・②衆院小選挙区0増5減の法案。「民意の集約」と称する小選挙区制はいまや多様化した民意を2大政党政治に押し込み民意に逆行すると批判。
- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
答弁の中で繰り返し、衆議院での政党間協議がずっと行われてきたというお話がありました。あの協議で重要なのは、民主党以外の党は現行小選挙区制度が民意をゆがめているという点で基本的同一の認識を表明をしたということだと思っております。提案者もあの協議の中で現行小選挙区制が大政党に有利であるという発言をされているとお聞きしておりますし、今年の一月の衆議院の代表質問の際に自民党の代表者は、小選挙区制が議席の多い政党にとって有利だと認識していると、こういうこともまさに代表質問で表明をされましたが、この認識については変わっていないということでよろしいでしょうか。
- 衆議院議員(細田博之君=法案提出者)
これは遡ると、平成五年に大改革が行われました。これは、細川政権ができまして、そして今の中選挙区制はいかぬ、この選挙制度を変えないと、金の掛かる選挙、こういったものが直らないし、自民党が多数という時代がずっと続いてしまうんじゃないか、そのためには小選挙区制度を導入すべきであるということを強く細川連立政権七会派が主張して実現したわけです。
そのときの趣旨は、やはり政権交代が可能になるような小選挙区制の方がいいということで、怒濤のごとくそのような議論が行われまして、当時、石井一議員はその選挙制度改革の特別委員長だったですよ。それで、七会派の代表は、どういうわけか与党七会派はみんな、これは小選挙区がいいんだと、小選挙区。私は当時質問をしまして、小選挙区制にすると少数政党は大変なことになるよと。例えば社会党の大臣、大丈夫かと。あなた方は小選挙区制の下で公認を得て、その小選挙区の東京何区では社会党公認だといってちゃんと出られるのかと、公明党さんどうだと、こういうことを具体的に聞いたんですね。
しかし、当時の熱に浮かれて、みんな各党は、それでも政治改革をする必要があると、政党助成金を導入すると同時に、政権交代が容易になるような二大政党制ができるような選挙制度に改革すべきだということで現行制度ができてしまったわけですから、その趣旨から見れば、当然ながら大政党に有利な制度になってしまっているわけです。そのことについて、約十九年たちまして、しかも少数政党がどんどん増えていくような現状に鑑みて、どうもおかしいんじゃないかという声も大きくなっていると思うわけでございますけれどもね。
ただ、じゃ、今の自民党のこの主張が今の制度に本当に根本的疑問を呈しているかというと、もう議員によってそれぞれ分かれております。やっぱり中選挙区に戻るべきだという人もあるし、小選挙区、今のままでいいという人もおりますし、これから各党も含めて議論をしていくべきであると。大政党に有利なのは結果であって、しかし、そのときの平成五年当時の政治改革はそれを選べということで七会派が主張してそうなってしまったと。まあこれは反省材料もあると思いますがね、今となっては。そういう経緯がございます。
- 井上哲士君
私、〇増五減先行というのは、やはりこの現行の小選挙区制度の固定化につながると思うんですね。今、この小選挙区制の導入の経過のお話がありまして、まさに二大政党制と一体でありました。しかし、本格的にこれが叫ばれたのは、実はやはり〇九年の政権交代の前の、いわゆる例えばマニフェスト選挙などとか言われたときでありました。
そして、そうすれば政治が変わるということで一定の期待を集めまして、例えば〇九年の総選挙直後のNHKの世論調査では、二大政党の支持率の合計は六〇・九%です。しかし、直近の調査ではもう三七・七%ですね。そして、むしろ、おっしゃったように、政党は多党化をしております。
ですから、二大政党制、これで政治変わるということ自体が私はもう民意から乖離をしていると思います。小政党に不利かどうかというよりも、やはり民意が反映をされないという状況に一番の問題があると思うんですね。今これだけ多様化した民意を無理やり選挙制度で二大政党の枠内に押し込めるということ自体が民意に逆行することになると私は思いますが、その点いかがでしょうか。
- 衆議院議員(細田博之君)
私は一長一短だと思いますね。例えば、もう三人区の中選挙区にして全部やれば、いろんな政党が、それぞれ強い人がそこで当選して、二党や三党で過半数を占められないような結果になる可能性もあると思うんですね。そのときは非常に政権が不安になり、政治が不安になって、むしろ何も決められないというおそれもあるわけですね。完全比例制ということを主張している政党もありますが、完全比例制にすると、ますますそういう状態になる可能性もなきにしもあらず。
だから、どちらがいいかということは、小選挙区制にして十九年でこういう経験を得て、そしてその前には中選挙区制があった。じゃ、これからどういうふうにしたら本当に良くなるんだという議論をして、有識者の意見も聞いて、日本も今これだけ経験をしてきたので、客観的な議論を展開することは有意義であると思っております。
- 井上哲士君
多様な民意がある結果、多党化するんであって、私は、例えば、この間、衆議院で三分の二を超える与党が参議院でも過半数を握っていたという時期があります。そのときに本当に国民の期待にこたえる政治が行われたのかといえば、そうではないと思うんですね。ですから、何か多党化をすれば政治が不安定になってよくないというような議論は違うんではないかと思っております。
