○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
在外公館法等の改正は、必要な内容であり、賛成であります。
今日は、今月末から開かれますNPT再検討会議についてお聞きをいたします。
私は、広島育ちの被爆二世でもあり、前回、前々回と二回続けて国連にも行きまして、様々な行動に参加をしてまいりました。前回は、志位委員長とともに訪米をいたしまして、この会議のカバクチュラン議長、ドゥアルテ国連上席代表らと核兵器のない世界をつくるために何が必要かと、こういう意見交換もし、九か国との代表とも懇談をいたしました。
この前回会議の到達を踏まえて、前進をさせるために被爆国日本が何をするかという対応が今非常に問われていると思います。前回の第八回NPT再検討会議において、日本を含めて全会一致で採択された最終文書で、核兵器のない世界を実現することを決議し、そのための必要な枠組みを確立する特別な取組を行うことを確認をしております。
外務大臣は、この間の答弁で、NPTに向けて日本も多くの文書を提出していると、こう言われておりますが、この前回の最終文書が特別に強調した核兵器のない世界を実現するために必要な枠組みを確立する特別な取組について、これについてはどのような提案を日本はしてきたというのでしょうか。
○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 二〇一〇年のNPT運用会議において示されたNPT行動計画の実現のために、我が国としましては、基本的にまずNPDI、軍縮・不拡散イニシアティブ、こうした十二の非核兵器国から成る核軍縮・不拡散に関する地域横断的グループを立ち上げて、現実的、実践的な取組を進めてきました。
そして、今御指摘のように、十八本の作業文書をこの五年間取りまとめ、国会に提出をしてきたわけですが、その枠組みの成果としまして、例えば我が国が主導して作成し、NPDIとして提出した標準報告フォーム案、これは核兵器国に自らの核兵器の状況について透明性を持って報告してもらうためのフォーム、ひな形でありますが、このフォームに基づいて、核兵器国間における議論を喚起し、昨年の第三回準備委員会におきまして、核兵器国による核軍縮義務の履行状況を報告させる、こういった貢献も行いました。
ただ、残念ながら、報告がまだ不十分だという認識に立ち、引き続き、核兵器国に対しこの報告内容を充実するよう働きかけを行っている、こういった取組を行っております。
引き続き、こうした現実的、実践的な取組をしっかりと続けていきたいと考えています。
○井上哲士君 やっぱり、従来の枠内のものだと思うんですね。私は、およそ最終文書が言った特別な取組とは言い難いものだと思いますし、私はやっぱり日本も賛成したこの最終文書に盛り込まれていることに対してしっかり努力をしなければ、合意への姿勢が問われると思うわけですね。
問題は、この枠組みの中身でありまして、前回の最終文書は特段そこについての明確な言及はありません。
ただ、この最終文書で、とりわけ確固たる検証システムによって裏打ちされた核兵器禁止条約若しくは相互に補強し合う別々の文書という枠組みの合意を検討すべきであるとする国連事務総長の軍縮提案に留意すると強調していることは非常に重要だと思います。
この提起を受けて、前回会議以降、国際政治の場で核兵器禁止条約が浮上してきたわけですね。そして、その交渉開始が実際に提起されるようになっていることは大変重要な変化だと思います。国連総会では、核兵器条約の交渉開始を要求するマレーシア提案の決議に加えて、二〇一三年からは包括的に禁止する条約についての交渉を要求する非同盟の諸国提案の決議が加盟国の三分の二以上の賛成で採択をされております。
これらは、前回の最終文書で確認をされた内容を実現をするための国際的に非常に重要な努力だと考えますけれども、どのように評価されているでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 前回のNPT運用検討会議後の各国のそれぞれの努力につきましては、敬意を表し申し上げたいと思います。
