○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
フィリピンの台風被害について先ほど来やり取りがありました。私も昨日、フィリピン大使館に参りまして、我が党志位委員長のお見舞いの書簡をお渡しして懇談もし、また昨日から大使館にお見舞いの記帳台ができておりましたので早速記帳もしてまいりました。多くの日本国民が東日本大震災でのフィリピンを始めとした世界からの支援に非常に感謝をし、何とかしたいという思いを持っているということも伝えてまいりましたし、また、実際、我が党などにも何かしたいんだけれどもどうしたらいいかというような電話なども掛かってきております。
党としては、募金活動をやろうということで今日から呼びかけをしているわけでありますが、まずは救援という点でのフィリピン政府からの様々な要請を適切にこたえていきながら、これはやっぱり長期にわたることでありますから、そういう日本国民の中にある様々な思い、善意も生かしていくような、こういう方向で是非政府としても取り組んでいただきたいと思いますが、突然ですが、ちょっと外務大臣、その点いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘のように、フィリピンでの台風の被害、大変深刻であります。そして、国際社会も各国ともそれぞれ支援を行うべく表明をしています。我が国もできるだけの支援をしていかなければならないと思っています。
人的支援につきましても、先ほど防衛大臣からも報告もありましたが、JICAがコーディネートしました国際緊急援助隊の医療チームも既に現地に入り、レイテ島でもう活動を始めております。
こういった支援もしっかりやり、人的支援もしっかり行わなければいけませんし、御指摘のように、将来を見詰めてしっかり支援をしていかなければならないということで、例えば緊急シェルター、食料、水、衛生分野での支援ということで一千万ドルの緊急無償資金協力、これ既に表明しておりますし、またビニールシート、マット等六千万円の緊急援助物資の供与も決定しております。さらには、我が国の財務省がアジア銀行に日本ファンドというのを持っていますが、この日本ファンドからも二千万ドルの支援を決定をしております。
さらに昨日、国連は世界に対しまして三億ドルの資金援助を呼びかけるということを行いました。この国連の呼びかけに対しましても、我が国として更なる支援、何ができるかしっかり検討していきたい、このように考えています。
○井上哲士君 是非、まさに東日本大震災のときの思いを、日本国民の思いをしっかり生かせるようにしたいと思います。
法案の審議に入りますが、今回の法案、今日も質問ありますように、アルジェリアの事件を受けてということになっております。当時、自衛隊の車両で輸送できなかったことこそが問題だみたいな議論が結構横行をしていたわけでありますが、果たして当時こういう法律改正がされていたら事態は解決できていたのかと、これもるる質問がありました。
国の玄関である港湾や空港に自衛隊を受け入れるのと内陸の領土で活動するということは全く違うことなわけですね。やはり、武装した自衛隊が動き回るというような事態を軍や警察権を持つ主権国家が歓迎するはずはないというのは、逆のことが起きればどうなるかということを考えれば分かることだと思うんですね。現に、当時、アルジェリア政府は米英の軍事支援の申出も拒否もし、軍は通告なしに、日本への通告なしに軍事作戦を展開をしたと。
そういう状況にあって、例えば当時車両輸送ができるという規定があったときに、アルジェリア政府がこの自衛隊の車両による輸送に同意を出したのかどうか、また、一連の問題の解決ができたのかどうかと、この辺の認識をまず外務大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) 今回のアルジェリア事件を受けて、我々は改めてこの邦人保護、救出ということにつきまして様々な点を振り返り、様々な教訓を得なければならないと思います。尊い犠牲が出てしまいました。こうしたことを考えましても、このアルジェリア事件を今後の教訓として生かしていくことが求められるというふうに考えております。
そして、今回の事件においてこの法律があったならば我が国がどう対応したかという御質問ですが、これにつきましては、今回は陸上輸送、アルジェリア政府が対応いたしました。仮定で申し上げるのは適切ではないと存じます。しかしながら、こういった状況全体を見て得る教訓は大変多いというふうに思っています。首都から一千キロ離れた地域において事件が発生した場合にどう対応するのか。今回のアルジェリアの対応は御承知のとおりでありますが、どの政府も同じ対応をするとは限りません。どの国で発生するかも分かりませんし、どんな状況が起こるかも分かりません。
そういったあらゆる可能性を想定しながら、しっかりとした体制を考えていく、こういった姿勢は大変重要だと思いますし、その一つとして今回のこの法律改正の提案もあるのだと、このように認識をしております。
