○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。 昨年十二月に特定秘密保護法が強行されました。審議の中で、日米安保条約に関わって、国民の安全と平和にとって重大な問題が大量に秘密にされてきた、そのことこそが問題だと私ども指摘をいたしました。特に、核兵器の持込みに関する密約文書が外務省内に現に存在していたにもかかわらず、歴代自民党政権が存在しないと国会で虚偽答弁を続けてきたと、この問題もただしてまいりました。 この点について総理は、今年一月三十一日の衆議院の予算委員会の答弁で、ずっと国民に示さずに来たのは間違いだった、政府としてどう考えているかお示ししたいと答弁をして、政府見解を公表するということを約束をされました。当然、なぜこういう隠蔽が起きたのか、その原因や責任が明確にされるものと思っておったわけでありますが、一か月後の二月二十八日の答弁で示された見解は、長期間にわたり国民に明らかにされてこなかったことは遺憾だというものでありました。何で一か月も検討して全く一歩も踏み込めないような、こういう見解になったんでしょうか。
○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) いわゆる密約問題につきましては、外務省において調査を行い、平成二十二年三月にその結果を公表しております。この調査結果の発表に際して、当時の岡田外務大臣は、当時の状況については簡単に判断できるものではなく、いわゆる核密約問題に関する有識者委員会報告書においても、外交には、ある期間、ある程度の秘密性は付き物であるとした上で、外交に対する評価は、当時の国際環境や日本国民全体の利益、国益に照らして判断すべきものである旨述べられている、このように発言されたと承知をしております。 このように、今の政権におきましても同様の認識は持っていますが、しかし一方で、この問題がこれほど長期間にわたって国民に対し明らかにされてこなかったことは遺憾であると考え、政府としては、今後とも、国民とともに歩む外交を実践し、国民の負託に応える外交の実現に努力していきたいと考えており、その考え方を二月二十八日、この衆議院の予算委員会におきまして、安倍総理そして私からも政府の見解として答弁させていただいた次第であります。 今の政府としては、このように認識しており、この答弁につきましては適切であったと考えております。
○井上哲士君 遺憾だという答弁は、実はもう去年の十一月の時点でNSC特で岸田外務大臣が私の質問にも答えているわけですよ。そして、この一月三十一日の安倍総理の答弁の後の直後の記者会見で菅官房長官が、首相が公の場で発言されたので対応を検討したいと、ここまで言われたわけですね。 ですから、当然一歩踏み込んだ見解が出てくるものとマスコミも報道いたしましたし、国民もそう思ったわけですね。それが全く同じ遺憾ということを繰り返しただけと。なぜ今度こういうことになったのかということをお聞きしているんですね。更に踏み込むことに何か外務省の中で抵抗でもあったんですか、お答えください。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘の問題につきましては、従来から遺憾であると申し上げてきました。そして、総理としましては、一月三十一日、質問を受けていま一度確認をされるということになりましたが、確認した上で、やはり同様にこの問題に関して遺憾であるということを確認し、そして二月二十八日、同様の答弁をさせていただいたものと承知をしております。
○井上哲士君 要するに、何も踏み込んでいないんですよ。遺憾だけだったら原因や責任に何も踏み込まなくて、これ、問題の解消はできないわけですね。そこが今問われているわけで、全く反省というものが私には感じられません。 もう一回、どういう仕組みであの核密約が長期にわたり国民に隠蔽をされてきたのかと。改めて外務省の秘密保全についてお聞きしたいと思うんですが、お手元に資料も配付しております。外務省の秘密保全に関する規則や国会答弁によりますと、外務省の文書の秘密指定は、機密、極秘、秘と区分があって、この機密と極秘については局長等の秘密管理者が指定をすると、それから秘については課長等の秘密管理責任者が指定をするということでありますが、秘密保護法の成立でこの規則は変わったんでしょうか。
○政府参考人(外務省官房参事官 河野章君) お答え申し上げます。 外務省の秘密保全に関する規則についてのお問合せでございますが、特定秘密保護法が施行されておりません現時点におきましては、ここの資料にございます、秘密区分の指定権者並びに秘密文書等の取扱いを厳に職務上知る必要のある者に限定をするというこの秘密保全に関する規則に関しまして変更はございません。
