○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今日は、修正部分について質問をいたします。
まず、森大臣、この法案の第四条で特定秘密指定の有効期限を三十年間としておりますが、二十年でも四十年でもなく、なぜ三十年にされたんでしょうか。
○国務大臣(森まさこ君) 有効期限は、まず五年以内にしておりまして、そして三十年のときに、原則として最長で三十年といたしました。
この三十年の理由でございますけれども、公文書管理法において、行政文書の保存期間が、当初の設定期間は原則として最長で三十年とするというふうにされていること、それから、諸外国においても行政文書の国立公文書館等への移管の期間の目安が三十年とされていることなどから、本法案では、特定秘密の指定期間が、五年ごとの有効期限の最長が三十年というふうにさせていただきました。
○井上哲士君 そこで、四党の修正案提案者にお聞きするんですが、この修正では指定の有効期限の上限を原則六十年とされました。報道を見ている限り、協議の中で維新の会やみんなの党から六十年という提案はされていないようなんですが、修正協議の中で一体誰が六十年ということを言われたのか、そしてなぜ五十年でも七十年でもなく六十年になったのか、それぞれお答えいただきたいと思います。
○衆議院議員(桜内文城君) お答えします。
この有効期間の延長の上限についてでありますけれども、私ども、元々最初の政府案におきまして問題視しておりましたのが、三十年を原則上限とするという文言であったんですけれども、そこから内閣の承認があれば無限に延長できるというような制度の立て付けになっておりましたので、それはさすがにいかぬだろうということで、何かしら上限を設けるべきだということを主張いたしました。
その際、特に六十年ということによほど意味があるわけではありませんけれども、三十年というのがまず原則とすれば、そこから毎年五年ごとに内閣の承認を得て延ばしていくとしても、普通に考えましてやはり倍が、倍の六十年というものが上限にふさわしいのではないかということで、そこは与党との話合いの中で今回六十年を、延長する場合であっても六十年を上限とするというふうな形になっていった次第でございます。
そして、その際、私どもの方は、単にその上限を設ける、政府案が無限に延長できるという立て付けだったものですから、上限が必要だということと併せて政府に修正案として申入れをいたしましたのが、三十年を超えて延長した場合に内閣の承認が得られなかった場合、あるいは有効期間がその後やってきてそれで指定が解除される場合、いずれもこれはやはりそのまま国立公文書館に移管されずに廃棄されるものがあってはいけないと、やはり検証に堪える、歴史的な意味でも検証に堪えるものとする必要があるということで、全て公文書館に移管するというふうな形の修正をお出しいたしまして、これは与野党で合意したところでございます。
○井上哲士君 つまり、維新の会が六十年を提案したという理解でいいんですか。
○衆議院議員(桜内文城君) 上限を設けろということがメーンの主張でありまして、その年限が五十年なのか六十年なのかというところは与野党の話合いの中で出てきた数字です。ちなみに、そのときに私の記憶では、与野党で話合いをする中で、アメリカの例を取れば七十五年が一応の上限になっているという例を聞きまして、それよりも短いものにしようというふうな修正協議の中身であったと記憶しております。
○井上哲士君 各党そういう認識でよろしいんでしょうか。今のでいいますと誰が提案したのかよく分からないのですが、いかがでしょうか。
○衆議院議員(大口善徳君) 今、桜内委員がおっしゃったように、アメリカの方は二十五年、それから五十年超、七十五年超と、こういう節目節目があります。それで、例えば、スパイの場合です、要するに人的な情報源の場合ですね、今三十歳としたならば三十年後は六十歳で御存命なわけですよね。さらに、六十年後であってもこれは御存命の場合があると、あるいはその家族があるということで、やはり人的な情報源というものは、これは例外は認めざるを得ないんですね。ですから、アメリカも七十五年超の場合も認めているんです。
そういうことで、三十年でまず区切ると。三十年を超えた場合は内閣の承認が必要であると。その場合は、そして六十年で更に絞ると。三十年、三十五年、ずっと五年ずつ内閣の承認を必要とする。六十年になりますと、これは七項目なんですが、これ、私が質問しまして、総理も答弁していただきましたけれども、三十年の段階でもこの七項目を基本とするという形でやらさせていただいています。
いずれにしましても、半永久的に延びるということはいかがなものかと、こういう御指摘があって、維新の会さんからそういうお話もありましたので、それを踏まえて、アメリカの制度も踏まえてやらせていただいたと。ちなみに、イギリスは百年超というような基準もございます。
以上です。
○井上哲士君 最初の答弁では、六十年に意味があるわけではないが倍が上限というふうに言われました。倍返しという言葉が今年はやっているようでありますが、国民にとっては三十年秘密になって、更に倍に延びるわけですから、全く逆の方向になるわけですね。
