国会質問議事録

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政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会

shitsumon201111.jpg・違憲判決の出ている成年被後見人選挙権喪失の問題で権利回復のための速やかな公選法改正を求めるとともに、国政選執行経費法案について総務大臣に質問


委員長(轟木利治君)

 ただいまから政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会を開会いたします。

 委員の異動について御報告いたします。

 昨日までに、蓮舫君、金子洋一君、藤末健三君及び辻泰弘君が委員を辞任され、その補欠として尾立源幸君、藤本祐司君、安井美沙子君及び津田弥太郎君が選任されました。

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委員長(轟木利治君)

 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。

 国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、必要に応じ政府参考人の出席を求めることとし、その手続につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

委員長(轟木利治君)

 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。

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委員長(轟木利治君)

 国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。

 質疑のある方は順次御発言願います。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、成年被後見人の選挙権喪失裁判に関してお聞きいたします。

 政府は混乱が起きるということを理由に控訴されました。大変遺憾であります。親子三人でいつも投票に行っていた原告のお父さんは、私にはもう時間がないと、娘との約束を果たせなくなるという怒りの会見をされておりました。

 ただ、一方、総務大臣は、その原告の女性の投票したいという思いは共有できるということを言われております。そして、全国の同じような権利をお持ちの方を含めてしっかりとした整理をすることが重要だという答弁もされております。つまり、原告も含め、全国の同様の皆さんがやはりこの夏の参議院選挙で投票できるようにする、そういう法改正は必要だという、こういう認識でよろしいでしょうか。

国務大臣(新藤義孝君)

 私は、本来国民として与えられた権利、選挙権を行使することは、これは誰もが持っているものであります。しかし、その中でこのような制限を加えられるそういう制度、これ立法の合理性があって行われたものだと。しかし、それについて疑義が生じているということでありますから、これについては是非とも国会内で各議員がしっかりと、また各政党間の御議論をしていただきたいと、このように願っています。

 そして、個人的な思いは、まさに今委員がおっしゃったとおりでありまして、共感できるところはございます。しかし、そのことと今回のこの原告の方が得られるのは国政選挙についてのみの選挙権であります。それから、原告以外の約十三万人いらっしゃる、その中でまたそのようなお気持ちをお持ちの方、どのぐらいいるか分かりませんが、そういう方たちについての何らこの変更は行われないわけであります。

 ですから、民主主義の根幹となるこの選挙制度についてどのような検討が必要なのか、これはまず国会で議論いただかなければならないと。しかし一方で、そこの議論が行われるまでの間の法的な空白が起きてはならないということがまず一つあります。法的な安定性を保つということも重要であるということであります。

 さらには、現場の混乱を招いて、自らがまだ得てはいないわけであります、またそれが得られるかどうかも分からない状態の方々が、今度は私も選挙ができるんではないか、私に選挙をさせてほしい。四月だけでたしか百九十三か所、地方選挙の任期が来るわけであります。

 ですから、そういった何ら整理がされていない中で、現地における無用な混乱や、それから高齢者の方々やそういう方々に混乱が起きること、これを避けるためにも、まず私どもは手続としてこれを、この控訴をしたわけでありまして、それはそれできちんと責任を果たしながら、この根幹であるものは、要するに財産権の保護である成年後見制度とそれから選挙権の調整をどうするか、これはまさに国会できちんと議論をしていただかなければいけないと、こういう考えで申し上げているところであります。

井上哲士君

 いろいろ言われましたが、全国の同様の方にも認められるべきだという思いはおありなんだと思うんですね。

 一方、今、国会での議論ということを言われましたが、この公選法の改正について、総務省や与党内の検討で、選挙権を認める人の対象をどう定めるかが焦点になるという報道もありますし、判断能力に応じて個別に選挙権を認める基準や手続を検討するという動きもあるようであります。

 ただ、裁判の中で総務省自身が、この成年後見制度を選挙権制限に使う理由として、選挙の都度、選挙権の適切な行使が可能であるか否かの能力を個別に審査する制度を創設することは事実上困難だと、こういうふうに主張してきたわけですね。実際、あの判決も指摘し、法務大臣も認めておられますが、成年被後見人というのは事理を弁識する能力を欠く者としては位置付けられておりません。むしろ、事理を弁識する能力が一時的にせよ回復する者という位置付けになっておりますから、つまり、そうであれば、投票の都度、そのときに能力を判定するということが必要になりますから、これは大変な体制も必要になりますし、そもそも投票の能力というものをどうやって判定するのかという問題も出てまいります。

 そうしますと、これの検討に入りますと、非常に長い時間だけが掛かって、しかも事実上不可能になるんじゃないかと思うんですね。そうであるならば、私は、まずこの公選法から十一条の一項一号を削除して、まず権利を回復するということをやるべきだと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。

国務大臣(新藤義孝君)

 まず、これは、後見となる方については、今おっしゃいましたが、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者ということであります。そういう状況の方に対して選挙権が与えられるか否かということが今議論をされているということであります。

 確かにこれは非常に難しい問題だと思います。難しい問題であるからこそ、これは国会での各党間の議論をいただかなければということを私たちはお願いをしておりますし、期待をしているわけでありまして、その検討がなされたならば、方針が示されたならば、それは我々は適切に速やかに対処したいと、このように思っています。

 ただ一方で、あの東京地裁の判決においては、選挙権を行使するに足る能力を欠く者を選挙から排除するという目的のために成年後見制度を借用せずに制度を設けて運用することも可能であると、こういう判示も出ております。

