国会質問議事録

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外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  今日は、参考人の皆さん、ありがとうございます。  まず、白石参考人にお伺いいたします。  最初のお話で、戦後の世界を、自由と民主主義、市場経済、アメリカの平和、ドル本位制と、この四つを言われて、このアメリカの平和が守れなくなってきているというお話がありました。そういう中で今の日本がどうあるべきかということが問われるんだと思うんですが、G8などもなかなか機能しなくなり、G20になり、さらにはもっと全加盟国なんかが参加をするような大きなやっぱり国際的な流れの中にあって、アメリカだけでは守れなくなっている中で、日本がそれを補完をするというような方向でいいんだろうかという根本的な思いなんですが、そういう大きな今の世界の流れの中で、日本が弱くなったアメリカを補完をするようなことではなくて、もっと違う形での国際的な安定に貢献をする方向があるんではないかと思うんですが、そこのお考えはいかがでしょうか。    〔委員長退席、理事佐藤正久君着席〕

○参考人(政策研究大学院大学学長 白石隆君) これについては、私は、ですから二つの基本的な戦略があるんではないかというふうに考えております。  一つは、もうこれは既に安全保障戦略に定義されていることでございますが、日米同盟をあくまでもちろん基軸としながらですが、同時に安全保障協力をネットワーク的に展開していくと。そこで、日本の同盟国、これはアメリカしかございませんけれども、パートナー国、戦略的なパートナーシップを維持している国々、例えば豪州であり、あるいはインドネシアであり、シンガポールであり、フィリピンであり、それからインドであると、そういうところとの協力を強化していくというのが重要ではないかと。    〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕  これは決してアメリカを助けるということだけではございません。むしろ、私が非常に重視しておりますのは、力のバランスが急速に変わったときには国際秩序というのはともすれば非常に不安定になって、未来に対する予測可能性が下がってまいります。これを少しでも上げてやるということが安全のためだけではなくて経済活動のためにも極めて重要であって、ですから、私は国際秩序の維持、深化と申しました。深化、ですから、決してパワーバランスが変わっていくことに抗して現在の秩序を維持するべきだということではございません。むしろパワーバランスが変化するに応じて二十一世紀にふさわしい秩序をつくっていく、それが深化させるということで、これのためには、一つはやはり力のバランスが大きくは変化しないように、徐々に変化するのはこれ一向に構いませんけれども、急速に変化しないようにしなきゃいけない、これ第一点です。もう一つ、もっとポジティブな問題は、そのときにどうやってマルチで、つまり非常に平たく言いますと、みんなでルールを作っていくかというのが、これがもう一つ重要なことでございます。  ですから、あくまで日本の安全保障戦略というのは、力のバランスの維持とそれを踏まえた上でのルール作りと、この二つが基本的な考え方であるべきだと。これが私は国際協調主義に基づく積極的平和主義ということの意味ではないかというふうに受け止めておるところでございます。

○井上哲士君 ありがとうございました。  それに関連して神保参考人にお聞きしますが、三月二十八日の読売の「論点」に書かれておられまして、安全保障の三つの層の重ね合わせが重要だとした上で、第三の層で地域安保のルール策定と制度化ということを述べられております。  その中で、少しさっきも出ましたけれども、南シナ海における中国とASEAN諸国のいろんな今問題があるわけですけれども、この「論点」の中では、今、行動規範に法的拘束力を持たせようという協議が行われていることも非常に強調されているわけですが、ここの今の状況や、そして、広域の海洋秩序を安定化させるという上で日本が果たしていく役割などはどうお考えでしょうか。