外務大臣にお聞きしますけれども、修正部分で、特定秘密の指定の六十年上限の例外事項として、今ありました七点が盛り込まれました。第二号の、「現に行われている外国の政府又は国際機関との交渉に不利益を及ぼすおそれのある情報」というのは、これはどういうものを想定されているんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) この法律上、特定秘密の指定に関しましては、外交分野において、まずこの別表に該当する事項であり、そしてその漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあり、真に必要な部分を個別具体的に検討し、そしてその上で今後策定される外部の有識者の意見を反映させた基準も踏まえて検討していく、このようになっております。
こうした手続を経て、この指定された特定秘密が六十年たち、そして今御指摘になった、「現に行われている外国の政府又は国際機関との交渉に不利益を及ぼすおそれのある情報」、この例外事項に当たるということを考えましたときに、例えば長期間にわたる領土交渉等に関する情報が御指摘の情報に該当し得るというふうには考えます。
○井上哲士君 例えば、私、昨日も安保条約の改定時の問題も質問いたしましたが、そうした安保にかかわる、制定時にかかわる様々な情報というものも、現に安保に基づいてアメリカとの様々な交渉がありますが、こういうものは該当するおそれはないんですか。
○国務大臣(岸田文雄君) 実際には、先ほど申し上げましたように、別表に該当し、そして漏えいが安全保障に著しい支障を与える真に必要な部分のみを検討する、そして今後策定される横断的な基準を踏まえて検討するということでありますので、個別にどのようなものが特定秘密にまず該当するかは、これ一概には今の段階では申し上げることは難しいとは思います。
領土交渉などが該当するのではないかと今申し上げましたが、領土交渉の場合、現実かなり長期間にわたることが想定されます。そういったことで、今も例示として申し上げさせていただきました。
日米安保にかかわる問題について該当するのかという御質問に対しましては、やはり個別的に検討してみないと一概には申し上げられないのではないかと考えます。
○井上哲士君 昨日もありましたけれども、現に安保にかかわって様々なものが秘密や非公開になってまいりまして、私はこの二号によって安保に関する情報が広く当てはまる可能性が高いと思うんですね。しかも、この例外事項の第七号には、「前各号に掲げる事項に関する情報に準ずるもので政令で定める重要な情報」というのが盛り込まれました。これでは、際限なく対象が拡大をして、多くは永久秘密になってしまうんじゃないかと、こういう懸念が当然出てくるわけであります。
そして、今申し上げましたように、安保条約と日米行政協定、そして日米地位協定にかかわる当時の議論の大半は公表されておりません。それから、その後、日米合同委員会でも合意をしたとされることは発表されますけれども、実際には合意内容で発表されたものが一部内容が隠されていたというケースもありますし、議事録についてはアメリカの合意が必要だといって公表されていないというのが実態ですね。
大変幅広いものが非公表、秘密になっておりますが、日米安保や行政協定、地位協定にかかわるこの不公表の文書というのは現在幾らあるんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 日米安保条約、また日米地位協定等に関連する文書の数、極めて膨大であります。不公表としてきている文書の数、これを網羅的にお答えするのは困難であります。政府としては、可能な範囲内でその内容を対外的に説明するよう努めてきております。
○井上哲士君 網羅的に困難と言わざるを得ないほど莫大な文書がずうっと不公表、秘密になっているわけですね。
旧安保条約の発効から既に六十一年間経過をしておりますけれども、こうした一連の文書というのはそれぞれいつ公表されるんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 日米安保条約あるいは日米地位協定に関連する文書ですが、今申し上げましたように、可能な範囲で内容を対外的に説明するよう努めてきております。
例えば、日米合同委員会合意の合意文書自体は原則として不公表とされてはおりますが、平成八年のSACO最終報告において日米合同委員会合意を一層公表することを追求するとされていること等も踏まえて、政府としては、米側と協議の上、この日米合同委員会の合意を公表し、ホームページ上に掲載をしてきております。今後ともこうした努力は継続していく考えであります。
○井上哲士君 旧安保条約発効から既に六十一年経過しておりますが、例えば、その当時のものなどはもう私は全て公表すべきだと思いますが、されるんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) ただいま御説明させていただきましたように、合同委員会合意の合意文書などは原則として不公表とされていますが、必要に応じ米側と協議をし、そして協議の上でこの公表に努めている、こうした手順を踏んでおります。今後ともこうした努力を続けていきたいと考えております。
