国会質問議事録

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国家安全保障に関する特別委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 国家安全保障会議が作成する国家安全保障戦略についてお聞きいたします。
 これまでの防衛白書などは、まず我が国周辺の安全保障環境から記述が始まって、次に国際社会における安全保障上の課題となっております。ところが、今、安防懇の議論では、国家安全保障戦略に盛り込むものとして、まずグローバルな安全保障環境から始まっておりますが、なぜ、こういうような順序になるんでしょうか。

○国務大臣(菅義偉君) 国家安全保障戦略については、本年の九月に立ち上げました安全保障と防衛力に関する懇談会において、外交・防衛政策に深い見識等を有する有識者の皆さんから今様々な御意見を伺っています。
 委員も御指摘のとおり、当懇談会における議論の整理として公表された資料、それには、我が国を取り巻く国際情勢と国家安全保障上の課題として、グローバルな安全保障環境と課題に続いて、アジア太平洋地域における安全保障環境という課題が記述されております。そのとおりであります。
 いずれにしろ、政府としては国家安全保障政策の具体的な内容についての方針を決めたという事実はなくて、同懇談会の議論を踏まえながら今後政府で検討していきたいというふうに考えています。

○井上哲士君 私がお聞きしましたのは、これまでの防衛白書などは我が国周辺から始まっているのに、逆にグローバルという記述から始まっているということがどうしてなのかということなわけでありますが、このことが一体何を意味するのかと。
 防衛大綱の改定に向けた防衛力の在り方検討に対する中間報告でも、グローバルな安全保障環境の安定化への取組という柱を立てて自衛隊の海外活動について述べております。その大きな柱が海賊対処活動ですが、日本は、ジブチにそのための活動拠点と称して自衛隊基地が建設をされ、二〇一一年から運用を開始しております。まず、その建設費用、それから施設の内容、人員及び年間の維持費について明らかにしていただきたいと思います。

○国務大臣(小野寺五典君) 海賊対処行動に対するジブチにおける活動拠点についての御指摘だと思います。
 P3C哨戒機を運用する派遣海賊対処行動航空隊は、平成二十三年六月からジブチにおいて活動拠点を運用しており、現在、自衛官が約百九十人、交代時には三百八十人になります、を派遣をしております。
 この活動拠点の整備費用については、平成二十一年度から二十二年度までの約四十七億円になります。また、この活動拠点に係る土地の借料については、平成二十三年度から平成二十五年度まで約九百九十一万米ドルということになります。また、この活動拠点の中には事務所や隊舎、警備所、駐機場、整備格納庫、補給倉庫、施設作業場等が設置されており、これらの維持のための費用として平成二十三年度から平成二十四年度までは約十三億円を支出しております。

○井上哲士君 土地の借用料として九百九十一万米ドルというお話がありましたけれども、これはジブチ政府から借用されているんだと思いますが、何のために使用するということで借りているんでしょうか。

○国務大臣(小野寺五典君) ジブチ政府から借用しております。これは、今回の海賊対処行動におけるジブチにおいての活動に対して使用するということでジブチ政府から借りていると承知をしております。

○井上哲士君 海賊対処行動ということで使用しているということでありますが、これ、なぜ基地と呼ばずに活動拠点と呼んでいるんでしょうかね。

○国務大臣(小野寺五典君) 基本的に、私どもとしては、このジブチでの活動拠点というのは、例えば、今回、恒常的に自衛隊がジブチに駐留するということで使用しているわけではなく、あくまでも現状の派遣海賊対処行動航空隊の活動のための拠点という考え方で置いておりますので、活動拠点という形で呼ばせていただいております。

○井上哲士君 恒常的ではないということが理由だというお話でありますが、しかし、一時期的というような簡易な施設ではなくて、先ほどありましたように、四十七億円も掛けて隊舎やそしてP3Cの格納庫などもあった事実上の海外基地そのものだと言えますね。
 しかも、この中間報告では、自衛隊部隊の海外活動について、既存の拠点の活用も含め、海外における中長期的な在り方について検討を行うとしております。衆議院の質疑の中で、防衛大臣、この検討の対象にジブチなどと具体名も挙げておられます。八月には、安倍総理も初めてこのジブチを視察し、激励をされているわけですね。
 この海外基地の中長期的な在り方の検討というものがなぜ必要なのか、そして、どういうことを検討されているんでしょうか。

