○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。 集団的自衛権をめぐる与党協議が始まり、十五の具体的事例が示されております。しかし、具体的事例というならば、集団的自衛権というものが一体戦後どのように使われてきたのかと、そのことの検証が私はまず必要だと思います。自民党の石破幹事長は、大国の横暴に小国が連携して国を守るための権利だと、こう言われました。果たしてそうなのか。戦後、集団的自衛権が行使をされた例は十四あります。主なものを並べてみました。(資料提示)アメリカなどによるベトナム戦争、旧ソ連などによるチェコの侵略、そしてアメリカやNATOによるアフガニスタン戦争。こういう例を見ますと、大国の横暴から小国が連携して国を守るのではなくて、大国による侵略や軍事介入の口実とされてきた、合理化をされてきた、そういうものではないでしょうか。総理、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、例として挙げられているハンガリーやチェコスロバキアの、ソビエト連邦が侵攻したという例でございますが、もちろんソ連と日本を同一視することはできないわけでありますし、そもそも集団的自衛権の権利というものは権利であって、これは義務ではないわけでありまして、そしてまた、我々はこの集団的自衛権の行使についても制限的にこれは行使できるという考え方を取っているわけでございまして、そうした活動に、言わば武力行使を目的としてこの集団安全保障においても武力、これは集団安全保障の考え方でありますが、集団安全保障において武力行使を目的として戦闘に参加することはございませんし、そして、集団的自衛権におきましても、個別的自衛権に掛かっている制限については集団的自衛権にもこれは掛かっているという考え方であります。
○井上哲士君 我々は考えているとまで言われました。思わず本音が出たと思うんですね。いろいろ今言われましたけれども、過去、集団的自衛権が大国による侵略や軍事介入の合理化に使われてきたと、このことは否定をされませんでした。これは動かし難い歴史的事実であります。憲法は、そういう海外での武力行使を禁じております。憲法解釈を変えて集団的自衛権を行使できるようになれば、過去のそうしたような戦争にも日本が参加できるようになる、このことに今多くの国民が不安の声を上げております。そうしますと、にわかに、今もありましたけれども、限定的に行使するんだということが盛んに言われるようになりました。安保法制懇の北岡座長代理も、集団的自衛権行使には六条件で歯止めを掛けると言われて、その中身が安保法制懇の報告書にも盛り込まれました。 そこで、外務大臣にお聞きいたしますが、この中に、我が国と密接な関係にある外国に対し武力攻撃があること、攻撃を受けた国からの明示の要請又は同意があることというのがありますが、これは集団的自衛権行使の一般的要件だと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) まず、御指摘いただいた六条件につきましては、この今回の安保法制懇の報告書の中で挙げられている条件であります。政府としましては、その報告書を受けて、今与党とも政府の方針を決めるべく議論を開始したということでありますので、今現状におきましてはこの集団的自衛権につきまして何も決まったものはありません。 その上で申し上げさせていただきたいと思いますが、国際法上、一般に集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止することが正当化される権利と解されております。また、その行使に当たっては、武力攻撃を受けた国の要請又は同意が必要、このように国際法上解されています。こうした御指摘の安保法制懇の報告書にありますその御指摘の要件につきましては、このような国際法上の要件について指摘をされたものと理解をしております。
○井上哲士君 まさに国際法の要件を言い換えただけであります。 さらに、第三国の領域を通過する場合、当該国の同意を得ることというのがありますが、これも国際法の一般ルールだと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘の安保法制懇の報告書におけるこの要件ですが、これは、国際法上、一般に第三国の領域内で活動を行うためには、領域主権との関係で当該第三国の同意を得ることが必要である、このように国際法上理解されていますが、その点を指摘したものだと理解しております。
○井上哲士君 三つとも国際法の一般要件を書いただけで、およそ歯止めなどと言えるものではありません。 残る三つは、その事態が我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があることを首相が総合的に判断をし、その際、事前又は事後の国会承認を受けることということでありますから、要するに、国会の多数派である時の政権が判断をすれば可能性があるだけでも行使が可能だと、こういう中身になっているわけですね。 ですから、六つの歯止めでたくさん歯止め付いたなと国民に思わせるような報告書でありますけれども、中身を見れば、国際法の一般要件に基づいて政府の判断で行使をすると。ですから、先ほど挙げたような大国が軍事介入の合理化として使ったときと要件は変わらないんですよ。これでは何も歯止めにはなりません。 では、政府は何をもって判断をするのかと。安保法制懇の報告は、政府が総合的に判断する諸点として五つ挙げております。その中の二つ目、日米同盟の信頼が著しく傷つきその抑止力が大きく損なわれ得るかと、こうなっておりますね。先日、外交防衛委員会で聞きますと、この五つの要件全てを満たす必要はないということでありましたから、この一点でも可能になるわけであります。