国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2014年・187臨時国会 の中の 政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会

政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会

井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 地方選挙の期日の特例法は、必要な措置であり、賛成であります。
 選挙部長に一点だけ確認をしたいと思うんですが、昨年、公選法の改正を行って、県議会議員選挙については、政令指定都市に二つ以上の選挙区があれば合区を認めることといたしました。これに伴って、熊本の県議会議員選挙において、熊本市内の五行政区に分かれていたのを二つの選挙区にしたということは承知しておりますが、ほかに合区を行った、又は検討しているような政令指定都市はあるんでしょうか。
○政府参考人(総務省自治行政局選挙部長 稲山博司君) 昨年の公選法の改正によりまして、指定都市の区域における県会議員の選挙区の設定につきましては、行政区の区を分割せずに二以上の区域に分けた区域を単位として設定して、条例で選挙区を定めることができると、こういうふうになったわけでございます。
 今年の九月定例県議会終了時点での指定都市の区域についての選挙区の改定状況を確認をいたしました。政令市が含まれる十五の道府県、これ二十政令市に関わりますけれども、条例改正の措置等が終了いたしております。
 その中で、御指摘のございました熊本市と。この法改正後に複数の行政区を併せた区域を選挙区の区域とした団体ということでございますが、二府県、大阪府と熊本県の、大阪市、堺市、熊本市、三政令市が複数の行政区を併せた取組といったことになっております。
 そのほかの団体におきましては、従来どおりの各行政区の区域を選挙区の区域としているというふうに承知をしているところでございます。
○井上哲士君 地域の代表、有権者の代表がきちんと適切に選ばれるような運用を望みたいと思います。
 次に、政治と金の問題についてお聞きをいたします。
 この間、様々な問題が発生をし、二人の閣僚が辞任をいたしました。ほかにも、政治資金規正法に関わっていろんな問題が発生をしております。その下で、先ほどもありましたように、政治に対する国民の不信が高まっているという状況にあります。
 その下で、政治資金規正法、この意義について、大臣、政治家として、また担当大臣としてどのようにお考えか、まずお聞きしたいと思います。
○国務大臣(総務大臣 高市早苗君) 政治資金規正法は、政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため政治資金の収支を公開することとしており、その是非など収支報告書の内容に関する判断は国民に委ねられております。
 政治資金の在り方につきましては、この法律にのっとって適正に処理すべきことはもちろん、一人一人の政治家が国民の皆様の信頼を得られるように自ら襟を正していかなければならない、こう考えております。
○井上哲士君 この政治資金を国民の監視の下に置く、これによって政治活動の公明と公正を確保していくということだと思うんですが、この目的を大きく損なうのが、任意団体を通じた、これを事実上隠れみのにした企業献金の問題であります。
 今、江渡防衛大臣が代表を務める自民党の青森県第二選挙区支部に対する政経福祉懇話会という団体からの寄附が外交防衛委員会等でも問題となってまいりました。この懇話会は、大臣のホームページで自らの支援企業の会だと述べられている団体です。同会には百以上の会員があって、大臣が代表の自民党支部に対し毎月二十五万円、年間三百万円の寄附を行っておりまして、二〇〇二年からの通算では三千二百八十五万円もの寄附が行われております。にもかかわらず、この会は政治団体の届出をしておりません。
 選挙部長、お聞きしますけれども、政治資金規正法は、政治団体に当たる団体が届出のないままに政党支部に寄附をすることを罰則をもって禁じていると思いますけれども、具体的にはどのように規定されているでしょうか。
○政府参考人(稲山博司君) お答えをいたします。
 個別の事案につきましては、具体的な事実に即して判断されるべきものでございますので、総務省といたしましてはお答えは差し控えさせていただきたいと存じますが、その上で、一般論として申し上げますと、政治資金規正法は第六条におきまして、同法に定義がございます政治団体に該当するものにつきましてはその組織の日から七日以内に届出が必要でございます。そして、八条におきまして、この届出義務の対象となる政治団体につきましては、届出がなされた後でなければ、政治活動のために、いかなる名義をもってするを問わず、寄附を受け、又は支出をすることができないとされているところでございまして、この規定に違反したものにつきましては、同法第二十三条におきまして五年以下の禁錮又は百万円以下の罰金に処する旨の定めがあるところでございます。
○井上哲士君 なかなか重い罰則を科しているわけですね。