○国務大臣(小野寺五典君) 御指摘がありました海外拠点の活用については、本年七月に防衛省で取りまとめました防衛力の在り方検討に関する中間報告でも、国際平和協力活動の柔軟な実施のために中長期的な在り方を検討すると記述をしております。
 具体的には、自衛隊のこれまでの活動経験に鑑み、今後の国際平和協力活動に際し、まず、今後もアフリカなど遠隔地での活動が想定される中、迅速に現地に展開し早期に活動を開始するため、輸送面を含めた体制整備に引き続き取り組む必要がある、長期にわたるPKO活動も想定される中、派遣部隊が活動を適切に継続し得るよう後方給油、衛生、通信、情報収集といった面での体制整備に引き続き取り組む必要があるといった課題があると考えており、これらを踏まえ、国際平和協力活動を適切に実施するため、ジブチなどの既存の拠点の活用も含め海外拠点の在り方について検討していくことが必要ということになります。
 したがって、海外拠点の在り方の検討は国際平和協力活動に関する体制整備の一環として進められるものであり、まずは短期的な観点にとどまらず中長期的な観点から幅広いオプションを検討し、その後実現可能性について評価していきたいと思っております。

○井上哲士君 先ほど恒常的なものでないので基地と呼ばずに活動拠点としているんだと言われましたが、そうしますと、今の御答弁ですと、長期にわたる活動も想定されるという中で中長期的な検討ということになりますと、そうなった場合には自衛隊としてもこれは基地と呼ぶということになるんでしょうかね。

○国務大臣(小野寺五典君) 今、中間報告で出ている内容についても、私どもとしては、国際平和協力活動の一環ということでありますので、その活動の中で使用する活動拠点という位置付けにしておると思います。

○井上哲士君 いや、国際平和協力活動で仮に必要があるとしても、先ほどの分け方で言えば、長期的な活動があるということであれば基地と呼ぶことに私は防衛省の分け方でもなると思うんですね。ですから、アフリカや中東に自衛隊が長期的に存在をしていく、そういう基地として強化していくというのがこの中長期的な在り方の検討ということになるわけですが、一つの国が植民地ではなくて他の独立国に軍隊を常駐させるというのは歴史上も極めてまれなことなわけですね。
 外務大臣にお聞きしますけれども、現在国外に軍事基地を持っている国というのはどれぐらいあるんでしょうか、どこの国でしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 海外に軍事基地を有している国について網羅的に把握しているものではありませんが、例えば、米国は我が国以外に韓国あるいはドイツなどに軍事基地を有しております。また、英国はドイツそれからキプロス、ブルネイなどに軍を駐留していると承知をしています。そして、ジブチにおいては米国及びフランスが基地を置いていると承知をしております。

○井上哲士君 今、アメリカ、フランス、イギリスという国名が挙がりましたけれども、ロシアも持っているようでありますが、この四か国以外にないと思うんですけれども、それ以外承知されているでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 先ほどもちょっと申し上げましたが、網羅的に把握しているものではありません。それ以外の国において軍事基地を有している国があるかという質問に対して、私は承知はしておりません。

○井上哲士君 今、挙げられた四つの国というのは、いずれも第二次世界大戦時から外国に、国外に基地を持っている国なわけですね。しかし、ソ連の崩壊によってこういう米ソ対決が崩壊をし、各国の海外基地というのは大きく縮小して、世界的な基地ネットワークを持っているのは今やアメリカのみだというふうになっております。ですから、戦後そういう新たに海外に基地を持つという国はないわけですね。
 ここで言われている中長期的な、既にジブチがそれ自体基地でありますけれども、中長期的な検討ということは、まさにアメリカと並んで新たに海外に基地を持つ国に日本がなると、そういうことになるんじゃありませんか。

○国務大臣(小野寺五典君) 私どもとしては、あくまでも海賊対処行動に関して海外での拠点という中でジブチを位置付けておりますので、委員のおっしゃるような趣旨とは違うと私は思っております。