○井上哲士君 あのアルジェリア事件の当時、何か事あらばとにかく自衛隊を海外に出そうと、こういうような議論も見受けられました。私は、やっぱり本当に邦人の安全を確保するのには何が必要なのかということでしっかり議論をすることが必要だと思うんですが、先ほどアルジェリアに自衛隊の車両を運ぶ場合に空輸でどういう方法があるのかというようなお話もありましたが、そこのときも、途中、給油もしなくちゃいけないということがありました。
日本から例えばアルジェリアに運んだという場合でいいますと、おおむねどのぐらいの日数が掛かるんでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 自衛隊が日本から派遣先国まで輸送機により車両を輸送する場合には、現有装備品ではC130Hを使用することが想定されますが、C130Hはアルジェリアの運航実績がなく、また航続距離は積載貨物の重量や気象によって変動しますので一概にはお答えできませんが、参考として、近傍地域への輸送実績として、国連兵力引き離し監視隊、UNDOFの派遣部隊に対する補給物資等の輸送の際の経由地としてエジプトのカイロ近傍ですが、ここへ運航したことがあります。そのときには四日を要しました。
ただ、今回、平成二十六年度ですが、装備予定になっていますC2によりますと航続距離が伸びますので、二日程度で輸送できるものと推察をされます。
○井上哲士君 アルジェリアまでとなりますと、C130というのは更にもうちょっと、五日ぐらいになるんではないかというお話も聞いたわけでありまして、やはり現地政府との関係でしっかり対応するということが必要だと思うんですね。
これもこの間の議論の中で、安全な輸送が確保されていると判断する内容について、一つは予想される危険の把握、それからもう一つはその危険を回避する観点からいかなる方策を取ることが可能かと、これを検討するというふうに挙げられておりますが、これは危険の回避と言って、排除という言葉は使っていないわけですが、そういうことは考えていないと、こういうことでよろしいでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 在外邦人の輸送を実施する際には、まず当該輸送において予想される危険及びこれを避けるための方策について外務大臣と防衛大臣が協議し、当該輸送を安全に実施することができると認めるときに初めて当該輸送が実施されます。
当該危険を避けるための方法の具体例としては、邦人等の輸送を支障なく実施するための派遣先国による便宜供与や輸送拠点等における警備の強化、自衛隊の取り得る輸送手段の中から邦人を最も安全かつ迅速に輸送することができる手段を選択し、最も安全と考えられる輸送経路を選択することなどが考えられます。
御指摘の危険を排除するということについては、いかなる状況下での活動を想定しているのかにもよりますが、一概には申し上げられませんが、仮に、関係する地域の治安を派遣先国が確保できない場合などに自衛隊が治安を創出しつつ邦人を救出することを想定しているのであれば、そのような活動を行うことは本法案は想定をしておりません。
○井上哲士君 そうしますと、危険が回避される、安全に実施できるということが前提ということになるならば、自衛隊車両による運行ということは逆に必要ではないのではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 本法案ではあくまでも安全な輸送が可能だということが前提ということになりますので、そのような事態であれば当然陸上の輸送も可能だということになると思います。
○井上哲士君 いや、つまり、陸上輸送が安全にできるのであれば、あえて自衛隊の車両でやる必要はないのではないかということをお聞きしております。
○国務大臣(小野寺五典君) 輸送について自衛隊が判断するということになる場合には、在外邦人等の輸送を実施する場合には、派遣先国からの同意を得ることが活動の前提ということになりますので、議員が御指摘をするような状態というのは、相手国の同意でありますので、通常想定されないと考えております。
○井上哲士君 ちょっとかみ合っていないんですが。
これまでも現地公館が手配した車で陸上輸送したケースはあるわけですよね。今回、この自衛隊の車両でできるようにするということになるわけですが、先ほどありましたように、危険が回避される、安全の実施ができるということが前提ということであれば、自衛隊の車両ということは必要ではないんではないですかということをお聞きしているんです。
○国務大臣(小野寺五典君) 私どもとして、迅速にそして安全にということの前提で様々な選択を行いますので、自衛隊の車両も選択する一つでありますし、またそれ以外についても選択をする可能性はあると思います。
○井上哲士君 私、第三国の軍が通行することによって敵対行為とみなされて、かえって邦人を危険にさらすことがあるんじゃないかと、こう思うんですが。
ちょっと先ほどのやり取りにかかわってお聞きするんですが、衆議院での議論で派遣先国の同意についてやり取りがありまして、先ほどもありました。衆議院での議論の際は、例えば内乱状況であっても同意を求めるのはあくまでも相手先国だというのが防衛大臣の答弁でありましたが、先ほど、イラクのように事実上政府が機能していない、存在していないという場合にはそうでない場合も例外としてあり得ると、こういうことがありました。