 江渡大臣は、この懇話会の規約で、青森県の上十三地域の政治、経済、福祉等について勉強し、会員相互の親睦を目的とした団体と定めているということを示して、こういう目的を持つ団体なので政治団体ではない、だから問題はないと、こういう答弁をされてまいりました。
 しかし、規正法の第三条の政治団体の定義では、特定の候補の推薦や支持をその団体の本来の目的と規約等で定めていない場合であっても政治団体となる場合があると定めていると思いますが、それはどういう場合でしょうか。
○政府参考人(稲山博司君) 繰り返しになりますが、個別の事案についてのお答えは差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論でございますが、政治資金規正法第三条第一項におきまして、先ほど申し上げましたが、規正法の適用対象となる政治団体につきまして定義がございます。政治団体とは、政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対すること、特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対すること、これら二つのいずれかを本来の目的とする団体、又はこれらの活動を主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体をいうとされているところでございまして、先ほどのお話でございますと、これらの活動を主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体かどうかといったようなことが主な論点になろうかと思います。
○井上哲士君 今ありましたように、その団体の目的としては掲げていなくても、実態として特定の候補を推薦、支持する活動を主たる活動としている場合は、これは政治団体に当たるんだということであります。
 外交防衛委員会の答弁では、この特定の候補を推薦、支持する活動とは、特定の候補の当選を期して側面から援助することだと、こういうふうな答弁もありました。
 そうしますと、特定の候補者に多額の寄附を毎年継続的に行うということは、まさに特定の候補を支持する活動を組織的、継続的に行っているということに当たるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(稲山博司君) 個別の事案についてのお答えでございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。
 ただ、先ほど申し上げましたように、主たる活動という要件がございます。分量的に見て当該団体の活動の主たる部分を占めているということが基準でございますので、仮に特定候補者の寄附を長期にわたって行っているということがあっても、そのことをもってのみその団体の主たる活動であるとはなかなか言い難いものがあろうかと存じます。
○井上哲士君 年間数回だけ勉強会とゴルフのコンペをやって三百万もの寄附をするというのは、私はかなり分量的に見ても主たる活動となるのではないかと。逆に言えば、そういう場合は当たるということをお認めになったということであります。
 先ほどの答弁で、政治団体に当たる団体がその届出なしに政党支部に寄附をすることを禁じているということが明らかにされましたけれども、この立法趣旨はどういうことでしょうか。
○政府参考人(稲山博司君) 先ほど申し上げましたように、この届出がなされた後でなければ、いわゆる政治団体につきましては、いかなる名義をもってするを問わず、寄附を受け、又は支出をすることができないということにされているところでございます。
 この規定は、規正法において届出義務の対象となる政治団体が、政治団体の設立届をする前に政治資金が授受されることを禁ずることによりまして政治活動の公明と公正を期することを目的として設けられたと認識をしているところでございます。
○井上哲士君 つまり、政治資金は国民の監視の下に置かれなくてはならないと、それに反することを禁じて罰則を付けているわけであります。
 そこで、大臣にお聞きするわけでありますが、私は、この法律の趣旨からいったときに、この任意団体を通じた企業献金というものが、大変損なうと思うんですね。
 企業、団体が政党支部に対して年間五万円を超えて献金しますと、受けた側の収支報告書に記載をされます。ですから、有権者はその収支報告書を見ることによって、その政治家に対してどういう企業が献金をしているのかを見ることができます。大型開発に随分熱心だけれども建設業界から随分資金ももらっているんだなとか、この人は個人献金に依拠して企業献金をもらわずにやっている政治家だとか、そういうことが分かる。そういうことからその政治家の政治姿勢などを判断をすることができると、これがこの趣旨だと思うんですね。
 ところが、政治団体の届出をせずに任意団体のままの場合は、その団体の収支報告の提出は必要がありません。ですから、その団体、例えばこの懇話会が一体誰から、どういう企業から寄附を受けているのかと、これは国民の前に明らかになりません。そして、この団体から献金を受け取った政党支部の収支報告書にもこの懇話会の名前しか明らかにならないわけですね。ですから、そうしますと、企業名を明らかにせずに任意団体をトンネル、隠れみのにして政治献金ができるということになるわけであります。
