○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
まずは、昨日の特別委員会での秘密保護法案の強行採決の暴挙を、満身の怒りを込めて抗議をするものであります。この暴挙を行った国家安全保障に関する特別委員長中川雅治君問責決議案に対し、会派を代表して賛成討論を行います。
中川委員長、あなたへの問責に賛成する第一の理由は、与党と一体になって議会制民主主義を根底から破壊する強行採決の暴挙を行ったことであります。
昨日午後四時過ぎ、自民党議員の質疑中に、突然他の自民党議員が手を挙げて発言しましたが、その内容も委員長の発言も何も聞こえないまま騒然とする中、与党議員と委員長が採決をしたと言って委員会室から出ていきました。しかし、議事録に残っているのは、議場騒然、聴取不能という言葉だけ。なぜこれで採決などと言えるのでしょうか。
私は、他の野党の国対委員長とともに、議長に、採決は認められない、特別委員会に差し戻せと強く申し入れました。にもかかわらず、与党が数を頼んでこの本会議に上程をしたことは暴挙に暴挙を重ねるものであり、厳しく抗議するものであります。
なぜこのような前代未聞の乱暴なやり方が行われたのか。会期内で秘密保護法案を成立させるためにはどんなことでもやれという政府と与党の指示に対し、本来、公正中立であるべき中川委員長が唯々諾々と従った結果です。テレビでこの姿を見た多くの国民から怒りの声が上がっています。これが言論の府か。与党の数のおごりはひど過ぎる。憲政史上まれに見る暴挙を行い、国権の最高機関への信頼を失墜させたあなたの責任は、まさに万死に当たるものであります。
中川委員長、あなたへの問責決議案に賛成する第二の理由は、徹底審議を求める国民の声を踏みにじり、議員の質問権を乱暴に奪ったことであります。
秘密保護法案は、議論をすればするほど国民から疑問と反対の声が上がっています。その声は、日本弁護士会連合会、映画関係者、ノーベル賞受賞者を含む多くの学者、研究者、マスコミ関係者、宗教者など、空前の広がりを見せています。今日の夜の日比谷の集会には一万五千人が参加をし、今もこの深夜も多くの市民が廃案を掲げて国会を包囲しています。そして、賛成の人を含めて八割を超える国民が慎重審議を求めています。これにこたえて審議を尽くすことこそが国会の責務であり、特別委員長の職責です。にもかかわらず、官邸と与党の意向に付き従い質疑を打ち切ったことは、断じて許されません。
法案の審議は尽くされていません。大体、法案審議の前提となる資料すら隠され、提出されておりません。法案作成過程での各省庁から提出された意見について、衆院での審議で提出を求め、森大臣が提出を約束したにもかかわらず、いまだに提出をされておりません。
さらに、質疑の中で次々と資料や統一見解が求められ、未解決のままです。理事会で配付された協議すべき懸案事項には、情報保全についての日米協議における協議内容の資料提出、防衛庁の身上明細書、誓約書などの資料提出、本法案及び国会答弁において検討事項となったものの内容、件数など、多くの項目が並んでいます。採決までにこの全てに回答するのが当然であり、政府にそれを強く求め、徹底審議をするのが委員長の仕事です。
ところが、中川委員長は、これら懸案事項の処理を全く行わないばかりか、昨日の質疑中にも、資料提出の要求があるたびに、後刻理事会で協議すると繰り返しました。にもかかわらず強行採決を行って、理事会すらできなくしてしまいました。理事会協議などやる気もないのに、協議すると繰り返して委員を欺いた、その責任は余りにも重いものであります。
大体、衆議院と比べても、質疑時間は半分にすぎません。地方公聴会は、前日の夜に与党が開催の決定を強行し、まともに国民の声を聴く準備も困難なものでした。改めての地方公聴会そして中央公聴会の開催が求められておりました。
衆議院では、四党修正案について僅か二時間しか審議がされておりません。参議院ではどうか。昨日、特定秘密の指定の是非などを検証、監督する新機構について四党実務者の新たな合意がなされ、強行採決の直前に官房長官からその規模などについて答弁がありました。この内容については、中身も曖昧な上、一分たりとも委員会では審議をされておりません。
このように、質疑はまだ入口に立ったばかりでした。およそ質疑を打ち切る状況などどこにもありません。にもかかわらず、中川委員長が政府・与党と一体となって行った暴挙は、再考の府としての参議院の役割を踏みにじるものであり、参議院の自殺行為と言わざるを得ません。
中川委員長、あなたへの問責決議に賛成する第三の理由は、与野党協議を尽くして民主的運営を行うべき委員長の職務を全く投げ捨てて、これまでのルールを踏みにじり、常軌を逸した異常な委員会運営に終始したことであります。
衆議院で強行採決が行われ、翌日の参議院本会議で与野党合意のないままに質疑が強行されました。その日に、今後の委員会運営について協議した最初の理事懇が行われましたが、出席大臣をどうするか協議をしている最中に打ち切り、職権で翌日の委員会立てと審議時間を決めるという異常な事態で始まりました。
その異常さは更にエスカレートしました。中川委員長は、理事会で協議の途中に、休憩も宣言せずに、与党理事すら置き去りにしたままで一人委員会室に入り、質問者もいないのに一方的に開会を宣言するという異常な行動を取りました。その結果、理事会と委員会が同時に開催中という前代未聞の事態をつくりました。その後の理事会協議では、筆頭間協議もなしに与党理事が一方的に提案し、野党の発言を一切認めないまま職権で決定するという、文字どおり問答無用の理事会運営が行われてきました。
それでも野党は、委員長の乱暴な運営に抗議しつつ、審議拒否はせず、国民の負託にこたえ、徹底審議に努めてきました。その妨害をしてきたのもほかならぬ中川委員長です。
委員会質疑で、野党は、権限も持たず答弁が二転三転する森大臣では責任ある審議ができないために、菅官房長官の出席を求めました。ところが、与党は、野党の質問通告を政府と共に見て、官房長官の答弁が必要かどうかを選別するという不当なやり方を行いました。
大臣は、国会に求められれば出席するのは憲法上の義務です。与党の行為は、議員の質問の事前検閲であり、質問権の重大な侵害です。
ところが、中川委員長は、この不当なやり方を認め、野党が要求大臣の出席なしには審議ができないと抗議しても、時計を止めることなく議事を進め、二重に議員の質問権を奪いました。許し難い暴挙であります。
三点にわたって中川委員長の問責決議案に賛成する理由を申し述べました。
最後に、与党の皆さんに言いたい。与野党合意の上で委員会運営のために努力していた二人の委員長の解任を強行する一方、全く不当な委員会運営を続けてきた中川委員長の問責に反対するならば、議会人として、国民の代表としての、あなた方の資格すら問われております。
議員各位の賛成を心から求めまして、賛成討論を終わります。(拍手)
本会議
2013年12月 6日(金)