○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
武器輸出三原則についてお聞きをいたします。
まず、防衛大臣、七月の防衛力の在り方検討に関する中間報告では必要な措置を講ずるとされまして、そして、十月の安防懇の国家安全保障戦略概要では見直しが明記をされました。防衛大綱にも盛り込むと言われておりますけれども、どこをどう見直そうとされているんでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 武器輸出三原則等につきましては、これまで個別案件ごとに例外化措置を講じてきたほか、平成二十三年末には、防衛装備品等の海外移転に関する基準により、平和貢献、国際協力に伴う案件及び国際共同開発、生産に関する案件について厳格な管理を行うことなどを前提にして、同原則によらないこととなったところであります。
他方で、本年三月に例外化措置を講じたF35の製造参画のような世界規模で部品等を融通し合う国際的な後方支援システムに参加するケースなど、防衛装備品等の海外移転に関する基準作成時には想定されていなかった事案も発生しております。
先般、安全保障と防衛力に関する懇談会においていただいた御意見や国会における御意見を踏まえつつ、防衛省としましては、三原則等の運用の現状が近年の安全保障環境等に適合するものであるかを検証し、必要な措置を講じてまいります。
○井上哲士君 今ありましたように、三原則はこの間例外措置として次々と抜け穴が作られてまいりました。見直しは、それを更に進めて形骸化をさせるものと言わざるを得ません。特に、二〇一一年、今ありましたように国際共同開発生産を包括的に認める大穴が空きました。しかし、それでも、過去例外を認めた例では、談話では、国際紛争の助長を避けるという基本理念は守ると繰り返し強調されてきたわけです。
ところが、今年三月のF35の共同開発の際の官房長官談話では、この国際紛争の助長を避けるという言葉がなくなりまして、国連憲章の遵守となりました。国際紛争の助長を避けるという理念は放棄したと、そういうことでよろしいんでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 政府はF35の製造等にかかわる国内企業の参画が我が国の安全保障に大きく資することを鑑み、本年三月内閣官房長官談話を発出し、国内企業が製造を行う部品等が我が国以外のF35ユーザー国に提供されることについては、厳格な管理が行われることを前提として、武器輸出三原則等によらないことといたしました。同談話において、国際紛争を助長することを回避に替えて国連憲章を遵守するという文言を用いております。
これは、現在において国際紛争は様々な意味を有しており、侵略行為だけでなく、テロとの戦いなど国際社会の平和と安定のために取り組まなければならない紛争があることも踏まえると、紛争の平和的解決や国際の平和及び安全の維持を目的として定めている国連憲章に言及する形で、これを遵守することこそ平和国家としての基本理念であるとした方が適切であるとの判断に基づいたものであります。
我が国としては、平和国家としての基本理念を維持するということについては変わりはありません。
○井上哲士君 いろいろ言われましたけれども、このときの談話のポイントは、このF35のイスラエルへの輸出が可能になるということだったわけですね。
外務大臣にお聞きしますが、イスラエルが近隣諸国に対して繰り返し空爆を行っておりますが、いつどこに対してこの間行われたでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) イスラエルが行った最近の空爆事例ですが、まず二〇〇六年七月のレバノンのヒズボラによるイスラエル軍兵士の殺害及び拉致に端を発する空爆、そして二〇〇八年十二月、そして二〇一二年十一月のこのパレスチナ・ガザ地区からのロケット弾発射事案に対する空爆、こうしたものがあると承知しております。
○井上哲士君 まさにイスラエルは、先ほど言われたような平和と安定とは無関係な空爆を繰り返し行ってきたわけであります。まさに国際紛争の助長をしてきたと。そこに対する輸出も可能になったというのがこの談話だったわけですね。
しかも、この新しい談話にある国連憲章の遵守にも当てはまるのかと。八一年のイラク空爆ではイスラエルの行為を非難する安保理決議が採択をされておりますし、この〇六年のレバノン侵攻では安保理が敵対行為の停止を求める決議を採択をしております。空爆だけじゃありませんで、今イスラエルによる東エルサレムなど住宅建設がありますが、この東エルサレムの件については、今年の六月に日本の外務省自身が強い遺憾の意を表明し、入植活動は国際法違反だとはっきり述べているわけですね。
この談話後もイスラエルによる空爆は行われておりまして、こうした行為を繰り返している国への輸出がなぜ国連憲章の遵守ということに当てはまるんでしょうか。外務大臣。
○国務大臣(岸田文雄君) このイスラエルを含むF35の部品の移転ですが、国連憲章の目的と原則に従うF35ユーザー国のみに限定をしている、こうしたことであります。
よって、このF35を使用して空爆が行われた場合ということになるかと思いますが、これはもう仮定の話ですから、今の段階でそれをお答えするのは控えさせていただきたいと存じます。
○井上哲士君 それは、私、次に通告をしていた、イスラエルがF35を使用して空爆をした場合にどういう影響を与えると思うのかということに対する答弁だと思いますが、そうではなくて、現にこういう国連憲章違反の行為を繰り返しているイスラエルに輸出をすることがなぜ国連憲章の遵守と言えるのかと、そのことをお聞きしております。
