○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。京都府京丹後市の米軍のXバンドレーダー基地についてお聞きいたします。先々週の火曜日、二十七日の早朝に着工いたしました。朝六時半でありました。土曜日に地元紙に、金曜日までに米軍が工事業者に着工を許可したことが分かった、週明けにも着工する見通しだという報道がありました。地元住民や地方自治体が週明け月曜日の午前中に現場の地元連絡所等に確認をしても、知らないと、こういうことだったわけでありますが、月曜日の午後一時半になって京都府や京丹後市に、翌朝着工されると、こういう連絡がありました。京都府は五月の二十日に、地域住民の安全確保対策、具体的な工事のスケジュール及び内容について事前に地元へ周知することと、こうしていたわけですね。ところが、前日の午後に連絡があって、翌日の早朝から工事があったと。防衛大臣は、この問題で過去現地入りした際に、住民の安全、安心の確保に万全を期すと、こういう約束をされたわけでありますが、こういう事態で安全、安心の確保ができていると、こうお考えなんでしょうか。
○国務大臣(防衛大臣 小野寺五典君) TPY2レーダーの配備に当たりましては、先ほど御指摘になりましたように、私も十一月、昨年ですが、現地を視察いたしました。レーダー配置の近傍に集落があり、地元から安心、安全を要請される切実さを認識したところであります。そうしたことも踏まえ、これまでも地元の方々に誠意を持って対応するよう指示をしてきてまいりました。TPY2レーダー配備に係る米側による工事については、今年四月十三日以降四回にわたり開催した住民説明会において、レーダー運用に係る施設の整備、これ第一期工事でありますが、今年五月に着工し、今年十二月末に完成予定であるということで説明をいたしました。五月に着工するということは、四月以降、累次説明をしてきております。その中、五月二十六日、京丹後市及び京都府に対し、五月二十七日午前中から米軍の工事を実施する予定となった旨をお伝えさせていただきました。工事は五月に行うということでお知らせをしましたが、具体的な工事を着工することにつきましては、天候や工事の準備状況、資材の搬入状況等がありますので、これは関係機関との調整などにより変更される可能性があることなどに加え、工事着工時において作業員や重機等が往来することが想定されることなどから、住民の安全確保や警備等の要素も含めて総合的に勘案して工事着工日の前日にお知らせすることとなったものであります。いずれにしても、防衛省としては、今後も引き続き、地元の方々の御理解を得られるよう丁寧に説明していきたいと思っております。
○井上哲士君 大臣も今言われましたように、あの現場というのは、本当にもう住宅のすぐそばなんですね。車力なんかと比べますと、大きな敷地の中でではなくて、もう目の前で工事が行われますし、生活道路を工事現場のいろんな車両も通るということになります。地元住民の皆さんは、マンションの建設だって、今日はこういう作業がありますとか何時からやりますとか、当然知らされるわけでありますし、特に通勤、通学、特に通学時などの危険性ということがあるわけですから、五月中に着工するというのは分かっていると、言ったといっても、あしたの朝どうなるかということを前日に言われたということでは、これはとても安全、安心の確保ということにはならないと思うんです。今、四回ですか、住民説明会が行われたと言われましたけれども、出されたのは項目的なことが四行書いてあるだけでありまして、具体的な説明はなし、口頭で説明をされて、そして一方的に設定した終了時間を口実に騒然とする中で打ち切られると、こういうことでありました。連絡を受けて、二十六日に京丹後市が地元にお知らせという文書を配っておりますが、この中に、工事施行に当たり次の事項を確認していますと。通勤時間帯を避けるような作業時間帯を設定するとか、基本的に日曜日、祝日は工事を行わないとか五項目あるわけでありますが、こういうものも文書で示されたのはこのときが初めてだったわけでありまして、いつこういう具体的な中身を、誰に対して防衛省としてはこの五項目については周知をしたということなんでしょうか。
○政府参考人(防衛省 地方協力局 局長 山内正和君) お答え申し上げます。御質問いただきました京丹後市が五月二十六日付けで公表したお知らせには、米軍のTPY2レーダーの配備に関する工事着手日や工事内容とともに、工事施行に当たり京丹後市が確認している五項目について記載されているものというふうに承知しております。この五項目につきましては、防衛省が本年四月十三日以降地元で開催いたしました住民説明会におきまして、工事施行に当たり地元の影響をできるだけ少なくするための措置として御説明したものでございます。なお、京丹後市もこの住民説明会に出席されており、防衛省から地元住民の方々に五項目について説明したことを確認されていることから、この五月二十六日付けのお知らせにも記載されたというふうに認識しておるところでございます。