 これ、あれこれの団体の一つじゃないんですね。江渡大臣の場合は、二〇一二年の報告書を見ますと、企業等からの献金は年間四百三十万円です。それに対してこの懇話会の献金は三百万円ですから、相当部分がこの団体を通じて行われていて、企業名などは明らかにならないということになっているわけですね。
 大臣、お聞きしますけれども、こういう勉強とか親睦をいうことで団体をつくって実際には多額の献金をしてその中身が見えないという状況というのは、国民の監視を困難にして、政治活動の公明、公正が大きく損なうことになるのではないか、政治資金規正法の趣旨を大きく逸脱することになるのではないかと思いますけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) もうあくまでも一般論としてしか申し上げられませんが、政治資金規正法では、会社、労働組合、職員団体その他の団体は、政党又はその支部に対して当該会社の資本金、当該労働組合の組合員数、当該団体の経費の額等に応じ、年間七百五十万円から一億円の総枠の範囲内で政治活動に関する寄附ができるものとされております。この場合なんですけれども、会社、労働組合、職員団体その他の団体がその限度額の範囲内で寄附をする際の財源調達の方法については、政治資金規正法上、特段の規定はございません。
 ですから、いずれにしましても、この政治資金の規制の在り方について、必要に応じ、各政党、政治団体の政治活動の自由と密接に関連していますので、各党各会派で御議論いただくべきことだと考えます。
○井上哲士君 いろいろ勉強とか親睦をしている団体であって、会員の企業はそれぞれが直接献金をすれば透明性は確保できるんですね。ところが、こういう団体の場合は会費という形で、また寄附という形で団体でまとめて、そこを窓口になって寄附しますと。そうしますと、例えば国から補助を受けている企業、三年連続赤字の会社、外国法人などというのは、そもそも政治献金を禁じられております。ところが、こういう会社が会員となって団体に寄附し、その団体を通じて納めますと、これ、本来禁止される献金が行えるということになるんですね。やっぱりこれ問題だと、大臣、思われませんでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) 法律にのっとらずに行われることは問題であります。
 ただ、先ほど来委員がおっしゃっている大臣のケースでございますけれども、これについては総務省は個別具体的な調査権を有しておりませんので、具体的な御指摘にはお答えしかねます。
○井上哲士君 法に違反しているかどうか、これはまさに捜査当局が判断いたしますが、少なくとも私は規正法の趣旨に違反する脱法行為だと思います。
 ですから、これ実は自民党の議員の方からも、年間三百万円も毎年寄附するような任意団体聞いたことがないと随分聞くんです、私は。調べてみました。こういう任意団体を通じて恒常的に多額の政治献金をもらうようなことは、多くの議員はやっておりません。例えば東北六県で調べてみますと、二〇一二年、政党支部に対して年間百万円以上の寄附をしている団体は百二十八ありました。そのうち多くは企業、団体でありまして、この政経懇話会のような任意団体は三つしかないんですね。他の二つはその前の年の寄附はありませんでしたので、十年以上にわたってこういう多額の寄附をしているというのはこの団体しか例がないと。江渡防衛大臣の政治資金の在り方ってそれほど異常なんですよ。
 しかし、私、今回のこういうことが明らかになったことを通じて、そんなうまいやり方があるのかといって同様の脱法行為が広がるならば、これは本当に国民の政治への信頼を失うことになると思うんですが、何らかの法規制が必要ではないかと考えますが、大臣、いかがお考えでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) 政治資金の在り方につきましては、これはやはり民主主義のコストをどのように国民に負担していただくかという観点からも各党各会派において御議論をいただくべきことだと思います。
 選挙を公正公平に行う、政治活動を公正公平に行う、これは当然のことでございます。もしも法に不備があるとお考えの議員の数が大変多ければ、また国会から御提案をいただければ、総務省はそれに応じて対応を考えさせていただきます。
○井上哲士君 私は、やはり公明公正な政治活動の確保ということから大きな問題があると思っております。是非、各党の皆さんにも今後議論を呼びかけていきたいと思っております。
 残された時間、あと成年被後見人の選挙権の回復の問題についてお聞きをいたします。
 昨年の五月に全会派一致で議員立法による公選法の改正をいたしまして、成年被後見人の選挙権が回復いたしました。私どもの参議院選挙で初めて投票ができたということで大変喜ばれたわけでありますが、この昨年の参議院選挙で選挙権が回復した成年被後見人は何人だったのか。また、おおむねどれぐらいの方が投票されたのか、把握をされているでしょうか。
○政府参考人(稲山博司君) お答えをいたします。
