○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。 南インド洋の漁業協定、船舶のバラスト水の国際条約、いずれも必要なものであり、賛成であります。 漁業協定に関連して聞きます。 午前中の質疑にもありましたが、初ガツオの季節でありますけれども、非常にカツオの不漁が重大な問題になっております。特に深刻な高知県などは、県の振興課によりますと、県内主要港の四月までの水揚げ量が十九トンで、例年の十四分の一というふうに言われております。 まず、現状と原因を水産庁はどのように把握をされているでしょうか。
○政府参考人(水産庁審議官 遠藤久君) お答えいたします。 都道府県等からの情報によれば、やはり委員御指摘のとおり、本年、高知県、和歌山県を始めとする我が国沿岸での引き縄釣り等によるカツオの漁獲状況が極めて低迷しているということでございます。 本年のこのような現象に関しまして言いますと、その原因としては、独立行政法人水産総合研究センター国際水産資源研究所、ここは、日本南部沖合域を十九度以下の冷水が広く覆っていること、これがカツオの北上を妨げているという可能性が高いというふうにしております。 最近、千葉県の方では量が戻っているような報道もございますけれども、農林水産省としましては、引き続き、海水温の状況、それからカツオの漁獲状況を注視してまいりたいと思っております。
○井上哲士君 今年のこの極端な不漁は水温の問題だというお話でありましたが、同時に、専門家は遠洋での漁獲量増加の影響に注目をしておりますし、中長期的にはこの影響ということをしっかり見ていかなくてはいけないと思っております。 赤道付近で漁獲量が増えて個体数が減ったら、餌を取るため日本近海まで北上するカツオも減ると、こういう警鐘も鳴らされているわけでありますが、こういう赤道付近の漁獲量の急増などの中長期的な影響をどう認識をして、どういうような対応をしてこられたんでしょうか。
○政府参考人(遠藤久君) お答え申し上げます。 午前中の議論でも簡単に御説明申し上げましたけれども、中西部太平洋におきますカツオの漁獲量、これは、一九八〇年くらいには約五十万トンくらいだったんですが、一九九〇年には八十四万トン、二〇〇〇年には百十四万トン、最新の情報で、二〇一二年には百六十五万トンと急増しております。このほとんどが熱帯水域の大型の巻き網によるものということと認識しております。一方で、中西部太平洋まぐろ類委員会、これWCPFCというんですけれども、ここの科学委員会は、中西部太平洋のカツオ資源、これは、状態はまだ良好であって漁獲状況も適正な水準にあるというふうに評価しております。 しかしながら、近年、委員御指摘のとおり、我が国の沿岸域でのカツオの漁獲量、これは減少傾向にありまして、前回資源評価が行われました二〇一一年には、我が国の方から主張をしまして、資源は良好であるけれども、赤道海域における高い漁獲が資源の分布水域を縮小させて、日本等の高緯度水域への回遊が減少している懸念が生じているというふうなところとされております。 これを受けまして、昨年のWCPFCの年次会合、ここにおきまして我が国から、カツオ・マグロ資源の管理強化、この必要性を強く主張しまして、大型巻き網漁船につきまして、小型の魚を多く漁獲する巻き網の集魚装置を用いた操業の制限強化、それから先進国の巻き網漁船の隻数凍結、それから大型巻き網漁船の過剰漁獲能力を削減する仕組みを先進国が本年の年次会合までに作成することということが決定されました。 農林水産省としましては、WCPFCにおいて今後ともカツオ・マグロ資源について適切な保存管理措置が決定されるよう、引き続き努力してまいりたいと思います。
○井上哲士君 今回、南インド洋漁業協定の締結が提案をされているわけでありますが、こういう中西部の太平洋地域も含めて、しっかり中長期的な影響を見据えた漁獲の規制やルールが必要だと思いますが、この点、外務省としてはどのように取り組んでこられたんでしょうか。
○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) カツオなどのマグロ類の資源については、高度の回遊性を有するということで、全世界の海洋をカバーする五つの地域漁業管理機関全てに我が国は加盟をし、関係国と協力して適切な資源管理措置がとられるよう努力をしてきました。 引き続きまして、責任ある海洋国として、こうした海洋のルール作り、しっかりとリードしていかなければならないと考えております。 先ほど水産庁からありましたように、中西部太平洋におけるカツオ資源につきましては様々な努力をしているわけでありますが、外務省としましても、是非、水産庁と緊密に連携しながら、適切な保存管理措置が決定されるようにしっかりと取り組んでいきたいと考えております。
