国会質問議事録

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外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 武器輸出について聞きます。
 政府は、昨年の四月に武器輸出三原則を撤廃をしました。さらに、防衛省は六月から防衛生産・技術基盤戦略を策定をいたしました。武器輸出に公然と踏み出したわけでありますが、一昨年以来、私は当委員会や予算委員会等で度々この問題について質問をしてきましたけれども、政府は、三原則を撤廃しても今後も国際紛争を助長することはしないと、こう言われてきました。
 撤廃後一年、どうなったかと。新原則の適用第一号はPAC2の部品の米国への輸出でありました。ガザへの空爆を繰り返しているイスラエルにも、紛争当事国であるこの国にも第三国輸出が行われる可能性があると。こういうことを見ますと、武器輸出政策に転換をしたら、やはり国際紛争を助長しないという立場は取り続けることはできないのではないかと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

○委員長(片山さつき君) では、先に岸田外務大臣よりお願いします。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 昨年四月閣議決定しましたこの防衛装備移転三原則、これは国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念と、これまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持した上で、防衛装備の移転に係る手続や歯止めをこれまで以上に明確化あるいは透明化したものです。防衛装備移転三原則では、第一要件において、紛争当事国への移転となる場合には移転を認めない、これを明確にしております。引き続き、この移転の可否については厳格に審査することとなっております。
 そして、PAC2について御指摘がありました。これにつきましては、このパトリオット、PAC2は、外的脅威から自国を防衛するための装備品であること、またPAC2で使用されている当該部品は二十五年以上前から使用されている技術であり、我が国で汎用的な技術を用いて生産されているものであること、こういったことを勘案すれば、我が国製部品が組み込まれたPAC2が、米国から同国による厳格な管理体制の下で米国の安全保障上のパートナーである他のPAC2ユーザーに移転されたとしても問題はないと考えております。

○井上哲士君 果たして本当にそうなのかと。
 防衛省は、昨年の末から防衛装備・技術移転に係る諸課題に関する検討会を開催をしておりますが、この検討会の目的、構成、現在までの開催状況と議論の内容、今後の会合の予定と取りまとめの形態についてお答えください。

○政府参考人(防衛省大臣官房審議官 吉田正一君) 議員御指摘の検討会でございますが、本件につきましては、我が国の安全保障に資する防衛装備・技術移転を円滑かつ適切に進めるための体制、仕組みや企業に対する支援策などの課題について、経理装備局長の諮問により、部外有識者等に検討していただくべく設置したものでございます。その構成につきましては、政策研究大学院大学学長の白石委員を座長といたしまして、大学教授など有識者九名から構成しておるところでございます。
 委員御指摘のとおり、昨年十二月に第一回を開催し、これまで三回開いてございましたが、今後も一、二か月に一回のペースで開催し、夏頃をめどに検討会としての意見を座長の下で取りまとめて何らかの形で御報告いただきたいというふうに考えてございます。

○井上哲士君 一部公表されていますこの検討会の資料によりますと、企業の武器輸出に関して予算面での措置、それからファイナンスの検討が議論をされております。ですから、円滑に協力を進めるためどころではなくて、公的な資金による軍需産業へのあからさまな直接支援の議論も行われていると。この間の質疑で、武器輸出政策への転換は成長のためではない、輸出を増やすためではないと、こう言っていたにもかかわらず、なぜ企業の支援の検討をするんでしょうか。

○政府参考人(吉田正一君) これは、先ほど申し上げましたように、我が国の安全保障に資する防衛装備・技術移転を円滑に適切に進めるための課題を検討しているというふうなことでございまして、そういったものの一環として、例えば企業がこのような事態に対応するために新たな設備投資等を行う際に資金需要等が発生するというようなことも想定されますので、既存の公的金融等の活用等についても幅広く御検討いただけたらというふうに考えているところでございます。

○井上哲士君 企業支援そのものなんですね。しかも、日本の軍需企業への支援ばかりではなくて、売り込み先となる外国政府への支援にもこの議論は及んでおります。大変驚くべきことだと思います。
 ODA大綱を変えて開発協力大綱を策定したわけですが、これでも外国軍への支援を可能とする道を開いております。さらに、この検討会で外国への武器の供与や融資を検討されていると。これまさに私は軍事支援だと思いますが、国際紛争の助長につながるんではないですか。いかがですか。

○国務大臣(防衛大臣 中谷元君) 我が国におきましては、昨年の四月までは武器輸出三原則等の下で武器の移転は原則禁止とされていたために、防衛装備や技術移転を支援するための体制、仕組み、これが存在をしていないわけでございます。そのために、この制度、仕組みについての諸課題について御指摘の検討会において検討をいただいているところでありますが、その中で、政府による支援策の一環として、例えばASEANの諸国等から海洋安全保障などの分野の装備品等の供与また購入資金の融資等を求められた場合の方策についても幅広く検討を行っていただくことといたしておりまして、防衛省としては現時点で何ら方向性を決定したわけではございませんが、こういった有識者の中でそのような検討を行っていただいているということでございます。

○井上哲士君 これ、検討結果については当然、先ほど取りまとめられるということでありましたが、それを踏まえて防衛省が具体化をすると、こういうことなんですか。

○国務大臣(中谷元君) 現実に、ASEANを始めいろんな国々からも、自国の安全保障や海洋安全保障などの面で我が国の装備品の供与また購入資金の融資等についての問合せや意見なども寄せられていただいております。こういった場合に、まだきちんとした仕組み、制度ができておりませんので、こういった仕組みをどうしたらいいかという点につきましては検討を行っているということでございます。