○井上哲士君 いや、現在はそういうことでやっていますけれども、この中長期的な検討の中には、それ以外のことも含めて必要だから中長期的な検討が要るわけでしょう。だから、そうなればまさに四つの国と並んで海外に基地を本格的に展開する国になるんじゃないですかということをお聞きしているんです。

○国務大臣(小野寺五典君) 国際社会の中で要請が大変強まっております国際平和協力活動、これを運用する中で、日本がこの任務を果たす中で、例えばそれぞれの必要な地域に活動拠点があるというのは必要なことだと思っております。私どもとしては、今後、日本が積極的平和主義の中で、例えばこの国際平和協力活動という役目を負う中での活動拠点、これは今後とも必要だ、それはジブチを含めた検討が必要だということで今この中間報告の中に盛り込ませていただいているということでありまして、まだ最終的に大綱ができているわけでもありません。そしてまた、あくまでもこれは国際平和協力活動の拠点という位置付けをさせていただいております。

○井上哲士君 世界各国、PKOに参加している国はたくさんありますけれども、そういう国であっても海外にこういう基地を持っている国は四つしかないんですよ。ですから、日本がそれに参加をしているからといって、そういう恒常的な、中長期的な展望を持った基地を持つというその理由には私はならないと思うんですね。
 しかも、十三日の安保法制懇では、集団的自衛権の行使を容認した場合に地理的制限はないということを確認をされております。そうなれば、ジブチの基地を拠点にして集団的自衛権の行使して武力行使をするということも可能になるわけですね。そういうこともこの中長期的検討は展望しているんじゃないですか、いかがですか。

○国務大臣(小野寺五典君) あくまでも私どもこの中間報告で出させていただいたのは、国際平和協力活動の柔軟な実施のために中長期的な在り方を検討するという記述でありまして、委員がおっしゃるようなそういう基地という位置付けではなく、私どもとしては、国際平和協力活動の実施のための拠点という位置付けにしております。

○井上哲士君 いや、基地と位置付けないと言われましたが、先ほどは恒久的でないからそうだと言われたのであって、現に武力を持った自衛隊が海外に行って拠点をつくっている、これはやっぱり基地なんですよ。そういう方向に展開をしていくし、しかも、現時点では集団的自衛権の行使はできないということになっていますが、それを容認をし、しかも地理的限定がないということになれば、その海外、今拠点と称しているそこ自身の性格も大きく変わってくるわけですね。
 しかも、今、先取り的に自衛隊の活動も大きく拡大をしようとしております。この海賊対処活動としてジブチにP3Cとともにソマリア沖には二隻の護衛艦が派遣をされておりますが、この護衛艦、特定の船舶を護衛するエスコート方式を取ってきましたが、これに加えて、自衛隊単独ではなくて米軍主導の多国籍軍CTF151に参加をしてゾーンディフェンスをするということで、既に交代の護衛艦が日本を出発していますが、これ、法制定時はこういうゾーンディフェンスということは想定をされていなかったんではないでしょうか。

○国務大臣(小野寺五典君) 今お話がありました、本年七月、政府は、海賊対処を行う諸外国の部隊と協調してより効果的な船舶の護衛に資するため、これまでの直接護衛に加え、CTF151に参加し、ゾーンディフェンスを実施することを決定しました。この活動は、これまで行ってきた直接護衛と同様に、ソマリア沖・アデン湾を航行する民間船舶を海賊行為から防御するため、海賊対処法に基づく海賊対処行動として実施するものであります。
 海賊対処法が審議されていた二〇〇九年においてCTF151はまだ設立されたばかりであり、多国籍部隊の海賊対処行動の運用形態も現在のゾーンディフェンスという形に確立されていませんでした。当時、自衛隊がCTF151に参加してゾーンディフェンスを実施することも具体的には検討していませんでしたが、今般、現在の海賊対処行動をめぐる情勢を踏まえて自衛隊のCTF151参加を決定したということであります。