先ほどもありましたけれども、昨日の党首討論などを通じて、民主、自民両党で次期国会での定数削減を確約をするという動きとなっておりますが、小選挙区部分の〇増五減を先行した上で定数削減ということになりますと、現行制度の中で民意を反映する部分である比例代表の削減ということにならざるを得ないのではないかという危惧を思うわけでありますが、そうなりますと、小選挙区制の持つ、民意をゆがめるという問題というのが一層拡大をすることになるのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
- 衆議院議員(細田博之君)
衆議院の議論でも、各党協議会が開かれて、民主党、最大政党の代表が座長を務めて十を超える政党間で協議をし、同様の発言の機会を皆、配分してそれぞれの党がそれぞれの主張をしましたから、この仕組みは今後も継続されるのではないかと。それしか国会として言わば対応する道がないわけですね。その中で、できれば、いい結論を得て、これが理想的な選挙制度であると決めるのがベストであると思いますし、それを大きな二つの政党が、もうあなた方たちは黙っていらっしゃいと、こういう二つの大きな政党が賛成しているんだから、もうこういう制度でいこうということで決められるかどうかということについては、若干私は去年の各党の議論からすると疑問があるなと。やはり議論を尽くして、そしてよりいい制度をつくっていくべきであると思っております。
参議院側でも四増四減に至るまでは随分いろんな議論をされたと承知しておりますけれども、衆議院側でも各党が参加してそういう議論をしたことをきちっと、したがって、先ほど言われたような、御党も含めて、こういう発言があった、こういう議論があったということを言われましたけれども、まさに民主主義的な議論が行われていることは事実でございます。
ただ、議院内閣制の日本の特徴でございまして、議員一人一人に自由な投票権が保障されておりませんので、アメリカは大統領制の下で議員一人一人が全部自分の意思で賛否を投票できるから、それぞれ協議をして、この法案については賛成だ、これは反対だといってやるんですが、日本の場合は、政党で党議拘束を掛けて、これは賛成、これは反対というふうにやりますから、多党化したときに、ねじれ現象等と言われておりますが、なかなか意思決定ができないという欠点を克服できるのかどうかという今最大の問題を議会は抱えていると言って過言ではないと思っております。
- 井上哲士君
先ほども党首討論での安倍総裁の発言の御紹介がありましたが、今、私と野田さんだけで決めていいんですかと。私たち自民党時代にも、たくさんの政党がいると。小選挙区であれば我が党の現職の議員は勝ち上がるけれども、しかし少数政党にとっては極めて不利になると。比例の議員、これを一方的に減らしていく、これは少数政党にとって問題であるからもっとちゃんと議論しようと、こういうことを言われました。
私は、これは今の答弁とも合致をすることだと思うんですが、お聞きしたかったのは、今年一月の代表質問でも、その上で、民主党の比例八十削減という提案については民主主義の原則に違反するものと言わざるを得ないということも代表質問で御党の代表は言われております。つまり、〇増五減を先行させて、そして定数削減ということになれば比例だけになるんじゃないかという先ほどの危惧がありましたけれども、そういうやり方は民主主義に、原則に反するものと言わざるを得ないと、こういう認識は変わっていないということでよろしいわけですね。
- 衆議院議員(細田博之君)
あれだけ大きな、三年前の総選挙で大勝利を得られた民主党のマニフェストに一番大きな文字で、衆議院は比例定数の八十削減を実現すると明記しておられるわけで、そこから議論は始まったと。しかし、そのことは、深く考えれば様々な民主主義上の大きな問題も抱えていて、単なる公共事業の削減とか公務員定数の削減とかとはまた違う要素のものがあって、民主主義を担保できる議会が構成されるかどうかという問題が今まさに問われていると。だから、よりいい知恵を出しましょうという意味で言っているのであって、全体として定数を削減するという流れについては自民党も公約の中では賛成しているんですが、そのやり方については具体的な案はまだはっきりしていないと、そういうことでこれから議論すべきであると思っております。
- 井上哲士君
消費税増税との関係で身を切る改革ということが言われます。しかし、これは本来別問題だと思うんですね。幾ら議員定数を削減をしても、この増税が国民生活や景気に重大な影響を与え、結果として財政も後退をするということになれば、これはやってはならないんです。本来別問題で議論をするべきことだと思います。
私たちは、国民生活を考えれば当然議会も無駄を省くということは必要でありますけれども、そのことと定数を削減するということは別だと思うんですね。身を切るというと、つまり自分の身だと、議席というのは国会議員の何か財産のような扱い方なわけでありますが、これは主権者国民が声を反映させるための言わばツールなわけですね。つまり、本来我々は国民の分身なわけでありますから、議席を削るというのはむしろ国民のそういう身を削ることに逆に私はなってしまうと思いますが、その考えについてはどのようにお考えでしょうか。
- 衆議院議員(細田博之君)
そういうお考えは私も十分承知しておりますし、それじゃ国会議員は少ないほどいいと、五十人ならもっと早く何でも決められるじゃないかと、選挙で五十人だけ選ぼうとか、最近どこかで大会を開いた某大国みたいに何十も、二十億ぐらいの人口がいるけれども、それで数百人が出ればそれでいいというふうに考えるのか、まあその辺は民主主義の在り方として根本論を含んでいるという点は私も理解しております。
- 井上哲士君
終わります。ありがとうございました。