○国務大臣(岸田文雄君) この官房長官談話ですが、これはF35の輸出に関しての談話だと承知をしております。よって、これ、F35によって空爆が行われた場合に、国連憲章の目的と原則に従っているかどうか、それを判断することになると存じます。
○井上哲士君 これは通告してあるのできちっと答えてほしいんですが、つまり、国連憲章の遵守ということでこのF35の共同開発に加わると。しかし、その結果、イスラエルへの輸出も起こり得ると。しかし、そのイスラエルが、先ほど言ったように、空爆であるとか、そして国際法違反の入植活動を繰り返していると。なぜこの国が国連憲章の遵守などと言えるのかと、そのことをお聞きしているんです。
○国務大臣(岸田文雄君) この入植活動等の行動とそのF35の輸出、これは直接関連するものではありません。ですから、この際、問題になるのは、このF35が使用されるかどうか、これが問題になるのではないかと認識をしています。
○井上哲士君 使用されたら大変なことになるんですよ。これまでそういう行為を繰り返してきた国にこの輸出をするということは、それが使われてということも予想されるし、そのことが日本外交に与える深刻な影響ということをちゃんと直視をするということが私は必要であるし、こういう国に日本のかかわるものが輸出されるということは、中東における日本の信頼を失墜させる、平和国家の理念と反するということを申し上げているわけです。
もう一つ聞きますが、先日、海上自衛隊の護衛艦に使われている川崎重工製のエンジン部品をイギリス向けに輸出をして、イギリス海軍の艦船に提供をするという取引を認めております。
経産省にお聞きしますが、エンジン関連部分といえば軍隊の心臓部でありますが、その関連部品の輸出というのは武器そのものではないでしょうか。
○政府参考人(経済協力局貿易管理部長 中山亨君) お答えいたします。
武器輸出三原則における武器のまず定義でございますけれども、昭和五十一年二月の三木内閣の時点での政府統一見解によりますれば、輸出貿易管理令別表第一の一の項に掲げる貨物のうちで、軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるものとなっております。ここで言う軍隊が使用するものというのは、軍隊が使うか使わないかという意味では必ずしもございませんで、貨物の形状、属性などから客観的に判断いたしまして、専ら軍隊において用いられるよう仕様を設計されたものというふうに運用しております。
御指摘の案件についてでございますが、具体的な内容は、企業の情報もございますので、本来お答えを差し控えさせていただくべきかと考えますけれども、可能な範囲でお答え申し上げますと、ガスタービンエンジン用の部品でございます。当該ガスタービンエンジンは元々民間航空機用に開発されたものでございまして、また、ほかにもいろいろな用途が開発されて、現在は産業用途としても一般に利用されているガスタービンだと承知しております。
また、今回の輸出を行われます部品につきましても、このような産業用のものと全く同一の型番が付されている汎用の部品だということでございますので軍事専用品とは言えないという理解に基づきまして、武器輸出三原則における武器には当たらないという判断をしたものでございます。
○井上哲士君 いろいろ言われましたが、では、これまでに他国の軍の艦船のエンジン関連部品を輸出をしたという例はあったんでしょうか。
○政府参考人(中山亨君) 過去五年間の実績を確認いたしましたところ、軍用艦船用としてガスタービンエンジン又はその部分品の輸出を許可した件数は十二件ございました。いずれの貨物も先ほど申しましたように武器輸出三原則における武器ではございませんで、ガスタービン用の汎用の部分品でございました。
○井上哲士君 他国の軍の心臓部に使われるものまでこれは構わないということになりますと、いよいよ大きな抜け穴がこの間つくられてきたわけですね。
しかし、これは、憲法の平和主義にのっとって国際紛争を助長しないために一切の武器や武器技術の輸出をしないということは、これは衆参の国会決議を行っておりますし、歴代の政府も国会で繰り返し答弁をしております。例えば、九一年には当時の中山外務大臣が武器輸出三原則で国際平和のために一切武器を輸出しないと、これが日本の国是であると答弁をしてきたものですね。
これを一内閣の判断で覆すということが許されるんでしょうか。防衛大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 武器輸出三原則等については、昭和五十六年の国会決議においても述べられているとおり、日本国憲法の理念である平和国家としての立場を踏まえた武器輸出管理に関する重要な施策であると考えており、今後とも国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念を堅持していく方針であります。
他方、これまでもこの基本理念を守りつつ、内閣官房長官談話の発出等により例外化の措置を講じてきていることなどを踏まえ、先般、安全保障と防衛力に関する懇談会においていただいた御意見や国会における議論を踏まえつつ、防衛省としましては三原則等の運用の現状が近年の安全保障環境等に適合するものであるかどうかを検証し、必要な措置を講じてまいります。
○井上哲士君 同じ答弁の繰り返しでありますが、私は国是とまでされてきたものを一内閣の判断で覆すこと、国会決議も含めて覆すことは許されないと指摘をしておきますが。
