○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今日の議題には日中韓の投資協定も含まれておりますが、枠組みをつくりましても、外交関係が悪化しますと経済関係の発展もありません。アメリカのケリー国務長官も十四日、ワシントンで開かれている日米財界人会議で演説をして、尖閣や歴史認識を念頭に、日米の繁栄のためにも日中、日韓関係の改善が必要だということを述べられております。
この点での外務大臣の認識及び関係改善への外交的努力、まずお聞きしたいと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、日本と中国、韓国、こうした国々が経済分野を含む友好協力関係を進めるということは、これはもうアジア太平洋地域全体の利益であると認識をしております。日中関係そして日韓関係、本当に現在厳しい状況の中にあります。
一方、中国との関係、これは日本にとって最も大切な二国間関係のうちの一つでありますし、両国はアジア太平洋地域の平和と安定、さらには繁栄に責任を負っていると考えます。また、日韓関係、これも我が国にとりまして大切な隣国関係であり、大局的な見地から未来志向で重層的な協力関係を構築していきたいと考えております。
隣国であるからこそ問題が生じることがあります。首脳、外相レベルを含め率直に話し合うべきである、対話のドアはいつもオープンであるということ、これを申し上げておりますが、是非、中国、韓国にも同様の態度を期待したいと存じます。
こういった中で、今、日中韓投資協定、国会承認をお願いしております。この日中韓三か国による経済分野での初めての法的枠組みの構築であります。是非、経済的な意義のみならず、この三国間の関係強化という外交上の意義があるということも是非御勘案いただきたいと存じます。
是非、こうした取組等、具体的な取組を積み重ねることによりまして、高い政治レベルでの対話につなげていくべく、粘り強く対応していきたいと考えています。
○井上哲士君 軍事的対応がエスカレートしますと一層悪化をしていくということは戒めなくてはいけないと思いますが、そこで、今年二月に京都の丹後半島の経ケ岬に設置計画が明らかになった米軍のXバンドレーダー基地の問題についてお聞きをいたします。
突如報道をされまして、京都に初めての米軍基地ができることになると。地元住民の皆さんは、アメリカの戦争に自動的に巻き込まれるんじゃないか、環境の破壊、米軍関係者の治安問題、大変不安に感じておられます。
追加配備の場所については日米間で様々議論があったようでありますが、なぜ丹後半島経ケ岬になったんでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 相次ぐ北朝鮮によるミサイル発射など、我が国周辺地域の安全保障環境の変化も踏まえ、二月二十二日の日米首脳会談において、日本国内に二基目のTPY2レーダーを配備し、弾道ミサイル防衛により万全を期す必要があるという方針で一致をしました。
追加配備の候補地については、日本海側に存在する自衛隊施設の利用を中心に様々な観点から、これまで米国とも協議をしつつ検討を重ねてきました。その結果、京都府京丹後市の航空自衛隊経ケ岬分屯基地が、我が国及び米国に飛来する弾道ミサイルの探知・追尾能力の向上を図ることが可能な位置にあること、レーダー照射面、日本海側ですが、に向かって遮断するものがなく見通しが良いこと、上空に民間航路がないこと、電波環境が良いことなど、弾道ミサイルの監視、追尾を行う上で最適の場所であると考えられたことから、追加配備の候補地として選定をしたところです。
経ケ岬分屯基地にTPY2レーダーを配備することにより、我が国及び米国に飛来する弾道ミサイルについて探知・追尾能力の向上を図ることが可能となるため、日米双方の更なる弾道ミサイル防衛能力向上に寄与するものと考えております。
防衛省では、このような安全保障上の重要性に鑑み、本年三月以降、地元の方々に対する説明を実施し、九月には京都府京丹後市から御理解を得られたところです。私も、今月九日に直接現地の視察をさせていただき、経ケ岬分屯基地が弾道ミサイルの監視、追尾を行う上で大変重要な位置にあるところだということを確認をさせていただきました。
防衛省としては、我が国の弾道ミサイル防衛に万全を期すため、引き続きTPY2レーダーの早期配備に向けて努力をしてまいります。
○井上哲士君 地元紙は当初から、北朝鮮による米領グアム、ハワイへの弾道ミサイル攻撃を想定すると、近畿地区や周辺の上空を通過する可能性が高く、その中心に近い京都が配備先として最適と判断をしたと報道し、同様の報道が各紙も行われました。
専らアメリカの本土とグアムなどの領土の防衛能力の強化のために最適と判断をされたということではないんですか。
○国務大臣(小野寺五典君) 繰り返しになりますが、この配備のことに関しましては、我が国の防衛、そして米国に飛来する弾道ミサイルの探知・追尾能力の向上ということが目的であります。
○井上哲士君 元々、弾道ミサイル防衛システムというのは、アメリカを防御することによって反撃のおそれなく先制攻撃をできるようにしようということから始まったものでありますし、アメリカのミサイル防衛局のシリング長官も、この日本の二つ目のレーダー配備について、アメリカ本国の国土防衛のためということを五月九日のアメリカの上院軍事委員会で証言をしております。
一方、いきなり報道がされて、その後防衛省が説明に来て、そして十月の2プラス2で改めて確認をされ、そして九日には大臣が現地に行かれて速やかに造成工事に入れるようにしたいと、こういうふうに言われております。大変強引だと多くの住民の皆さんから声が上がっているわけですが、既に配備されております青森の車力と比べても非常に民家が接近をしております。
先ほど、様々な不安が上がっている、電波による健康被害や騒音、大気汚染などいろんな声が上がっていることも言いましたけれども、アメリカでは、Xバンドレーダーの配備に当たっては法律に基づいて環境アセスメントが実施をされておりますが、ここでは行われておりません。六月に私、質問主意書を出しましたけれども、アメリカの国内法に基づく環境アセスについては政府として答える立場にないという答弁でありました。私はそういう問題ではないと思うんですね。