○参考人(慶應義塾大学総合政策学部 准教授 神保謙君) ありがとうございます。  この海洋秩序の中でルール策定の果たす役割というのは大変重要だと考えております。なぜルールが必要なのかというのは、このパワーの世界で考えると、例えばイラク戦争のときの国連安保理におけるアメリカとフランスのパワーの差というのは歴然としていたわけなんですけれども、ところが、安保理常任理事国の中の一席というこの力というのは、いわゆる制度の中のパワーというのは一対一で同じなんですね。つまり、幾らこのパワーが変化しようとしても実は制度というのは大変大きな力を持つということに、秩序をつくっていく中では大変重視しなければいけない考え方だというふうに考えております。  委員御質問の南シナ海の行動規範の状況ですけれども、今現在のところ、二〇一二年の段階まで中国がASEANとの協議入りをすること自体を引き延ばしていたんですけれども、二〇一三年に入ってから協議入りすること自体には賛成をして、現在、どのような定義を、つまり海域の定義をするのか、具体的にそのルールの内容をどうするのかということに関して事務レベルでの協議が続いているというふうに理解してございます。  実際にこの行動規範ができるのか、そしてできるとしたらいつ頃なのかというのは実は諸説ございまして、最も楽観的な見方は二〇一五年、ASEANが三つの共同体という中での安全保障共同体を高らかに宣言する予定の年なんですけれども、ここに合わせて南シナ海のルール作りを同時にやっていきたいという強い意向がコーディネーターであるタイなどは持っているようですけれども、中国としましては、現在フィリピンとの間で海洋仲裁裁判所の、フィリピンが一方的にこれは訴えている議論なんですけれども、この結論が出るのがやはり二〇一五年ぐらいになるということで、大変慎重な形で議論が続いているということだと思います。  中国としては、ASEANとの能力ギャップがどんどん開いていきますから、今軽々にそのルールを作ってしまうよりは、引き延ばして、より中国とASEANとの関係が圧倒的に変化したときに作ったルールの方が有利なのではないかという議論も一部で見られるようでありまして、中国国内の中では、そのルールの位置付けについてまだまとまっていないというのが実態ではないかというふうに考えております。

○井上哲士君 様々な、何というか問題がありながらも、やっぱり、しかし協議によって解決をしていくということは非常に大事なことだと思っておりますし、北東アジアにおいても大いに生かされるべきことだなと思っております。  次に、柳澤参考人にお聞きいたします。  先ほど来、集団的自衛権行使についての質問が出ているんですが、一つは、先ほどもありましたけれども、いわゆる限定行使の話なんですが、どのように限定をするかということについて先ほど少しお話がありました。それから、限定をすればそれが歯止めになるという議論もあるわけですが、一方で、例えば石破幹事長、自民党の石破幹事長などは、情勢によって脅威がどんどん大きくなれば最小限の範囲も変わっていくというような発言もされているわけで、この限定容認論というのが果たして歯止めになり得るのかというのが一点。  それから、集団的自衛権行使容認で抑止力が高まるという議論も行われるわけでありますけれども、我々は、基本的安保の考え方は違うわけですが、言わば集団的自衛権行使がなくても日米安保条約が抑止力だという議論がされてきたわけで、そことの関係でどうこれを考えるのかなというのがあるわけですけれども、こういう議論についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○参考人(元内閣官房副長官補 NPO法人国際地政学研究所」理事長 柳澤協二君) 歯止めというのは、いろんなこう何というか認識の仕方はあるんだろうと思うんですけれども、少なくとも従来の政府見解というのは憲法解釈によって憲法に内在する歯止めとして認識されてきたわけですから、そこを、そこを取っ払った上で政府の政策として、あるいは法律をお作りになるのかもしれませんし、少なくとも一政権の閣議決定ということが歯止めという意味になるかといったら、それは私は恐らくならないんだろうと。  というのは、立憲主義の観点からしても、そういうところは政府のフリーハンドに任せないというのが本来の立憲主義の意味でありますから、そこは、ですから、歯止めになるかどうかということで言えば、もう砂川判決との関係でいったって、日米安保条約を改定して、こういう国会承認を取って、それがどうかというところで議論しないと、なかなか歯止めというレベルのことにはならない、一番確実なのは、憲法そのものに書き込んだことが最大の歯止めになるということだろうとは思いますけれども。  それから、抑止力という意味でいいますと、私はやっぱり、さっき神保さんも言っておられましたけれども、冷戦時代と違って、小さな紛争、武力衝突もやがて核の打ち合いになるよというエスカレーションラダーがお互いに認識されているような意味での抑止というのは、今アメリカと中国の間では恐らく成り立っていない、機能していないんだろうと思うんですね。あるとすると、小さな紛争がエスカレーションの恐怖によって防がれるということがなくなるという意味では、衝突の危険は高まる。  だから、そこはむしろ危機管理の問題として扱っていかなければいけないので、そこで抑止力というのは、ですから、あえて抑止力という言葉を使うとすれば、さっきから香田参考人もおっしゃっているように、容易には相手の目的を達成させないような、そういう拒否的な力を持つということがあえて言えば抑止力になるんだろうということなんですけど。  事が日本防衛、尖閣の防衛であれば日本防衛の話ですから、これは、その文脈で集団的自衛権が出てくるというのが、そこが私はまだよく議論の全貌を承知しておりませんけれども、そこがどうもよく理解できないところでもございます。