そうしますと、一つの国の中で中央政府の支配が及ばない、反政府勢力が実質上支配をしているというようなところが対象になったり又は通るという場合には、これは、この場合もそういう相手先国の政府の同意だけで足りると、こういうふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、当該政府が機能している以上は、その政府の同意は取らなければならないと存じます。しかし、その同意を得た上で、輸送において予想される危険ですとか、それを避けるための方策等を考慮し、そして安全に実施することができると認められない場合は、これは陸上輸送をすることは困難であるという判断に至ることになると考えます。
○井上哲士君 そうしますと、まさに国の中で政府の実際上の支配が及んでいないというようなところが対象になる場合は、法的にはこの相手国政府の同意ということになっているけれども、実際上の運用としては、そういうところを実効支配しているところの同意を得るということがなければ私は安全確保ができないと思うんですが、そういう運用がされるということでよろしいんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 今申し上げましたのは、まず政府が機能している以上はその国の政府の同意は得なければいけない。そして、その影響下にない地域、例えば反政府勢力の強い地域においてどうかという御質問かと思いますが、その場合においては、まさにこの危険性をしっかり予想し、そしてそれを避けるための方策等も考慮し、そしてそれで、その上で安全を確保することが難しいというのであるならば、これは陸上輸送を行うという判断には至らないということになると思います。
○井上哲士君 つまり、それは、その地域を実効支配している反政府勢力などのやはり同意を求め、それが得られなかった場合にはできないと、こういうふうに受け止めてよろしいですか。
○国務大臣(岸田文雄君) あくまでも安全にそして迅速に輸送するためにはどうするかという判断でありまして、今のケースで、政府が機能している中にあって政府の同意を得るということ、これはもちろん必要ですけれど、その上で反政府勢力からの同意を取り付けるというようなことは通常は考えられないのではないかと思います。
○井上哲士君 もちろん通常はそういう国は余りないわけでありますが、しかし現実に、例えばアフガニスタンにしてもソマリアなどにしても、そういう地域が生まれてきているわけですよね。ですから、私はやっぱりそこはきちっとしていかないといけないと思いますが。
そこで、防衛大臣にお聞きしますけれども、こういう内乱とか反政府勢力の紛争がある場合に、第三国の軍が通行するということそれ自体が敵対行為とみなされて攻撃対象とされることによって、かえって邦人を危険にさらすことになるのではないかと、こう考えますけれども、それはいかがでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 今回の緊急事態に対しての在外邦人の退避が必要となる場合、政府としては、民間商用機で退避を促す、あるいは政府によるチャーター機の活用、当該国政府や友好国から邦人退避活動のための協力を確保など、最も迅速かつ安全な手段を選ぶということになります。この選択肢のうちの一つとして自衛隊による在外邦人等の輸送を実施するということになりますので、様々な状況を勘案して最も安全で迅速なものを選択するということになるんだと思います。
○井上哲士君 武器の携行の問題でお聞きしますが、この車両による輸送を当該政府から同意を取る場合に、携行する武器の範囲であるとか武器使用の可能性についても相手国の政府の了解を、同意を得る必要があるのかというのが一点。
それから、今後、この武器の範囲については閣議決定を見直しするということを言われておりますが、どういう点を今検討されているんでしょうか。防衛大臣、お願いします。
○国務大臣(小野寺五典君) 相手国への同意を取り付けるという内容ですので外務大臣の所掌かもしれませんが、一般に自衛隊を他国の領域に派遣する際には派遣国の同意を得る必要があり、その際、武器を持ち込む場合には持ち込む武器の範囲についても派遣国先の同意を得るということになると思っております。
今お話がありました自衛隊がどのような武器等を携行するかということでありますが、これは自衛隊による在外邦人等の輸送の実施に際し携行する武器の種類や数量については、当該輸送の具体的態様を踏まえ適切に判断するということになります。
○井上哲士君 これ、陸送ということになりますと、これまでの空輸などと違って大変治安上の問題など大きな危険もあり得ますし、重武装した勢力による襲撃なども想定をすることになりますと相当の装備になりかねないということになるわけで、そういうことも含めて結局もう白紙委任ということになると、このことも極めて問題であるということを指摘をいたしまして、時間ですので、質問を終わります。