○井上哲士君 安心してカツオのたたき等を食べられるように、また漁業者の営漁などを守る上でも適切な対応を求めたいと思います。 続いて、今日発表される安保法制懇の報告等の問題についてお聞きをいたします。 今日午後、報告書が出されて、その後、今ありましたように、NSCの四閣僚会合を経て総理が会見で基本的な方向性を発表する、そして与党間協議が行われるというふうに言われておりますが、既にマスコミでは報告の要旨も掲載をされております。 それで、午前中も議論になっていたんですが、二月に開かれて以降全く法制懇が開かれずに今日報告書が出されるということでありますが、実は三月十七日に集まっていたということも、事務方も出ていたということも午前中認められました。 報道では、この場所に報告書の原案が出されたようでありますけれども、報告書の文案というのはこのときに初めて示されたと、そういうことでよろしいでしょうか。
○政府参考人(内閣官房内閣審議官 山崎和之君) お答え申し上げます。 安保法制懇第六回会合が本年二月四日に行われておりますけれども、それ以降、懇談会の委員の方々の間で詰めの議論が行われて、取りまとめが行われておりました。その中で、今御指摘の三月十七日に、これ非公式な会合でございますけれども、開かれたということがございました。 二月四日以降の委員の方々の間での詰めの議論の過程で今日発表されます報告書は文書が作られていったわけでございますけれども、これはあくまでも委員の方々の間での作業が主軸でございまして、何月何日に初めて委員の方々の間で文書が作成されたというような事実関係につきましては、政府として全部把握しているわけではございません。今日発表されます報告書を準備するために二月から約三か月あったわけでございますけれども、その過程の間で、委員の先生方の間で順次完成に近づくための作業が行われたものというふうに認識しております。
○井上哲士君 今朝の報道では、この十七日の会合に報告書の原案が会議前に配られて、秘密保持のためにメモだけ取って、会議中は回収して議論をしたと、こういうふうに言われておるわけでありますが、普通、報告書というのは、やはり一定の量ありましたらまず一定の原文が出てくるものだと思うんですが、そういうものが出たと、そしてこういうような会議だったということで間違いないんでしょうかね。
○政府参考人(山崎和之君) 報告書のこの詰めの作業につきましては、北岡座長代理を中心に委員の方々の間で連絡が取られまして、その中で作成を行ってきたものでございます。 政府としましては、座長代理の御指示等をいただきながら必要な支援を行ってきたところでございますけれども、その過程で文書をどういう具体的な形で委員相互間で議論なされたか、ないしは物理的な交換をされたかということにつきましては、私ども全て承知しているわけでございませんので、委員間の非公式なやり取りの中で形成されていったという御説明以上のことは差し控えさせていただきたいと思います。
○井上哲士君 これまでも、二月の第六回以降どういう議論がされてきたのかといえば、委員間での詰めの議論はしていたということしか言わなかったわけですね。ところが、三月十七日に非公式の会合をやっていて、そこには事務局も出ていたと言われたわけですよ。何でこういう経過を明らかにしなかったんですかね。いかがですか。
○政府参考人(山崎和之君) 御指摘のとおり、三月十七日に非公式な会合がございましたが、委員の先生方の間では、非常に報告書を作る作業というのは膨大なものでございますので、いろいろなやり取りがあったというふうに承知をしております。 一方におきまして、二月四日の会合、これは、通常の公式会合と同様、その内容につきましてはホームページ等で紹介がなされておりますけれども、その後、報告書を詰める作業がなされております。 まさに、その報告書が今日総理に提出された後、完成をして世の中に提示をされるということになりますので、これまでの間の委員の先生方の作業というのは、今日の報告書の内容をもって世の中に御説明がなされるという位置付けであるというふうに認識しております。
○井上哲士君 実に不透明なんですね。 今日の朝日の記事では、ある委員の発言として、世間は我々が熟議したと思うだろうが全くそうではないと、こういうことも紹介をされておりました。(発言する者あり)違うと言うのなら、ちゃんと経過を明らかにしていただきたいんですよ。 そして、今日午後のNSCで、四閣僚会合で基本的方向性を確認するということでありますが、この基本的方向性というものの法的性格というのはどういうものなんでしょうか。誰に対して出されて、どのような拘束力があるんですか。
