・成年被後見人になると不当に選挙権を奪われる問題を解決するための公選法改正案(議員立法)の質疑。選挙権の剥奪を「憲法違反」とした東京地裁判決について、国に控訴を断念するよう迫った。
- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
三月の東京地裁の判決を受けまして、超党派による議員立法でこの法案が提案をされました。この後の本会議で全会一致で成立することになるでしょう。そうしますと、この夏の参議院選挙で成年被後見人の皆さんの選挙権が回復をするということになります。
私は、あの判決直後に院内で報告集会が行われたときに、原告の名児耶匠さんともお会いをいたしました。選挙へ行きますかという質問に答えて、行きますと、本当に満面の笑みで答えられたのを覚えておりますけれども、政府が控訴をして、夏の選挙できないんじゃないかと大変心配をしておりましたけれども、あの笑顔にこたえることができるということを、大変、立法府に身を置く者としてうれしく思っておりますし、これを取りまとめられた提案者の皆さんの御努力にも敬意を表したいと思います。
在外日本人の選挙権に係る二〇〇五年の最高裁判決が、選挙権を議会制民主主義の根幹を成すものとして「国民の選挙権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならない」としました。地裁判決がこれを踏まえて成年被後見人の選挙権を喪失させたのは違憲だと断じたのは、非常に私は重要だと思っております。
この選挙権を行使するには投票機会の保障が不可欠でありますし、これなしに選挙権の保障はありません。投票所のバリアフリーやアクセスの問題はもとより、障害者にも選挙情報がきちっと届くということが大事な点だと思います。この点は衆議院の審議でも述べられたことでありますけれども、再度、提案者に確認をしたいと思います。
- 衆議院議員(塩川鉄也君)
井上委員にお答えいたします。
井上委員におかれましては、二年前に成年被後見人の選挙権回復を求める裁判が起こされて以来、三回にわたり法務委員会や当委員会で取り上げ、この件について尽力してまいったことはよく承知をしているところであります。
衆議院でも答弁のありましたとおり、選挙権は国民固有の権利として憲法に保障されております。この憲法上の権利行使には投票機会の保障が不可欠であり、これなしに選挙権の保障はありません。
我が党日本共産党は、これまでも障害者の参政権の保障を一貫して主張してきており、障害者の投票機会を現実に保障する制度の拡大等にも取り組んでまいりました。今回、選挙権が回復する成年被後見人に限らず、障害者を含む有権者全体の投票機会を保障されることが必要であります。選挙権を実質的に保障するため、投票所のバリアフリーアクセスの問題を改善していくことは重要であります。また、投票の前提として候補者等の情報を入手することは不可欠であり、障害者にも選挙情報が届くようにすることは大事な点であると考えております。
- 井上哲士君
この選挙権の保障を実質的に進めていく上でも、これを奪ってきたことへのきちっとした反省が必要だと思うんですね。
先ほど提案者からも、今にして思えばこの成年後見制度ができたときにきちっとやるべきだったという反省を込めた答弁もございました。立法府がこの成年被後見人から選挙を奪ってきたということを反省をして全会一致でこの法改正を今やろうとしているわけですね。これまで総務省は法律でこうなっていますということでこれを合理化をしてきたわけですが、法を作る立法府がそれを変える以上は、法を執行してきた行政府は当然私は控訴を取り下げて当たり前だと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
- 副大臣(坂本哲志君)
東京地裁判決をきっかけといたしまして立法府におきまして検討が速やかに行われました結果、今回、法案が取りまとめられました。この度の法改正によりまして立法的に問題が解決されることになれば、裁判は間もなく終結することになるというふうに考えておりますので、総務省としては改正法の施行に遺漏なきよう全力で取り組んでまいりたいと思います。
他方、現行法につきましての訴訟におきましては、選挙権の行使に最低限必要な判断能力を有しない方に選挙権を付与しないという立法目的には合理性がある、この措置は立法裁量の範囲内であることから、現行の制度は違憲とは言えないというような主張をしてきたところでありますが、東京地裁におきましてその主張は入れられませんでした。