○井上哲士君 先ほど言いましたように、住民説明会自身が、まともな資料も文書も出ないという中で、言わば騒然たる中でいろんな説明をされたということでありますが、およそ住民の皆さんの認識にはなっていないわけですね。そして、この二十六日に京丹後市が配布したお知らせでも、工事着手日が翌二十七日の午前中と、こうなっておりますけれども、実際には朝六時半から始まったわけですね。こういうことが続きますと、本当に住民の皆さんは、住民の安心、安全を考えているのかとずっと不安だったことがこれからももっともっと広がっていくわけですね。この二十日に京都府が提出をした申入れ書にも特段回答されているようではありません。例えば、オスプレイの配備に当たって、キャンプ富士のある御殿場市の地権者の皆さんの質問書にはきちんと文書でも回答されているわけですね。地元の住民の皆さんからの要請についてもきちっと文書で責任ある回答をすることや、そしてきちんと住民の皆さんの質問に答えられるような、そういう本当の意味の説明会をきちっと開くと、このことは約束をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(山内正和君) 防衛省におきましては、TPY2レーダーの配備に関し、我が国防衛上の有用性及び日米協力の強化などの観点から最適な配備先を日米間で検討した結果、航空自衛隊経ケ岬分屯基地が最適な配備候補地であるとの結論に至ったため、自後、京都府及び京丹後市に対し、同基地にレーダーを配備することについて協力を要請させていただいたところでございます。本件につきましては、地元の御理解、御協力を得るべく、これまでに、京都市あるいは京丹後市とも調整の上、いただいた御質問に対してはその都度文書による回答を行うとともに、また口頭による説明等も併せ行う、またさらに、地元住民の方々に対しても合計二十回にわたり住民説明会を実施してきたところでございます。いずれにしても、私どもとしては、京都府あるいは京丹後市とも調整の上、地元に対して御理解、御協力を得るべく努力を重ねてきたというふうに認識しているところでございます。
○井上哲士君 繰り返しますけど、説明会と言われても、まともな資料も出ず、きちっと住民の皆さんの質問にも答えないまま一方的に時間が打ち切られると、こういうことが起こって、現に着工日の前日まで連絡がなくて、配られたお知らせには午前中しか書いていなかった、これが実態なんですよ。ですから、やはり私は、防衛大臣が現地で言った住民の安全、安心の確保などおよそできていないというのが実態でありますから、私は、まず工事を中止をして、きちっと住民に説明をすることが必要でありますし、そもそも、この建設の撤回を改めて求めたいと思いますが、防衛大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 今回のTPY2レーダーの配置につきましては、京都府、京丹後市の御了解、御理解をいただきながら今進めておりますし、また、この土地の取得に関しても、地権者の皆様に大変なお力をいただいて今進めております。私どもとしては、日本の安全保障にも大変重要な施設だと考えておりますので、これからも、地元住民の皆様の声を様々聞きながらしっかりとした対応をしていきたいとは思いますが、この設置につきましては、今後とも進めさせていただきたいと思っております。
○井上哲士君 地元紙は、「情報開示 地元置き去り」と、こういう大きな記事を書きました。これが実態なんですから、きちっと住民の皆さんに向き合っていくことを強く求めると同時に、改めて、建設そのものの撤回を求めたいと思います。次に、いわゆる平和への権利についてお聞きいたします。 今年の国連総会での採択に向けて、今、国連人権理事会で議論をされております平和に対する権利国連宣言草案の問題です。この平和への権利というのは、一人一人が平和のうちに生きることができるように国家や国際社会に要求できる権利とされております。単に戦争がないという意味での平和ではなくて、恐怖と欠乏からの自由という本来の意味での積極的平和の実現も目標としておる、これを国際人権法にしようと今取り組まれているわけですが、まず前提として、日本国憲法とこのことの関わりについてお聞きしたいと思います。憲法前文は、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」としております。九条、十三条と併せてこの平和的生存権が日本国憲法に盛り込まれていることの意義について、まず、外務大臣の御認識を聞きたいと思います。
○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 日本国憲法前文の第二段には御指摘のように規定をされております。 国民の命と平和な暮らしを守ることは政治の最大の責務であります。いかなる事態においても国民に対する責任、全うしなければならないと認識をしております。そして、外交面においても、国際社会の安定と繁栄に資する外交を推進することが必要であると認識をしております。
○井上哲士君 世界の憲法の中でも、日本国憲法ほど明確にこの平和的生存権を規定したものはないわけですね。一方、この平和への権利の主要な内容というのは、人間の安全保障という問題です。この間、国際社会で議論が積み重ねられて確立をしてきたものでありますけれども、この人間の安全保障については、政府としてはどういう見解と取組があるんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 人間の安全保障ですが、人間一人一人に焦点を当て、その保護と能力の強化を通じて人々が持つ豊かな可能性を実現させることを目指す理念であります。政府としましては、この人間の安全保障を外交の重要な柱として積極的に推進していく考えでありますし、また、昨年の国連総会一般討論演説におきましても、安倍総理の方から、人間の安全保障の更なる概念の普及と実践の積み重ねを進めていく決意である、こういった旨表明をさせていただいております。国連総会決議において確認されているとおり、人間の安全保障においては、恐怖からの自由と欠乏からの自由を享受する権利を有することが重要な要素であるとされております。