○井上哲士君 当時、私も外交防衛委員会におりましたけれども、いわゆるエスコート方式によって日本の船舶をエスコートするんだと、こういうことが繰り返し強調されました。集団的自衛権の行使とか様々な憲法上の問題がある中でもそういうことが強調されたわけですね。ですから、いわゆる海域を分担をするということは当時の議論ではそもそも想定をされていなかったと思います。
 海上交通の安全確保と海上での自衛隊の活動というのは国会でも長い議論の歴史があるわけでありますが、例えば、これはもう一九八二年に遡りますけれども、こういうふうに答弁をしております。米軍と海域を分担して、日本がこの海域は自分たちがやる、したがってその中における船舶は日本の船のみならず関係各国の船でもみんな守るのだというような意味での海域分担ということは一切考えておりません、そういう国際法上の権利はありませんと。海域分担はできない、一切考えておりませんという答弁もされてきたわけですね。
 今回、まさにゾーンディフェンスという形で米軍などと一緒に海域分担をすると。これ、できないということをこの間ずっと言ってきたんじゃないですか、政府は。

○国務大臣(小野寺五典君) 済みません、今の国会答弁の件、一九八二年とおっしゃいました。ちょっとどの部分かを教えていただければ、あるいは事前に通告いただければ、そのことについての御返答ができたんですけれども。

○井上哲士君 答弁はここまで遡りますが、しかし、一定の海域を、多国籍軍に加わって日本がそういう海域防衛を分担をすると、こういうことは考えていないというのが一貫した政府の対応ではなかったんですか。

○国務大臣(小野寺五典君) 今回の役割を担っています海賊対処法案が審議されたのは二〇〇九年でありまして、そのときに、このCTF151はまだ設立したばかりであり、多国籍部隊の海賊対処行動の運用形態も現在のゾーンディフェンスという形に確立をされておりませんでした。
 今回、このような形に自衛隊の役割を変えた背景としましては、海賊対処の効果が発揮された結果により海賊の事案が減っているということ。それから、委員御案内のとおり、エスコート方式であれば、一定のところに日本船舶を含めたエスコートの船舶に集積をしていただいてそれから移動するということで、かなりエスコートされる方の船のニーズにとっても、できればゾーンディフェンスのような形の方がむしろ有効だという、そのような意見があったということ。そのことを踏まえて、二隻の護衛艦のうち一隻はエスコート方式に残し、もう一隻はCTF151のゾーンの中に入れたということであります。

○井上哲士君 減ったんなら帰ってきたらいいんですよ。なぜこうやって活動枠を広げていくのか。
 アメリカのアーミテージ元国務長官が二〇一〇年に「日米同盟VS中国・北朝鮮」という本の中で、このアフリカ近海での海賊対策について、日本のリベラル派の人たちは何が起きているのかを理解していない、あれこそ集団的自衛そのものですよ、かつ陸海空による統合作戦なのですと、こうはっきり述べております。
 現在でも集団的自衛権そのものの作戦だとアーミテージ氏は指摘しているわけですが、従来にできないと言っていたような海域分担もする、まさにその方向に踏み込もうとしているんじゃないですか。

○国務大臣(小野寺五典君) 今回、CTF151に参加して行う活動というのは、私有の船舶等の乗組員が私的目的のために行う海賊行為を国内法上の犯罪として取り締まることとした海賊対処法に基づく海賊対処行動であることに変わりはありません。
 また、CTF151司令部は、参加各国に対して、その意に反して活動を強制するいかなる権限も有さず、同司令部と参加部隊との関係はあくまでも連絡調整の関係であります。このため、自衛隊が実施し得ない活動を任務として割り振られたとしても、当然これを拒否することができます。すなわち、自衛隊がCTF151に参加して行う活動が海賊対処法を超える活動を行うことはなく、御指摘のような問題には当たらないと思っております。