アメリカの国内では造るときにアセスを行いながら、他国に設置するときはそういうことは行わないと、このことが問題だと防衛大臣はお考えではないでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 防衛省としては、米国が米国の国内法に基づいて実施した環境影響評価の結果についてコメントする立場にはありませんが、一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取決めがない限り接受国の法律は適用されず、我が国の環境影響評価法は我が国に駐留する米国軍隊には適用されません。
同法では、規模が大きく環境影響の程度が著しいものになるおそれがある事業として定められたものについて事業者が環境影響評価を行うことが定められており、今回配備されるようなTPY2レーダーの設置については、同法が対象とする事業の種類とはなっておりません。
いずれにしても、政府としては地元の様々な声にしっかり配慮しながらこの配備について進めていきたいと思っております。
○井上哲士君 アメリカは、国外でも五十年間租借をしているマーシャル諸島共和国のクエジェリン環礁にもこのレーダーを配備しておりますが、その際は、国外であっても環境アセスを行っているんですね。その報告書を見ますと、例えば、ウミガメとかサンゴなどの動植物なども調査をされているんです。
ですから、こういうものを調査をしていることをやっていながら、日本の丹後の住民の安全や人権、要望が軽んじられていいのかと、私はそういう問題だと思いますが、大臣、どうでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 繰り返しますが、防衛省としましては、米国が米国の国内法に基づいて実施した環境影響評価の方法あるいは結果についてコメントする立場にはありません。
○井上哲士君 それでは地元の皆さんは到底納得をしません。
この間、とにかく安全である、問題はないと繰り返し説明をされますけれども、例えば一番肝心なこのレーダーの出力、こういうことについても全く明らかにしないまま、とにかく大丈夫だと、こういうことを繰り返すだけなわけですね。
しかも、住民のもう一個の不安は、米軍関係者による犯罪の問題です。地元の京丹後市からも、地位協定の見直しの検討という要望も出されております。
日米地位協定では一定の改善は先日されたものの、軍属についても、通勤も含めて公務中の犯罪とされれば日本に第一次裁判権はありませんし、アメリカの基地の中に逃げ込めば日本の警察による身柄拘束も困難になるわけです。
外務大臣にお聞きしますけれども、こうした地元からの要請を受けて、地位協定の見直しということがアメリカ側に提起されているんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 日米地位協定につきましては、協定そのものに加えまして数多くの日米合意を含んだ大変大きな法体系になっています。
これまで政府としましては、協定そのものの改正は行っていないものの、協定の実施を実質的に改善する多くの日米合意は達成してきております。例えば先日も、米軍人等が起こした事件について米側での処分結果を被害者側にお知らせする新たな日米合意、発表させていただきました。
政府としましては、この目に見える改善を一つ一つ具体化するべく、こうした日米合意を着実に積み重ねていく、このことが重要であり、そして効果的であると考えております。
今後とも、こうした様々な、地元の方々の意見は伺いながら、事件、事故、騒音、環境などの問題を解決すべく最大限努力をしていきたいと考えています。
○井上哲士君 沖縄などでこれだけ問題になりながら、地位協定そのものの見直しは一度も行われていないわけですね。
今、一定の見直し、運用の見直しが先日あったと言われましたが、大臣の地元広島の中国新聞も、これで見直しと言えるのかと、こういう社説を掲げまして、これでは米軍の裁量次第で骨抜きになる、外務省筋は今回のような運用改善を一つ一つ重ねるしかないと言うけれども、本気度が問われようと、こういう社説を書いているわけですね。ですから、これでは地元の皆さんの不安は一切払拭をされないということなわけです。
にもかかわらず、今、地元首長が見切り発車的に容認をしたということを受けまして、地権者から土地借り上げが非常に強引に進められておりますが、地権者との交渉については防衛省として地元の自治体などに協力要請をされているということなんでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) TPY2レーダーの配備につきましては、これまでに京都府や京丹後市からいただいた質問に対し、その都度説明を行うとともに、地元住民の方々に御理解を得るべく、計十五回にも及ぶ住民説明会を実施してまいりました。
去る九月十九日には、京丹後市長が記者会見において、政府からの御要請を受け止め、必要な協力を行う旨発言され、その後、京都府知事が府議会においてTPY2レーダーの配備に協力する旨発言があったと承知をしております。また、私も訪問したときに、京都府知事、京丹後市長とお話をし、様々な住民の方の考え方、あるいは市、あるいは県からの考え方も承りました。
今後とも、誠心誠意を持って対応していきたいと思っております。
○井上哲士君 質問へのお答えではなかったんですが、アセスの問題、それから地位協定の見直しの問題、どちらも結局、地元の皆さんの不安については全くこたえる状況になっていないわけです。
にもかかわらず、今、地権者に対する借り上げ契約の強要が行われております。相当高い借り上げ料を大幅に引き上げて示して、判こを押していないのはあなただけだと、こういうような形での、迫っていることなど様々挙がっておりますが、住民に分断を持ち込んで、住民合意で進めるという政府自身の明言についても踏みにじるようなこういうやり方はやめるべきだということを強く申し上げまして、時間ですので、質問終わります。