 ですから、難しいことであると思いますが、そういったあらゆる点を含めて御検討が各党間の間で、また与党の中で行われるものと思っております。

井上哲士君

 与党も含め各党ともこれは改正が必要だという声を上げておりますので、是非、国会での議論も早めて、夏の参議院選挙で投票できるようにしたいと、是非各党にも呼びかけたいと思います。

 法案の関係ですが、この選挙権の行使の言わば土台になるのがこの選挙執行経費であります。

 前々回の法改正のときには、それまでの選挙経費で不用額が出ていて国庫に返納していた、その実態に合わせて減らすものだったので我々は賛成いたしました。しかし、前回改正は大幅に減らし過ぎていると。今回は、前回よりも緩和した要素はありますけれども、絞り過ぎておりまして、選挙権の行使や業務の正確性に支障が出かねないと、こう思うんですね。

 例えば、先ほど開票時間の問題がありました。準備、撤去を含めない開票事務に要する時間を四時間から三時間にするわけでありますが、平成二十二年の参議院選挙を調べたら短縮が進んでいるという答弁もありましたけど、このときも三時間以内に終了したのは二七・九%にすぎないんですね。にもかかわらず三時間にするというのは、これはやっぱり行き過ぎじゃないでしょうか。

国務大臣(新藤義孝君)

 これは、今回の改正法案については、平成二十二年の参院選を対象にした実態調査、その結果で、市区町村において開票事務の効率化が進んだ、今その一つの数字が出されました。そして、それは十九年から二十二年にかけて改善が進んだんですね。

 ですから、したがって、今回、二十二年から二十五年に対して更なる改善や工夫をすることによって我々は今回の基準が成し遂げられるんではないかと。それも全体としての基準でございます。それが成し遂げられるんではないかということでこのような法案の内容になったわけであります。それは、開票事務の進捗に応じた人員の配置の見直し、それから全国の先進事例、これを一層普及してもらう、それから更なるリハーサルですとか、そういったものをやっていただくことによって効率化と改善が期待できるんではないかということであります。

 これまでの実態を踏まえて、また今後の起こり得るべき変化も備えてこのような改正が望ましいんではないかと、こういうことで出させていただいたところでございます。

井上哲士君

 平成十九年で三時間以下は二五・六%が、平成二十二年で二七・九に多少増えているにすぎないんですね。私は、これを理由にやはり一時間も減らすというのは非常に乱暴だと思いますし、全体として投票所の減数や、閉鎖時間の繰上げが年末の選挙では非常に増えました。こういうことに拍車を掛けるんじゃないかと、この懸念についてはどうお考えでしょうか。

国務大臣(新藤義孝君)

 いろいろな要素はあると思いますが、しかし、この基準を示すことによって、それに向けての各選管におけるいろいろな工夫や御努力がなされるものと思っておりますし、これは基準でありますから、全体として、総体としては経費が節減、合理化できる、そして事務が改善されてスピーディーになって、そして利便が図られるということであれば、私はこれが大きな影響、支障が出るとは考えておりません。

井上哲士君

 私は改善を否定するものじゃありません。その結果として不用額が出たときに法改正はあるんだろうと思うんですが、やはり今回、それを先行して行き過ぎた削減をするということはいろんな問題が起きると思うんですね。

 昨年末の新聞報道などを見ますと、投票所が遠い、過疎化、財政難で千七百六十四か所全国で減っているというのが出ていますが、その中で、ある県の選管幹部の言葉として、投票所の統廃合が最もコストダウンの効果が高いと、こういうことも出ております。やはり、こういうことに拍車を掛けるようなことをやるべきでないと、そのことを申し上げまして、質問を終わります。

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委員長(轟木利治君)

 この際、委員の異動について御報告いたします。

 本日、西田昌司君が委員を辞任され、その補欠として三原じゅん子君が選任されました。

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委員長(轟木利治君)

 他に発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。

 これより討論に入ります。

 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

井上哲士君

 私は、日本共産党を代表して、国会議員選挙の執行経費法改正案に反対の討論を行います。

 全国一律の国政選挙において、投票所の数や投票時間の保障は投票機会の公平を確保する上で極めて重要です。

 ところが、過疎化などを理由に、この間、投票所の数は激減しており、投票所が遠くなり不便になった有権者が少なくありません。むしろ、こういう場所だからこそ、逆に投票機会を保障する対策が必要であります。

 しかも、投票時間を短縮する投票所が昨年の総選挙で約五万か所、全体の三分の一に上り、本法案による経費削減がこうした投票所数や投票時間の削減に拍車を掛けることは明白であります。

 また、実際に二〇一〇年参議院選挙では開票時間が三時間以内だった開票所は三割もないにもかかわらず、今回、開票時間の基準を四時間から三時間に短縮しており、実態を無視した縮減と言わざるを得ません。

 開票作業は何よりも正確さが求められ、それなくして選挙の公正は確保されません。

 総務省の試算でも、本法案による算定額と二〇一〇年参議院選挙で掛かった経費を比べると、三十二都道府県で不足が出ます。都道府県選管連合会や全国市区選管連合会は、経費の過度の引締めは選挙の管理執行に悪影響を及ぼすおそれがあるとし、実態に即した適正な水準にすべきと、大幅削減の見直しを求めるなどをしております。こうした地方の選管の意見を真摯に受け止めるべきであります。

 また、今インターネット選挙運動の解禁も論議されており、選挙啓発など必要な経費は十分確保すべきであります。

 選挙執行経費の大幅削減は、民主主義の根幹である選挙の公平公正を損ないかねないことを指摘し、反対の討論といたします。

委員長(轟木利治君)

 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。

 これより採決に入ります。

 国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の起立を願います。

  〔賛成者起立〕

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