○井上哲士君 単に戦争がないというだけではなくて、恐怖と欠乏からの自由、日本国憲法前文にも重なる中身でありまして、日本はこのことを外交の柱に据えるということも森総理が国連で演説をしている、そういう中身であります。ですから、憲法は前文で全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有するということを確認をし、人間一人一人に着目した人間の安全保障の考えを支持をしてきたわけですね。その日本が平和への権利についてどういう対応をしているのかが問われるわけでありますが、この間、国連でどのような議論がされ、今後どういう予定なのか、そして、昨年の六月十三日の国連人権理事会で平和への権利促進決議が出ておりますけれども、このときの表決の内容と日本の対応についてお答えください。
○政府参考人(外務省 総合外交政策局 審議官 新美潤君) お答え申し上げます。国連におきまして、経緯でございますけれども、一九七八年の国連総会において平和のうちに生きる社会の準備宣言という決議が採択され、一九八四年の第三十九回国連総会においては人民の平和への権利という決議が採択されました。 そして、二〇〇八年の第八回の国連人権理事会からは、この国際平和の安全の重要性等を掲げまして、市民や集団が国家に対して平和を求めることができるという権利を盛り込んだ、平和への権利に関する議論の促進を目的とした決議が毎年人権理事会に、これはキューバが主たる提案国でございますけれども、提出されてきております。そして、二〇一二年の第二十回人権理事会におきまして、この平和への権利宣言を検討する政府間作業部会というものが設置されることが決定されまして、昨年二月に第一回作業部会が開催され、今年も、六月三十日から七月四日まで第二回の作業部会が開催される予定でございます。ちなみに、更に御質問がございました昨年六月の第二十三回人権理事会、この決議が採択された際でございますけれども、票は、賛成が三十、反対が九、日本も反対でございます。棄権八でございます。
○井上哲士君 今経緯で紹介ありました一九七八年の決議については、日本は賛成をしておるわけですね。ところが、昨年の六月の平和への権利促進決議については、日本は反対をしたということであります。そこで、外務大臣にお聞きするわけですが、先ほど認められましたように、憲法で平和的生存権を掲げ、そして、単に戦争がないだけじゃない、恐怖と欠乏からの自由、保護と能力強化を通じて持続可能な個人の自立と社会づくり、こういう中身を持った人間の安全保障を掲げている日本が、なぜこの平和への権利については反対をするんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 平和的生存権に関しての憲法の記載、あるいはこの人間の安全保障に対する我が国の考え方、これにつきましては先ほど答弁させていただいたとおりであります。その中にあって、国際社会の議論におきまして、平和への権利と人権との関係、これにつきましては各国間でまだ共通理解が形成されていないと認識をしています。現在、国際社会においては、この平和への権利の内容及びその享有主体等、基本的な事項について議論がされている段階であると承知をしております。こうした状況ですので、我が国としましては、まずは、この平和への権利の概念を整理するべく立ち上げられました国連の人権理事会の平和への権利に関する作業部会、これにしっかりと参加しているところであり、是非この議論にしっかり貢献をしていきたいと存じます。こうした議論をしっかり行った上で我が国の対応を考えていくべきであると認識をしております。
○井上哲士君 共通認識がないという認識であるならば、むしろそれをするために、日本が平和的生存権を憲法に掲げた国として積極的役割を私は果たすべきだと思うんですね。アメリカなどは、安保理で常任理事国が事実上決定権を持つという中で、この平和の課題は国連安保理のテーマだからという理由でこれに反対をしております。結局、こうした大国がこの平和問題での議論で手を縛られたくないと、こういうような思いから平和への権利を人権とすることに反対をしていると、こういう流れがあろうと思いますが、日本はこういう立場にくみするんですか。
○政府参考人(新美潤君) 今大臣から御答弁申し上げましたとおり、この平和への権利という概念が国際的に確立された人権概念ではないということが日本の基本的な立場でございます。現に、例えば、この平和への権利に関する作業部会の非公式会合といった場でも、例えば議長、これはコスタリカが議長をしておりますけれども、平和への権利の存在はソフトローとして既に認識されていると主張している国がいる一方で、そもそも平和への権利は国際法において存在せず、平和とは全ての人権の完全なる実施に帰結するものであり人権ではないと主張する国がいると述べられていることも一例でございます。そういう観点からも、日本としては、繰り返しで恐縮でございますけれども、まず関係国間、日本も含めてきちっとこの中身について議論をして整理をするということが重要だと考えているわけでございます。
○井上哲士君 私、質問に当たってずっと過去の検索してみますと、平和的生存権について政府が語ったことはほとんどないんですね。最近増えたのは、これを理由に集団的自衛権行使の議論をするという安倍総理の様々な言葉でありました。私、これは全く逆だと思うんですね。国際的にまだ確立をしていないとおっしゃいますが、あの自衛隊のイラク派遣の違憲訴訟では、名古屋高裁判決は、明確にこれは権利として、権利性があるものとして判示をいたしました。私は、日本はむしろ国際的な共通認識が広がるようにもっと積極的な立場を取るべきであって、反対というようなことではなくて、その対応を変えて積極的な役割を果たすべきだと、そのことを強く申し上げまして、時間ですので終わります。