米軍の新型輸送機オスプレイの低空飛行訓練が強行されています。〝危険な訓練は認められない〟との意見書や決議が、全国160余の市町村から上がっています。中でも沖縄県(41市町村・県議会)に次いで多いのが、長野県(20市町村)です。きっかけは、日本共産党の井上さとし参院議員の現地調査でした。
長野県は北部を「ブルールート」が横切ります。地元の危機感は大変なものでした。
井上議員ら調査団が視察に入った昨年8月。ルート直下に位置する信濃町では、松木重博町長以下、議長、教育長、無所属議員、住民ら20人以上が迎えました。町内の道の駅で、ルートを見上げながら懇談します。松木町長は「観光地の信濃町で事故があれば取り返しがつかない。安全が確認されない限り反対」と語ります。教育長や議員も口々に子どもや動植物への影響を訴えました。
飯山市では、月岡寿男副市長が応対しました。同市は市街地の真上に飛行ポイントがあるという、アメリカ本国では考えられない場所です。月岡副市長は市の地図を示しながら「住民の命を守る立場から低空飛行訓練は反対です」とのべました。
この日だけで6自治体を訪問。どこでも井上議員は「政府は国民の安全よりアメリカの訓練重視で、不安の声を無視している。皆さんの声を国会に届けたい」と激励しました。同行した山口典久・党北陸信越ブロック事務所長は「自治体にたたかいの展望を示してくれた。『声を上げていこう』という雰囲気が生まれました」と振り返ります。
8月22、27の両日、井上議員は参院決算委員会と予算委員会で続けてオスプレイ問題を取り上げます。住民の切実な声を紹介し「米軍が日本の地図の上に勝手に線を引いている。そして自由に訓練をやるという。主権国家として認められるのか」と詰め寄りました。
野田首相(当時)は「日米合同委員会で協議している」というだけ。最低限、ルートと訓練計画を公表させよ、と求めると森本敏防衛相は「その必要はない」―。自治体や住民の不安を払うどころか、不信感を募らせる答弁でした。
同月30日、長野県市長会が、オスプレイの「飛行訓練をさせない」という議決をします。飯山市の足立正則市長が提案したものでした。9月に入ると野沢温泉村、伊那市、富士見町など立て続けに20市町村で飛行訓練中止を求める意見書が採択されます。2市で安全性を求める意見書が採択されました。
県議会では日本共産党の高村京子議員の質問に、阿部守一知事も「政府の説明では、県民に対して説明できない」「国に対してさらに具体的な情報提供・説明を求める」と答えざるを得ませんでした。県議会は国に説明責任を求める意見書を採択。12月から、県の公式ウェブサイトにオスプレイの目撃情報を受け付ける窓口を設置しました。同様の窓口は、長野市や松本市にも広がっています。
高村県議はいいます。「井上議員の調査をきっかけに〝オスプレイは看過できない〟という機運が一気に盛り上がりました。最初は危険性を認識していなかった県も『適切に対応したい』というようになりました。目撃情報窓口は、その一環です」
井上議員は、オスプレイ配備反対闘争本部の本部長代理として現地視察や国会追及に尽力しています。四国のオレンジルートや、オスプレイ配備が計画されているキャンプ富士(静岡県)を視察、地元住民や自治体職員から聞き取りました。静岡市で4月29日に開かれるオスプレイ問題シンポジウムではパネリストも務めます。
(了)