○井上哲士君 結局、これまで、ほとんどの日米合同委員会の協議についてもアメリカから公表の合意を得ていないということで、幾ら要求をしても出てこなかったというのが実態ですね。そして、昨日私質問しましたように、アメリカの公文書館では公表された様々な文書、核密約だけじゃありません、いろんなものを幾ら示しても認めないという態度をずっと取ってきて、本当に大変多くの文書が非公開、そして秘密になってきたというのが実態なんですよ。
そこで、森大臣にお聞きいたしますが、こうした現在外務省の既に秘密文書になったり非公開になっている文書、つまり過去の文書もこの法律ができたら特定秘密の指定というのは可能になるんでしょうか。
○国務大臣(森まさこ君) 特定秘密はこの法案の別表に該当するもので、非公知性、そして特に秘匿する必要性があれば外務大臣が指定をすることができますが、現行の特定管理秘密、その中でというふうに考えております。
○井上哲士君 つまり、今から新しく秘密になったものではなくて、過去の文書についても指定が可能だということで確認してよろしいですね。
○国務大臣(森まさこ君) 過去の文書についても、今申し上げましたような要件を備えた場合には指定をすることができます。
○井上哲士君 つまり、遡及するんですよ。六十年前の文書が今だって公開されていないんです。それが今後六十年上限ということになりますと、百二十年間秘密になるんですよ。永久秘密に等しいじゃありませんか。そんなのでいいんですか。
修正案提案者、どなたか答えてください。
○衆議院議員(桜内文城君) お答えします。
修正協議の過程におきまして、今委員御指摘のような過去の文書の扱いについて特に議題に上がったわけではございません。ですので、私どもとしては、基本的に先ほど申しましたように原則三十年というのがまずありまして、そこからとにかく無限に延長が可能だということを押しとどめようということで上限を設けたという趣旨でございます。
○井上哲士君 全然上限になっていないですよ。過去の、既に六十年前からたくさんの文書が、安保でいいますと、それが、これを指定すれば更に三十年、そして例外を設けて六十年、それ以上もあり得ると。百二十年間それだけでもなるんですよ。とんでもない話だと思うんですね。
私、昨日の質疑で紹介をしました村田良平氏、彼は一九八七年から八九年まで外務次官を務めておりました。それから二十年後の二〇〇九年に自分の著書で核密約の存在を認めて、マスコミで明らかにして、そして実は翌年に逝去されました。沖縄返還時の核持込み密約を明らかにした若泉氏は、一九六九年に佐藤総理の命を受けてキッシンジャーと協議をして、秘密の合意の準備をしたということを二十五年後に自分の本で明らかにして、それは一九九四年ですよ、その二年後に亡くなられました。
私は、現役の責任ある地位でいろんなことを行ったことを命あるうちに明らかにして歴史の検証にしてもらおうと、そういう思いがこの人たちにあったんではないかと私は推測するんですね。そして、だからこそ、当時存命だったから事情も聞けましたし、周りの人も聞けたんですよ。それが三十年でも困難だけれども、六十年になったらどうなるのか。しかも、百二十年もあり得るんですね。
先ほど大口提案者から、そういう家族や関係者も含めて聞くことができると言われましたけれども、できないんじゃないですか。
○衆議院議員(大口善徳君) まず、私は、今例を挙げたのは人的情報源です。例えば、某国においての情報を、大量破壊兵器の情報あるいは国際テロの情報、そういうものを提供してくれる方がいらっしゃいます。その方が、今例えば二十歳だとした場合、三十年後だと五十歳ですよね。まだ御存命なわけです。それで、名前を明かした場合は、その方は国家反逆罪で処刑されるかもしれません。それから、家族もいますわね、お子さんだとか、そういう方にも累が及ぶ場合があるわけです。
だから、いろいろな場合がありますから、まず三十年で、これは七項目も三十年でも基本的には適用して、そしてそれを絞るわけですよ。三十年たったら五年ごとに内閣の承認が必要ですから、そのときは非常に限定した形でやる。六十年たてば更に絞っていくと。ただ、六十年たっても、例えばその方のお子さんに累が及ぶような、そういう国もありますわね。そういう場合は、そこでもやはり指定せざるを得ない場合があるわけですよ。そういうことですので、そういう全く例外がないということはないものですから、アメリカでも七十五年超、あるいはイギリスは百年ですか、そういうこともあるわけです。
先生、だからそこを否定されると、もう日本、某国から、どの国、国名かは言いませんけれども、某国からも情報が入ってこなくなる。大量破壊兵器のそういう情報が入ってこなくなる、国際テロの情報が入ってこなくなる。これは日本の国民の生命、財産、身体を著しく傷つけることになりますわね。ですから、的確な情報が必要だと。
しっかりとした情報が、正確な情報が入るならば、それは紛争を未然に防止することができるんです。今回、国家安全保障会議が発足しました。そこで、やっぱり正確な情報が入手されるということによって、この政策を、外交政策、防衛政策を過たないようにしていくと、こういう必要もあるわけでございます。
○井上哲士君 外交政策、防衛政策が誤らないように国民の検証が必要なんですよ。それができなくなるということを私は聞いたのに、全く違う答弁をされました。
まさに、事実上の永久秘密にして歴史の国民的検証をできなくするようなことは絶対許せないと申し上げまして、私の質問を終わります。