法改正が実現した後であっても、控訴を取り下げるとなりますと、現行の法律を違憲とした東京地裁の判決を確定させることになります。これは、立法府が制定した法律につきまして違憲との判断が確定し、今後の立法裁量の在り方に少なからぬ影響を与えるおそれがあるというふうに考えております。法律が違憲であるか否かを最終的に判断しますのは最高裁判所であります。下級審におきまして法律の規定が違憲であるとする判決を確定させた例というのはこれまで承知しておりません。そういうことから、控訴の取下げは予定をいたしておりません。
- 井上哲士君
立法府の立法作業に妨げになるという答弁がありましたが、その立法府が十年前にあの法律ができたときに選挙権を取り上げたのはやっぱり問題だったという判断をして全会一致でやっているわけでありますから、この法律を執行する立場である行政としてこれを取り下げるのは当然でありますし、それが原告への真摯な態度だと思います。到底認められないし、これは考え直していただきたいということを強く求めておきます。
法案は、改正案の代理投票の補助者要件を適正化をいたしました。一方、この知的障害者の中には常時身近に家族がいないとパニックになるという方もいらっしゃいます。その場合、この本人の意思確認に関与する代理投票の補助者ではないけれども横に付き添って、そういう付き添うだけの人が必要になるということもあると思うんですね。
国民の選挙権行使がきちんと行われるようにするためには、この公選法の五十八条に基づいて、やむを得ない事情があると投票管理者が認めたものについては投票所に入るということは引き続き妨げられないと、こう考えますけれども、そういうことでよろしいでしょうか。
- 衆議院議員(逢沢一郎君)
大変重要な点について井上先生から改めて御指摘をいただいたと存じます。
障害をお持ちの方でも自らの判断を指し示していただける方については一人残らず選挙権を堂々と行使をしていただける、そういったあらゆる条件整備、環境をしっかり整える、これは当然政府の、また大きな意味での政治の責任だというふうに思います。
今回の法律改正によりまして、代理投票の補助者につきましては投票所の事務に従事する者に限られる、限られる、そういうこととなります。選挙の公正、厳正、これをしっかりと確保しなくてはならぬということでありますが、今先生御指摘のように、例えば知的障害者の方々の意思の確認、どの候補者に投票したいか、様々な形でその意思表示を恐らくなさるんだろうというふうに思います。その意思表示が的確にこの代理投票の補助者に伝えられるといいますか、そのことは非常に重要なことでございます。家族や友人やそういう方が直接代理投票の補助者になることはできないわけでございますけれども、投票所まで付き添ってきていただく、また投票所の中に入るというところまでは可能でございます。
具体的には、恐らく投票する前にその補助者の方と十分な打合せといいますか、こういう形でこの投票人は意思表示をするんだということについて十二分に確認をいただいて、しっかりとその意思の反映をされた投票がしていただける、それぞれの投票所における、ある意味で厳格でなくてはならないけれども、そういう意味では柔軟なそういったやり取りが行われることが期待されますし、またそうでなくてはならぬというふうに存じております。
- 井上哲士君
最後に一点、ホームページのバリアフリー化を総務省は勧告してきましたけれども、音声読み上げソフトなど選挙管理委員会のホームページの改善が必要だと思いますが、この点の現状と方向はどのようになっているでしょうか。
- 政府参考人(米田耕一郎君)
今回、各選挙管理委員会のホームページを確認をいたしましたところ、既に中央選挙会では対応済みになっております。それから、都道府県のホームページではちょうど半分、二十団体、さらに都道府県の選挙管理委員会のホームページでは十九団体がこの音声読み上げ機能に対応しているというふうに承知をしております。
今後、各都道府県におきましても、この点、非常に重要な課題でございますので、取り組んでいただきますよう、私どもからも要請をしてまいりたいというふうに考えております。
- 井上哲士君
時間です。終わりますが、みんなの公共サイト運用モデルも改定をされておりますし、選管のホームページには選挙公報も掲載されるようになりましたので、これはしっかり障害者の皆さんがアクセスできるように、一層の改善を求めたいと思います。
以上、終わります。