○井上哲士君 これ、法律ができても施行されても、基本的にこの内部規則の骨格は変わらないというのが去年の岸田外務大臣の答弁でありました。 今、次のことまで答弁をされましたが、この内部規則では、秘密文書の取扱いは厳に職務上知る必要のある者に限定すると、こうなっておりまして、誰がこの職務上知る必要のある者なのかという判断は、機密や極秘の場合は局長等の秘密管理者が行う、それは変わらないという今答弁もございました。 つまり、この外務省の掲げる機密、極秘の指定については、外務大臣は機密保全の規則は承認するけれども個々の秘密指定には関わらない、そして、外務大臣がこの文書を職務上知る必要がある者かどうかというのはこれは局長等が判断をするんだと、この仕組みは何ら変わりがないわけですね。 更に聞きますけれども、政府横断的に設けられている特別管理秘密がありますが、これは極秘の一部に当たるというのが答弁でありましたが、現在何件指定されているでしょうか。
○政府参考人(河野章君) 特別管理秘密の指定件数についてのお尋ねでございますが、昨年十一月の参議院の国家安全保障委員会におきまして、平成二十四年十二月三十一日時点で外務省が保有する特別管理秘密が一万八千五百四件である旨お答えしております。その後の数字を申し上げますと、平成二十五年六月三十日の時点で一万九千九百五十七件となっております。
○井上哲士君 これも答弁で、特定秘密というのは基本的にこの特別管理秘密の中から指定をするというふうに森担当大臣も答弁をされておりました。ですから、特定秘密の指定が行われましても、大半の機密、極秘、秘など膨大な外務省の秘密文書の取扱いというのは基本的に変わらないということが今確認をできました。 この核密約文書については、時の総理や外務大臣を外務官僚が選別して、この人には伝える、この人には伝えないということをやっていたということが複数の元外務次官の証言で明らかになったわけですが、それを可能にしたのが今のこの仕組みなわけですね。つまり、昨年の答弁では、この核密約文書というのは極秘指定になっていたということでありました。そうしますと、局長がこれは極秘だという指定をして、この文書はそのときの外務大臣や総理は職務上知る必要がある者ではないと判断をすれば、伝える必要がなかったという仕組みだったわけですね。ですから、安倍総理自身も、総理のときには自分は聞いていないということも明らかに答弁をされましたね。この仕組みは全然変わっていないわけですよ。 ところが、総理は、昨年の質疑の際の私への答弁でも、それから採決の翌日の産経新聞でのインタビューでも、秘密保護法によって秘密の取扱いの透明性はむしろ増すと述べました。そして、核密約がいつまでも密約であり続けたことについて、新しい法律で同じ問題は起こり得なくなると述べているんですね。しかし、先ほど言いましたように、あの長い間核密約を隠蔽してきた、この仕組みは何も変わらないんです、新しい法律で。にもかかわらず、なぜ秘密保護法で同じ問題が起こり得なくなるなどと総理は明言できるのか。いかがでしょうか。
○政府参考人(河野章君) 現時点で外務省の秘密保全に関する規則について変更はないということは申し上げたとおりでございますが、現在、内閣官房におきまして特定秘密保護法の施行に向けた準備というのが進められております。また、特定秘密以外の情報管理の在り方についても検討中であるというふうに承知しております。外務省の内規の秘密保全に関する規則の今後の在り方に関しましても、これらの作業を受けまして外務省として適切に検討をする予定にしております。
○井上哲士君 外務大臣、基本的にこの内部規則の骨格は変わらないと去年答弁されておりますが、今のと変わるということですか。
○国務大臣(岸田文雄君) 今の答弁の中にもありましたが、内閣官房におきまして政府統一のルールを今作るべく準備を進めております。そのルールに従って、外務省としてもこの秘密の管理について体制を考えていくことになると存じます。そうした明確なルールが作られることによって、この情報管理につきまして透明性が高まっていくものだと考えております。
○井上哲士君 つまり、こういう極秘などを局長が判断し、管理をして、大臣が知らないということに対して、例えば第三者の目を入れるとか、そういうことも含めて検討されているということですか。
○政府参考人(河野章君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、現在、内閣官房で進められておりますいろんな作業の結果が出ましたところで外務省の規則の今後の在り方について検討してまいりたいということでございまして、具体的にどういった内容にするかということについて今の時点でお答えすることはちょっと時期尚早かと思います。