○井上哲士君 アーミテージ氏は日本に集団的自衛権の行使を迫ってきた政治家でありまして、私はその発言は重いと思うんですね。現在でも集団的自衛権そのものだと彼は指摘をしているわけですが、私は、本会議でも指摘しましたけれども、世界の警察を称するアメリカと一緒に海外で武力を使う国へと道を進めるものであるし、そのことをこの国家戦略に盛り込み、さらにはアメリカとの軍事情報を共有すると、これがまさにNSCだと思います。
 しかし、今やるべきことはこういうことではありません。イラク戦争のときに、アメリカの情報をうのみにして開戦を支持をして、そして自衛隊を派遣をした、この検証と反省こそが私は今やられるべきだと思います。
 当時の対応について、民主党政権時代に外務省が検証し、昨年の十二月に発表されております。僅か四ページの概要だけが発表で、本文は明らかにされておりません。この概要では、誰に聞き取りを調査したのかも不明ですし、そして、この大量破壊兵器の存在が確認されておらず、国際社会の圧倒的多数が査察の継続を求めている中、なぜ国連憲章違反のイラク戦争を支持をしたのかという一番肝心要な意思決定の過程が全く示されていないわけですね。
 外務大臣にお聞きしますけれども、この概要では省内関係者へのインタビューをしたとされておりますけれども、当時の小泉総理や川口外務大臣への聞き取り調査というのは行われているんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 昨年十二月発表されました外務省のイラク戦争に関するこの検証におきましては、ですから、イラク戦争当時の小泉総理あるいは川口外務大臣に対するインタビューは行ってはおりません。当時の大臣官房、総合外交政策局、北米局あるいは中東アフリカ局、国際法局及び国際情報局において当時のイラク問題に関与していた関係者にインタビューを実施したということでありました。

○井上哲士君 その一番肝心の意思決定をしたときの状況というのを、まさに責任者である総理や当時の川口大臣にはインタビューをしていないと。これ、やるべきじゃないですかね。

○国務大臣(岸田文雄君) 当時のこの検証、そして報告書におけるこのインタビューの位置付けですが、このインタビューというもの、インタビューは、外務省で集めた関連書類から得られる情報、これをまず確認し、そしてその上で、それを補完し、より正確な事実を把握するために必要と判断された当時の省内関係者に対しインタビューを実施する、こうした方針の下にインタビューを行いました。よって、全体を考えますときに、必要なインタビュー、関係者のインタビュー、これは行われたということだと承知いたします。

○井上哲士君 これは、イギリスはブレア首相へのインタビューも行いましたし、その報告書は約五百ページなわけですね。オランダでもやっております。私は、イラク戦争のときのような間違いを起こさないということをどう担保するかということを国会として検証することはどうしても必要だと思います。
 こういう、元総理へのインタビューもそうですが、是非全文を明らかにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、この報告書、前政権の下で行われた検証に基づいて報告書が出されたわけですが、この内容につきましては、先ほど申し上げました方針の下に関係書類を精査した上で必要なインタビューを行う、こういったことでしっかりこの検証は行われたと我々も認識をしております。そして、こうした検証は適切なものだと我々も認識をしているところでございます。
 そして、その内容につきましては、今後の外交政策においてしっかりと判断をする、考えていく、その際の材料にさせていただく、こういった目的でこの検証が行われたものだと存じます。そして、その概要につきまして、必要な部分は既に公にされていると認識をしております。

○井上哲士君 先ほど言いましたけど、なぜいろんな経過があってもイラク戦争を支持をしたのかという、そこのまさに政策判断、政府としての判断の一番肝心要なところのインタビューもしていないし、そして省内インタビューの結果も示されていないで、なぜ適切と言えるのかと。これでは、重大な意思決定として、国会を通じて国民的に検証ができないということになるんですね。全文も出さないと言われましたけれども、特定秘密保護法が成立してこういうものも特定秘密ということになりますと、永久に国民的な検証も不可能になってしまうと、そういうことになるわけです。
 問題は、本会議でも指摘しましたように、アメリカの情報をなぜうのみにして判断をしたのかと、ここが一番の肝心な点なんですね。アメリカは、二〇〇三年の開戦の前に、国連でなかなか武力行使への支持が広がらないという中で、当時のパウエル国務長官が安保理において、米英が調べ上げたイラクの大量破壊兵器保有の疑惑の証拠とするものを並べました。これが実は全くの捏造だったことが後ほど明らかになるわけですが、日本がイラク戦争を支持をした際にこのパウエル報告を判断材料にしたということは間違いないですね。

○国務大臣(岸田文雄君) このイラクの大量破壊兵器等をめぐりましては、当時我が国は、関係国政府あるいは国際機関関係者から幅広く情報収集は行っておりました。ただ、最終的に我が国が武力行使を支持する際の判断は、あくまでもイラクが度重なる安保理決議に違反し続けた、この安保理決議違反、これがこの判断の決め手だと、判断する材料であったと承知しておりますし、歴代外務省としましては、そういった判断を説明させていただいております。

