国会質問議事録

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外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 自衛官募集と学校教育に関して聞きます。
 前回の質疑のときに、二〇一三年の十一月六日に開かれた陸上自衛隊の募集・援護担当者会議について聞きました。この会議での説明資料で、自衛官の適齢者名簿に関する自治体の対応についての内容が防衛大臣の答弁と食い違っているんじゃないかということを指摘をいたしました。
 大臣は、改めて資料を精査すると、こういう答弁をされましたので、改めてお聞きしますが、まずこの会議の主催者、それから参加者及び会議の目的、そして同じ会議が二〇一四年はいつ開かれたのか、御答弁ください。

○国務大臣(防衛大臣 中谷元君) 平成二十五年度の募集・援護担当者会議は、陸上幕僚監部人事部募集・援護課長の主催で開催をされました。
 同会議には、人事教育局、陸上幕僚監部、海上幕僚監部、航空幕僚監部及び各方面総監部の募集・援護担当者が参加をいたしました。この会議におきまして、平成二十五年度における募集・援護業務の現況と平成二十六年度の事業計画について、参加者が理解をすることによって一貫性のある業務の推進を図るとともに、募集・援護に関する課題について意見交換を行うことを目的に開催をされております。
 また、平成二十六年度における募集・援護担当者会議につきましては、平成二十六年十一月に開催をされております。

○井上哲士君 自衛官の募集などのための現場の責任者のまさに業務遂行のための会議だということであります。
 手元に、この会議に出された説明資料の一部を配付しております。行政文書開示請求によって開示されたものですけれども、一部不開示で黒塗りになっております。
 この会議の翌月に新防衛大綱が閣議決定をされて、初めて自衛官募集に関する内容が盛り込まれました。社会の少子化、高学歴化に伴う募集環境の悪化を踏まえ、多様な募集施策を推進するとしておるわけです。資料の右肩に基資料の番号が振ってありますけれども、十二ページにありますように、この会議では、この閣議決定に先んじて、新防衛大綱において強化すべき人事機能が強調されておりまして、その一つの柱が、安定した適質隊員の確保を内容とする自衛官募集の活動であります。
 次に、十九ページを見ていただきますと、安定した適質隊員の確保として四項目が掲げられておりますが、その一つに、自衛隊の理解を促進する学校等における安全保障教育が掲げられております。
 次に、二十五ページを見ていただきますと、学校等の教育の現状及び問題意識として、自衛官の学校募集は有効な手段として拡大の見込みがあるものの、学校、特に高校において直接学生に対して説明する機会が不十分で、自衛官という職業に対する認識不足であり、国民、特に募集対象者が安全保障、国防に関する知識が不足などとしております。
 そして、この現状と問題意識を受けて、第二十六ページでは、方向性として、安全保障に関する国民としての基礎知識を付与し、国防及び自衛隊への理解を促進することにより、自衛官を職業として認識できる環境の付与を掲げております。
 そのために、じゃ、どうするのかと。資料では、防衛省が働きかけ、連携するとして大きな矢印が書かれておりますが、その相手先の機関は黒塗りとされております。ただ、この表を見ますと、働きかけの相手先は文部科学省ではないかと推測されるわけでありますが、働きかける内容は、安全保障に関する教育の必要性としております。さらに、下の段の表では、自衛隊の地方協力本部や各部隊が学校と連携強化をするとしているわけですね。
 ですから、要するにこの資料は、優秀な自衛官を安定的に確保するために、自衛官に応募する学生が増えるように学校教育を変えるように働きかけるという、誠に恐るべき計画書だと思いますね。
 大臣にお聞きしますけれども、防衛省として、どこに対してどのような働きかけをこの安全保障教育のために行っているんですか。

○国務大臣(中谷元君) まず、平成二十五年度の募集・援護担当者会議の資料の二十六ページにつきましては、まず、これを公にすることによって今後の同会議における率直な意見交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり、自衛隊における募集業務の適正な運行に支障を及ぼすおそれがあることから、不開示とさせていただいております。
 そして、お尋ねの、自衛隊の理解を促進する学校等における安全保障教育、どうあるのかということでございますが、これは、平成二十五年度の募集・援護担当者会議の資料において、この自衛隊の理解を促進する学校等における安全保障教育とある箇所は、当時開催をされておりました政府の安全保障と防衛力の懇談会において安全保障教育が取り上げられたことを受けて、仮に学校等における安全保障教育が必修科目化されるような事態になれば、学校側から防衛省に対して協力を求められることがあり得るが、その際には防衛省として協力可能な事項をお知らせできるのではないかという趣旨で作成したものでございまして、本来、防衛省は、教育課程に関して所管もしておりません。また、学校における必修科目を決定する権限もございません。防衛省として安全保障教育を必修科目にすることを検討しているものではございません。

○井上哲士君 何が協力できるかと考えたものだとおっしゃいました。しかし、明らかにそうではないんですね。防衛省の方から働きかける、連携するということになっているんです。しかもその内容は、安全保障に関する教育の必要を働きかけると、こういうことになっているわけですね。
 しかも、ここには方向性とかイメージとか書いてありますが、この会議は、先ほどありましたように、現場の募集・援護の担当者を集めて毎年行われている会議であります。まさに業務推進のための会議ですね。先日、質疑に指摘しましたように、この会議で自衛官の適齢者名簿に関する法定受託事務の適正化が提起をされまして、そのための方向性、イメージとして、地本による自治体への働きかけというのが書かれているんですよ。それに沿ってまさに、この間指摘しましたように、高知の地本が自治体に働きかけをしているわけですよ。ですから、現に現場で取り組まれている、推進されているのが実態としてあるわけですね。
 ですからちゃんとお答えいただきたいんですが、例えば十九ページでは、必修科目として黒塗り、何かを適用するというふうに書いてありますが、何かの部分はまさに全体の流れから見れば安全保障教育を必修科目にすると、そういうことをむしろ防衛省として働きかけていくと、そういう方向じゃないんですか。

