプラスになることという要件を厳しくそこは見させていただいているのと同様に、グループ補助金についても、そのグループ補助金が地域の復興のリード役となり得る中小企業等グループの施設設備の復旧整備を支援するものという趣旨、そして、その要件としてグループとして具体的な共同事業を行い、地域経済や雇用に貢献することを重要な要件としているということに鑑みて精査をさせていただいているところでございますが、一方で、大変な御希望が多い中で、残念ながら、そうした、何というんでしょう、要件に達するような、グループとして何をやっていこうかという熟度に達していない、そういうところが少なからずあるということがこうした採択数になっている原因でございますので、これについては、だから駄目だではなくて、制度の趣旨に照らして熟度の高い事業となるよう県とも協力をいたしまして、地元のそのまさにグループを組んでいらっしゃる、あるいは組もうとしていらっしゃる皆さんに対する支援を行っているところでございまして、そうした共同事業として熟度が高まった案件については対応が可能となるよう財政措置も含めて準備を行っているところでございます。

井上哲士君

 財政措置も含めて準備というふうに言われましたが、まさに今、やっぱり採択されていない最大の要因は予算が足りないことなわけですね。体力のある大企業まで立地補助金としてばらまく一方で、肝心の被災地で中小企業向けの施策の予算が足りなくなると、これはあってはならないことだと思います。

 概算要求では事項要求をされておりますが、現にもう枯渇をしているわけですね。もう半年も待てない、この年内にこういうきちっと補助金の採択してもらわないともう先がないという声も随分聞いておりますが、この手だてはどのように具体的にお考えでしょうか。

国務大臣(枝野幸男君)

 必ずしも、予算がないからグループ補助金の要件に達しているようなものについて採択をしないということをやってきているものではございません。熟度に達するものがあればしっかりとそこに対応していこうということで今御支援をさせていただいているところでございます。

 これ、具体的な財政措置の時期、内容についてはまさに財政当局とも御相談をしながらやっていかなければなりませんが、県とも御相談しながらやっているその熟度を高めるという作業の状況をにらみながら、遅れることなく対応できるように財政当局と相談をしてまいりたいと思っております。(発言する者あり)

井上哲士君

 これは、本当に現地の皆さんは、今現地見てこいという声もありましたけれども、本当にこれで年越せるためにはもう年内にも欲しいんだと、こういうことも上がっているわけですから、まさに遅れることなくきちっとやっていただきたいと思います。

 もう一点、これは復興大臣にお聞きしますが、住宅再建の問題です。

 大臣、七日のNHKの番組で、災害のときの再建はやはり自主努力がまず基本ですというふうに述べられました。ただ、今回、住宅も地域も仕事も全部失っているという中で、これまでの支援の内容では住宅再建のめどが立たない、そして住宅があること自身がこの自主努力の土台になっていくわけですね。そういうことを考えますと、更に踏み込んだことが必要だと思います。

 大臣はこのテレビの中で、今回は災害が余りにも大き過ぎる中で、被災家屋数が非常に多いので自治体負担も非常に大変であることは十分承知している、国がどう支援できるかは検討しなければならないと述べられておりますが、どういう検討をどういうテンポでやろうとされているのか、お願いします。

国務大臣(平野達男君)

 津波で流された住宅の再建についての支援としては、まず被災者生活再建支援制度がございまして、これは、全壊家屋については三百万円を限度にお支払いするという制度であります。そのほかに、高台移転等々については、基盤整備等々については、高い、四分の三でしたか、補助率で地方負担もない制度でこれを支援をするという仕組みになっております。問題は、個々の住宅の再建のときに三百万円ではどうしても足りないという指摘が様々なされているということであります。

 従来、こういった災害が起きますと、一市町村で例えば数十戸、数百戸ということでありますと、自治体が自分の判断で支援をしたとしても全体の財政の中で吸収ができました。ところが、今回の場合は一市町村で数千戸という、あるいは一万戸に近い状態の市町村もございます。そういう中で、三百万では足りない、何とかしてもらいたいという要望の中で、各自治体がいろいろ苦労しながら、財源を捻出しながら今支援をしようとしております。しかし、その支援をする結果、財政的に非常に苦しくなるという状況があるという中で、これは国としてもそのまま知らんぷりするわけにはいかないだろうということで、私は慎重を要するという言葉を使いましたけれども、その状況についてはしっかりウオッチして、何ができるかということについては検討しなければならないというふうにお答えしました。

 ただ、この問題は、一戸の住宅の再建について国がどれだけ関与するという根本問題にもかかわる問題でありまして、これを三百万から例えば四百万、五百万に上げるということでございますれば、これからの全ての災害にそれぐらいの支援をするということにもなってまいります。それが果たしていいかどうかということも頭に入れながら、視野に入れながら、しかし大事なことは、被災自治体が、どうしてもやっぱりこれは覚悟を決めて支援をしなくちゃならないと決めている自治体が多いということで、このことについては、財政状況等々については総務省とも相談しながらこれをしっかりウオッチしていかなければならないというふうに思っております。