○井上哲士君 政府見解を表明すると言いながら結局遺憾としか言わなかったということにありますように、結局、核の問題についてのまともな責任であるとか、そして原因究明ということがされないままになっているわけでありまして、その上、特定秘密保護法で何が秘密かも分からないと、さらにはいろんな重罰でマスコミや一般市民も脅すということになれば、一層私は隠蔽がはびこることになると、こう考えざるを得ないわけです。しかし、総理が、秘密の取扱いの透明性はむしろ増すと、今後同じような問題は起こり得なくなると述べたこと自身は重大でありますから、責任取ってもらう必要があると思うんですね。 そこで、安保や日米地位協定の制定に関わる膨大な文書も大半公開をされておりませんが、その後の日米合同委員会での合意についても合意文書が非公開になっております。これは国民生活の大変重要な中身も含んでいるわけでありますから、国民に直ちにこうしたものは明らかにされるべきだと思いますが、その点、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 日米安全保障に関する文書につきましては、政府としましては、可能な範囲でその内容を対外的に説明するよう努力を続けてきております。 例えば日米合同委員会合意の文書、この合意文書自体は原則として不公表とされていますが、平成八年のSACO最終報告におきまして日米合同委員会合意を一層公表することを追求するとされていること等も踏まえて、政府としては、米側と協議の上、日米合同委員会合意を公表し、外務省のウエブサイト上に掲載してきております。 政府としましては、今後とも、こうした対外説明のための努力は継続していきたいと考えております。
○井上哲士君 日米合同委員会の合意についてはウエブサイトで公表するが、合意文書そのものは公表しないと、何でそうなるのかということなんですね。 お手元の資料の二枚目を見ていただきたいんですが、米兵の犯罪者への刑事裁判の特権を認めた日米密約というのも、これも問題になってまいりました。それと一体の日米合同委員会刑事裁判管轄権分科委員会において合意された事項というのがございます。これは一九五三年から五四年にかけて裁判権密約と同時期に合意をされ、その後、追加されたものであります。この英文は既にアメリカでも解禁されておりますし、法務省の秘密扱いの資料にも掲載をされております。ところが、外務省のホームページには、この日米合同委員会合意の要旨として、刑事裁判管轄権に関する事項しか公表をされておりません。 この二つには重大な違いがあるんですね。例えば二つ目、「合衆国軍隊の構成員の逮捕等」というのがありますが、米兵が罪を犯した際の身柄をどうするかという場合です。公務の執行中に行われたものであるか否かが疑問であるときは米国側に引き渡すというのが日米合同委員会合意、刑事裁判管轄権に関する事項では行われた疑いがあるときにはアメリカ側に渡すと、こうなっているわけですね。 ですから、つまり曖昧なときはアメリカ側に渡すというのが国民には隠されている日米合同委員会合意の中身になっているんですよ。つまり、アメリカ側に有利な中身が正式文書なのにそれは隠されていて、違うものが外務省のウエブサイトに明らかにされていると、こういうことになっているんですね。これは、実際に身柄拘束の運用はこの合意と同じようにやられておりまして、被害者にとっては重大な権利侵害にもなるわけですね。ですから、合意文書を隠すのは、こういうアメリカ側が有利な内容を国民から隠したいからではないかと、こういう疑いもあるわけですね。 国民の権利や安全に重大な影響をもたらすものですから、合意文書そのものを明らかにするべきではありませんか。
○国務大臣(岸田文雄君) この御指摘の文書につきまして、要旨の際には、この内容、当時の判断で、要旨という形でどう整理するか、どうまとめるか工夫した結果としてお手元のこの要旨のような文書が出てきたものと承知しておりますが、いずれにしましても、御指摘のこの刑事裁判管轄権に関する合意事項につきましては、米側と協議した結果、既に公表について合意し、現在では全文を公表しております。全文を明らかにしておりますので、実態は明らかになっていると承知をしております。
○井上哲士君 いや、外務省のウエブサイトに出ているのはこの刑事裁判管轄権に関する事項の方であって、全文は出ていないと思いますけれども、違いますか。
○国務大臣(岸田文雄君) 今確認しましたが、現在、少なくとも現在ではこの全文が外務省のホームページに掲載されているということでありました。
○井上哲士君 改めて確認をいたしますが、これは先ほど言いましたように、アメリカの公文書館で英文で明らかになり、そして法務省が秘密扱いをしていた資料の中に掲載されているということを繰り返し研究者が指摘もし、国会でも明らかにしてきたということであるものであって、つまり、全文が明らかになって初めてその要旨や中身が正確なものかと国民が分かるわけですよ。そこに重大な差があることもあると。そういうことからいっても、私は全てのものについてきちっと合意文書そのものを明らかにするのが必要かと思いますけれども、その点いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 先ほども御紹介させていただきましたが、平成八年のSACO最終合意において、日米合同委員会合意を一層公表することを追求する、こうしたことが明記されております。是非今後とも、米側との協議を進め、できる限りこの公表に努めていきたいと考えております。
○井上哲士君 現にこういう差異がこの文書にはあって、これは様々な研究者の努力もあって違いが明らかになったわけでありますが、ほかにもたくさんこういうことがあるということが予想されるわけでありますから、きちっと国民の前にこうした合意文書そのものを公開をすると、そのことを改めて強く求めまして、質問を終わります。