そうしますと、日米同盟の信頼を理由にアメリカから参戦を求められて、日本が果たして断れるのかと。 外務大臣にお聞きしますけれども、これまで日本がアメリカによる海外での武力行使に反対をしたという例があるでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、確認しておきたいと思いますのは、御指摘になっているこの条件、これは安保法制懇の最終報告書において掲げられている要件であります。報告書を受けて政府としましては、この集団的自衛権を行使することも含めてまだこれから議論を開始するということであります。ですから、行使も含めてまだ何も決まっていないわけですから、この行使する場合の集団的自衛権の要件につきましてもこれから議論するということであります。 そして、もう一つ御質問として、アメリカの行動に対して我が国として批判をしたことがあるのか等がありましたが、ちょっと今手元に資料がありませんが、グレナダ侵攻等において我が国が深い懸念を示した、一九八三年のグレナダ派兵、そして一九八九年のパナマ軍事介入、こうした際に我が国は遺憾の意を表明する、こういったことが存在いたします。
○井上哲士君 皆さんが報告書に基づいて検討しているから私はただしているんですね。ごまかしちゃ駄目ですよ。 今、グレナダとパナマのお話がありました。グレナダの侵攻の際は、直後に当時の中曽根総理が理解を示しているんです。そして、国連総会でアメリカの侵攻を非難する決議が圧倒的多数で上げられたにもかかわらず、日本政府は棄権しているんですね。パナマに関しては、非難決議に反対しているんですよ。何一つ反対したことないというのが歴史的事実じゃありませんか。 総理、日米同盟の信頼というのは、自民党政権がイラク戦争を支持し、自衛隊を派兵をしたときの理由でありました。アメリカはイラクに大量破壊兵器があると主張して、日本はそれをうのみにして支持をしたわけでありますが、実際はなかったと。アメリカはそれは間違いだったと言っておりますけれども、日本政府はいまだにこのことの間違いも反省も明らかにしていないわけですね。これまでにアメリカのこういう武力行使に一度も反対をしたことがなくて、そして間違ったアメリカのイラク戦争を支持したことに反省もない日本政府が、どうしてこれからアメリカの求めを断ることができるのかと。 しかも、これまでは、憲法上集団的自衛権は行使できないと、こういうことがありましたからアメリカの要請に全面的に応えることはしませんでした。しかし、行使を容認すれば、日米同盟の信頼を理由にアメリカの行う戦争に参加をすることが可能になるじゃありませんか。しかも、報告書は、わざわざ地理的限定を設けることは適切でないとしております。これでは結局何ら限定がないんじゃないですか。いかがですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) イラクのサマワに派遣した例は、これは戦闘行動に参加することを目的に参加したのではなくて、既に戦闘が終わった段階においてイラクの国の再建に協力をしたということでございます。 そして、今私たちが何を検討しているかということでございますが、そこで、今委員からは、こうした海外での武力行使に参加するのではないかということでございますが、現在の憲法解釈において、武力の行使の目的をもって武装した部隊を他国へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって憲法上許されないと解しているところでございまして、仮に集団的自衛権の行使が認められるとしても同様の制約が掛かるというのが私たちの立場でございます。
○井上哲士君 ちゃんと答えてくださいよ。アメリカからのこうした要請があって日本が断ることができるんですか、限定がないんじゃないですかと聞いているんです。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) まさに、今申し上げましたように、そうした武力行使の目的をもって武装した部隊を派遣することはできないわけでありますから、これは当然できないということになるのは明確であろうと、このように思います。
○井上哲士君 イラク戦争でもアフガン戦争でも、国民多数の圧倒的反対の声を踏みにじって、国会の多数を頼んで強行したわけですね。 そして、しかも、元々憲法は、たとえ国会の多数派を占める時の政権が判断をしても海外で武力を使ってはならないという縛りを掛けてきたわけですよ。その縛りを解釈を変えて壊してしまえば、時の政権の判断で限定なく行使をできるということになるんじゃないですか。石破幹事長は、限度は情勢によって変わってくると発言しているじゃないですか。 小さく産んで大きく育てる、それがあなたの考えじゃありませんか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 繰り返しの答弁にならざるを得ないんですが、今私が申し上げておりますように、イラク戦争、あるいは湾岸戦争、そしてアフガン、アフガンにおいては、これは集団的自衛権の行使で後に国連の決議が出たわけでございますが、いずれにいたしましても、現在の憲法解釈において、武力の行使の目的をもって武装した部隊を他国へ派遣するいわゆる海外派兵は一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであるという憲法の解釈は、私たちは、これは当然そのまま維持をしていくという考え方の下に検討していただいているということでございますから、当然それは行わないということは明確ではないのかと、このように思います。
○井上哲士君 海外で武力を使ってはならないという憲法の解釈を変えて集団的自衛権の行使を容認することは、まさに限定ない方向に突き進むことになる、絶対やめるべきだということを申し上げまして、質問を終わります。