○井上哲士君 何か限定をされるかのような先ほど答弁がありましたが、武器輸出三原則撤廃のときも私質問したら、当時の大臣は、まるで武器というような話をされるが、海外で復興支援のために自衛隊が持っていくブルドーザー、こういうものも武器という範囲になっちゃうので、こういうことをクリアするものなんだと、こういうことを言われましたけれども、実際にはこの一年間行われているのはまさに武器そのものの輸出や共同開発の問題なわけですね。
 実際、軍需産業からは、武器輸出促進のための様々な要求が出されております。先月の五日に陸上幕僚監部主催の平成二十六年度陸上装備フォーラムが開催をされておりますが、防衛省によれば、目的は、陸上装備等に携わる防衛企業等に対して情報発信及び意見聴取を実施して事後の装備行政の資とするとなっておりますが、企業側からは約二百十社、四百三十人が参加をして、朝雲によりますと過去最高の参加だとなっておりますし、企業側からは、政府が窓口となって日本の装備品を他国に有償で提供、輸出をする日本版FMSの制度の発足や、官民で経験と実績を共有する枠組みの整備を望む声が上がったとしておりますが、FMSというのはまさに米国の対外軍事援助のことでありますが、こういう発言があったことは事実なのか、一体どこの要望なのか、そして防衛省としてはこの要望をどのように具体化をするおつもりでしょうか。

○政府参考人(吉田正一君) 先生御指摘の陸上装備フォーラムというふうなところでそういうふうな御意見があったということは事実だと思ってございますが、どの企業がというところにつきましては、非公表前提の意見交換というふうなことなのでお答えは差し控えさせていただきたいと思ってございます。
 それで、他方、FMSでございますが、先生が御指摘になられましたように、これは米国政府の対外援助ということで、装備品等を政府間取引で行うものというふうなものでございますと。他方で、この制度は米国独自のものでございまして、例えば英国でございますとかフランスというような国ではこういった仕組みというのは持っておらないというようなことでございます。
 防衛省といたしましては、どういった形で政府が関与することが効果的かつ適切か、諸外国の事例も幅広く参考にしつつ、有識者の方々に御議論いただくというふうなことを考えておるわけでございまして、そういったものを基に、先ほど大臣がお答えしましたように、どういったことを考えていくべきかということを整理していきたいと思ってございます。

○井上哲士君 議論の結果をそうやって具体化をしていく方向、姿勢なわけですね。率直な意見交換のためとして配付資料等については公開をしないと、事前に求めても、そういうお話でありますが、武器で海外との事業を広げたい企業とは率直な意見交換をして、国会、国民には示せないということは私は極めて問題だと思います。是非、オープンにしていただきたいと思うんですね。
 アメリカなどは、対外軍事援助を外交政策の手段としてまいりました。それが何をもたらすのかをしっかり見る必要があると思うんですね。例を挙げますと、イラクです。イラン・イラク戦争の時期を通じて、イラクへは欧米、ソ連からの大量の軍事支援、武器輸出が行われました。
 経済産業省が平成二十五年度安全保障貿易管理対策事業において武器輸出管理の在り方調査と題する文献調査をやって、大部の報告書がまとめられております。こう書いています。世界各国は、必ずしも親イラクの立場ではなかったものの、石油貿易やその他の政治的、経済的メリット等を勘案し、まだましな悪という理由等からイラクへの支援を展開した。こうして、当該戦争以前には目立った軍事力を有していなかったイラクは世界第四位の軍事大国まで押し上げられたと、こうしております。そして、この軍事大国となったイラクがあの湾岸戦争に至ったわけですね。
 九二年の国連の報告書は、この軍事支援と湾岸戦争の関係についてこのように述べております。ペルシャ湾岸における最近の出来事が、つまり湾岸戦争が劇的に示したのは、そのような武器の増強の否定的な帰結であった。国際的には、それらの出来事は、更に広範に表明された懸念を掘り起こすとともに、国際的な武器移転の制限に関する提案の増加につながったと、こう国連はまとめております。
 つまり、外交の武器として、手段として軍事援助を行ったことがイラクのような軍事大国をつくり出して国際紛争を助長してきたというのが教訓だと思うんですね。私は、こういう過去の事例に照らしたら、日本が対外の軍事援助を行うようなことは、世界平和に逆行することであり、やるべきでないと考えますが、外務大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、武器の供与を含む軍事的な支援を実施することと支援を受けた国が紛争を引き起こすこと、この二つの因果関係というのは必ずしも明らかでないと考えます。様々な事例が存在すると考えます。
 そして、我が国の防衛装備移転三原則について申し上げるならば、同原則の下でも積極的に武器輸出をする方針に転換をしたり、輸出を大幅に解禁するといったことではなく、これまで同様、厳正かつ慎重に対処する方針であると承知をしております。引き続き、平和国家としての基本理念とこれまで続けてきた平和国家としての歩み、これを引き続き堅持することには変わりないと認識をしています。

○井上哲士君 必ずしも関連が明らかでないという答弁でありましたが、先ほどの経産省の調査でも、そして国連の報告でも、まさにそういう武器の輸出がこういう紛争につながったということを明確に指摘しているわけですね。
 今年の一月一日の東京新聞にこの問題の記事が出ましたけど、その中で、防衛省の幹部のコメントとして、武器輸出は外交の手段として有益だと、こういうコメントすら出ているわけですね。私は、こういうような方向は絶対に歩むべきではないと思いますが、最後、防衛大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 我が国の防衛装備移転三原則、これは平和国家としての基本理念、これまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持した上で、この防衛装備の移転に係る手続、歯止めを今まで以上に明確化、透明化したものでございまして、これまでと同様にこういった武器輸出に関しましては厳正かつ慎重に対処してまいりたいと思います。

○井上哲士君 武器輸出の拡大を絶対するべきでないこと改めて求めまして、質問を終わります。

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