特に、中間報告で、防衛生産・技術基盤の維持・強化の項で国際競争力の強化ということが強調しておりますが、これまで防衛省として防衛産業の国際競争力の強化ということをこうしたもので打ち出したことはあったんでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 昨今の厳しい財政事情や装備品の高度化、複雑化に伴う単価上昇等を背景とした調達数量の減少、グローバルな防衛産業の再編等による海外企業の競争力の向上といった状況下において、潜在的な防衛力として極めて重要な我が国の防衛生産・技術基盤の維持・強化を早急に図る必要があります。
このような問題意識の下、防衛省が設置しました防衛生産・技術基盤研究会は昨年六月に取りまとめた最終報告におきまして、グローバル化が進む中、企業全体としても防衛事業としてもこれまで以上に国際競争力を付けていくことは必須と提言したことを踏まえ、今般の防衛力の在り方に関する中間報告においては過去の防衛計画の大綱にはない国際競争力の強化について明記をいたしました。今回が初めてであります。
○井上哲士君 初めて国際競争力の強化ということが言われたんですが、こうなりますと、武器輸出をビジネスとしている、そういう国、一部にはそれによって紛争を助長しているわけですが、そういう国と国際的なシェアを争うということになるんじゃないですか、いかがですか。
○国務大臣(小野寺五典君) まず、我が国の平和国家としての理念は変わっておりません。その上で、防衛整備品等が高度化、複雑化することに伴い、多国間での共同開発、生産が増えている中で、我が国の防衛産業の国際的競争力を強化することは潜在的な防衛力として極めて重要である防衛生産・技術基盤を保持する上で重要であると考えております。このため、防衛省としては、今年度末を目指して我が国の防衛生産・技術基盤全体の将来ビジョンを示す戦略を策定することとしております。
○井上哲士君 私は、武器輸出をビジネスにしているような国々と国際競争力を競い合うようなことが平和国家を理念とする日本で許されるのかということを聞いておるんですが、更に聞きましょう。
今年一月の日本防衛装備工業会の賀詞交換会に防衛大臣も参加をされております。会長は、十一年ぶりの防衛関係費の増額を大いに期待する、武器輸出三原則見直しに伴う前進を図ってほしいと述べたのに対し、大臣は精いっぱい対応させていただくと述べられました。そこに当時の経済産業の副大臣が参加をされていて、防衛産業が成長戦略の一丁目一番地になるくらいの思いで取り組むということを挨拶をされておりますが、私は、防衛産業の要求にこたえて武器輸出で成長する国になると、成長戦略の一丁目一番地になるという国が平和国家の理念とは相入れないと思いますけれども、大臣、その場にいらしたと思いますが、いかがお考えでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 私としましては、防衛力の整備を行う中で防衛装備品の共同開発、生産が今国際的には増えております。そして、国際競争力を強化するということは潜在的な防衛力として極めて重要な防衛生産・技術基盤を保持する上で重要だと思っております。そういう意味で、あの賀詞交換会で挨拶をさせていただきました。
○井上哲士君 私は、いわゆる軍需産業で成長する国、栄える国になるということが憲法の理念に相入れるんですかということをお聞きしているんです。
○国務大臣(小野寺五典君) 繰り返しますが、我が国の平和国家としてのスタンスは変わっておりません。
○井上哲士君 それと矛盾をするということを申し上げているんですね。
外務大臣にお聞きしますが、今年四月に国連総会で武器貿易条約が採択をされました。九月に国連本部でこのハイレベル会合が行われておりますが、その際、大臣は、我が国がこれまでに小型武器に関する国連総会決議の提出等を通じて通常兵器の規制に関する国連の取組を主導してきたと、こういう挨拶をされております。なぜ日本が主導することができたのか。
これは外務省のパンフでありますが、この中にこういうふうに書いております。日本は外為法と武器輸出三原則等に基づき、原則として武器輸出を行っていません、輸出を前提とした軍需産業もありません、このために、国際社会に小型武器問題が提起されて以来、国連を中心とする枠組みを通じて国際社会をリードしていますと、こういうふうに述べているんですね。
武器輸出三原則があったからこそ国際社会をリードしてきたと、こういうふうに言っているわけでありますが、まさに三原則を見直して軍需産業の輸出の促進で成長する国を目指すというふうなことが、我が国がこの問題での国際社会をリードする、その土台を失わせることに私はなると思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 我が国は、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念を有しており、武器輸出三原則等に基づく取組に加えて、小型武器の問題については国連ですとかあるいは被害国における取組を通じて主導的な役割を果たしてきました。こうした平和国家としての基本理念に立脚した姿勢が我が国による小型武器問題への取組を国際社会に理解していただく上で重要な役割を果たしてきたと考えております。
政府としましては、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、今後とも小型武器を含め軍縮・不拡散分野において国際社会をリードしていきたいと考えています。
○井上哲士君 まさに三原則の見直しは、そうやって日本が果たしてきた役割を私は根底から覆すことになると思います。やめるべきだということを申し上げまして、質問を終わります。