 最高裁の公表資料によりますと、平成二十四年十二月末でございますが、成年被後見人の数といたしまして、十三万六千四百八十四人であるということが示されております。昨年の公職選挙法の改正におきましては、全ての成年被後見人に対し一律に選挙権を回復するものでございますので、約でございますが、十三万六千人の方の選挙権が回復されたのではないかと考えているところでございます。
 ただ、具体的に何人の方が投票されたのかということにつきましては、先ほども御答弁させていただいたところでございますけれども、公職選挙法におきましては選挙権を失った場合には名簿にその旨の表示をいたしますが、成年被後見人の選挙権の回復に伴いましてそういった表示はなされなくなっておりますので、昨年の参議院選挙に具体的にどれだけの方が投票に行ったかを把握することはできかねるところでございます。
○井上哲士君 この法改正をめぐって、成年被後見人に選挙権を認めると不正投票が行われて選挙の公正が損なわれる事態があると、こういう議論がありました。そこで、法改正に当たって、不正防止のために代理投票の際の投票補助者を選管の職員から選ぶように義務付けました。また、不在者投票のできる指定施設でも第三者の立会いを努力義務といたしました。
 総務省は、この不在者投票の指定施設全ての立会人の派遣を目指したわけですが、実際にはどれぐらい立会人の派遣ができたんでしょうか。
○政府参考人(稲山博司君) お答えいたします。
 指定施設等の不在者投票における外部立会人の関係でございます。
 昨年の参議院選挙におきまして、不在者投票を行うこととして指定された施設が二万一千四百四十二か所ございます。このうち二千七百八十か所で、これは外部立会人という形での配置がされたところでございます。
○井上哲士君 様々な努力がされてきたわけですが、この代理投票の際に本人の意思をきちんと確認するプロセスが重要であって、例えば、別室で投票する候補者を二回尋ねて同じ人を挙げるかどうかを確認するなどなど、これまでも様々なことが施設ごとに行われてまいりました。
 全国一律の対応と人員が必要だと指摘をされてきたわけでありますが、このプロセスの問題では、総務省としてどういう対応をしてこられたんでしょうか。
○政府参考人(稲山博司君) 投票につきましては、言うまでもないところでございますけれども、あくまでも選挙人本人の自由意思に基づくものでなければなりません。代理投票という方式が定められておるわけでございますが、これは本人投票の原則、あるいは秘密投票の原則の例外的な方式でございます。選挙人本人の意思を確実に確認した上で適正に実施しなければいけないものと考えております。
 このため、昨年の参議院選挙に際しましては、この代理投票における本人の意思確認につきまして、これは大変難しい実務も伴うかということが想定されましたので、各選挙管理委員会に対して要請をしているところでございます。投票手続に入る前に、必要に応じまして、選挙人の家族や付添人の間で意思確認の方法について事前の打合せ等を行うなど、適切に対応するということ、それから、代理投票が認められる選挙人の態様はこれは様々でございますので、個々の選挙人の状況に応じてきめ細かく適切に対応することが重要であり、その意思確認に十分努力すべきこと、こういったことを各選挙管理委員会に要請しているところでございます。
 今後も、こうしたことを踏まえまして、それぞれの現場において適切な対応がなされますよう、引き続き各選挙管理委員会に要請をしてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 そういう様々な努力の中で、懸念をされた選挙の公正が損なわれるような事態は起きていないと、こういうふうに認識をしております。
 さらに、しかし、行きたくとも行けなかった方も随分いらっしゃると思うんですね。その点で、最後、大臣に確認をしたいんですが、選挙権を回復して投票の意思があっても、入所している施設が不在者投票の指定施設になっていなく投票できなかったという方もいらっしゃると思います。例えば東京都の場合は、要件を入所定員約五十人以上と規定して、さらに、都の選管が認める病院では小規模でも指定するなどの拡充を進めているわけでありますが、全国的にどういう実態になっているのか、また、この不在者投票の指定施設を増やすための方策及び決意をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) この御指摘の指定基準なんですけれども、これは不在者投票の適正な執行という観点から示しているものでございます。これは都道府県選管の判断の一つの目安でありますので、各都道府県において、それを下回る場合であっても不在者投票の適正な管理執行が確保できると判断される施設については指定がなされる、このように実情に応じた不在者投票施設の指定が行われていると考えております。
 ですから、不在者投票の適正な執行を確保しながら選挙人の投票の便宜を図るという観点から、やはり指定基準の適切な運用がなされるように各都道府県の選挙管理委員会に対しまして要請をしてまいりたいと思います。
○井上哲士君 投票権の確保を広げるために一層の努力をお願いしたいと思います。
 時間ですので終わります。ありがとうございました。

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