○国務大臣(中谷元君) 先ほどお答えいたしましたが、これは当時、政府で安全保障と防衛力の懇談会が開催されまして、安全保障教育が取り上げられていた時期でございます。これを受けまして、仮に学校などにおいて安全保障教育が必修化、科目とされるような事態になれば、学校側から防衛省に対して協力を求められることがあり得るが、その際には防衛省として協力可能な事項をお知らせすることができるのではないかという趣旨で作成をしたものでございます。
 なお、防衛省としましては、安全保障教育の必修科目化、これを検討しているものではなく、かかる働きかけを文部科学省に行っている事実もございません。

○井上哲士君 先ほど、防衛省は教育内容などの所管をしていないと言われました。そういう中身を現場の自衛隊の、しかも業務推進の会議の中で議題にし、方向を提起をしていると、そのこと自身が大問題なんですね。しかも、これ中身、教育内容まで含めて提起をしているんですね。
 二十六ページの下の段を見ていただきますと、学校において既に実施中の総合的な学習時間の活用を更に拡大するということにしておりますが、その右側に四つ書かれております。基礎的知識の付与、自衛隊への理解の促進、愛国心、規律心を教育に反映、規範意識、危機管理体制の確立と、こういうことが掲げられております。
 こういう中身をまさに安全保障教育の中身としていくということで防衛省・自衛隊として働きかけていくと、こういうことではないんですか。

○国務大臣(中谷元君) この資料は、学校側から防衛省に対して協力を求められた場合に防衛省から協力を行うことにより持たされる効果について記載したものでありまして、防衛省から学校に一方的に介入をしようというものではございません。また、資料は自由な意見交換の材料として作成しておりまして、決定事項や方針、検討内容を記述したものではございません。

○井上哲士君 自由な意見交換と言いますけれども、先ほどおっしゃったように、そもそも所管事項でもないことを自衛隊の現場で、しかも正規の会議で議論をしていること自身が問題なんですよ。自由な意見交換と言いますけれども、そんな外に出せないような中身の議論をしていたんですか。
 大体、戦前の教育における軍部による不当な支配の排除というのは、憲法に基づく戦後教育の出発点です。例えばこれ、昭和二十三年六月二十一日、衆議院文教委員会での森戸文部大臣の答弁、殊に戦前、戦後の教育におきましては、日本の教育がいろんな力で影響されていたということであります、軍部等の支配が強く教育の上に及んだということは申すまでもないこととした上で、教育の民主化の方向として、軍部の影響から教育が脱することと述べているわけですね。
 自衛隊は強力な武力を持った実力部隊ですよ。総理はこれ、軍と呼びました。その中で、議論をされている安全保障教育、どうやっていくのか、どう働きかけていくのか。
 これ、二十六ページ見ますと、安全保障に関する国民としての基礎知識を付与し、となっているんですね。知識を付与するなんというのは、およそ教育の現場ではあり得ない言葉遣いですよ。特定の考えを上から押し付けた戦前の教育と、私、同じ発想だと思いますよ。こういう、上から知識を付与して、自衛官募集が、増やすのに都合のいいように教育の内容をどう変えていくか、こういうことをまさに現場の自衛隊のところで議論をしている、このこと自身が重大問題だと、そういう認識はありませんか。

○国務大臣(中谷元君) 学校において、外交や安全保障、防衛など我が国を取り巻く国際社会の諸課題について学ぶことは有意義だと考えておりますが、防衛省では、総合的な学習時間の活用については、あくまでも学校側からの求めに応じて協力を実施しており、引き続き、かかる対応により学校との連携を図ってまいりたいと思います。
 また、教育につきましては、これは文科省の所管でございまして、防衛省の所管外でもございます。
 現時点において、防衛省としては、このような問題について文科省に要望や働きかけを行っているということはございません。

○井上哲士君 私は、この資料の中に、協力ではなくて防衛省が働きかけると、こう示しているから質問をしているんですね。この働きかけの矢印の方向は誰なんですか。

○国務大臣(中谷元君) これは、お話ししたとおり、学校側に協力を求められた場合に防衛省が協力を行うということによってもたらされる効果について記載をしたということで、防衛省から学校に一方的に介入しようとしたものではございません。
 黒塗りにつきましては、先ほどお話ししたとおり、開示等につきましてはこのように判断をしたわけでございます。

○井上哲士君 幾ら言いましても、働きかけと明確に書いてあるんです。私は、極めて重大な内容だと思います。
 この黒塗りの部分を開示をした資料の提出を求めたいと思いますし、今、集団的自衛権の行使容認や戦闘中の他国軍への支援の拡大など、まさに戦争をする国づくりの一体のものだと私、思います。自衛官の募集の促進のために学校教育を変えようとする、こういう検討も働きかけも直ちに中止をすべきだと求めまして、時間ですので終わります。

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