○井上哲士君 もう一回白石参考人にお聞きしますが、去年の十月に技研の防衛技術シンポジウムに出席もされてお話をされているんですが、例のImPACT、革新的研究開発推進プログラムに関連して、武器輸出三原則の見直しで国産装備のマーケット拡大を見込めると、そういう中で、司令塔となる総合科学技術会議には防衛大臣も入れてほしいというような趣旨の発言もされておりますが、このImPACTなどがそういう日本の防衛技術、革新的防衛技術などにどういう位置付けになっていくのか、それから、この防衛大臣を入れるべきということの趣旨はどういうことなんでしょうか。

○参考人(白石隆君) ありがとうございます。  ImPACTは私が期待したほどには踏み込めていないというのが正直なところでございます。  ただ、安全保障戦略の中に、やはりデュアルユースの技術開発の重要性ということが示されておりますけれども、これは、これから二十年というくらいのスパンで日本の防衛力の基盤を成す産業力、それから技術力ということを考えますと極めて重要でございまして、ですから、これはひょっとして軍事に転用されるかもしれないから、そういうところには国として投資しないという、これはないだろうと。私は、デュアルユースについても、これは民生、防衛両方に重要ですので、そこについて国としてやはり力を入れていくべきだと、それが私が申し上げたかったことでございます。

○井上哲士君 最後、香田参考人、済みません。  南西島嶼防衛の関係で、航空優勢、海上優勢がなくて、言わば上陸だけでどうかというようなさっきお話もあったと思うんですが、水陸両用車両の導入ということが言われていますけれども、南西諸島における島嶼防衛というふうに言われていますが、あの地域はリーフもあって、余りそもそも使えないんじゃないかという議論もある中で、結局、軍事に軍事というようなことでエスカレーションするだけにならないかというおそれがあるんですけれども、その点いかがでしょうか。

○参考人(元自衛艦隊司令官 香田洋二君) まず、最大の要訣は取られないということなんですね。そのための能力構築をどうするかということなんですが、もう少し時間を戻しますと、そういう上陸作戦能力というのは、実はつい十年前まではタブーだったんですね。なぜかといいますと、海外派遣に、派兵につながるということで、戦略的輸送能力、大規模な、あるいは水陸両用作戦能力というのについてはタブーだったのが、環境の変化で、島嶼防衛ということ、恐らく、に限ってということ、条件が付いていると思いますけれども、誰も言いませんけれども、これは国民が容認するところだろうと。  その中で、実は今、自衛隊というのは非常にまだ初歩的な段階なんですね。能力構築なんですよ。その中で、特定の装備が、ある場合には使えないけどある場合には使えそうだ、これは使えないから不要だという論理ではなくて、非常にプリミティブな能力、初歩的な能力をこの先しっかり、取られないという意味で機能させる一つのステップとして、いろんな装備をしっかりと導入していくという意味で価値があるというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。

 

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