井上哲士君

 これは、三百万の引上げというのは、実は震災直後、当時の菅総理が必要性というのは認められているんですね。私は、今慎重にと言われました、大胆に是非やっていただきたい、結果として本当にこの住宅再建ができていくということに責任を持っていただきたいと思います。

 もう一点。このどさくさ紛れの便乗とも言えるひどい使い方で、防衛省の予算についてお聞きをいたします。

 これまでも被災地と全く無関係な戦闘機の操縦士の訓練教育とか、熊本や北海道の駐屯地のお風呂の建て替えまで復興予算で行われておりますが、さらに来年度の概算要求では、防衛省の二〇一三年度予算概算要求額のうち東日本大震災復興特別会計分は千六百六億円余りでありますが、その中に被災地に関係ないものも多数ありますが、特に情報保全隊用の連絡器材の整備、更新、情報保全隊用車両無線機の更新というのがありまして、これを合わせますと八千三十五万一千であります。なぜこれが復興特別会計に計上されるんでしょうか。

国務大臣(森本敏君=防衛大臣)

 先生御指摘のように、今回、防衛省では復興特別会計に情報保全隊の関係経費を計上してございますが、先ほど先生が御指摘になった七月二十九日の復興対策本部から示されたいわゆる復興の基本方針に基づいて、自衛隊の災害対処能力の向上のための事業に係る経費をこの特会に計上しているところです。

 例えば、東日本大震災においては、もう御承知のとおり、十万人を超える隊員が人命救助、生活支援等を優先して活動したわけですが、この種の大規模な災害派遣に当たっては、いわゆる情報保全隊の対処能力を向上して、不慣れな環境で複雑な状況下で多数の方々に接する隊員のいろいろな活動を守っていくという必要があって、今先生の御指摘のように、例えば情報保全隊の情報連絡器材の整備、この中にはデジタルカメラだとか携帯電話だとか、必ずしも十分にそろっていない器材を整備したり、あるいは車両無線機を更新したりするという経費が含まれているということでございます。

 これ、全ては情報保全のための情報活動に使い、隊員を適切にその任務に充てるという目的で予算を計上しているところでございます。

井上哲士君

 情報保全隊自身は救助活動なんかしないわけですね。今言われたように、隊員が不慣れで、多数の人と被災地で接触すると、そういうことで情報を守っていくんだと、こういうお話がありました。

 私には、これがなぜその災害対処能力の向上になるのか、何が復興に関係あるのか、さっぱり分からないんですが、具体的に東日本大震災で情報保全隊は被災地にどれだけ派遣され、どういう活動をしたんでしょうか。

国務大臣(森本敏君)

 東日本大震災で活動する十万人を超える隊員のいろいろな、保全といいますか、をするために保全隊全体としてどれだけの人員が現地で活動をしたかということについては、これは保全隊のそもそも情報活動に係る問題なので、これは今後の情報収集活動に支障が及ぶ可能性もありますので細部を申し上げることは控えさせていただきたいと思いますが、いずれにせよ、今回、情報保全隊が十万人を超える隊員をいろいろな諸活動あるいは障害から守るために現地において活動したということは事実でございます。

井上哲士君

 つまり、被災者を守るんじゃなくて、被災地に、被災者の中に行った自衛隊員を守るためだというんですね。私は、これが何で復興関係予算か分かりません。

 しかも、実際に情報保全隊がやっているのは国民監視活動でありまして、これまでもいろんな市民の活動を日常的に監視、記録化しているということは、私どもも資料を出しましたし、今年の九月にも保全隊の内部資料である週報で、市民や議員、労働組合、自治体幹部、マスコミなどの活動を克明に監視し、報告をしているということが起きているわけですね。

 これに監視された市民が仙台で訴訟を起こしておりますが、今年三月の地裁の判決は、氏名、職業に加え、所属政党の思想信条に直結している個人情報を収集している点を重視をして、人格権を侵害した違法な情報収集だと認めて国に賠償命令を出しております。

 私は、こういう情報保全隊をなくすべきだと思います。そして、ましてや復興予算にこういう整備を盛り込むということは許されないと思います。

 復興大臣、来年度予算の復興特別会計については、真に震災の復旧復興に結び付くもので予算編成をしなければならないと言われました。私はこれは全く復興復旧に結び付いていると思いませんが、そういう立場できちっと精査をしていただきたいと思いますが、最後、いかがでしょうか。

国務大臣(平野達男君)

 当該事業の計上の趣旨などについては、先ほど防衛大臣から御説明があったとおりであります。

 まあいずれにせよ、平成二十五年度予算につきましては、被災地の復旧復興に真に直結するものを最優先し、震災からこれまでの状況変化を踏まえつつ、緊急性や即効性の観点から真に必要な事業に絞り込んでいく必要があると考えておりまして、この国会での議論等々も参考にしながら、この方針で臨みたいというふうに思っております。

井上哲士君

 終わります。

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