○井上哲士君 じゃ、このパウエルの報告は判断材料ではなかったとおっしゃるんですか。

○国務大臣(岸田文雄君) 様々な情報は収集し、関係者から情報収集は行ってきました。しかし、あくまでもこの武力行使を支持した我が国の態度を判断する決め手は、イラク自身が安保理決議に違反し続けた、これがこの判断の材料であったと承知をしております。

○井上哲士君 いや、私聞いているのは、パウエル報告は材料の一つではなかったんですかと聞いているんです。

○国務大臣(岸田文雄君) 武力行使を支持した理由は安保理決議違反であります。

○井上哲士君 これ、ちょっとひどいですよ。
 当時の、平成十九年六月五日の外交防衛委員会で議論をしていますが、当時の塩崎官房長官は、このパウエル報告も材料の一つだったとはっきり認めているんですよ。何で認めないんですか。どういう検証をしたんですか、適切な検証をしたということを言いながら。

○国務大臣(岸田文雄君) 二〇〇七年の参議院外交防衛委員会における塩崎官房長官の答弁、パウエル国務長官が報告したことについても、それは追加的な判断材料の一つになっている、こういった発言があったということは承知しております。
 追加的な判断材料の一つということについて、その真意は承知しておりませんが、我が国があくまでもこの武力行使を支持した理由は安保理決議違反だということは、その当時からも、そして今日までもずっと一貫しているということ、一貫して安保理決議違反が理由であるということ、このことについては申し上げ続けております。
 そして、パウエル国務長官のこの演説の評価についてですが、報告書の中では、イラクの大量破壊兵器に関し、外務省は関係国政府や国際機関関係者等から幅広く情報収集をしていたが、当時、イラクに大量破壊兵器が存在しないことを証明する情報を得ていたとは確認できなかった、このように述べております。

○井上哲士君 当時、存在しないことを確認していた国は一つもないんです。問題は、存在するかどうか検証をしているときにそれを打ち切ってこの戦争に踏み切った、それを支持をなぜしたのかということなんですよ。そこが問われるんですね。
 国連の安保理では、当時の国連大使は、イラクの説明責任を迫る論拠の一つにこのパウエル報告を挙げているんです。あれこれの一つじゃないんですよ。重要な一つの材料としてこれを迫りました。しかも、さらに、当時川口外務大臣が予算委員会で答弁していますが、この米国のパウエル報告について、具体性があり十分信頼に足る、同盟国のアメリカの情報で、同盟国と信頼関係にあることは我が国の考え方の一番の基本だと、こううのみにする姿勢を示したんですね。
 同盟国の信頼関係が一番の基本だといってアメリカの一方的情報をうのみにしたと、これは間違いだったと、こういう認識はあるんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 様々な情報に接し情報収集に努めていたのはまさに事実でありますが、我が国がイラクへの武力行使を支持した、この根拠は、武力行使自体二〇〇三年に行われたわけですが、それを遡って一九九〇年にイラクのクウェート侵攻が行われました。その直後、一九九〇年に安保理決議六七八が発出されまして、武力行使が国連として容認される武力行使容認決議が一九九〇年に発出をされております。その後、一九九一年に武力行使が行われ、そして、同じく九一年に安保理決議六八七が発出され、停戦決議が採択されました。しかし、その中に様々な条件が列挙されていました。その後、その条件がことごとく守られない、こういった状況が続き、そしてその後、二〇〇二年に安保理決議一四四一が採択されまして、この安保理決議の重大な違反を国連安保理が決定するということになり、この安保理決議六七八、一九九〇年の武力行使容認決議に遡ってしまったと、こういった経緯をたどりました。こういった経緯をたどって、結局、二〇〇三年の武力行使、我が国としてこの安保理決議違反を根拠として武力行使を支持する、こういった態度を決定した、これが経緯であります。
 あくまでも、最終的に我が国が武力行使を支持した理由、根拠、これは安保理決議違反だということであります。