その中で、我が国の対応としましては、御指摘の二〇一〇年のNPT運用検討会議で合意された行動計画ですが、強固な検証制度に支えられた核兵器禁止条約交渉、又は個別の相互に補強し合う文書の枠組みへの合意についての検討を含む国連事務総長による五項目の提案に留意するという部分につきまして、留意するという表現であるということ、さらには具体的な時期は明示していないというふうに承知をしております。こういった部分も勘案しながら、より現実的、そして実践的な取組を進めていかなければならないと考えています。
核兵器国と非核兵器国、これ、協力しないことには核兵器のない世界は実現することはありません。是非、核兵器国と非核兵器国が協力する、そういった体制をつくるために、引き続き、現実的、実践的な取組を続けていきたいと考えています。
○井上哲士君 現実的という言葉を使われますが、結局、この間私も本会議でも質問しましたけど、この核兵器禁止条約については、核保有国が反対しており、現実的でないと、こういう総理も答弁をされたわけで、事実上、この枠組みから排除するというのが日本政府の姿勢だと思うんですね。
先ほども言いましたように、核兵器のない世界を実現するために必要な枠組みを確立する特別な取組を行うとした最終文書に賛成をしながら、その中でとりわけ強調されているこの条約を事実上排除をするというのは、賛成した国としては私は矛盾をした態度だと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 先ほども申し上げましたように、二〇一〇年のNPT運用検討会議で合意された行動計画においては、国連事務総長による五項目の提案に留意するという表現になっております。そして、具体的な時期を明示しているものではありません。そうしたことを考えますときに、総理の答弁、現時点では交渉を開始できる状況にないという認識を示したものでありまして、同行動計画に反するものではないと存じます。
いずれにしましても、我が国としましては、核兵器のない世界に向けてしっかりとした前進を図るために、核兵器国と非核兵器国が協力する、そうした体制をつくるためにしっかりと努力をしなければならないと考えております。
○井上哲士君 全会一致ですから、いろんな配慮があったものではあるんです。しかし、時間が書いていないからとかというんじゃなくて、やっぱり被爆国としてもっと積極的な対応をするべきだと思うんですね。
何かこの間の参議院予算委員会の答弁でも、この議論をすれば核保有国との関係に溝をつくるかのような言い方をされました。しかし、この再検討会議の最終文書も、それから、そもそもこの条約の第六条で核兵器国に課せられた核軍縮義務も、いずれも全ての核保有国が賛成をしている中身なわけでありますから、これに基づいてこの核兵器禁止条約も含めた枠組みについて議論と交渉をしようじゃないかということを被爆国としてもっと積極的に働きかける必要があると思いますが、その点、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 前回のNPT運用検討会議の成果を踏まえて、現実的に核兵器のない世界に向けて前進させるために、我が国としては様々な努力を行ってきました。先ほども申し上げました標準報告フォーム等の提案を通じて、核兵器国に対しましても自らの核兵器のありようについて透明性を求めてきましたし、この核軍縮交渉におきましても、米ロのみならずマルチの会議を行うべきである、こういった提案も行ってきました。
そして、核兵器の非人道性の議論、これもまさに核兵器国と非核兵器国を協力させる、結び付ける触媒として重視するべきだ、こういった考え方に基づいて、核兵器国、非核兵器国共に協力を促す、こういった努力も続けてきました。
さらには、広島、長崎、こうした被爆地に世界の政治リーダーに是非足を運んでもらい、被爆の実相に触れるべきだ、こういった内容もNPDIの枠組みの中で国連に提言する、こういった努力も続けてきました。
我が国は、核兵器のない世界を実現するためには核兵器国と非核兵器国が協力しなければ結果につながらない、そういった思いで具体的な提案をし、行動してきたと、この五年間振り返っています。是非、この成果を今回のNPT運用検討会議の成果文書においてもしっかりと盛り込んで、会議の成功に貢献していきたいと考えています。
○委員長(片山さつき君) 井上哲士君、そろそろお時間でございます。
○井上哲士君 いろいろ言われましたけれども、しかし、高齢の被爆者も含めて一番の思いは核兵器禁止条約に向けた議論をまず開始することだと、これが一番の思いでありますから、是非その点での被爆国としての積極的な対応を強く求めて、質問を終わります。