○政府参考人(山崎和之君) 今日、四大臣会合が法制懇談会の後開催されまして、その後、記者会見において、安倍総理から政府としての今後の検討の進め方についての基本的方向性をお示しする予定というふうに承知をしております。 今回の報告書の提出を受けて、安保法制の法的整備の再構築に関し政府がどのような検討を行っていくかという今後の検討の進め方についての基本的方向性をお示しするということでございまして、これは、今御指摘ございましたような法的なものというものではございません。政府の検討に当たっての方向性をお示しするということを総理が述べられるというものになるというふうに承知をしております。 いずれにいたしましても、政府といたしましては、今後、与党間での協議、それから国会での御審議等を通じて、政府の立場及びこれをめぐる諸問題の背景等については的確に御説明をさせていただきたいというふうに考えております。
○井上哲士君 いや、報道では、これは与党協議の方向性として示すものだと言われておりますが、今の答弁でいいますと、これが政府としてのいろんな検討の方向性として政府を縛るものになるんですか。
○政府参考人(山崎和之君) ただいま御答弁申し上げたとおりでございまして、今日総理が示される基本的方向性というのは、今後の政府としての検討の進め方についての基本的方向性を御説明するということでございます。これは総理が表明される方針でございますので、当然、政府はそれに従って作業を進めていくということになると思います。
○井上哲士君 これは、総理が表明されるのか、それとも四大臣会合で確認ないしは決定をするものになるんですかね。
○政府参考人(山崎和之君) 四大臣会合におきましては、本日の報告書を受けての議論、それから、今申し上げました基本的方向性についても関係閣僚間で議論がなされるというふうに承知をしております。その上で、総理が総理としてのお立場で基本的な方向性を記者会見において説明されるという段取りになっております。
○井上哲士君 この四大臣会合には外務、防衛両大臣が出られるわけでありますが、つまり、今の話でいいますと、四大臣会合で決めるわけではないが、そこに諮って、総理が方針として示すということでよろしいんでしょうかね。
○政府参考人(山崎和之君) 国家安全保障会議は、内閣総理大臣が議長となり、関係閣僚がその時々の議題について御審議をされるということでございまして、本日の会議も同様の位置付けとして行われます。その中で基本的方向性についても御議論がなされ、議長である総理がそれを取りまとめをなさるということだと思います。そういう手続を経た上で総理は記者会見においてお立場を表明されると、こういう段取りでございます。
○井上哲士君 防衛大臣もこのNSC四大臣会議に参加されるわけでありますが、そこで確認されるのはこういう今言われたようなことだと、法的性格は、そういう認識で参加をされるということでよろしいですか。
○国務大臣(小野寺五典君) 今、内閣官房の方から報告があったとおりだと思っています。
○井上哲士君 私は、やっぱり報告書の作り方から、出される基本的方向性というもの、全体としてどうもよく分からないわけですね。 それに加えて、この法制懇の座長代理である北岡さんは、これは四月二十一日の東京新聞のインタビューでありますが、憲法は最高規範ではなくて、上には道徳律や自然法がある、憲法だけでは何もできず、重要なのは行政法だと、こういう発言をされておりまして、憲法の最高規範性についてこういう発言をされている。 これは一般論でお聞きしますが、両大臣はこの憲法の最高規範性について、憲法よりも行政法が重要だと、こういう認識をされているのかどうか、それぞれからお聞きしたいと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) 日本国憲法九十八条一項には、「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と定めております。これは、まさに日本国憲法の最高法規性を定めているものであると私は理解をしております。
○国務大臣(小野寺五典君) 外務大臣が今答弁されましたように、日本国憲法九十八条一項におきまして、日本国憲法は我が国の最高法規であると認識をしております。
○井上哲士君 当然の御認識だと思うんですね。お二人の認識とも明らかに違うことを座長代理が発言をされて、そして、そういう認識の方がまとめるのがこの報告書なわけでありまして、実際、報道されているもの、もう今から決まるものでは、これまでの従来の憲法九条の解釈を根底から覆すような中身になっておりまして、積み重ねられた様々な憲法解釈を一内閣が覆すのが許されるのかということが問われると思いますし、この懇談会自身が、この解釈変更に反対する意見を述べた者は誰もいなかったと政府も答弁書で認めるような、まあ言わば初めに結論ありきのような中身になっております。 私は、国の在り方の根幹に関わるような議論がこういうものの報告を踏まえて行われるようなことは間違いだということを最後指摘をいたしまして、時間なので、終わります。