○井上哲士君 当時、国際社会は、更に査察をするべきだと、続けるべきだという声だったんですよ。そして、フランスもドイツもこの戦争を支持しなかったんですね。日本は今大臣が答弁されたような理屈でこの開戦を支持しましたけれども、国際社会といえばアメリカじゃないんです。国際社会全体はそうではなかったのに、なぜ日本が支持に踏み切ったのかと、そのことが一番検証の肝なんですけれども、そのことについて全くされていないわけですよ。そのことを私は言っているんですね。
 先ほど、川口大臣が、当時の大臣が、パウエル報告について、これを言わば信頼することが同盟国である一番の基本だと、こういうふうに答弁をしたと言いました。その前に、更に川口さんはこう言っているんですね。アメリカの努力を高く評価すると、情報の真偽、細かいことについて我が国としては確認を自らできるということではない部分がほとんどですと、こう言った上で、しかし同盟国だから信頼するのが一番の基本だと、こう言っているんですよ。
 ですから、要するに、うそか本当か分からぬけれども、同盟国アメリカとの信頼関係が一番の基本だから何でも支持をしますと、こういう姿勢は間違っていたと、これは明言すべきじゃないですか。

○国務大臣(岸田文雄君) イラクの大量破壊兵器につきましては、当時我が国は関係国政府あるいは国連機関関係者等から幅広く情報収集を行っており、米国の情報をうのみにしたという指摘は当たらないと思っております。直接の根拠は、先ほど申し上げましたとおり、安保理決議違反だと思っております。
 そして、事後的に言えば、イラクの大量破壊兵器が確認できなかった、こういった事実については厳粛に受け止める必要がある、このように認識をしております。
 是非、情報収集、そして分析能力、こういった点につきましては、しっかり今後とも強化していかなければならない、このように認識をしております。

○井上哲士君 幾ら情報を集めたって、うのみにして間違った判断をしたら駄目なんですよ。ですから、当時、これは間違っていたと、こういう認識がないままに、その上、日米同盟強化といってこのNSCでどんどん進めていく。私は、同じ過ちを繰り返すことになります。
 この問題は、単にアメリカの情報活動が不十分だったという問題ではないんですね。当時のアメリカのCIAの担当者なども、とにかくイラク戦争にするための口実づくりが求められたと、裏付けの資料が事実や調査に基づく信頼性のあるものか、他の情報源からの裏付けを取っているか、そういうことは重要ではありませんでしたと、こういうことを述べているんですよ。こういう情報をうのみにしたと、これは間違っていたと、私は、それなしにやればまた再び重大な間違いを起こすことになると思いますが、外務大臣にはそういう認識はありませんか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、先ほども申し上げましたが、事後的に言えば、このイラクの大量破壊兵器が確認できなかったという事実、これは厳粛に受け止めなければならないと存じます。
 しかし、イラクへの武力行使を支持する、こうした大きな決断をするに当たっては、様々な情報を収集し、そして分析し、そして様々な国際情勢を確認した上で、そして最終的には安保理決議、先ほど申し上げました、長年にわたって安保理決議、国際的な判断を無視し続けたイラクの態度、そして自らが大量破壊兵器が存在しないことを証明しなければならないイラクの態度、これが我が国が武力行使を支持する最終的な根拠であったということ、これも含めてしっかりと説明をしていかなければならないと思っています。

○井上哲士君 それが間違っていたわけですね。
 官房長官、お聞きしますけれども、こういう過去の間違った判断に対しての反省もなしに、このNSCによってアメリカとの軍事情報共有を強め、日米同盟を強めていく、同じ誤りを繰り返さないと言えるんでしょうか。

○国務大臣(菅義偉君) 国家安全保障局で企画立案、総合調整、これを行う上で質の高い情報というのは極めて大事だというふうに思っています。
 ですから、情報部門においては、様々な視点から客観的に情報収集し、分析を行って、その結果、国家安全保障局にその情報を提供するわけでありますから、それに基づいて、集約をして政策立案する、そういうことになっていますので、意図的な政策決定に方向付けするようなことはないというふうに思います。

○井上哲士君 全く反省が感じられません。
 戦争遂行のためのアメリカの情報をうのみにしたことへの反省のないままに軍事情報の共有を強め、しかも集団的自衛権の行使をにらんだ自衛隊の海外活動の強化を進めると。まさに軍拡と戦争の司令塔になるような国家安全保障会議は断固反対だということを申し上げまして、質問を終わります。

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